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第5章 ディアボルス編
4 馴染みの店
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ジュリエットとテオドールが、数日ぶりに帰宅すると、家の中からエレナの声が聞こえてきた。
二人が家に入るとエレナは嬉しそうに、
「お帰りなさい。ジュリエット様。テオドールさん」
と、テオドールに駆け寄り抱きついた。
ジュリエットは竜語でフレアに、
『何かあったのか? エレナがジェフリーを褒めていたようだが』
『毎日ジェフリーさんが来ていて、エレナちゃんと親しくなったの。毎日のようにジェフリーさんを褒めているわ』
翌朝、ジュリエットは家の外でジェフリーが来るのを待っていた。
「おはようございます。お姉さん。どうしたんですか?」
「お主に聞きたいことがある。妾の留守の間に、エレナと仲良くなったそうだな。フレアからエレナに乗り換えたのか? 二股を掛けるつもりなら許さぬぞ」
エレナは男爵夫妻から預かっている娘なので、何かあってはならぬとジュリエットは釘を刺した。
「誤解ですよ。お姉さん。こう見えても俺は、誠実で一途なんです。生涯を共にする女性は、フレアさんだけだと、心に決めていますから」
「だがエレナと二人きりで、会っていたそうじゃないか」
「それは、俺の恋が成就するように、彼女が協力を申し出てくれたんです」
フレアとジェフリーがくっ付けば、テオドールを巡って争うライバルが、一人減ることになる。
だからエレナは、フレアにジェフリーを売り込んでいたのだろうと、納得したジュリエットは呆れ交じりの溜め息を漏らす。
「そうだ、お姉さんも協力してくれませんか? お姉さんなら百人力です」
ジェフリーは、悪い奴ではなさそうだし、フレアが目当てとはいえ、テオの面倒をよく見ていて仲もいい。
なので無下にしたくはないが、それでもジュリエットは、
「協力は出来ぬ。人生の伴侶は、本人が決めるべきものであり、まわりが押し付けるべきではないからな。フレアの心を射止められるように、努力することだな」
「でもフレアちゃんは、とても人気があるから、ライバルが多いんですよね」
「そんなにフレアはモテるのか? まぁ、妾には敵わないだろうが」
「そりゃ、もう。お姉さんを推してた奴らも、ほとんどがフレアちゃんに推し変したくらいですから。俺もその一人なんですけどね。痛っ、何するんですか」
ジュリエットはジェフリーの頭を叩き、
「一言余計だ。しかも、あっさりとフレアに乗り換えておきながら、なにが誠実で一途だ」
◇◆◇◆◇
ある日、いつものように城下町へ繰り出した三人娘は、ジェフリーに声を掛けられた。
「フレアちゃんにお姉さん。それにエレナちゃんも。こんなところで、何してんですか?」
「食べ歩きをしておる。お主こそ、何をしておるのだ?」
ジュリエットは、焼き菓子を頬張りながら、聞き返した。
「今日は非番なんです。だから、馴染みの店で飯を食おうと思って。そこの料理はとても美味いので、休みの日は必ず行く、隠れた名店なんですよ」
「なぬ、そんなに美味いのか?」
「そりゃ、もう。何処を探しても、そこより美味い店なんて、ないと思いますよ」
「城下町の食い物は、ほぼ網羅したつもりでいたが、まだ美味いものがあるとは――」
ヨダレを零すジュリエットを見てジェフリーは、
「少し歩きますが、皆さんも一緒に行きませんか? 奢りますよ」
「いいのか!?」
「もちろんですよ」
ジェフリーは喜色満面で声を弾ませた。
フレアとのお喋りに花を咲かせながら、街外れの古びた建物まで案内したジェフリーは、
「此処の地下にあるんですよ」
と、階段を降りていく。
「こんなところに飯屋があるのか?」
階段を降りながら、ジュリエットが聞き返した。
「だから隠れた名店なんです」
「なるほど。だが看板もないし、よく此処に店があると、わかったな」
「実は身内の店でしてね。どうぞ、中にお入りください」
ジェフリーは扉を開けて、中に入るように促した。
三人娘に続いて中に入ったジェフリーは、扉を閉めて鍵をかけた。
薄暗い室内は、広いが物はほとんどなく、テーブルと椅子が幾つかあるだけ。
椅子には、一人の女性と、数名の男性が、腰掛けている。
背を向けていた女性が振り向き、ジュリエットを見てニヤリとした。
その人物が、マルシエの仲間で、客引き兼給仕の女だと気づいたジュリエットは、
「見損なったぞ。ジェフリー。近衛を裏切ったのか」
憎悪をにじませた低い声で問うた。
二人が家に入るとエレナは嬉しそうに、
「お帰りなさい。ジュリエット様。テオドールさん」
と、テオドールに駆け寄り抱きついた。
ジュリエットは竜語でフレアに、
『何かあったのか? エレナがジェフリーを褒めていたようだが』
『毎日ジェフリーさんが来ていて、エレナちゃんと親しくなったの。毎日のようにジェフリーさんを褒めているわ』
翌朝、ジュリエットは家の外でジェフリーが来るのを待っていた。
「おはようございます。お姉さん。どうしたんですか?」
「お主に聞きたいことがある。妾の留守の間に、エレナと仲良くなったそうだな。フレアからエレナに乗り換えたのか? 二股を掛けるつもりなら許さぬぞ」
エレナは男爵夫妻から預かっている娘なので、何かあってはならぬとジュリエットは釘を刺した。
「誤解ですよ。お姉さん。こう見えても俺は、誠実で一途なんです。生涯を共にする女性は、フレアさんだけだと、心に決めていますから」
「だがエレナと二人きりで、会っていたそうじゃないか」
「それは、俺の恋が成就するように、彼女が協力を申し出てくれたんです」
フレアとジェフリーがくっ付けば、テオドールを巡って争うライバルが、一人減ることになる。
だからエレナは、フレアにジェフリーを売り込んでいたのだろうと、納得したジュリエットは呆れ交じりの溜め息を漏らす。
「そうだ、お姉さんも協力してくれませんか? お姉さんなら百人力です」
ジェフリーは、悪い奴ではなさそうだし、フレアが目当てとはいえ、テオの面倒をよく見ていて仲もいい。
なので無下にしたくはないが、それでもジュリエットは、
「協力は出来ぬ。人生の伴侶は、本人が決めるべきものであり、まわりが押し付けるべきではないからな。フレアの心を射止められるように、努力することだな」
「でもフレアちゃんは、とても人気があるから、ライバルが多いんですよね」
「そんなにフレアはモテるのか? まぁ、妾には敵わないだろうが」
「そりゃ、もう。お姉さんを推してた奴らも、ほとんどがフレアちゃんに推し変したくらいですから。俺もその一人なんですけどね。痛っ、何するんですか」
ジュリエットはジェフリーの頭を叩き、
「一言余計だ。しかも、あっさりとフレアに乗り換えておきながら、なにが誠実で一途だ」
◇◆◇◆◇
ある日、いつものように城下町へ繰り出した三人娘は、ジェフリーに声を掛けられた。
「フレアちゃんにお姉さん。それにエレナちゃんも。こんなところで、何してんですか?」
「食べ歩きをしておる。お主こそ、何をしておるのだ?」
ジュリエットは、焼き菓子を頬張りながら、聞き返した。
「今日は非番なんです。だから、馴染みの店で飯を食おうと思って。そこの料理はとても美味いので、休みの日は必ず行く、隠れた名店なんですよ」
「なぬ、そんなに美味いのか?」
「そりゃ、もう。何処を探しても、そこより美味い店なんて、ないと思いますよ」
「城下町の食い物は、ほぼ網羅したつもりでいたが、まだ美味いものがあるとは――」
ヨダレを零すジュリエットを見てジェフリーは、
「少し歩きますが、皆さんも一緒に行きませんか? 奢りますよ」
「いいのか!?」
「もちろんですよ」
ジェフリーは喜色満面で声を弾ませた。
フレアとのお喋りに花を咲かせながら、街外れの古びた建物まで案内したジェフリーは、
「此処の地下にあるんですよ」
と、階段を降りていく。
「こんなところに飯屋があるのか?」
階段を降りながら、ジュリエットが聞き返した。
「だから隠れた名店なんです」
「なるほど。だが看板もないし、よく此処に店があると、わかったな」
「実は身内の店でしてね。どうぞ、中にお入りください」
ジェフリーは扉を開けて、中に入るように促した。
三人娘に続いて中に入ったジェフリーは、扉を閉めて鍵をかけた。
薄暗い室内は、広いが物はほとんどなく、テーブルと椅子が幾つかあるだけ。
椅子には、一人の女性と、数名の男性が、腰掛けている。
背を向けていた女性が振り向き、ジュリエットを見てニヤリとした。
その人物が、マルシエの仲間で、客引き兼給仕の女だと気づいたジュリエットは、
「見損なったぞ。ジェフリー。近衛を裏切ったのか」
憎悪をにじませた低い声で問うた。
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