138 / 139
138 迷宮攻略(アスクレピオス迷宮編)⑧
しおりを挟むみなさんおはようございます。ヒナタです。
どのくらい眠っていたのか、そして今が朝かは分かりませんが起床しました。
どうやら、起きたのは私だけのようです。
カレンもコハクもケロちゃんもぐっすり眠っています。
でもキーくんだけは起きていました。
私達が寝てしまって退屈だったのか、体育座りでちょこんと座っています。
とても可愛いです。
さて、このままみんなを起こして第三階層へと行ってもいいのですが、折角なので朝食の準備をします。
無限収納から鍋そして魔道具で作られたIHのようなものを取り出してから油とパン粉、小麦粉、卵、キャベツ、トマトも準備します。
そして昨日の残りのオーク肉に小麦粉をまぶした後、溶き卵の中に入れて、パン粉を付けて油で揚げます。
きつね色に揚げたら油から取り出して、パンにオークカツと刻んだキャベツ、等分に切り分けたトマトを挟んでオークカツバーガーの完成です。
これを朝からたくさん量産して、朝食にします。
食べる人が多いからね。いや、正確には人ではないけど……。
それに私が朝食を作る光景を涎を垂らしながら見ているキーくんも、私達が寝ている間に大人しく待っててくれたお礼として食事を提供してあげたかった。
あとは、次にいつゆっくり食べる機会があるか分からないから、オークカツという朝から胃が受け付けなさそうなものを食べて腹ごしらえだ。
朝食の準備で結構時間が掛かっちゃった。
そろそろみんなを起こそうかな。
「ほら~みんな起きて~朝だよ~」
私の声に最初に反応したのはケロちゃん。
「わふん……」
そして次に反応したのはコハク。
「う~ん……。もう朝なの……。ん? なんかいい匂いがする!」
コハクの大好物、オーク肉によってコハクの目覚めはいい。
そしてまだ起きないカレン。
カレンは低血圧なのか朝起きるのが苦手だ。
「ママ、これ食べていいの?!」
「うん、いいよ。でもその前にカレンを起こしてくれない?」
「カレンお姉ちゃん? あ、まだ寝てるんだ」
コハクはカレンのそばに移動し、カレンの胸に飛び込んだ。
「ぐっ!」
「朝だよ~! 起きて~!」
これだけは分かる。カレンの目覚めは最悪だ。
でもコハクが羨ましい。カレンの豊満なお胸に飛び込めるなんて……。
今度機会があったら私もやってみようかな。
触るのは何度もやっているけど、顔を埋めるまではしたことがない。
いつもの日常が戻ったら寝ている時にどさくさに紛れてやってみよ。
「ほらカレン! 朝食食べてすぐに行くよ!」
「……ああ、分かったよ」
カレンはかなり不機嫌。
……うん。仕方ない。私だってコハクじゃなかったら殴ってるかもしれない。
あの起こし方は怒るよね。
「いただきまーす!」
「わふん!」
「ききー!」
コハクにケロちゃん、キーくんが先にオークバーガーに齧り付く。
ケロちゃんは頭が3つあるから、オークバーガーを3つ用意したけど、食べにくそう。
折角パンに挟んだのに、結局全ての食材がバラバラになってしまった。犬にはちょっと食べにくかったかな。
「さて、私も食べようかな」
カレンも来たことだし、私も朝食を摂り始める。
カレンも黙々と食べている。でも目は半開き。意識は別の場所にあるみたいだ。
「よし! それじゃあ進もうか!」
私とカレンはオークバーガー1つで足りたが、その他のものについてはおかわりの繰り返し。追加で作る羽目になった。
そして追加で作ること5回でようやく全員満腹になったので、これでようやく万全の状態で第三階層に進める。
「ああ、行くぞ!」
「おおー!」
「わふん!」
「きー!」
カレンも目が覚めたようで、目がぱっちり開いている。
そしてコハクに続き、ケロちゃんとキーくんもやる気十分。
これだけ仲間がいれば、この迷宮も攻略したのも同然!
