【完結】傷アリ令嬢と馬鹿にされてきましたが、真の価値には気づいていないみたいですね

早乙女らいか

文字の大きさ
23 / 28

23話 そこまでかばわなくても

しおりを挟む
「路頭に迷っていた所をディゼ様に拾っていただきました。今ではディゼ様が管理する研究所で一職員として働いております」
「ふぅん、職員ねぇ?」

 じっと頭を下げ続ける。
 そんな私にラブメア様は嬉しそうな声と共に近づいてくる。

「いつか没落するとは思いました。が、こんなに早く訪れるとは思いませんでしたわ」

 明らかな挑発。
 私の事はマゼンから色々聞いているはず。
 勿論、悪い内容ばかりだと思うが。

 傷アリの悪名はこんな所にも響いていたのですね。

「ラブメア、その辺にして頂きたい」
「あらディゼ、平民に固執するなんて珍しいわね。それとも彼女に惚れちゃった?」
「私にとって研究所の職員は大事な存在だ。それを侮辱されて黙っている私ではない」
「なぁるほど?」

 そんな私とラブメア様の間にディゼ様が割って入る。
 ディゼ様の声が少し冷たい?
 気のせいですかね。

「いいわ。平民のノエルなんて眼中にありませんもの」 
「馬車も来ている。ここからは歩きながらお話しよう」
「えぇー? もっとお話させてください~」
 
 甘ったるい声が凄く不快。
 男に媚びるような態度を見てるとイライラしてしまう。

「ふふっ……つまんないの」

 何かを飛ばされた。恐らくホコリか何か。
 頭を下げ続ける私に対して彼女の堪えたような笑いが聞こえてくる。

「ま、せいぜい己の醜さを実感するといいですわ」

 そして吐き捨てるような悪口と共にラブメア様は去って行った。

(疲れた……)

 貴族令嬢だった頃はこんな悪口が日常だった。
 今更何を言われても、怒ったり泣いたりするような私ではない。

 ただ疲れはする。
 聞き飽きたというか、単純に不快な言葉はいつまでたっても不快だ。

 できれば私だって聞きたくない。

「ノエル~!! あんなやつの言葉、間に受けなくていいからね?」
「わわっ!? あ、ありがとうございます」

 小さくため息を吐いた途端、後ろからエリスさんが抱きついてきた。

「罵詈雑言には慣れているのでご心配なく。まぁ、言われ続けると疲れはしますが」
「それは大丈夫じゃないねー。ゆっくり休も?」
「いえ、まだお昼ですから……」

 流石に中途半端な時間に帰るわけにはいかないので。
 ただ、エリスさんの純粋な優しさは安心する。

「だけどディゼ様、かなーり怒っていたね」
「え?」

 やっぱり怒っていたんですね……
 マゼンの時といい、ディゼ様って意外と感情豊か?

「確かに研究所を悪く言われて、何とも思わないお方ではありませんが……」
「いやいや、あれは個人的な怒りだね。ノエルの事を悪く言っていたし」
「私ですか?」

 ディゼ様は私の事をどうもよく見過ぎている気がする。
 地位はないし、顔に傷はあるし、才能もせいぜい特殊なポーションを作るくらい。

 え、もしかして私のポーションって凄い?
 顔の傷なんて気にならないくらい、私のポーションが魅力的だったとか?

 傷の部分を無視したと考えれば、今までの言動も納得できるかも。

「私の才能ってそこまで価値があるんですね。未だ実感できませんが」
「あー、うん……そうだけど、そうじゃない……」
「?」

 やれやれといった顔をするエリスさん。
 え、違うの?

 ディゼ様の価値観がますますわからない。
 彼の本心を理解できる日は来るのだろうか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

貧乏人とでも結婚すれば?と言われたので、隣国の英雄と結婚しました

ゆっこ
恋愛
 ――あの日、私は確かに笑われた。 「貧乏人とでも結婚すれば? 君にはそれくらいがお似合いだ」  王太子であるエドワード殿下の冷たい言葉が、まるで氷の刃のように胸に突き刺さった。  その場には取り巻きの貴族令嬢たちがいて、皆そろって私を見下ろし、くすくすと笑っていた。  ――婚約破棄。

婚約破棄された辺境伯令嬢ノアは、冷血と呼ばれた帝国大提督に一瞬で溺愛されました〜政略結婚のはずが、なぜか甘やかされまくってます!?〜

夜桜
恋愛
辺境の地を治めるクレメンタイン辺境伯家の令嬢ノアは、帝国元老院から突然の召喚を受ける。 帝都で待っていたのは、婚約者である若きエリート議員、マグヌス・ローレンス。――しかし彼は、帝国中枢の面前でノアとの婚約を一方的に破棄する。 「君のような“辺境育ち”では、帝国の未来にふさわしくない」 誰もがノアを笑い、見下し、軽んじる中、ひとりの男が静かに立ち上がった。 「その令嬢が不要なら、私がもらおう」 そう言ったのは、“冷血の大提督”と恐れられる帝国軍最高司令官――レックス・エヴァンス。 冷たく厳しい眼差しの奥に宿る、深い誠実さとあたたかさ。 彼の隣で、ノアは帝都の陰謀に立ち向かい、誇りと未来を取り戻していく。 これは、婚約破棄された辺境伯令嬢が、帝国最強の大提督に“一瞬で”溺愛され、 やがて帝国そのものを揺るがす人生逆転の物語。

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...