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74 一軒家が欲しい②
しおりを挟む「冒険者のヒナタです」
門番のお兄さんに話しかける。
すぐに屋敷に案内されて、サーシャが出迎えてくれた。
「ヒナタお姉ちゃん!」
「サーシャちゃん!」
いつも通りサーシャが抱きついてくる。
私はいつもよりも強めに抱きしめる。
「うぐぐ……」
サーシャが苦しそうにしていたので力を緩める。
「久しぶりだねサーシャちゃん」
「同じ王都にいるはずなのにヒナタお姉ちゃんに会えなくて寂しかったです」
ごめんねサーシャ。
なんだかんだ王都にはあまりいなかったんだよ。
依頼で各地の村に行ったり、海の幸を求めてタラサの街に行ったりで、王都の滞在期間はそんなになかったんだよ。
「あら、ヒナタさんいらっしゃい」
奥からユリアが話しかけてくる。
今回の依頼主は一応ユリアになっていた。
「はい。冒険者ギルドで指名依頼がありましたので」
「そうね。サーシャがウルレインに帰るのに護衛をして欲しいのよ」
やっぱりそうですよね。
なら、一応カレンたちのことも聞いておかないといけない。
「パーティメンバーも一緒でいいですか?」
「それはもちろんよ」
なら帰ってカレンたちにも相談しよう。
もしかしたら、2人ともまだ王都に居たいかもしれないしね。
私だけ先行してウルレインに帰るのも問題ないしね。
出発は明日の朝みたいなので、冒険者ギルドでカレンたちを待とうかな。
冒険者ギルドに向かい2階の談話室みたいな場所で2人を待つ。
しかし、夕方近くになっても2人が帰ってこない。
「遅い。何かあったのかな……」
痺れを切らして、受付のお姉さんに聞きに行く。
「カレンたちってまだ帰ってきていないよね?」
「そうですね……。オーク討伐の依頼を受けていたので、今日中には帰ってくると思ったんですけど……」
それなら2人で十分だ。
この時間まで帰ってこないのは緊急事態でも生じたのか?
心配だから行ってみよう。
すぐに冒険者ギルドから出て、オークの出現場所に向かう。
急いでいたため飛行魔法でだ。
気配探知でも2人の反応を探る。
15分程度飛んでいたところで、2人の反応をキャッチした。
洞窟の中に2人の反応があり、周辺にはオークの反応もある。
そして2人は戦っているような反応ではない。
「もしかして捕まった?」
ちょっとまずいかも。
急いで飛行魔法のまま隠密スキルで洞窟の中に入っていく。
中にはオークが10体ほどいて、奥には2人が手足を縛られて気絶していた。
さらにその2人をニヤつきながら見ているオークの上位種がいる。
他のオークと違って肌が赤く、大きな槌を持っている。
せっかく私の存在はバレていないから、覚えたての無属性魔法を使おう。
岩石弾で一撃で仕留められたらいいけど、万が一を考えて魔力波を発動させる。
「マジックウェーブ!」
オークの上位種に向けて放った魔力波によって一瞬で肉塊へと変化した。
「うわっ、すご……」
さすが無属性魔法だ。
っとそんな感心している場合じゃない。
私の魔法で洞窟に亀裂が入って崩れはじめた。
早く2人を連れて脱出しないと!
「やばいやばいやばい」
急いで2人を抱えて、飛行魔法で急いで出口に向かう。
途中でオークが襲ってくるが無視。
このまま洞窟にいたら下敷きになる。
「ギリギリ間に合うか……?」
1人なら間に合うが、気絶した2人を抱えているためかなり遅い。
こういう時の人間ってかなり重く感じる。
いや、本当の2人は軽いはず。
私の飛んでいるすぐ後方まで洞窟が崩れてきていて、なんとか下敷きならずに済んでいる。
「もう少しだ」
目の前に出口が見えてきて、魔力を込めてさらにスピードを上げる。
上から落石してくるが、ギリギリ回避しながら必死で飛んで出口を目指す。
すると、目の前の出口が崩れていった。
「やばい!」
さらに魔力を込めてスピードを上げる。
かなりギリギリだ。
崩れていく岩の隙間を縫うように回避していき出口を目指す。
あと少し。
「やった!」
かなりギリギリだったが、なんとか洞窟から出られた。
洞窟から出た途端、洞窟の出入り口が完全に塞がった。
「危なかった……」
この洞窟の崩落は私のせいだけど、2人には内緒にしよう。
バレるかもしれないけど。
とりあえず2人が無事でよかった。
あのままだとオークの上位種に孕ませられるところだった。
本当に危険なところだった。
「無事でよかった……」
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