夢で出逢う - meet in a dream -

LikuHa

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第2章

第33話 美癒と菜都

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(初めて会った時。
サッカーに誘ってくれた。
近藤君からボールを取れなくて、からかわれてたなぁ。
プロサッカー選手になるって100回くらい聞いた気がする。

公園でアイスを食べている時。
通りかかったら絶対にバカにしてきたよね。
そして、たまに奢ってくれた・・・決まってスイカバーを。

高校受験に悩んでる時。
先生の言う事なんか聞かずに、自分の行きたい所を目指せって言ってくれたね。
高校受験する前に私はいなくなっちゃったよ。
あんなに悩んでたのになぁ。

変なおじさんに連れて行かれそうになった時。
近藤君がいなかったらと思うとゾッとする。
私に「守るから」とか言っちゃったせいか、よく気にかけてくれてたなぁ。

近藤君は私がいなくなってからも、気付かずに日常を過ごしているんだろう。
私は、近藤君の事を全然知らないけど、沢山助けられてきた。
きっと香織も泣いている。
今度は私が・・・何としても私が助けてあげたい!!!)

不安に押しつぶされないように必死に自分を言い聞かせる。

近藤君を見ると、涙がこぼれてしまいそうだった。

(泣いている場合じゃない!泣くな!泣くな!!!行くぞ!!!!)

近藤君は、胡坐をかいて座ったまま動かない。

美癒は背後から近付き、真後ろに立った。

美癒は近藤君の肩を、ちょんちょんっと突く。

肩をビクッと震わせたが、振り向く様子は無い。

「ねぇ、何でこんな所に来てるのよ。」

「・・・・。」

「プロになるんじゃなかったの?」

「何でそれを・・・ーーーーー!?」

近藤君が振り向き、美癒を見て驚く。

「土田先輩・・・。」

「え?」

美癒も近藤君に負けないほど驚いた。

「土田先輩こそ、こんな所で何してんすか?それにその恰好・・・?」

「あ・・・いやっ・・・。え、何で分かるの???」

「ははっ、分かるわー。」

(嘘だ、分かるはずがない・・・。容姿はどちらかと言えば似ている方だが、普通は分からないよ。)

「丁度さっきも土田先輩に会ってた。けど、俺が知っている土田先輩じゃなかった。顔は同じなのに・・・あれは一体誰なんすか?」

何でそんな事が分かるのだろう、と驚きながら返答に困った。

「あー・・・私達、姉妹なんだけど入れ替わって・・・。」

(この事、言ってもいいのかなぁ・・・?)

「土田先輩に姉さんがいるなんて知らなかった。でも何でこんな所に?」

「私もついさっき菜都だった時の記憶を思い出したばっかりだから、整理できてないんだけどさ・・・って、ごめん。あんまり時間が無いの。」

「時間って?」

「近藤君、すごい怪我してると思う。でもまだここに来たら駄目だよ!
私が何とかするから・・・戻してあげるから!!!」

「・・・あぁ俺やっぱり刺されたんだよな。ここ、夢じゃないのか。」

「夢だよ。だから大丈夫、安心して。」

・・・と、言いつつも本当に自分が何とか出来るか分からない美癒は不安を隠す事に必死だった。

(近藤君を不安にさせたらいけない。近藤君にとって、これは夢で終わらさなければ。)

「・・・土田先輩は?」

「わたし?」

「一緒に戻ろう。」

「ーーーッ!!!」

美癒は目を合わせられずに俯く。

「わたし・・・は、戻れない。」

「何で?」

「本当の私は姉の美癒だから。今まで菜都の人生を奪って生きてきてた。
今回入れ替わって、やっと菜都に身体を返してあげる事が出来たの。」

「さっき会った別人の土田先輩は、それを望んでいない。」

「え?」

「俺には分かった。自分を・・・”姉の美癒”を返して欲しいと思っているはずだ。」

(美癒の身体を返して欲しい・・・?でもそれは近藤君の憶測にすぎないでしょ・・・。)

「もういいから。目を瞑って。」

「土田先輩!!聞けって!!」

「いいの!!!!」

俯いていた美癒が顔を上げて声を張り上げた。

そんな美癒を見て、近藤君は固まった。

「泣いて・・・?」

同時に美癒は近藤君に向かって両手を伸ばす。

ピカッーーーーー!!!

(この眩しい光・・・、イケる!成功したんだ。)

近藤君の顔が光に包まれて見えなくなっていく。

「近藤君・・・私の名前は美癒だからね。それじゃあ元気で。」

眩しい光の中で最後に見えたのは、
近藤君の切ない表情と美癒に向かって伸ばした手だった。

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