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2巻

2-3

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 ◆


 三人の剣術の師匠になって数週間が経過した。
 たまに兄さんが仮病けびょうで休む以外は、特に問題なく師匠をやれていると思う。
 ちなみに今日も兄さんはサボりだ。

「じゃあ、今日も素振りから始めようか」
「「はい、師匠!!」」

 パリスと姉さんが俺の号令に返事をして、素振りを開始した。
 あれ以来、俺の元師匠で現弟子のパリスは、俺に謎の忠誠心を示している。
 その入れ込み具合はとてつもないもので、冒険者をめて家に住み込みで働きたいと志願してくるほどだ。
 いくら弟子になるからと言っても、そこまでしなくてもいいと俺や父さんは言ったが、パリスはがんとしてゆずらず、説得は失敗に終わった。
 結果的に彼は、俺の弟子兼従者ということに……
 素振りが終わると、続いて打ち込みに入る。
 ただ、訓練内容は今までと大きく違う。
 前までは一対一で戦っていたのだが、今は俺対他という組み合わせでやっている。
 もし立場が逆だったら、古臭いしごきやいじめのような状況に見えるかもしれないが、この場合は特に問題ない。
 というより、あまりにも俺の成長が早すぎて、正直一対一では俺自身の特訓にならないのだ。
 師匠になったとはいえ、自分の研鑽をやめる気はないからね。

「はぁあぁ!」
「やぁ!」

 そんなことを考えている間にも、二人は交互に、なく斬撃ざんげきを繰り出してくる。
 俺は冷静にその一撃一撃を見極め、最小限の動きで木剣を振るい、彼らの攻撃をいなし続けた。
 そして、五分経ったら攻守交代。今度は俺の番だ。
 俺は多種多様な流派の剣技をぜて、二人に対して交互に、的確に打ち込んでいく。
 もちろん手加減ありだ。なるべくギリギリ受けられるくらいの攻撃を放ち、二人の防御力が向上するように調整している。
 それを二セット行なった後は、模擬戦もぎせんに移行する。
 もちろん模擬戦も、俺対他全員でやるが、今のところ負けたことはない。
 とは言っても、姉さんはまだ中級剣士だし、パリスも特級のままなので、負けないのが当然だけどね。
 二人は俺みたいに高速で成長するわけじゃないから、仕方ない。
 模擬戦が終わった後は、ひたすら型をやり、最後にもう一度素振りをして、朝の剣術稽古は終了だ。

「いやー、今日も勉強になりました、師匠」
「ルカ! 私も勉強になったよー!」

 俺は汗をぬぐうパリスと姉さんをねぎらう。

「パリスは呑み込みが早いから、すぐに王級剣士になれそうですね。姉さんは……うん、頑張ってたね!」

 パリスは、俺のように成長チートは持っていないものの、たぐいまれな剣術センスの持ち主で、普通の人よりも明らかに成長が早い。
 姉さんも光るセンスはあるものの、悲しいかな割と脳筋のうきん気味なので、俺の教えはほとんど理解できていないっぽい。それでも日々着実に強くなっているのだから、普通よりは早いペースで育っているのだと思う。
 汗を拭きながら軽く雑談をして、俺達は朝食を取るためダイニングルームに向かった。
 すると、稽古を病欠した兄さんがすでに着席していた。

「みんな、お疲れ様。早くご飯食べようよ」

 うん、いつもの兄さんだ。サボったことを微塵みじんも反省していない。でも、それでこそ兄さんって感じだ。
 兄さんは運動神経がない代わりに、姉さんとは真逆で頭が良い。
 それに、次期リーデンス子爵家当主だから、剣術なんてそこまで頑張る必要はない、と思っているのだろう。無理して短所を改善するよりも、長所を伸ばす方を優先するのは、一つの手である。なので、俺は口うるさく注意するつもりはない。

「兄さん、あまり連続でサボると、ご飯作らないからね?」
「なっ!? それはあんまりだろ、ルカ!!」

 もっとも、軽くからかうくらいはするけどね?

「それでは、皆様お揃いですので、配膳はいぜんを始めます」

 執事のセルがパンッと一つ手を叩いたのを合図に、メイド達が朝食を運んでくる。
 セルはみんな揃ったと言ったものの、今日もこの場に一人来ていない人がいる。

「母さんは、今日も体調悪いの?」

 俺は堪らず父さんに問いかけた。
 そう、いつも優しい笑みを浮かべている母さんがいないのだ。ここ三日、母さんは立て続けに自室で食事をしている。
 このところずっと食欲がなさそうだったし、なんだか調子が悪そうだ。
 俺はあまりにも心配だったから、治癒魔法ちゆまほうをかけてあげようとしたのだが、そこまでのことじゃないと断られてしまった。
 ここで俺が無理に言っても、母さんに気苦労きぐろうをかけてしまうだけなので、その場はいさぎよく引いたものの、やはり心配で仕方ない。

