ドラゴンに育てられた少年、生みの親を探して旅に出る

千耀

文字の大きさ
39 / 64
第5章 ディアボルス編

5 内通者

しおりを挟む
 近衛を裏切ったのかと、ジュリエットに問われたジェフリーは、

「裏切るも何も、もともと俺は、ディアボルスの手先だからね」
「ディアボルスだと?」

 ジュリエットが聞き返すと、ジェフリーは組織について語った。
 ディアボルスは、国家の乗っ取りを目論む悪の組織で、ジェフリーは内通者として近衛に入団し、情報を組織に流していたという。
 王女の拉致を裏で操り、レオンハルトを近衛から排除しようとしたが、それをテオドールに阻止されてしまう。
 テオドールは大きな障害である一方、味方につければ、この上ない戦力になると考えた組織は、勧誘するも失敗に終わった。
 
「それで妾たちを、毒殺しようとしたのだな」

 ジュリエットが問うと、組織の女が、

「そうだよ。だけど毒に気づかれるとは、思いもしなかったよ。あの毒は、ほぼ無味無臭だから、犬でもなければ嗅ぎ分けられないはず。それなのに、どうやって毒に気づいたんだ?」
「生まれつき鼻は、いい方なのでな。それで、妾たちをどうするつもりだ?」

 ジュリエットはジェフリーを睨みつけて問うた。

貴女あなたたちを人質にして、テオドールを我々に服従させる」
「テオが断ったら?」
「それはあり得ませんね。テオドールが貴女たちを見殺しにするなんて、絶対にない。断言しますよ」
「うむ。少しはテオのことを理解しておるようだな。だがテオは、お主らに従うことはない。妾たちは人質になるつもりはないのでな」
「逃げようとしても無駄です。出入口は此処だけですからね。痛い目にあいたくなければ、大人しくしていてください」

 此処は通さないとばかりに、ジェフリーは腕組みしながら、出入口の扉に寄りかかっている。

「痛い目にあうのは、お主らの方だがな」
「ほう。威勢のいい、お嬢ちゃんじゃねぇか」

 そう言いながら、椅子に腰掛けていた大男が、ジュリエットに歩み寄る。

『フレア。エレナを頼む』
『わかったわ。おばさん』

 フレアはエレナを抱き寄せた。
 
「大事な人質だ。手荒な真似はするなよ」

 ジェフリーに釘を刺された大男は、

「ちっ、わかってる。この小娘、我がままに育てられた、箱入り娘なのだろう。何でも自分の思い通りになると、勘違いしてやがるから、己の非力さを教えてやるのさ」

 我がまま王女と一緒にするなと、内心でツッコんだジュリエットは、

「その言葉、そっくりそのまま返すぞ」

 ジュリエットの前で仁王立ちした大男は、不敵な笑みを浮かべ、

「俺の腹を、思い切り殴ってみな」
「いいのか?」
「そんな華奢な身体で殴られても、痛くも痒くもないグァッ!」

 ジュリエットが拳を突き出すと、大男は後ろに吹っ飛び、テーブルを破壊した。
 慌ててテーブルから逃げた男たちは、信じられないといった面持ちで、ジュリエットを見やる。
 
「手加減してやったのに、口ほどにもない奴だな」
「そいつを捕らえろ!」

 ジェフリーが命じると、男たちはジュリエットに襲い掛かった。
 ジュリエットは素早い動きで、男たちを一撃で倒していく。
 全員を伸して振り返ると、ジェフリーがフレアに刃物を突き付け、

「動くな、そこまでだ。大事な妹を傷つけられたくなければな」

 フレアが悲しげな目を向けると、ジェフリーは動揺を滲ませ視線を逸らした。
 その隙をついてフレアはジェフリーの腕を掴むと、ジュリエットの方へ投げ飛ばした。
 空中で身をひるがえしたジェフリーは、ジュリエットに攻撃を仕掛けるも、躱されてしまう。
 床に着地したジェフリーは、間髪を容れず連続攻撃を繰り出したが、ジュリエットは回避しながら、

「さすが近衛に入っただけのことはある。他のザコどもとは違うな。まだ本気を出していないのは、妾がフレアの姉だからか?」

 すると一気にジェフリーの攻撃速度が増すも、ジュリエットには掠りもしない。
 それどころかジュリエットの反撃をまともに食らったジェフリーは、後方へ吹っ飛び壁に打ち付けられて動けなくなる。

「ふふふっ」
「何がおかしい」
「テオがジュリエットには敵わないと、言っていたのを思い出したのさ。まさか本当に強いなんて、思いもしなかったよ」
「殺そうとしておきながら、なれなれしくテオと呼ぶな」
「そう……だな」

 ジェフリーは、床に倒れ伏したまま、力なく呟いた。
 ジュリエットはフレアに向き直ると、

「フレア。妾は此奴こやつらを見張っているから、エレナを連れて城に戻り、近衛を数名寄越してくれ。此奴らを城に連行するのに必要だから――」
「待ってくれ。俺には幼い弟と妹がいる。任務に失敗したことがバレたら、弟妹は組織に殺されてしまうんだ」

 ジェフリーはジュリエットに手を伸ばして懇願した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

処理中です...