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第4章 近衛騎士団編
5 城下町
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テオドールが近衛に参加している日中、ジュリエットは城下町へ赴いた。
街中を散策していると、どこからともなく香ばしい匂いがしてきた。
竜の嗅覚は鋭く、魔物の中で最も優れている。
その匂いにつられていくと、露店で焼き菓子が売られていた。
「いらっしゃい。自慢の焼き菓子を、ひとついかがかね? 味は保証するよ」
人の好さそうな店主に声を掛けられたジュリエットは、無一文であることに気づいて頭を抱えた。
ジュリエットは、人間界に長居するつもりはなかったし、食事は提供されたので、お金が必要に駆られることは無かった。
三食昼寝付きのニートである彼女に収入はなく、頼みの綱であるテオドールも、俸給はまだなので無一文である。
まぁ焼き菓子代くらいなら、国王に無心すれば何とかなるだろうと、考えたジュリエットは、
「今は持ち合わせがない。店主よ。明日も店はやっておるか?」
「ああ。そのつもりだ」
「誠に残念だが今日は諦めるしかないの。だが明日はお金を持参するので、必ず店を開けておくのだぞ」
涎を垂らしながら未練がましく立ち去るジュリエット。
「ちょっと待ちな。お嬢ちゃん。一つ試食していかないか。もちろん御代はいらないよ」
「いいのか?」
「その代わり美味かったら、贔屓にしてくれよ」
「うむ。わかった」
渡した焼き菓子を、美味そうに食べるジュリエットを見て、店主は目を細める。
そこにガラの悪い男二人が現れ、
「おい。タダで食わせるほど、儲かっているのなら、もっと所場代を払えるだろ。今日の売上金、すべて寄越しな」
「それは勘弁してください。家族が生きていけなくなります」
「なんじゃ、お主たちは?」
ジュリエットは、男たちを睨みつけて問うた。
「俺たちは、この辺りを牛耳っているギャング・毒蜘蛛の者だ。よく覚えておけ。小娘……」
男はジュリエットをイヤラしい目で見やり、
「いい女じゃねえか。タダ食いしたお前にも責任はある。ボスに一言詫びを入れてもらう。俺たちに付いてこい」
「その娘は関係ない。売上金ならすべてやるから、その娘は許してくれ」
店主が差し出した売上金の入った袋を、男は奪うように取り上げ、
「これはこれ。それはそれだ。ボスは無類の女好きだからな。いい土産ができたぜ。ひっひっひっ」
少女の悲惨な末路を予見した店主は、男たちに縋りつき懇願したが、殴り飛ばされてしまう。
追いかけてこようとする店主に、ジュリエットは制止するように手を突き出し、
「何も心配はいらぬ。すぐに戻ってくるからの」
「済まない。俺が余計なことをしたせいで――」
店主は泣き崩れてジュリエットに謝罪した。
ジュリエットは、毒蜘蛛の巣窟へ連れていかれ、ボスの部屋に通された。
広い室内には、ボスと数十名の手下がいる。
ジュリエットを舐めるように見て、下卑た笑みを浮かべたボスは、
「これは、めったにない上玉だな」
「貴様がボスか。今すぐ街から出ていけ。そうすれば命までは奪わぬ」
「なんだと? 小娘、ワシが誰だかわかっとらんようだな」
「知っとるぞ。下衆どものボスで、救いようのないクズ野郎だとな」
「ふん。粋がっていられるのも今だけだ。すぐに泣き叫ぶことになるのだからな」
ボスは手下の大男に、ジュリエットを近くまで連れてくるように命じた。
「それ以上、妾に近づくな。痛い目にあいたくなければな」
ジュリエットの警告を無視して一歩踏み出した大男は、後ろにぶっ飛びボスを巻き添えにして、壁に激突した。
目にもとまらない速さで、ジュリエットが大男に飛び蹴りを食らわしたのだ。
大男は白目を剥いて気絶し、その下敷きになったボスは茫然としている。
ジュリエットがボスに歩み寄ると、他の手下たちが得物で襲い掛かった。
赤髪の少女は、ボスの机を片手で振り回し、男たちをなぎ倒す。
手下の落とした短剣を手にしたジュリエットは、それをボスの首に突きつけ、
「もう一度だけチャンスをやる。大人しく従うか、首と胴体がバラバラになるか、どちらかを選べ」
