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第3章
第63話 直面
しおりを挟む(シャワーでも浴びてるのかな?)
美癒は水が流れる音が止まるまで、その場で待つ事にした。
いつも琉緒が美癒の部屋に来るため、琉緒の部屋に行く機会は少なく新鮮だった。
柔らかそうなソファーに腰を掛け、机の上にあった情報誌を見ながら時間を潰した。
暫く経つと、水が流れる音が止まり部屋のドアが開いた。
「うぉっ、びっくりした。」
「お邪魔しまーす。」
琉緒に目を向けずに情報誌を見たまま棒読みで言う。
「珍しいな、俺は今日疲れてるから早く寝るぞ?」
「そうなの?大丈夫??」
パッと情報誌から目を離して琉緒の方を見る。
琉緒はフッと笑って「大丈夫」と返事をしてベッドに腰掛けた。
「疲れてるならまた明日でいいや、帰るね。」
「ん?何か話があったのか?」
「ちょっとね。でもただの世間話だから。」
「少しくらい話せる。」
「え・・・でも・・・。」
「美癒が来るなんて珍しいからな、少しゆっくりしていけば?」
少し迷った美癒だが、早く話して早く帰った方が良いと思い、話を続けた。
「テル先輩がさ、珍しく話しかけてくれたの。」
琉緒はベッドに横たわり片手で肘をつきながら黙って美癒の話を聞く。
「任務以外で話した事がなかったから意外でさぁ。それに何か話したそうに腕を掴まれてビックリして逃げてきちゃった。」
琉緒の眉毛がピクリと動く。
テルの行動には心当たりがあったのだ。
美癒といつも一緒にいる琉緒は、任務中にテルと目が合う事が多かった。
つまりは美癒に近付く機会を伺っているのだと予想し、睨み返していた。
(邪魔な奴が現れやがって・・・。)
琉緒は起き上がり、ベッドから降りて美癒の隣に腰掛ける。
相槌すらしない琉緒のことを美癒は目で追っていた。
(何でなにも言わないんだろう?)
すると隣に座ったまま美癒の腰に両腕を回して抱き着きながらもたれかかってきた。
「琉緒?」
「やっぱり眠みぃ。」
そのまま琉緒は目を瞑る。
身動きが取れなくなった美癒は、肘掛けにもたれかかり楽な姿勢をとった。
そして片手で琉緒の頭をよしよしと撫でてみる。
(テル先輩のことは話せたし、もう何も気にしないでいいよね・・・?)
「・・・邪魔だなぁ。」
「ん?」
「服・・・。」
そう言って琉緒は目を瞑ったままモゾモゾと美癒の服の中に手を入れて再びギュッと強く抱きしめた。
「ひゃっ冷た!」
琉緒の手はとても冷たかった。
「あったけぇー。」
徐々に琉緒の手の力が抜けていくのが分かった。
そのまま眠りについたのだろう。
しかし両腕が離されることはなかった。
帰れないと思った美癒は、仕方がないからこのまま自分も寝てしまおうかと思い欠伸をする。
時間が経ちだんだんと瞼が下がっていきかけた時、突然全身に鳥肌が立った。
(・・・な、なに!?!?)
身体が小刻みに震えだし、全く身に覚えのない恐怖心が美癒を包み込む。
(こんなことは初めてだ・・・何かいやな予感がする・・・。)
疲れている琉緒を起こしてしまってはいけないと思い、自分を落ち着かせるため深呼吸を試みるが、震えは止まらない。
すると突然目の前にテルが現れた。
瞬間移動して来たのであろう。
琉緒の部屋にテルがいる・・・とても異様な光景だった。
テルは、琉緒が美癒に抱き着いて寝ている姿を見ると眉をひそめたが、すぐに真剣な表情に戻り頭を下げる。
「突然お邪魔して申し訳ない。ジン様から至急のお呼び出しだ・・・琉緒君と共に来てもらう。」
美癒は状況が全く理解できていないまま、寝ている琉緒とともにテルの瞬間移動でジンのオフィスへと移動していた。
ご丁寧に琉緒はジンのベッドに寝かせてもらっている。
「ジン様は【空の世界】にいるけど、すぐ帰ってくる。だから待ってて。それじゃあ・・・。」
何も説明がないままテルは姿を消した。
しかし考える暇もなくジンが帰ってきた。
「美癒ちゃん、任務のあとで疲れてるのにごめんね。」
早口で話すジンはとても慌てた様子だった。
苛立っているのか頭を掻きながら美癒に近付く。
「い、いえ・・・一体なにが・・・?」
ジンは美癒を見て目を見開いた。
「・・・震えてる。驚かせちゃったね・・・それとも何かを感じてるの?」
ソッと優しく美癒の肩に手を置く。
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