58 / 121
第3章
第58話 境界線
しおりを挟む琉緒にはゼロについて秘密にしていたということをすっかり忘れていた2人。
美癒ならまだしもジンがこのような過ちをするなんで意外だった。
「ゼロは僕の知り合い、だから気にしないでいいよ。それと”担当もあと少し”っていうのは2人の今後のことなんだけど、もう少ししたら2人ともこっち側(空の世界)で任務が始まるからね。」
ゼロの件で慌てた美癒だったが、今の任務に終わりが見えたことにより瞳が輝き笑顔になる。
「新人は今の任務が1年以上続くはずだ。普通じゃ有り得ない早さでの異動だな。」
琉緒はゼロの件に触れなかった。
後者の話の方が気になったからだ。
「この大出世は、美癒ちゃんに感謝するんだね。美癒ちゃんは魂を操る練習を繰り返して欲しい。琉緒は・・・美癒ちゃんのお世話役だよ。」
「は?それは俺の無駄遣いじゃないのか?」
琉緒が呆れた顔で言い返す。
「うわーん!!今の任務にやっと終わりが見えたよぉ~!
それに琉緒も一緒だなんてすごく嬉しい!!ジン様、ありがとうございます!!!」
「うわっお前ガチ泣きじゃねーか。」
「琉緒には私の気持ちが分かんないよ。」
美癒は琉緒に近付き抱き着く。
「・・・お前なぁ。俺に鼻水をなしりつけてるだろ。」
「えへっ。」
「きったねぇー。」
そんな美癒と琉緒を見ながら微笑むジン。
「今日は時間をあげるから、ここで好きに魂達と交流して良いよ。
このゾーンは、人間に生まれる魂ばかりだ。
生まれるまで期間がかかる。
・・・向こうの川を越えると、人間以外の生き物に生まれる魂達がいる。
人間以外の生き物は、すぐ生まれるから回転が早い。
2人はあまり関わってくる事はないだろうから、川の向こうには行かないでね。
それとあくまで、交流だけだからね。
ーーーそれじゃあ僕は忙しいからまた今度。」
そう言ってジンは去っていった。
「自由にしていいだなんて!遊びに来ただけみたいで、ワクワクするね!」
「そうかー?急に交流してもいいって言われてもなぁ。」
全く乗り気で無い琉緒を睨み、歩き出す美癒。
琉緒はその後ろに続いて歩きはじめた。
「なによ、ついてこないで。」
「お前は何するか分からねーからな。お世話役させられるくらいだから見張っとくわ。」
意地悪を言う琉緒を、美癒は睨みつける。
だがその睨んだ顔は琉緒にとっては全く怖くない、むしろ愛らしい顔だった。
「今日は”交流”が目的なのー!お世話役なんてしてる場合じゃないでしょ。」
「いや、俺は交流が苦手だから。」
「・・・ぷっ。」
開き直る琉緒を見て噴き出す。
「そういえば、琉緒と昔の美癒って何で仲良くなったの?私の記憶の中になくってさ。」
「俺もあんまり覚えてない。」
「何それ?本当に覚えてないの?」
「あぁ。俺は1人でいるのが好きだったんだけどな。
中学になってすぐにある【この世】への遠足を境に、美癒がそばにいるようになった。」
「え!?【この世】に行った事あるの!?初耳なんだけど。」
「みんなある。普通はこれが【この世】へ行く最初で最後の日だ。」
「なーんだ。初めてだと思って、色々案内してあげたかったのに。」
「でも全然覚えてないんだよ。【あの世】と【この世】を行き来すると記憶は混乱しやすいらしいからな。」
「確かに、私も美癒になって暫くは菜都だった頃の事も忘れてた。」
「そーいうことだ。さ、この話はこれでおしまい。俺と美癒が交流してたら意味ないだろ。」
「ははっ、そうだね。そういえば琉緒が最近担当してここに来た魂もいるんじゃないの?」
辺りを見渡す。
「まあまあいるな。」
最近はゴ●ブリになる予定である どす黒い色をした魂のとしか関わってなかったため、多彩な色の魂に興奮する。
「あの魂、紅藤色で綺麗。菜都と、弟の大翔と同じ色なの。」
「へぇ~。あまり見かけない色だな。」
「うん、大好きな色。ちょっと話しかけちゃおー。」
美癒は紅藤色の魂に向かって駆け出した。
もちろん琉緒もその後を追う。
0
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さくら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる