夢で出逢う - meet in a dream -

LikuHa

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第2章

第36話 暁闇

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「そんなっ・・・!勝手な事をしたら、また琉緒はジン様を軽蔑する・・・。」

「僕の作った魂がこのような結果になったがために、【この世】の琉緒もいつ支配から離れて暴走するか分からない。だから琉緒の魂を戻す事に僕は急いでるんだよ。」

「琉緒の魂を戻す?通り魔に刺されるのに琉緒の命は助かるんですか?」

 「そのことなんだけど、【この世】の琉緒に動いてもらう理由はもう一つあるんだ。
美癒ちゃんはまだ魔力を上手くコントロール出来ていない。
【この世】の人物の魂が身体から出ていないと魔法が使えていないのが現状だ。
だから琉緒の魂を一旦身体から出す必要がある。
通り魔に刺されたあとは異界の山に導かれるからそこで美癒ちゃんの出番。本物の琉緒の魂を戻して欲しいと思っているんだ。」

(私の力が足りないから、琉緒の魂を戻すには一度死にかけるしか・・・この方法しか無いんだ。自分勝手だけど琉緒が【この世】に戻ることには反対だった。けど支配から離れた魂は危険だから、これは従わざるを得ない状況だよ・・・。)

頭では分かっていても返事が出来ず黙っていると、ジンは謝りながら頭を下げた。

「こんな形になってしまい、本当に申し訳ない!だが事態を収拾しなければ危険な状況なんだ。被害者が多く出てしまう!」

「・・・こんな状況で、神様は何もしてくれないんですか?」

「神様に頼るのは・・・最後の手段だ。」

神様は世界が滅びないように様々な命を作り続けなければならない。

この件で魔力を多く消費すると、未来の世界に影響が出てくる事を考慮しての事だろう。

「・・・深刻な事態ですし、考える時間なんて無いですよね。分かりました、協力します。補佐役にもなります。」

「そうか・・・ありがとう・・・、本当にありがとう。」

(これしか方法が無い。ジン様のシナリオが一番最善だと思う。
・・・でも琉緒は、身体を返されて困るって思うかもしれないーーー)

琉緒が反対する事は分かっていた事なので、ジンは美癒に固く口留めした。

美癒とジンは部屋に戻るために歩き出した。

「ちなみに、他にもジン様が作った魂はあるんですか?」

「いや、琉緒とゼロだけだよ。」

「ゼロの本当の魂はどこにいるんですか?」

「・・・狡猾なヤツだった。本人が生まれたくないと言うから、作り物の魂と交換してやった。そして僕と同じ神使任務に就いてとても優秀だったのに、あるとき神様の魔力を狙ったんだ。初めから計画的だったのかもしれない。勿論その後は神様に魔力を吸い取られて【あの世】に行ったけどね。
【空の世界】に来た様子もないから、まだ生まれ変わる事も出来ないんだろう。」

「本物の魂もクソだったんですね。」

「はっはっは、そうだね、クソだ。」

「【この世】のゼロがどこにいるか心当たりはあるんですか?」

「分からない。もともと琉緒や菜都ちゃんの近くに住んでたんだけど、県外へ出て行った途端に支配から外れて行方知らず。」

「近藤君を刺したって事は、県外から戻ってきたんですね。」

「そういうこと。ゼロが彼を狙ったのは理由があるのか、もしくは偶然なのか・・・調べる必要がありそうだ。なんにせよ次の被害者が出ると危険だから急がないといけない。」

(じゃあ、琉緒と過ごせるのも・・・ゼロと対峙するまでなんだね。)

急がなければいけない事は分かっているが、心は思い通りにいかない。

美癒は、菜都だった頃に経験した当たり前の時間が無くなる辛さを知っている。

例えどんなに頑張って琉緒との時間を大切に過ごしても、必ず後悔はするだろう。


美癒とジンが部屋に戻ると琉緒はまだ眠っていて、美癒はほっと一安心した。      

「美癒ちゃんが補佐役を引き受けてくれるって事は、琉緒も引き受けてくれるって事だろうから手続きさせてもらうね。それじゃあ今日はこれで帰るよ、ゆっくり休んでね。」

先程までの弱ったジンが嘘のようにいつも通りに戻ってジンは去って行った。
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