「ん? ああ、そのようだ。でも、安心しろ、今日の昼頃に医者を呼んだから、もう安心だ」
「よかった! 母さんのこと、心配だったから!」

 父さんから医者が来てくれると聞いて、俺達はひとまず安堵あんどした。
 どこの世界でも、こういう時に医者ほど頼りになる存在はない。
 早く母さんも一緒に、一家みんなでご飯を食べたいなあ……

「よし! 母さんの分まで僕達はしっかり食べよう」

 兄さんが軽口を言って、場が一気になごやかムードになった。
 あまりみんなで心配しすぎても、逆に母さんが気にして無理をしそうなので、我が家はいつも通りに明るくいこうってことだ。
 父さんも笑みを浮かべて頷く。

「ふふっ、そうだな。では、いただこう」

 そうして、俺達は普段通りに朝食をとった。
 いつもなら、すぐにみんなで母さんの様子を見に行くところなのだが、今日は母さんの体調が一段とすぐれないらしく、世話役のナージャ以外は部屋に入らないことになった。
 本当に心配だな。何もなければいいけど……
 気をまぎらわせる意味もあって、俺は普段通り納品分のポーション作りに没頭ぼっとうした。
 そうして、ポーション作りを終え、一旦屋敷に戻ろうと思って小屋を出た時、唐突とうとつに俺の名を呼ぶ声が聞こえてきた。

「ルカルド様ー! ルカルド様ー!」

 屋敷の方から物凄いスピードでアリーが走ってくる。
 あんなにあせってどうしたのだろうか、と思っていると、彼女がただならぬ言葉を口にした。

「奥様が……。奥様がぁ! 大変ですぅ!」

 か、母さんが大変? どういうことだよ!?
 いや、今は考えている場合じゃない。
 気づいた時には、俺は全速力で走っていた。
 こちらに向かって走ってくるアリーの脇をすり抜け、全速力で屋敷に向かう。
 すれ違いざま、アリーが〝ル、ルカ……〟と何かを叫んでいたようだったが、その言葉を最後まで聞いている余裕はない。彼女には悪いと思いながらも、俺は母さんのもとへと急いだ。
 数秒で屋敷に戻ると、一目散に、母さんがいる二階の部屋まで駆け上がる。
 部屋の中にはすでに、俺以外のみんなが勢揃いしていた。

「おお、ルカ。早かったな」

 中に入ると、父さんが真っ先に声をかけてくれた。
 しかしどこか嬉しそうな顔で、緊迫感きんぱくかんはない。
 おかしいな? アリーがかなり焦っていたから、母さんに何か良くないことでもおきたのかと思ったんだけど……
 怪訝けげんに思いながらも周りの様子を確認すると、みんな嬉しそうな、喜んでいるような、そんな表情をしている。
 その顔を見てようやく、俺は母さんに何か一大事があったわけではなく、病気ではなかったとわかったのだと、胸をろした。

「こんなに急いで来るなんて、ルカはそんなに私のことが好きなのね!」

 そう言ったのは、最近体調を崩していた母さんだ。
 見たところ、特に具合は悪そうじゃない。
 それにしても、何故アリーはあんなに慌てて俺を呼びに来たのだろうか?
 病気じゃないとわかったのは嬉しいし、とても喜ばしいことではあるけど、それにしたって、あの言い回しは少しおかしいよな? 俺が勘違いするのも仕方ないよ。
 ん? いや、待てよ? 体調を崩していても病気じゃないって……
 でも、そんなまさか……

「ルカ、聞いて驚け。実は、お前に弟か妹ができるんだ!」
「うぇっ!?」

 俺がある可能性に思い至ったのとほぼ同時に、父さんから考えていたことと同じ内容の話を聞かされ、変な声を出して驚いてしまった。
 そ、そうか……ついに俺に弟か妹ができるのか……
 つまり、俺はこれからお兄ちゃんになるんだな……
 そう考えると、こらえきれずに顔がにやけてしまう。そんな俺を見て、父さんが少しからかってくる。

「ははっ、さすがの神童ルカもこれにはびっくりしたようだな!」
「あ、当たり前じゃないか、父さん! それにしても、僕もお兄ちゃんか……」

 お兄ちゃん、お兄ちゃんか……。何故だろうか、お兄ちゃんになれるってだけで、とても嬉しいと思っている自分がいる。
 いや、正確に言うと、家族が増えることが嬉しいのかな?
 家族が増えれば、より一層この家が幸せになる気がして、それが堪らなく喜ばしい。

「ふふっ、ルカも嬉しそうにしてくれて何よりだわ。それにしても、次に生まれてくる子はどちらかしらね? 男、女、男ときてるから、今度は女の子が生まれる予感がするわー」
「本当ですか、母さん! やった! 妹ができるー! いもうとっ、いもうとっ!」

 早くも妹と決めつけて大騒ぎする姉さんを、兄さんが冷静にたしなめる。

「リーナ、まだ決まったわけじゃないさ。それに、弟であろうと妹であろうと、僕達の兄弟であることに変わりはないよ。なあ、ルカ?」
「そうだね、兄さん。兄さんの言う通りだ! どちらであろうと、僕達の大切な家族だもんね!」
「ははっ、まったく嬉しいことを言ってくれる子供達だな」

 新しい家族の誕生を前に、家族のきずなが改めて深まった気がする。
 弟であろうと妹であろうと、新しく生まれてくる子は俺達が守るべき存在であり、愛すべき家族だ。

「母さん、お腹触ってみてもいい?」
「え? ふふっ、もちろんいいわよ。触ってあげて?」
「うん!」

 了承りょうしょうを得た俺は、母さんの前まで移動し、優しくお腹に手を触れた。

「ここに、僕らの新しい家族がいるんだね……」
「ふふっ、そうよ。これからはルカもお兄ちゃんになるのよ」
「お兄ちゃんか……。頼られる、立派なお兄ちゃんになれるように頑張らないとね」
「ルカなら大丈夫よ。でも、あまり新しい子にかまけてると、私やリーナがねるから、これからも変わらずに、私達の相手もしなきゃダメよ? わかった?」
「そうだぞ、ルカ! わかってるのかー?」

 せっかく俺が、お兄ちゃんとして恥ずかしくない生き方をしようと心にちかっているのに、母さんと姉さんは新しく生まれてくる子にちょっとばかり嫉妬しっとしたみたいだ。
 本当に、何があっても変わらない家族だ。
 今になって思えば、なんで俺はこんな簡単なことに気づかなかったんだろうか。冷静に考えてみれば、すぐにわかりそうなのに。
 てか、『鑑定』したら一発でわかったんじゃないか?
 試しに鑑定してみたら、案の定、母さんのステータスに『妊娠中』という項目が増えていた。
 ……やっぱり。
 いや、今更そんなことどうでもいいか。
 弟か妹かわからないけど、お前のことはお兄ちゃんが守ってやるから、安心して生まれてきなよ。待ってるからね。
 俺は再度、母さんのお腹を触り、これから生まれてくる子供に念を飛ばした。
 まあ、聞こえていないだろうけどね?


 ◆


 数日後。俺は自室で一人、考えごとをしていた。
 いまだ体調の優れない母さんが、とても気掛かりだ。
 今日だって食欲がないということで、朝食の席にはいなかった。
 食欲がなくても食べやすい、なおかつ栄養価が高いものでもあればいいんだけど、あいにくここら辺では、そんな気のいた食べ物はない。
 どうしたものか……

『マスター、ご自分でお作りになればいいじゃないですか』

 俺が一人で母さんの現状について悩んでいると、アテナがさも当然といった感じで、助言をしてくれた。
 ……確かに、その通りだ。
 ないなら作ればいい。
 主食のパンに飽きた時にパスタを作ったように、食欲がない時でも思わず食べたくなる物を、自分の手で作ればいいんだ。
 何も悩む必要なんてなかった。

「ありがとう、アテナ。気づかせてくれて」
『いえいえ、マスターのお母様を心配する気持ちが強すぎた結果でしょう。マスターならいずれはご自分でお気づきになられたでしょうし、お礼を言われるほどのことではありませんよ』
「それでも……だよ。本当にありがとう、アテナ」

 この問題については早急そうきゅうに解決したかった。無駄な時間を取ることなく気づかせてくれたアテナに最大限の感謝を込めて、改めてお礼を言った。

『どういたしまして』

 さっきは謙遜けんそんしていたが、今度は素直に感謝の気持ちを受け取ってくれるアテナ。大方、俺の心情を読み取ってそうしてくれたのだろう。
 本当に最高のパートナーだ。
 ただ、食欲がない時にでも食べたくなるような食べ物は、すぐに思い浮かばない。
 重たい主食類は論外だし、軽食でも今の母さんにはきついだろう。こんな時はやっぱり、アテナを頼るのが一番だ。

「――ということで、アテナ、何か良い案はないかな?」
『そうですね。それでしたらプリンなんてどうでしょうか?』
「プリンって、俺の前世の世界にあったプリン?」
『そうです。あまり咀嚼そしゃくが必要ありませんし、甘いデザートなので、女性受けもいいでしょう。知識の中にも、食べやすいものだとあります。どうでしょうか?』

 プリンか……。確かに、俺も風邪かぜを引いて食欲がない時に、プリンなら美味しく食べられた記憶がある。
 妊娠と風邪では、そもそも症状がまったく違うだろうが、体調が優れない時に、食べやすいものが欲しいことに変わりはないだろう。
 俺自身の経験も活かして、ここはプリン作りに挑戦しよう。

「ありがとう、アテナ。プリン、作ってみるよ」
『ふふっ、お母様が喜んでくれるといいですね』
「そうだね。じゃあ、行ってくる!」

 さて、久々にルカルドクッキングの時間だ!