観念した悪党たちは、毒蜘蛛を解散して、二度と悪事を働かないと誓い街を去った。
街中を散策していると、どこからともなく香ばしい匂いがしてきた。
竜の嗅覚は鋭く、魔物の中で最も優れている。
その匂いにつられていくと、露店で焼き菓子が売られていた。
「いらっしゃい。自慢の焼き菓子を、ひとついかがかね? 味は保証するよ」
人の好さそうな店主に声を掛けられたジュリエットは、無一文であることに気づいて頭を抱えた。
ジュリエットは、人間界に長居するつもりはなかったし、食事は提供されたので、お金が必要に駆られることは無かった。
三食昼寝付きのニートである彼女に収入はなく、頼みの綱であるテオドールも、俸給はまだなので無一文である。
まぁ焼き菓子代くらいなら、国王に無心すれば何とかなるだろうと、考えたジュリエットは、
「今は持ち合わせがない。店主よ。明日も店はやっておるか?」
「ああ。そのつもりだ」
「誠に残念だが今日は諦めるしかないの。だが明日はお金を持参するので、必ず店を開けておくのだぞ」
涎を垂らしながら未練がましく立ち去るジュリエット。
「ちょっと待ちな。お嬢ちゃん。一つ試食していかないか。もちろん御代はいらないよ」
「いいのか?」
「その代わり美味かったら、贔屓にしてくれよ」
「うむ。わかった」
渡した焼き菓子を、美味そうに食べるジュリエットを見て、店主は目を細める。
そこにガラの悪い男二人が現れ、
「おい。タダで食わせるほど、儲かっているのなら、もっと所場代を払えるだろ。今日の売上金、すべて寄越しな」
「それは勘弁してください。家族が生きていけなくなります」
「なんじゃ、お主たちは?」
ジュリエットは、男たちを睨みつけて問うた。
「俺たちは、この辺りを牛耳っているギャング・毒蜘蛛の者だ。よく覚えておけ。小娘……」
男はジュリエットをイヤラしい目で見やり、
「いい女じゃねえか。タダ食いしたお前にも責任はある。ボスに一言詫びを入れてもらう。俺たちに付いてこい」
「その娘は関係ない。売上金ならすべてやるから、その娘は許してくれ」
店主が差し出した売上金の入った袋を、男は奪うように取り上げ、
「これはこれ。それはそれだ。ボスは無類の女好きだからな。いい土産ができたぜ。ひっひっひっ」
少女の悲惨な末路を予見した店主は、男たちに縋りつき懇願したが、殴り飛ばされてしまう。
追いかけてこようとする店主に、ジュリエットは制止するように手を突き出し、
「何も心配はいらぬ。すぐに戻ってくるからの」
「済まない。俺が余計なことをしたせいで――」
店主は泣き崩れてジュリエットに謝罪した。
ジュリエットは、毒蜘蛛の巣窟へ連れていかれ、ボスの部屋に通された。
広い室内には、ボスと数十名の手下がいる。
ジュリエットを舐めるように見て、下卑た笑みを浮かべたボスは、
「これは、めったにない上玉だな」
「貴様がボスか。今すぐ街から出ていけ。そうすれば命までは奪わぬ」
「なんだと? 小娘、ワシが誰だかわかっとらんようだな」
「知っとるぞ。下衆どものボスで、救いようのないクズ野郎だとな」
「ふん。粋がっていられるのも今だけだ。すぐに泣き叫ぶことになるのだからな」
ボスは手下の大男に、ジュリエットを近くまで連れてくるように命じた。
「それ以上、妾に近づくな。痛い目にあいたくなければな」
ジュリエットの警告を無視して一歩踏み出した大男は、後ろにぶっ飛びボスを巻き添えにして、壁に激突した。
目にもとまらない速さで、ジュリエットが大男に飛び蹴りを食らわしたのだ。
大男は白目を剥いて気絶し、その下敷きになったボスは茫然としている。
ジュリエットがボスに歩み寄ると、他の手下たちが得物で襲い掛かった。
赤髪の少女は、ボスの机を片手で振り回し、男たちをなぎ倒す。
手下の落とした短剣を手にしたジュリエットは、それをボスの首に突きつけ、
「もう一度だけチャンスをやる。大人しく従うか、首と胴体がバラバラになるか、どちらかを選べ」
観念した悪党たちは、毒蜘蛛を解散して、二度と悪事を働かないと誓い街を去った。
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