夢で出逢う - meet in a dream -

LikuHa

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第2章

第28話 美癒と菜都

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*-*菜都 side story*-*

自分の中で引っかかっている記憶を、分かる範囲でノートに殴り書きをした。

今までは事故を理由に逃げていた。

だが、初めて会ったはずの琉偉の兄を見て、思い出さないといけない・・・向き合わないといけないと確信した。

電話の子機を自分の部屋に持って来て、琉偉の自宅に電話をかける。


~~~♪♪
「はい、浜田です。」

(わっ。お母さんが出た!)

「もしもし、琉偉君と同級生の土田です。琉偉君はいますか?」

「ちょっと待ってね。」

「もしもし菜都?どうした??」

「無事に帰れたか心配で、それと今日はありがとうって言っておきたくて・・・。雨も降ってきたよね?風邪ひいてない?」

「大丈夫だよ、琉緒が傘持って来てくれたから。それより無理せず早く寝ろよな?」

「うん、分かった。・・・お兄さんにもビックリさせちゃったから謝りたいんだけど・・・。」

「わざわざ良いのに、気を遣ってくれてありがとう。ちょっと待ってて。」

そう言って、琉偉は兄を呼んでくれた。

「もしもし?」

「もしもし、菜都です。今日は声をかけてくれたのにご挨拶もできず、すみませんでした。」

「そんな事いいのに~、気にしないでね。じゃあ、琉偉に変わ-ー」

すぐ琉偉に変わろうとする琉緒を、菜都は引き留める。

「あ!ちょっと待って下さい!あの・・・えっと・・・私と会った事ありませんでしたか?多分、割と最近の事だと思うんですけど。」

「・・・・・・さあ?キミとは初めましてだよ。じゃあ、琉偉が拗ねるから変わるね。」

短い沈黙の後、琉緒は答える。

(初めまして・・・?じゃあ琉緒と過ごしたこの記憶はなに?もっと詳しく、私が思い出さなきゃ!)

「もしもし、俺は別に拗ねてないから。じゃあまた明日な!」

電話を切ったあと、再び考え込んだ。

記憶の中では、琉緒と同級生で一緒に学校に通っていた。

しかし今の日常とかけ離れているため、
それが夢なのか……パラレルワールドなのか……答えに辿り着かない。


ーコンコン


部屋のドアが弟の大翔によってノックされる。

「香織が来てるよー。」

「香織が!?すぐ行くね!」

慌てて玄関を出ると、笑顔の香織が立っていた。

「えへへ、来ちゃった。調子はどう?」

「大丈夫だよー。心配かけてごめんね。」

菜都は香織に抱き着く。

「最近元気ないから放課後一緒に遊ばなくなったし、夜に会うの久しぶりだね。」

「そうだね、久々に夜の公園行きたくなってきちゃった。ちょっと付き合ってよ。」

「え・・・?うん・・・私は良いけど、大丈夫なの?」

「??大丈夫だよぉー。」

変なおじさんとの事件があって以来、菜都はあまり公園に近寄らなかったので、香織は不思議に思った。

事件について吹っ切れたのか?
もし克服できたのなら敢えて聞かないでおこうと思い、そのまま公園に向かった。

公園に近付くと、壁に向かってサッカーボールを蹴っている人がいて、香織は目を輝かせた。

「近藤君がいる!!!」

「後ろ姿でよく分かったねぇ。」

「当たり前じゃーん!」

香織は近藤君に向かって走り出す。

菜都はゆっくりと近付いていく。

「キャー!!怪我してる!どうしたの?」

「あぁ、何ともないよ。」

「絆創膏買ってくる!!ごめん菜都、ちょっと待ってて!」

コンビニも近いし、香織についていこうと思ったが、嵐のように走って行ったため間に合わず、この場に残った。

近藤君は菜都に見向きもせず、ボールを蹴り続ける。

「どこを怪我してるの?」

「べつに。」

「転んだの?」

「違う。散歩してる犬を触ろうとしたら、引っ掻かれただけ。」

「ふふっ犬好きなんだ。」


菜都はベンチに座って、近藤君の後ろ姿に向かって微笑む。

「・・・ちょっと前に事故したんだって?」

「そうそう。怪我はもう治ってるから何ともないけどね。」

と、返事をすると
動きを止めた近藤君が振り向き、ここに来て初めて目が合った。

ボールが転がって行く。


「・・・・・あんた誰?」

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