成長促進と願望チートで、異世界転生スローライフ?

後藤蓮

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4章

154話 ルカルドの日常 朝

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 異世界転生してから八年と少しが経ったリーデンス伯爵家次男、ルカルド・リーデンスの朝は早い。

 時刻は、早朝六時前、寝起きが良い俺は、目覚めてすぐに寝巻きから動きやすい服に着替え、軽く身嗜みを整えると、屋敷から庭へと移動する。

 毎朝行なっている格闘術や剣術訓練のためだ。

「おはようございます、ルカルド様!」
「おはようパリス」

 庭にやってくると、一足先にやってきていたパリスと朝の挨拶を交わし、軽いジョギングを始める。

「ルカ~! 私もやるぞ!」

 十数周程度走ったところで、遅れてやってきた姉さんが途中参加で俺とパリスの後ろを追走し、何故か抜かれてしまう。
 ジョギングだというのに、最初から全力疾走をする姉さんに呆れつつも、何を言っても止まらないとわかっているので、黙って姉さんに離されないようにペースを上げた。

「ふぅー、じゃあ、準備運動も終わったし、次は素振りをしようか!」
「「はい!」」

 ジョギングの後は、木剣を持って、三人横並びで素振り千回を始める。
 十一歳となった姉さんは、これまで数年間かかさず俺に鍛えられたことにより、その辺の冒険者や騎士程度よりは強い美少女となっている。相変わらずブラコンは治っていないから将来が心配ではあるものの、強さだけは申し分ないので、食いっぱぐれることはないだろう。

 素振りを終え、本格的な剣術訓練に移行してから暫く経ち、そろそろ終わろうかと思ったタイミングで、たったったったと、屋敷から誰かが駆けてくる音が聞こえてきた。

「ルカおにいしゃまーーーー!」

 三年前に産まれた妹のサーシャである。

 いまだ三歳ながら、その可愛さは留まることを知らず、一日毎に倍速で可愛くなっていると言っても過言ではないと断言できる。

 これは決して家族贔屓ではなく、ましてや、俺がシスコンだから言っているわけではないということを理解していただきたい。誰に理解して欲しいかはわからないけどね。

「ぐふっ! おはようサーシャ」

「おはよーござーますっ!」

 この舌ったらずなところが可愛いんだよねっ!

 まあ、可愛さが増大していくのと同時に、過去の姉さんよりも力強いタックルをしてくるところが玉に瑕なんだけど……可愛いは正義というわけであるからして、何も文句はないっ!

「サーシャ、私には朝の挨拶はないのかな?」

「あっ! おねえしゃま! おはよーごじゃます!」

「ふふっ、相変わらずサーシャは可愛いわね。おはよう」

 姉さんは、俺を可愛がっていた時よりかは控えめではあるものの、しっかりと妹大好きっ子になっている。

 それでもいまだに俺にかまう時間が多いというのは、言うまでもないことだろう。

「ルカルド様、タオルどーぞー」

 姉妹の微笑ましいやりとりを隣で見守っていると、いつも通り、ふかふかでいい匂いのするタオルをアリーが手渡してくれる。

「いつもありがとう、アリー」

 俺が赤ん坊の頃からお世話してもらっているアリーは、今ではすっかり大人の美女へと成長を遂げている。
 最初は中学生みたいで、色々と危なっかしい印象が強かったのに、二十歳を越えて、可愛らしい系から綺麗系へとジョブチェンジ……したのはいいのだけれど、いまだに男の気配は一切なし。
 良い男と結ばれて幸せになってほしいと思う反面、結婚を機に彼女が使用人を辞めてしまうかもしれないと考えると、とても寂しいと思ってしまう今日この頃だ。

「パリス、タオルをもってきたよ」
「ありがとう、ランファ。いつも助かるよ」
「うふふっ、気にしないで」

 そんな独り身アリーと俺の横では、魔法の弟子であるランファがニコニコしながらパリスにタオルを渡していた。
 ここ半年では、いつもの光景として、既に見慣れたものだ。

「師に恵まれ、恋人にも恵まれて、とても幸せだよ」
「えへへっ、私も同じ気持ちです」

 このやりとりの通り、二人は半年前から男女のお付き合いを始めている。
 俺の護衛としていつも一緒にいたから、いつかはくっつくと思っていたけど、実際に付き合いだしたと聞いた時は驚いた。

 いつかは二人も結婚して、俺の護衛をやめる日がくるのだろうか? いや、この二人の場合は、自分達の子供も俺の弟子兼使用人に育てて、親子で俺に付き従ったりしそうだな……というか、そんな未来しか見えてこない。

 その時は、快く受け入れよう。二人の子供だから、きっと魔法も剣も扱える強い子供になるだろうし、最高の護衛になってくれそうだ。

 そもそも世界最強の俺に護衛が必要なのかが疑問だったりするけどね。

「二人とも、そろそろイチャイチャするのを一旦やめてね。屋敷に帰るよ」

「「はいっ!」」

 恋人になったことで、さらに息ぴったりな二人を尻目に、朝食を取るためにダイニングルームへと足を進める。

「おそーーーいぞっ! ルカ! はやく席につけ! 朝ご飯だっ!」

 ダイニングルームについて早々、怒鳴り声を上げてきたのは、つい先日、王都にある学園が長期休みとなって、すぐに帰ってきたぽっちゃりロード爆走中の兄さんだ。

 十四歳となり、来年成人を迎える兄さんは、特に何も変わっていない。
 強いて言うなら、外見が可愛い系ぽっちゃりだったのが、父さんみたいな凛々しい系ぽっちゃりになったくらいである。

「朝から元気いいね、兄さん、言われなくても僕もお腹ペコペコだから座るよ」

「はっはっはっ、我が家はいつも通りだな」
「そうね、いいことだわ」
「まったくそのとおりだ」

 何年経っても変わらない兄弟のやりとりを見た父さん母さんも、変わらぬ優しい笑顔で見守ってくれている。

「それでは、みんな集まったことだし、食べようか」
「「「「はーい!」」」」

 遅れてやってきた姉さんとサーシャが席に着いた所で、みんな揃って朝食を食べ始める。


 こうして、俺の一日は、いつも通り始まるのであった。
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