待っててよ、シャル!
私達一行はストーンヘンジの中央にある螺旋階段を降りる。
なんか秘密の地下室みたいで、子供心をくすぐられる。
ちなみに私とコハクはケロちゃんの背中に乗っている。
階段を降りて辿り着いたのは、第二階層と同じようなトンネル構造の通路。
さっきまでジャングルにいたにも関わらず、階段を降りると殺風景な洞窟のような場所。
迷宮って不思議だね。一体誰が迷宮なんて作ったのだろうか。
さて、いつも通り気配探知スキルを使用する。
予想だけど、多分この迷宮の階層守護者の部屋以外はゴブリンが生息しているのだろう。
通路の先には反応がものすごく大量にある。今までの階層では比べ物にならない数だ。
もしかしたらアスクレピオス迷宮の最終階層まで近づいているのかもと感じてしまう。
「カレン、この先に魔物の反応があるけど、ちょっと数が多いみたい」
「あたしがやるよ」
「なら任せるけど、危なくなったら援護はするからね?」
「ああ、頼んだ」
ここはカレンに任せることにする。
私も参戦してもいいけど、ケロちゃんの背中がとても心地良いのだ。
緊急事態以外はここから降りたくない。
「キーくんも戦いたいの?」
「きー!」
唐突にコハクがキーくんに話しかけた。
どうやらキーくんもゴブリンと戦いたいらしい。
それなら任せるべきだろう。ちょっとだけカレン1人だと不安もあったからキーくんもいるなら安心かな。
「行くぜー!」
「きー!」
カレンとキーくんがゴブリンの群れに突っ込む。
第二階層よりもホブゴブリンの数が多く、普通のゴブリンが少ない。
しかし、そんなことは関係ないようで、カレンの剣で次々とホブゴブリンの死体の山が出来上がる。
そしてキーくんの土魔法で造り出した岩石でもゴブリンが潰されるように死んでいく。
……順調だなと思っていたのも束の間、奥の方から火球が複数飛んできた。
「あぶねっ!」
「ききー!」
瞬時にカレンとキーくんが火球を回避する。
「ゴブリンメイジまでいるのか……」
ゴブリンメイジといえば、私達がパーティーを組んで初めて受注した依頼でも戦ったことがある。
あの時は確か、私が水魔法の応用で氷結で動きを止めて討伐したはず。
さて、どうやってカレン達は討伐するか。
「きー!」
最初に動いたのはキーくん。
縮地スキルですぐさま奥にいたゴブリンメイジの集団に接近する。
そして、土魔法で地面に巨大な落とし穴を生成し、落下したゴブリンメイジに対して巨大な岩石を落とし穴にピッタリ嵌めた。
おー、キーくんって頭いいんだな。
私もあの魔法の使い方は考えたことはあるけど、実際に使ったことはない。
岩石弾でほとんどの魔物を討伐できてしまうから。
「キーくんすごい!」
「わおぉぉぉん!」
「きっきっ!」
コハク達はキーくんの活躍に喜ぶ。
どうやら先程のゴブリンメイジで全てのゴブリンが討伐できたみたいだ。
この一帯にはもう魔物の反応がない。
「キーくん凄かったね」
「うん! かっこよかった!」
「あの猿しか褒めねぇのかよ……」
良いところを全てキーくんに持っていかれたカレンは少しだけ残念そう。
「カレンもかっこよかったよ!」
「うん! カレンお姉ちゃんもかっこよかった!」
「わふん!」
「きー!」
うんうん。いいパーティーになってきたんじゃない?
