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第3章 武術大会編
2 鍛錬
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帰りの馬車の中で、男爵はテオドールに大会の説明をした。
大会はトーナメント方式で行われ、試合は1対1の戦いとなる。
戦い方や武器の有無は自由。
ただし相手を殺したり、再起不能にすることは禁止されているので、武器は殺傷能力のない模擬戦用のものとする。
総合的に判断して、男爵は盾と木剣を使い戦うことにした。
帰宅早々テオドールは、男爵の力量をはかるため、手合わせをした。
甲冑を身に纏った男爵は、模擬戦用の盾と木剣を使い、テオドールは素手で対戦する。
木剣を構えると男爵は、
「本当に手加減しなくていいのかい?」
彼は、テオドールの身体能力が凄いことを、十二分に心得ている。
だが、テオドールの戦うところは見たことがないので、戦闘能力については把握していない。
幼少期から訓練をうけた男爵は、騎士として腕に覚えがあり、まだ15歳の少年を、怪我させてしまうのではないかと、案じたのである。
だけど、そんな気遣いは不要だと、すぐに思い知らされた。
「問題ない。手加減、ダメ」
「なら遠慮なく、本気でいかせてもらうよ」
その言葉通り、男爵はテオドールに思い切り打ち込んだが、軽く躱されてしまう。
矢継ぎ早に攻め立てるも、すべての剣が躱されたあげく、テオドールに突き飛ばされて、ひっくり返る男爵。
めげずに何度もテオドールに立ち向かう男爵だが、結果は同じだった。
やがて男爵が、起き上がるのも困難になると、テオドールは終わりを告げた。
「待ってくれ。テオドール君。まだ私はやれる」
「これ以上は、無理」
「何があってもエレナを失うことはできないんだ。私たち夫婦は、息子を失っている。なので彼の分も幸せにしようと、エレナに愛情を注いできた。私たちにとってエレナは、命より大切な一人娘なんだ。だから頼む、テオドール君。どんなに厳しい訓練でも耐えてみせるから――」
形振り構わず、男爵はひれ伏して、15歳の少年に懇願した。
その少年が実の息子だとは露知らず。
「無茶は、ダメ。体、壊す」
そこにエレナが笑みを浮かべながらやってきて、
「お父様。テオドールさんの言う通りですよ。それにもう夕食の準備が整っています。テオドールさんも、お腹空いたでしょう?」
「うん。腹減った」
男爵が、借金返済のために大会出場を決めてから、ずっと鍛錬してきたことをエレナは知っている。
10人の徴集兵を相手に渡り合う父親の姿に、大会で優勝できると信じて疑わなかった。
だがテオドールと父親の手合わせを目にして、自分の考えが甘かったことを思い知る。
父親の優勝は絶望的だと察したエレナは、子爵の所有物になることは避けられないと悟り戦慄した。
男爵は愛娘の表情に違和感を覚え、指が小刻みに震えているのを、見逃さなかった。
恐怖心を押し殺して、気丈に振る舞う愛娘を、男爵はギュッと抱きしめ、
「心配ないよ。エレナ。大会までに強くなって、必ず優勝してみせる。絶対にお前を、守って見せるから。子爵なんかに、決して渡すものか」
それから毎日、テオドールの厳しい修行に、男爵は死に物狂いで食らいつき、耐え抜いた。
大会前日、男爵一家たちは、馬車で試合会場のある王都へ向かっていた。
馬車に揺られながらジュリエットとテオドールは竜語で、
『テオ。男爵は勝てそうかい?』
『う~ん。はっきり言って、分からない。せめて優勝するのに、強さの指標があれば良かったんだけど。男爵も初参加だから、よく分かっていないらしくて……』
『やってみないと分からないってことかい。こりゃ、厳しい戦いになりそうだね』
『うん』
その日、王都の宿に泊まった一行は、翌日、武術大会の会場に乗り込んだ。
大会はトーナメント方式で行われ、試合は1対1の戦いとなる。
戦い方や武器の有無は自由。
ただし相手を殺したり、再起不能にすることは禁止されているので、武器は殺傷能力のない模擬戦用のものとする。
総合的に判断して、男爵は盾と木剣を使い戦うことにした。
帰宅早々テオドールは、男爵の力量をはかるため、手合わせをした。
甲冑を身に纏った男爵は、模擬戦用の盾と木剣を使い、テオドールは素手で対戦する。
木剣を構えると男爵は、
「本当に手加減しなくていいのかい?」
彼は、テオドールの身体能力が凄いことを、十二分に心得ている。
だが、テオドールの戦うところは見たことがないので、戦闘能力については把握していない。
幼少期から訓練をうけた男爵は、騎士として腕に覚えがあり、まだ15歳の少年を、怪我させてしまうのではないかと、案じたのである。
だけど、そんな気遣いは不要だと、すぐに思い知らされた。
「問題ない。手加減、ダメ」
「なら遠慮なく、本気でいかせてもらうよ」
その言葉通り、男爵はテオドールに思い切り打ち込んだが、軽く躱されてしまう。
矢継ぎ早に攻め立てるも、すべての剣が躱されたあげく、テオドールに突き飛ばされて、ひっくり返る男爵。
めげずに何度もテオドールに立ち向かう男爵だが、結果は同じだった。
やがて男爵が、起き上がるのも困難になると、テオドールは終わりを告げた。
「待ってくれ。テオドール君。まだ私はやれる」
「これ以上は、無理」
「何があってもエレナを失うことはできないんだ。私たち夫婦は、息子を失っている。なので彼の分も幸せにしようと、エレナに愛情を注いできた。私たちにとってエレナは、命より大切な一人娘なんだ。だから頼む、テオドール君。どんなに厳しい訓練でも耐えてみせるから――」
形振り構わず、男爵はひれ伏して、15歳の少年に懇願した。
その少年が実の息子だとは露知らず。
「無茶は、ダメ。体、壊す」
そこにエレナが笑みを浮かべながらやってきて、
「お父様。テオドールさんの言う通りですよ。それにもう夕食の準備が整っています。テオドールさんも、お腹空いたでしょう?」
「うん。腹減った」
男爵が、借金返済のために大会出場を決めてから、ずっと鍛錬してきたことをエレナは知っている。
10人の徴集兵を相手に渡り合う父親の姿に、大会で優勝できると信じて疑わなかった。
だがテオドールと父親の手合わせを目にして、自分の考えが甘かったことを思い知る。
父親の優勝は絶望的だと察したエレナは、子爵の所有物になることは避けられないと悟り戦慄した。
男爵は愛娘の表情に違和感を覚え、指が小刻みに震えているのを、見逃さなかった。
恐怖心を押し殺して、気丈に振る舞う愛娘を、男爵はギュッと抱きしめ、
「心配ないよ。エレナ。大会までに強くなって、必ず優勝してみせる。絶対にお前を、守って見せるから。子爵なんかに、決して渡すものか」
それから毎日、テオドールの厳しい修行に、男爵は死に物狂いで食らいつき、耐え抜いた。
大会前日、男爵一家たちは、馬車で試合会場のある王都へ向かっていた。
馬車に揺られながらジュリエットとテオドールは竜語で、
『テオ。男爵は勝てそうかい?』
『う~ん。はっきり言って、分からない。せめて優勝するのに、強さの指標があれば良かったんだけど。男爵も初参加だから、よく分かっていないらしくて……』
『やってみないと分からないってことかい。こりゃ、厳しい戦いになりそうだね』
『うん』
その日、王都の宿に泊まった一行は、翌日、武術大会の会場に乗り込んだ。
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