ドラゴンに育てられた少年、生みの親を探して旅に出る

千耀

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第6章 聖アウロス教会編

10 エルデン帝国

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 聖アウロス教会の本部では、教皇と枢機卿による緊急会議が開かれた。

「今回の失態が、各国に知れ渡るのは時間の問題。そうなれば教会の権威は失墜しかねないぞ」
「一刻も早く、聖騎士団を再建しなければならぬ」
「だがそれには、莫大な費用が掛かる。騎士だけでなく、武具や馬なども揃えなければならないのだからな。それだけの費用を、どうやって捻出するつもりだ」
「民からの徴収を、強化すればいいだろ」
「これ以上の徴収強化は、民衆が蜂起しかねないぞ」
「そんなもん、力で捻じ伏せればいい。これまでのようにな」
「聖騎士団を失った我々に、もう、そんな力は無いではないか」
「……」

 枢機卿たちが言葉を失ったあと、沈黙を破ったのは教皇だった。

「此処は私に任せてもらえないか」
「どうなさるつもりですか?」
エルデン帝国此の国を利用する。ドラゴニア王国を侵略させて、我々の背後にエルデン帝国がついていることを、世界に知らしめるのだ。教会に盾突けば、エルデン帝国に攻め込まれるとな。此の国は大陸随一の超大国。どの国も敵に回したくないはずだ」
「なるほど。それなら徴収を強化しても、民衆を抑え込むことが出来ますな」

 教皇の提案は、満場一致で可決された。
 その後教皇は、ゼウス皇帝に会うため、皇城へ向かった。
 教皇が謁見の間に通されると、ゼウス皇帝は開口一番、

「ドラゴニア王国に侵攻して、聖騎士団を失ったそうだな。教皇」

 皮肉交じりに言われ、教皇は苦笑しながら、経緯を説明した。

「それにしても解せぬな。いくら不意を食らったとはいえ、スタンピードで数万の聖騎士団が、壊滅するとは思えぬのだが」

 教皇は、異端者の公開処刑で、竜が現れたことを説明し、

「――聖騎士を襲った魔物の中には、十数頭の竜がいたそうです。ドラゴニア王国の一部地域では、竜神信仰が根強く、我々が竜の討伐を命じたことが、火竜に知られてしまったのでしょう」
「なるほど。それで聖騎士団は、太刀打ちできなかったというのだな」

 これまでも魔物が大量発生して人を襲うことスタンピードはあったが、中級や下級の魔物だったので、数千の兵で対応できた。
 竜のような知的で上級の魔物が現れたのは、今回が初めてである。

「はい。そこでゼウス皇帝に、ドラゴニア王国を侵略して頂きたいのです」
「無論、それなりの見返りは、あるのだろうな」
「ドラゴニア王国は、唯一のミスリル産出国です。そこでは近衛の武具が、すべてミスリル製だといいます」

 その大陸では、ミスリルは希少で高価な資源である。
 強欲な教皇は、前人未踏の緋竜山に、まだ多くのミスリルが眠っているのではないかと考えた。
 それを独り占めにしようと、表向きは信仰上の理由で、竜討伐を命じたのである。
 
「ここだけの話、前人未踏の緋竜山周辺には、いまだ大量のミスリルが手つかずで残されていると、私は踏んでいるんですよ」
 
 ドラゴニア王国への侵略は、ゼウス皇帝にとって、決して悪い話ではなかった。
 聖戦という大義名分のもと、領土を拡大できるだけでなく、ミスリルを独占できるのだ。
 それに加えて、教会に貸しを作れるのだから、むしろ美味しい話である。
 
 周辺諸国にドラゴニア王国を攻めさせれば、国を守護する火竜は、そちらへ向かうはず。
 竜の討伐は諸国に任せ、その間に帝国軍は魔の森を焼き払い制圧する。
 もし竜が戻ってきても体力を消耗しているので、討ち取ることは可能だ。
 おまけに周辺諸国の兵力を削ることも出来るので、一石二鳥だとゼウス皇帝は考え、ドラゴニア王国への侵略を決めた。

 ゼウス皇帝は、聖戦への参陣を求める勅書を使者に託して、諸国の王へ遣わした。
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