人間と魔物の異色のパーティーだけど、意思疎通もできているようだし、お互いを信頼していて自分がやるべきことも明確に分かっている気がする。
それにキーくんは普通に考えれば強い。たぶん、討伐ランクでいうとAランクにはなると思う。もちろんケロちゃんもだけど。
私達があっさり討伐しちゃったから強いイメージが湧かないけど、迷宮の通路にいる魔物くらいなら相手にもならないだろう。
この調子なら順調に進める気がしてきた。
……それにしてもこの迷宮は何階層まであるのか。
迷宮といえば、大抵は序盤に弱い魔物だけで構成されていて、徐々に強くなっていくようなイメージだ。
そう考えると、第一階層からケルベロスが召喚されるような迷宮は異常だ。
一体、第二階層になるとどれだけ強くなるんだろう……なんて考えもした。でも出現したのはレッドモンキー。相性もあるが強さでいけば同等程度だと思う。
ということは、次から出現する階層守護者も同等程度なのではと推測できる。まあ、これは個人的な望みも含んでいるけど。
でも一番異常なのは、攻略条件が階層守護者を仲間にすることだ。
それも謎の種のようなものを与えないと仲間にはできない。
何故このような攻略条件なのか……?
もしかしたら、各階層守護者を仲間にしないといけない程、最終階層守護者が強いということか?
もしかしたら遂に竜と対峙することになるとか……。
本当にそうなったら私は攻撃できない。コハクのこともそうだし、コハクの本当の母親である白竜様のことも忘れてはいないから。竜とは絶対に敵対できない。
まあ、本当に竜が出るとは決まっていないから今の段階で最終階層守護者について考えても仕方がない。
でも、強い魔物って竜くらいしか思い付かないんだよね……。
「さあ、さっさと先に進むぞ」
「……うん。そうだね」
私が今後の考察をしていると、カレンが歩き出す。
このまま進んでも問題ないけど、やっぱりこの迷宮について気になってしまう自分がいる。
攻略条件として魔物を仲間にするなんて普通は誰も思い付かない。
もしかしたら、この世界の迷宮ってこんな感じなのかな……?
「カレン、今更だけど迷宮の階層守護者を仲間にするのが攻略条件って、他の迷宮でもそうなのかな?」
「いや、あたしも迷宮は初めてだから知らねぇよ。……でもそんなのが罷り通っているなら今まで誰も攻略できないなんてありえないだろ。だからこそ、この迷宮は普通じゃねぇってことだと思うぜ」
……うん。確かにね。
少し考えれば分かることだ。
私が馬鹿だった。
「確かにそうだよね……」
だとしたらこの迷宮が異常なのは間違いない。
何故このような攻略方法なのか……ちょっと考えてみよう。どうせ私はケロちゃんの背中に乗っているだけで暇だし。
まず最初に思い付くのは、さっき考えたように最終階層守護者が強敵だということ。
次に思いつくのは、通常は考えもしないような攻略方法にすることにより迷宮攻略を阻止すること。
咄嗟に思い付くのはこの2つくらいかな。
でもなんとなくだけど、出現している階層守護者には意味があるのではないかと考えてしまう。
……私とコハクが乗っているケロちゃんに目の前で歩いているキーくん。
犬の魔物に猿の魔物……。
……ん? よく見るとこの光景って……。
私は改めてこの状況を俯瞰したことで閃く。そしてこの迷宮での出来事を思い出す。
このケロちゃんとキーくんが出現した順番に、仲間にするために必要だった桃の種のようなもの。まるで餅のような弾力があった種だった。
そしてその桃は迷宮の用水路から流れてきた。
そう……まるで『どんぶらこ』とでも効果音が出てきそうな感じで。
一つ一つのピースを揃えて仮説が成り立つ。
……え、ちょっと待って。もしかして本当にそうなの……?
これって……。
「桃◯郎やないかぁ~~~~い!!!!」
私は声を大にして叫んだ。
21
あなたにおすすめの小説
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
狼になっちゃった!
家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで?
色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!?
……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう?
これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる