夢で出逢う - meet in a dream -

LikuHa

文字の大きさ
22 / 121
第2章

第22話 フラグメント

しおりを挟む

「カンナ!お父さん手術中だったんだね。助かったんだ・・・本当に良かった!!」

【あの世】に行く寸前で手術が成功したのだろうと大喜びする。

「うわーん・・・美癒ちゃん~!ありがとう!!」

ずっと泣いていたカンナ。

状況を早期に理解し、再び流れ出る涙は嬉し涙に変わっていた。

「そんな単純は話では無いよ。君のお父さんは脳出血で倒れて手遅れの状態だった。【あの世】の扉を開く直前だったんだからね。
みんなも見たと思うけど、眩しい光が彼を包んだ事が原因だ。」

ジンの話を聞いて、みんなは一斉に美癒を見る。

(え?何でみんな私を見るの?)

何が何だか分からない美癒は、琉緒の方を見た。

目が合うと琉緒はゆっくり首を左右に振って目線を下げた。

「美癒ちゃんは光が自分から発せられたって自覚は無かった・・・の?」

カンナが尋ねる。

「私から発せられた!?そんなワケ・・・。」

自分にそんな事が出来るはずがない、仮に本当に自分がしてしまったのであれば大変な事だと思い、美癒はジンに助けを求めた。

「美癒ちゃんからは魔力の痕跡を感じる・・・。美癒ちゃんが【この世】に魂を戻したんだ。」

「確かにカンナのお父さんには生きて欲しいって思ったし、光った・・・でも私は魔力を持っていません。」

「俺も見たぜ。美癒が手を伸ばして、魂を操っていた。」

近くにいた男子が口を挟み、周囲も頷く。

「私に魂を操る力があるっていうこと?信じられない・・・。」

続いて頷くジンと琉緒。

美癒は自分の事なのに全く意味が分からず、両手を見つめる。

試しに琉緒に向かって手を伸ばしてみた。

(琉緒の魂よー!出てこーい!)

念じてみる。

「・・・今俺に向かって何かしてんの?」

「うん、魂出てこいってやってみたけど、何も起こらないよ。」

「ははは、美癒ちゃん面白いね。美癒ちゃんが魂を動かすには、まだコントロールが未熟なんだと思う。だから簡単には使えないのかもね。
この話は改めて個別でさせてもらうとして、とりあえず保留って事にしておこうか。」

そう言ってジンは、ザワついている皆を鎮めて
「今日は終わりだ、帰ろう。」と声をかけた。

カンナが美癒に何度もお礼を伝えるが、美癒は首をかしげるしかなかった。

そして、大変な事をしでかした自分にお咎めが待ち構えているのではないかと不安に思い
「身に覚えのない事で処罰されるのは納得がいかない・・・。」
と、つい口に出して呟いてしまった。

そんな美癒に気付いて、ジンは耳元で囁く。

「美癒ちゃんは処罰されないよ。僕が責任を持つから安心して。」

ジンの言葉に安心しながら帰りの船に乗って冷静に考えてみると、異界の山でカンナの父親と歩き進んでいた時、美癒にとっても気になる点があった。

真っ白の景色も山道も見覚えがあり、一度通った事があると思った。

美癒の記憶にはないあの日、自分が異界の山に行っていたのだから見覚えがあって当然なのかもしれない。

それに山なんてどこも同じような光景だろうから、気のせいなのかもしれない。

だがトオルを見た初めの印象もなんとなく会った事があると思った。

彼の独特な声は聞き覚えが無かったが。

そして、自分が使ったと思われる魔法。

あの光はとても懐かしいような・・・。

でもあの光を思い出すと何故か苦しい気持ちになった。

そこで美癒は一つの可能性を考えた。

(前にジン様から聞いた、魂が入れ替わった姉妹の話。
ひょっとしたら、それは私のことじゃないかしら?
妹として生まれるはずだったのに、直前で姉になってしまい生まれる事が出来ず、私はここにいるの?

ーーーいや、違う・・・ジン様の話では、魔法を使えたのは最初の姉の方だ。入れ替わって今は妹になってるはず。だから辻褄が合わない。私には全く覚えがない話だけど、無関係なは思えない・・・。)

美癒の考えは、正解に近いようでハズレ。

答えに辿り着く事が出来ず頭を抱え続けるしかなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。 だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。 車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。 あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さくら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

処理中です...