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73 一軒家が欲しい①
しおりを挟む「え、今日も自由行動にするのか?」
今日は昨日できなかった無属性魔法を試したい。
そのためカレンたちに伝えると不満のような声が聞こえてきた。
「そろそろ魔物をぶっ倒して稼ぎたいんだけど」
カレンってこんな戦闘狂だったっけ?
そうか。なんだかんだカレンたちは最近戦闘をしていない。
まともに戦闘したのはタラサに行くときの盗賊退治だけだ。
私がケートスを討伐したから、カレンたちはタラサでただ海の幸を食べ歩いただけだ。
「なら、私だけ自由に動こうかな。2人は依頼を受けてていいよ」
2人は渋々了承してくれた。
私も2人と仕事をしたいけど、今は無属性魔法の威力を試したい。
2人と宿で別れて森へと向かう。
「まずは魔力弾からかな」
目の前にある木を的にして魔力弾を発動させる。
「マジックショット」
バアアアァァァン!
的にした木に風穴が空いた。
大した魔力を込めなくてもかなりの威力が出た。
まるで空気弾の強化バージョンだ。
でも魔力弾の方が魔力消費が少ないし、威力は桁違いだ。
「これはすごい……」
でも凄すぎるからあまり頻繁に使うのも躊躇われるな。
次は魔力波だな。
魔力弾でさっきの威力だから、少し加減して発動させる。
「マジックウェーブ」
ドゴォォォォン!
広範囲の魔力波のためか、少ししか魔力を込めていないのに目の前に広がる木々が散りじりになった。
「これはまずい……」
やはり魔力を直接使った魔法のためか威力が違う。
いつも通りに魔力を込めて行使したら、さらに悲惨な惨状になりそうだ。
「無属性魔法は緊急事態以外は発動を控えた方がいいかな……」
そう心に決めて、私は森から出るのであった。
暇だから冒険者ギルドに行く。
特に用事はない。依頼を受ける気もないが、自分の持っている残高を確認したい。
冒険者ギルドに入り、周囲からの視線を完璧に無視して端の方に移動する。
そこには魔道具で作られた板がある。
ここでは自動で硬貨の預入や引き出し及び残高照会ができる。まさしくATMだよ。
「残高照会っと……はぁ!?」
久しぶりに残高を見てみたが、かなりのお金を持っている。
何より王様から振り込まれた額が異常だ。日本円で1億円ほど振り込まれている。
いや、宝くじかよ。あの時ニヤけたのがよくわかったよ。ちくしょう……。
王様からの振り込みもそうだけど、それがなくてもかなりの残高がある。
冒険者として仕事もそうだけど、ウルレイン、タラサの街を助けた各領主様からの報酬も振り込んでいたから、もう働かなくても生きていけそうな額があるよ。
「家でも買おうかな……」
そうだ。前世では一軒家を買うのが夢だった。
そこで奥さんと子供と幸せに暮らす夢が……。
もう一生叶わなくなったけど。
私がこの世界で男と結婚して子供を産むとか想像ができない。
ましてや男と触れ合うのすら嫌悪感がある。
1人で家に住むのは寂しいけど、毎回宿に泊まるのも面倒だから家を買うのもいいかもな。
王都だと土地代が高そうだからウルレインで買ってみようかな。
「ヒナタさーん!」
誰かに呼ばれた。
後ろを振り返ると、受付のお姉さんが手を振って私を呼んでいる。
一体何事か。
「なんですか?」
「ヒナタさんに指名依頼が来ています」
「え? 誰からですか?」
「ブルガルド家からですね」
これはウルレインに帰るための護衛依頼だと思う。
なんというタイミングなんだ。
「分かりました。詳細はブルガルド家で聞いておきます」
「よろしくお願いします」
私は冒険者ギルドから出て、ブルガルド家の屋敷へと向かった。
なんか久しぶりにサーシャに会う気がする。楽しみだ。
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