夢で出逢う - meet in a dream -

LikuHa

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第2章

第24話 フラグメント

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ジンから補佐役のスカウトを受けて1週間以上経ったある日、美癒は保育科の実習に向かっていた。

保育科の実習は選択制のため、受けない生徒も多い。

琉緒も受けない生徒のうちの1人・・・のはずだった。

「何で今更になって保育科の実習を受けるの?」

「美癒だって、神使任務に就くって決まったんだから受ける必要ないだろ?」

「私は子供が好きだから実習に行きたいだけだもん。それにわざわざ私と同じ保育施設を選ばなくてもいいのに・・・。」

「精神年齢が同じだから楽しいんだろ?」

「・・・私の働きっぷりを見て驚くんじゃないわよ?」

「ふっ、俺が子供なら美癒には育てられたくないね。」

「私だって琉緒には育てられたくないわよ!まぁいいわ、保育実習に関しては私の方が先輩なんだから、分からないことがあったら助けてあげる。」

「へいへい。」


保育施設に着くと子供達全員が大喜びで美癒を囲う。

0歳~5歳まで20人もいない小さな保育施設である。

活発な5歳のユウが飛び跳ねながら美癒を引っ張る。
「みゆー!早く俺と恐竜ごっこしようぜ!」

長い髪でお姫様みたいな5歳のナオも美癒を引っ張る。
「だめだよ!前回帰る前に私と色水して遊ぶって約束したもん!」

動物が大好きな4歳のマサがユウを引き離す。
「僕だって前回ティッシュ投げが途中で終わっちゃったんだから、僕の続きからだよ!!」

小さい2歳のトモが他の子達に埋もれながら呟く。
「・・・お馬たん、して。」

他の子達も、美癒と遊ぼうと必死に訴える。

「空の世界ごっこしよー!」「鬼ごっこしよー!」「お馬たん」「俺はプテラノドンになって飛ぶんだい!」とワイワイ騒いでいる。

「ふっ、やっぱり美癒は子供に混ざってても違和感ねぇな。」

「褒め言葉として受け取るわ。・・・みんな~!今日は初めて来るお兄ちゃんを紹介するよぉ!琉緒兄さんです!!」

「「「ルオ~!」」」

「お・・・おう・・・。」

「じゃ!私は先に先生の所に行かなきゃいけないから先に琉緒お兄さんと遊んで待っててね~!!」

(ふふっ琉緒がどれだけ子供と遊べるのか、お手並み拝見ね。)

ちょっと琉緒に意地悪したくて、先に雑務を終わらせようと先生の所へ向かった。

「アイ先生、こんにちは!連絡で伝えた通り琉緒と来ました。琉緒は子供達と遊んでます。私は先に掃除を済ませて来ますね。」

「いらっしゃい。わざわざ掃除してくれるなんて・・・助かるわ、ありがとね。終わったら子供達の体調チェックをお願いしていいかしら?」

「はい!」

美癒はせっせと掃除を始める。

(今日は一段と子供達の声がにぎやかだなぁ~。すごく楽しそうな声。)

騒がしい声や物音に、居心地の良さを感じた。

(菜都も”保育士になりたい”って言ってる時期があったなぁ。私達性格は全然違うけど考える事は似てるんだよね~。)

掃除を進めていくと、ズボンがピンッピンッと引っ張られる。

「ん?・・・トモ君!どうしたの??」

下を向くトモが美癒のズボンを引っ張っていた。

「みゆ、探した。」

「そっか、手を洗うからちょっと待ってね。」

慌てて手を洗い、抱っこする。

「ちょうど掃除が終わったとこなんだよ~。」

「お馬たん、して。」

「いいよー!はいっ!!」

美癒が馬の真似をして、トモを背中に乗せる。

「行き先はどこですかー?」

グルグルと歩き出す。

「・・・そらのせかい。」

「ん?」

「そらのせかいに連れて行って。」

小さな声で訴えるトモ。

「何で【空の世界】に行きたいの?」

「トモのパパ、馬に乗ってる。そらのせかい、戻りたい。」

(そっか・・・【空の世界】にいた時みたいにもう一度【この世】のお父さんを見たいんだ。)

「ここでもトモ君のパパがモニターで見えるか、先生に相談してみるね。私は【空の世界】の記憶が無いから覚えてるなんて羨ましいよ。」

「みゆ、そらのせかい覚えてないの?」

「うん。結構みんな覚えてるのに、私は全然覚えてないの。」

「いいな。でもぼく、覚えてるから、逆に寂しい。」

「そうだよね・・・。でもトモ君にはここにいる皆が家族だからね!」

そう言いながら、美癒はトモと一緒に皆の所へ向かう。

子供達の楽しそうな騒ぎ声がどんどん近付く。

ドアを開いて美癒は仰天した。

琉緒の魔法で、ユウが飛び回り「プテラノドンだー!」と大はしゃぎ。

ナオとユウの要望で色水を結晶のように散りばめてもらい、色のついたシャボン玉やティッシュが愉快に飛び回っている。

そして、琉緒のとても楽しそうな笑顔から美癒は目が離せなかった。

「おートモ!どこ行ってたんだよ。ほら丁度いい大きさの馬のぬいぐるみが見つかったから動かしてやるよ。」

トモに向けられた笑顔が、自分に向けられたように錯覚を起こして顔が熱くなっていく。

トモは寂しそうだった表情から一転し、明るい笑顔を見せて美癒の腕の中から飛び降り、琉緒の元へ駆け出す。

「お馬たん、探しくれてたー!」

(な・・・なんだ、琉緒って子供と遊べるじゃないの・・・。いつもすました顔をしてる癖に、この笑顔は反則・・・。)
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