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第6章 聖アウロス教会編
5 兄妹だから
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娘には、兄がいたことを隠していたので、グレース夫人は戸惑いながら、
「エレナ、後でちゃんと話すわ。今は、あの竜を追いかけ――」
「奥様、ご無事で何よりです」
「良かったわ、奥様」
などと、多くの領民たちがグレース夫人を取り囲み、無事を喜んだ。
「皆さん、ありがとうございます。すみませんが、通して――」
「グレース、今から追いかけても無駄だよ」
群がる領民を掻き分けて行こうとする妻を、夫が引き止めた。
「でも、あなた。アーサーがどうなったか知りたいの。このチャンスを逃したら、もう二度と聞けないかもしれないのよ」
「あの竜については、ジュリエットさんが知っているはずだ。彼女に相談すれば、何とかなるかもしれない」
男爵に説得されたグレース夫人は、未練を残しつつ諦めた。
男爵邸に戻る馬車の中で、両親からアーサーについて聞かされたエレナは、その兄がテオドールだと確信した。
テオドールに恋心を抱き、夫婦になる将来を夢見ていたエレナは、悲しくて泣きそうになる。
◇◆◇◆◇
緋竜山では、久々に帰省したテオドールを、父竜が抱きしめて頬擦りしている。
テオドールは15歳になるが、人間の10倍長生きする親竜にとっては、まだ1歳半の赤ん坊である。
人間界から戻らないテオドールを、子煩悩な父竜は、心配で探しに行こうとしたが、母竜に断られて、お留守番をさせられていたのである。
母竜は、これまでの経緯を父竜に説明して、
『――聖アウロス教会が、大人しく引き下がるとは、思えないんだよね。だからアンタ、教会の動向を、探ってきてくれないかい』
『そうだな。我らを滅ぼそうとする奴らを、放っておけぬ。明日にでも、エルデン帝国に潜入するとしよう』
◇◆◇◆◇
後日、男爵一家はジュリエットに会うため、王城を訪れた。
エレナは門番から、ジュリエットとフレアが、城下町に行っていると知らされる。
「ジュリエットさんたちが戻るまで、家で待たせてもらおう」
そう言って男爵が家の扉を開けると、テオドールが王女を抱っこしていた。
「……し、失礼しました」
誰もいないと思っていた男爵は、慌てふためいて扉を閉めた。
「どうしたの? お父様」
「な、何でもない。誰もいなかったから、門のところで待とう。少しでも早く、ジュリエットさんに会いたいからな」
王女が出てくる前に、その場から離れようと、男爵夫妻は娘の手を引いて城門へ急いだ。
しばらく城門で待っていると、ジュリエットとフレアが帰って来た。
男爵がジュリエットの耳元で、テオドールと王女が逢引していると伝えたら、
「いつものことだ。王女はテオのことを好いておってな、専属の護衛にしようとしたのだが、断ったら毎日のように会いにきておる。まぁ、それも無理のないことだ。妾のテオは、王女ですら虜にしてしまうほど、魅力的な好青年だからな。お主らの娘も、テオに夢中ではないか」
ジュリエットが自慢げに言うと、男爵は目を丸くして、
「知っていたんですか? エレナが好意を寄せていることを」
「無論だ。毎日エレナはテオに甘えて、アピールしておるぞ」
「それなら話が早い。ジュリエットさん、テオドール君とエレナが一緒になれるよう、協力してください。お願いします」
「断る。それは当人が決めること。周りがとやかく言うことではない」
「私たち夫婦も、テオドール君のことが大好きなんです。義理の息子は、テオドール君しか考えられません。それにエレナは――」
男爵夫妻が矢継ぎ早に娘の良さを挙げて売り込むと、
「お父様、お母様。親バカも、いい加減にしてください。ジュリエット様にご迷惑です。それにもう、テオドールさんのことは、諦めたので……」
「相手がセリーヌ王女だからって、諦めるのは早いぞ。エレナはとても魅力的だから、もっと自信を持っていいんだよ」