 俺はすぐに厨房ちゅうぼうに入り、料理人のバクと、見習い料理人のハスラに事情を説明した。
 レシピはアテナの持つ知識を頼りにしたので、不味まずくなるはずがない。
 基本的に、材料は卵と牛乳と砂糖だけだから、家にあるもので足りた。本当はバニラビーンズとかがあればよかったんだけど、贅沢ぜいたくは言ってられない。
 まずは、溶いた卵に温めた牛乳と砂糖を加え、ざらつきがなくなるまで混ぜてプリン液を作る。これを裏ごしして別に用意しておいたカップに入れ、あとは蒸し器で火にかけ、低温でじっくりと蒸し焼きにする。
 プリンが固まるまでの時間を利用して、カラメルソースも作っておく。
 こうして、一時間弱かけてプリンを完成させた。
 黄金色の円柱の上に、赤褐色せきかっしょくのカラメルソースがこれでもかというほどかかったそのプリンは、見ているだけで食欲をそそられる。
 だが、これは自分で食べるために作ったわけではない。俺は、今すぐ食べたいという気持ちをぐっと抑えて、完成したプリンを手に、母さんのもとへと急いだ。

「ようし、到着だ……。母さん、入ってもいいかな?」

 親しき仲にも礼儀ありということで、俺は母さんの部屋の前に到着すると、軽くドアをノックしてから入室の許可を求めた。

「あら? この声はルカね。わざわざ聞かなくても、入ってきていいのよ」

 母さんはすぐに俺の声だと気がついて、部屋に入れてくれた。
 母さんはベッドの上に腰掛けて、本を読んでいたらしい。どうやら今は、そこまで気分が悪くないみたいだ。
 少しだけでも食べてもらえればいいけど……

「母さん、さっき新しい料理を作ったんだけど、少し食べてみない?」

 ここで、食欲があるかとか体調はどんな感じなのかとか聞くほど、俺はおろかではない。それを聞けば母さんに気を遣わせてしまうからだ。
 俺は作ったものをお裾分すそわけに来たていよそおったのだが――

「あら、そうなの? それは、母さんのために作ってくれた……ということかしら?」

 何も言わなくても、色々とバレていたようだ。母さんに対して隠し事をするのは、俺にはまだ早かった。

「うん、そうだよ。食欲がないって聞いたから、少しでも食べてもらおうと思って、最高のデザートを用意してきたんだ!」

 バレてしまえば、それまで。俺は何も隠さずそう告げて、作っておいたプリンを母さんに見せる。

「あら、初めて見るわね。これはどういう食べ物なのかしら?」
「プリンっていうデザートだよ。卵とか牛乳を混ぜ合わせて、蒸し焼きにした物の上に、砂糖を煮詰めて作ったソースをかけてあるんだ。とっても美味しいから、食べてみてよ」

 俺は軽くプリンの説明をして、母さんに皿を差し出す。
 しかし……母さんは受け取ってくれなかった。そして、不自然なほどに真剣な表情でこう言った。

「ルカ……私……実は今、物凄く体調が悪いのよ……でも食欲はあるから、食べさせてちょうだい?」

 なんか、わざとらしいような?
 心なしか、ここ最近で最も顔色が良く見える気がしないでもないが、母さん自身が体調が悪いと言うなら仕方ない。俺が食べさせないとね。

「……わかったよ、母さん。じゃあ食べさせてあげるね」
「ふふっ、ありがとう、ルカ」
「はいはい」

 スプーンで一口分のプリンをすくい、母さんの口元に運ぶ。

「あーん……はむっ……んぅっ!? 何これ、美味しいわぁ!」

 母さんは満面の笑みを浮かべて、幸せそうにプリンを頬張ほおばる。

「気に入ってもらえて何よりだよ」
「こんなに美味しいデザートを作れるなんて、本当にルカは凄いわね。さあ、もう一口ちょうだい」
「うん、わかったよ」

 一口食べ終えると、すぐに次を催促してくる母さん。自作のプリンをここまで美味しそうに喜んで食べてくれる姿を見ると、俺も母さんと同じように笑顔になってしまう。
 それから一分と経たずに、母さんはプリンを一つ完食した。
 食欲がないということだったので、少しでも食べてくれるといいなと思っていたが、まさか完食するなんて。
 プリンを提案してくれたアテナには、いくら感謝しても足りないくらいだよ。
 ――などと考えていたら、突然母さんが申し訳なさそうに謝ってきた。

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