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第2章
第43話 暁闇
しおりを挟むサヤは大きな扉に向かって進んで行く。
ユースケはすぐに反応できず、我に返った途端に慌てて立ち上がりサヤの背中を追う。
「待って!!」
扉の目の前まで来ているサヤの腕を掴む。
「俺も、一緒に行くから・・・。」
「え?」
「今までよく頑張ったな。無理に生き返らそうとしてごめん・・・もう一人にはさせないから・・・行こう。」
そう言ってユースケ自らが扉に手をかける。
サヤの瞳は涙であふれ出した。
「美癒、琉緒・・・悪かった。ありがとな!」
振り向いてニコッと笑い、ジンに向かって一礼したあと扉を開く。
扉の奥からは眩しい光が溢れており、2人はそのまま光の中へと消えて行った。
そして扉がゆっくりと閉じていく。
パタンーーー。
「美癒・・・泣くなよ。」
「ヒックッ・・・ヒック・・・何も、できなかっだ・・・。」
「何もできなくてよかったんだよ。サヤちゃんのためにもね。」
琉緒が背中をトントンしてくれている。
ジンも励ましてくれたあとはトオルさんとその後の処理を済ませてくれた。
美癒は今回魔法が使えなかった件で、自分の力が信じられなくなっていた。
カンナのお父さんの時も自分が魔法を使ったという実感はなかった。
気が付いたら魔法が使えていたのだ。
「トオルさん、扉の前で待っててくださり有り難うございました。それでは僕達はこれで帰りますね。ご苦労様でした。」
「とんでもございません。お疲れ様でした!」
美癒と琉緒はトオルに向かって頭を下げて、ジンと共に異界の山を去った。
「美癒ちゃんが泣き止んで良かった。学校に戻らずにこのまま部屋に送ればいいかな?」
「俺がいるんだからお前はいいよ。」
「そう?じゃあ僕は方向が違うからここでお別れだ。」
「あ、忙しいところ有り難うございました。最後にすみません、ユースケみたいに【水の世界】の人が異界の山の扉をくぐったらどうなるんですか?」
ジンには、看視実習で見た【この世】の琉緒の行動について聞きたいことがあったが、今はそれどころではなかった。
「もちろん同じように【あの世】に行くよ。ただ、その先は・・・どうなるんだろうね?あの扉の先に待ち構えているものは人それぞれ違う。サヤちゃんが自殺だから・・・楽な道のりではないと思うよ。」
「そんな・・・なんとかならないんですか?」
「結論としては、僕たちにはどうすることも出来ない。」
意外と冷たく断言するジン。
「みんなは死んだら【あの世】に行って終わりだと思ってる。
でもそれは間違い・・・終わりじゃない。【あの世】が本当の世界なのだから・・・。
簡単に言えば【この世】で人生のテストを受けた者たちが、【あの世】で答え合わせをする。
テストなのだから合格する者もいれば補習が必要な者もいる。
サヤちゃんは後者になるだろうから、地獄と言う名の補習が待ち構えてるだろう・・・
でもユースケ君が一緒だからきっと大丈夫。
【あの世】を乗り越えたあとにまた生まれ変わった魂が【空の世界】に来ることを信じよう。」
「・・・?そうですね、無事に生まれ変わって今度こそは2人とも良い人生を送って欲しい・・・。」
美癒の頭はジンの説明の半分も理解できていなかった。
「美癒ちゃんも疲れ・・・泣き疲れたと思うから、早く帰ってゆっくりしてね。」
「はい。今日は本当に何も役に立たなくてすみませんでした。」
「はははっ良い勉強になったんじゃないかな?ね、琉緒。」
「あぁ、俺はもともと自殺したやつを生き返らすなんて反対だったんだ。ユースケとだって今まで全然話したこと無いのに急に頼って来やがって・・・話はもう良いだろ?帰るぞ。」
「ユースケとはもう会えないんだよ!?そんな言い方しなくても・・・それに私は頼られて嬉しかったんだもん。実力は伴わなかったけど・・・。」
「琉緒、あんまりイライラするんじゃないよ。美癒ちゃんじゃあね~。」
「お気をつけて!失礼します!」
美癒は琉緒に引っ張られるまま、ジンと互いに手を振って別れた。
(私、大丈夫かな?琉緒を【この世】に戻すときもサヤちゃんの時と同じように迷いがあったら・・・ーーー。)
美癒の不安はどんどん大きくなっていった。
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