「違うんです、お父様。私とテオドールさんは、決して夫婦にはなれないの。だって私たち兄妹だから」
思わずエレナは、兄妹であることを口走ってしまった。
「エレナ、後でちゃんと話すわ。今は、あの竜を追いかけ――」
「奥様、ご無事で何よりです」
「良かったわ、奥様」
などと、多くの領民たちがグレース夫人を取り囲み、無事を喜んだ。
「皆さん、ありがとうございます。すみませんが、通して――」
「グレース、今から追いかけても無駄だよ」
群がる領民を掻き分けて行こうとする妻を、夫が引き止めた。
「でも、あなた。アーサーがどうなったか知りたいの。このチャンスを逃したら、もう二度と聞けないかもしれないのよ」
「あの竜については、ジュリエットさんが知っているはずだ。彼女に相談すれば、何とかなるかもしれない」
男爵に説得されたグレース夫人は、未練を残しつつ諦めた。
男爵邸に戻る馬車の中で、両親からアーサーについて聞かされたエレナは、その兄がテオドールだと確信した。
テオドールに恋心を抱き、夫婦になる将来を夢見ていたエレナは、悲しくて泣きそうになる。
◇◆◇◆◇
緋竜山では、久々に帰省したテオドールを、父竜が抱きしめて頬擦りしている。
テオドールは15歳になるが、人間の10倍長生きする親竜にとっては、まだ1歳半の赤ん坊である。
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母竜は、これまでの経緯を父竜に説明して、
『――聖アウロス教会が、大人しく引き下がるとは、思えないんだよね。だからアンタ、教会の動向を、探ってきてくれないかい』
『そうだな。我らを滅ぼそうとする奴らを、放っておけぬ。明日にでも、エルデン帝国に潜入するとしよう』
◇◆◇◆◇
後日、男爵一家はジュリエットに会うため、王城を訪れた。
エレナは門番から、ジュリエットとフレアが、城下町に行っていると知らされる。
「ジュリエットさんたちが戻るまで、家で待たせてもらおう」
そう言って男爵が家の扉を開けると、テオドールが王女を抱っこしていた。
「……し、失礼しました」
誰もいないと思っていた男爵は、慌てふためいて扉を閉めた。
「どうしたの? お父様」
「な、何でもない。誰もいなかったから、門のところで待とう。少しでも早く、ジュリエットさんに会いたいからな」
王女が出てくる前に、その場から離れようと、男爵夫妻は娘の手を引いて城門へ急いだ。
しばらく城門で待っていると、ジュリエットとフレアが帰って来た。
男爵がジュリエットの耳元で、テオドールと王女が逢引していると伝えたら、
「いつものことだ。王女はテオのことを好いておってな、専属の護衛にしようとしたのだが、断ったら毎日のように会いにきておる。まぁ、それも無理のないことだ。妾のテオは、王女ですら虜にしてしまうほど、魅力的な好青年だからな。お主らの娘も、テオに夢中ではないか」
ジュリエットが自慢げに言うと、男爵は目を丸くして、
「知っていたんですか? エレナが好意を寄せていることを」
「無論だ。毎日エレナはテオに甘えて、アピールしておるぞ」
「それなら話が早い。ジュリエットさん、テオドール君とエレナが一緒になれるよう、協力してください。お願いします」
「断る。それは当人が決めること。周りがとやかく言うことではない」
「私たち夫婦も、テオドール君のことが大好きなんです。義理の息子は、テオドール君しか考えられません。それにエレナは――」
男爵夫妻が矢継ぎ早に娘の良さを挙げて売り込むと、
「お父様、お母様。親バカも、いい加減にしてください。ジュリエット様にご迷惑です。それにもう、テオドールさんのことは、諦めたので……」
「相手がセリーヌ王女だからって、諦めるのは早いぞ。エレナはとても魅力的だから、もっと自信を持っていいんだよ」
「違うんです、お父様。私とテオドールさんは、決して夫婦にはなれないの。だって私たち兄妹だから」
思わずエレナは、兄妹であることを口走ってしまった。
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