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第2章
第22話 フラグメント
しおりを挟む「カンナ!お父さん手術中だったんだね。助かったんだ・・・本当に良かった!!」
【あの世】に行く寸前で手術が成功したのだろうと大喜びする。
「うわーん・・・美癒ちゃん~!ありがとう!!」
ずっと泣いていたカンナ。
状況を早期に理解し、再び流れ出る涙は嬉し涙に変わっていた。
「そんな単純は話では無いよ。君のお父さんは脳出血で倒れて手遅れの状態だった。【あの世】の扉を開く直前だったんだからね。
みんなも見たと思うけど、眩しい光が彼を包んだ事が原因だ。」
ジンの話を聞いて、みんなは一斉に美癒を見る。
(え?何でみんな私を見るの?)
何が何だか分からない美癒は、琉緒の方を見た。
目が合うと琉緒はゆっくり首を左右に振って目線を下げた。
「美癒ちゃんは光が自分から発せられたって自覚は無かった・・・の?」
カンナが尋ねる。
「私から発せられた!?そんなワケ・・・。」
自分にそんな事が出来るはずがない、仮に本当に自分がしてしまったのであれば大変な事だと思い、美癒はジンに助けを求めた。
「美癒ちゃんからは魔力の痕跡を感じる・・・。美癒ちゃんが【この世】に魂を戻したんだ。」
「確かにカンナのお父さんには生きて欲しいって思ったし、光った・・・でも私は魔力を持っていません。」
「俺も見たぜ。美癒が手を伸ばして、魂を操っていた。」
近くにいた男子が口を挟み、周囲も頷く。
「私に魂を操る力があるっていうこと?信じられない・・・。」
続いて頷くジンと琉緒。
美癒は自分の事なのに全く意味が分からず、両手を見つめる。
試しに琉緒に向かって手を伸ばしてみた。
(琉緒の魂よー!出てこーい!)
念じてみる。
「・・・今俺に向かって何かしてんの?」
「うん、魂出てこいってやってみたけど、何も起こらないよ。」
「ははは、美癒ちゃん面白いね。美癒ちゃんが魂を動かすには、まだコントロールが未熟なんだと思う。だから簡単には使えないのかもね。
この話は改めて個別でさせてもらうとして、とりあえず保留って事にしておこうか。」
そう言ってジンは、ザワついている皆を鎮めて
「今日は終わりだ、帰ろう。」と声をかけた。
カンナが美癒に何度もお礼を伝えるが、美癒は首をかしげるしかなかった。
そして、大変な事をしでかした自分にお咎めが待ち構えているのではないかと不安に思い
「身に覚えのない事で処罰されるのは納得がいかない・・・。」
と、つい口に出して呟いてしまった。
そんな美癒に気付いて、ジンは耳元で囁く。
「美癒ちゃんは処罰されないよ。僕が責任を持つから安心して。」
ジンの言葉に安心しながら帰りの船に乗って冷静に考えてみると、異界の山でカンナの父親と歩き進んでいた時、美癒にとっても気になる点があった。
真っ白の景色も山道も見覚えがあり、一度通った事があると思った。
美癒の記憶にはないあの日、自分が異界の山に行っていたのだから見覚えがあって当然なのかもしれない。
それに山なんてどこも同じような光景だろうから、気のせいなのかもしれない。
だがトオルを見た初めの印象もなんとなく会った事があると思った。
彼の独特な声は聞き覚えが無かったが。
そして、自分が使ったと思われる魔法。
あの光はとても懐かしいような・・・。
でもあの光を思い出すと何故か苦しい気持ちになった。
そこで美癒は一つの可能性を考えた。
(前にジン様から聞いた、魂が入れ替わった姉妹の話。
ひょっとしたら、それは私のことじゃないかしら?
妹として生まれるはずだったのに、直前で姉になってしまい生まれる事が出来ず、私はここにいるの?
ーーーいや、違う・・・ジン様の話では、魔法を使えたのは最初の姉の方だ。入れ替わって今は妹になってるはず。だから辻褄が合わない。私には全く覚えがない話だけど、無関係なは思えない・・・。)
美癒の考えは、正解に近いようでハズレ。
答えに辿り着く事が出来ず頭を抱え続けるしかなかった。
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