56 / 64
第7章 エルデン帝国編
2 四面楚歌
しおりを挟む
ドラゴニア王国は、東側のハーランド王国、西側のヴァルドリア公国、北側のノーザン王国、南側のエルデン帝国に囲まれている。
それらのうちエルデン帝国を除く三国が、一斉に侵攻を開始したという急報が、エドワード国王の耳に届けられた。
国民に対する残虐行為や略奪行為の知らせを受けた国王は、ついに恐れていた最悪の事態が起こってしまったと頭を抱えた。
そして緊急の賢者会議を招集し、民衆を救うため戦うことを決断したのである。
三国はそれぞれ数万の兵を擁しているので、魔物や魔獣の援軍がなければドラゴニア王国に勝算はない。
しかし頼みのジュリエットは、王城から去ってしまい連絡がつかなかった。
そこで国王は、オークハート男爵への書状を、伝令鳥の足に括り付けて飛ばした。
その日もテオドールたち四人は、男爵家の広間で食事をご馳走になっていた。
テオドールの幼い頃の話に花を咲かせていると、アルフレッドが男爵に書状を差し出し、
「伝令鳥が急報を運んで参りました。緊急事態のようです」
すぐさま書状の内容を確認した男爵は、厳しい顔つきで周辺諸国の侵略について伝えた。
「国王陛下は、ジュリエットさんに援軍をお願いしたいと、記されています」
「ふん。ずいぶんと勝手なことを抜かしおる。聖騎士団の時は、戦うなと言っておったのに」
「陛下は、かなり後悔しております。勅書の半分以上は、ジュリエットさんへの謝罪文ですから――」
男爵は勅書を広げて、ジュリエットに見せた。
「今更謝罪しても遅いわ。かと言って侵略を許すつもりはない。美味しい料理が食べられなくなるのは困るからな」
ジュリエットは料理を頬張りながら言った。
「お父様も戦うの?」
「出兵要請が出ているし、民衆に対する残虐行為が行われているので、一人でも多く救わなければならない」
泣きそうになるエレナにテオドールは、
「心配ない。オレ、一緒に行く」
「お願いね。お、お兄様」
「……う、うん。任せて」
エレナから、初めてお兄様と呼ばれたテオドールは、戸惑いながらも嬉しそうに頷いた。
料理を平らげるとジュリエットは、
「ちょっとばかり食いすぎたので、軽く運動してくるとしよう。侵略者どもをボコボコにしてくるわ」
ヴェラントとフレアを連れて、広間を後にした。
男爵邸を出た三人は、竜の姿に戻って緋竜山へ飛び立った。
険しい表情でヴェラントは妻に、
『厳しい戦いになりそうだな』
『うむ。覚悟が必要だ』
緋竜山に着くと、ブリギッタとヴェラントは、魔物と魔獣を集めて状況を説明した。
だが魔物と魔獣は援軍に消極的で、
『どうして人間のために、我々が戦わなくてはならないのだ?』
『これは聖戦の続きだ。此の国が制圧されれば、次は我らが討伐される番だからな』
『それなら人間どもが此処に攻めてきてから戦えばいいのでは?』
『先の戦いでは、地の利と奇襲で有利に進めて勝つことができた。だけど同じ手は通用しないし、此方も数を減らしている。それに各国の兵が集結したら、聖騎士団の数倍にもなる。それからでは手遅れなのだ』
『だけど戦地は遠く離れていて、歩きでは辿り着くのも困難だぞ』
話し合いの結果、十数頭の成竜と、数十羽のロック鳥が、援軍として向かうことになった。
◇◆◇◆◇
翌朝、火竜とロック鳥の援軍は西側の戦地に向けて緋竜山を飛び立った。
その途中の男爵邸で、ヴェラントは男爵を、ブリギッタはテオドールを乗せた。
その頃、魔の森からほど近い山の裏手で、十万のエルデン帝国軍が待機していた。
緋竜山を監視していた斥候が戻ってきて、火竜とロック鳥が西に飛んでいったと報告。
帝国軍は魔の森へ向かい、左右に分かれて迂回しながら、次々と森に火を放った。
それらのうちエルデン帝国を除く三国が、一斉に侵攻を開始したという急報が、エドワード国王の耳に届けられた。
国民に対する残虐行為や略奪行為の知らせを受けた国王は、ついに恐れていた最悪の事態が起こってしまったと頭を抱えた。
そして緊急の賢者会議を招集し、民衆を救うため戦うことを決断したのである。
三国はそれぞれ数万の兵を擁しているので、魔物や魔獣の援軍がなければドラゴニア王国に勝算はない。
しかし頼みのジュリエットは、王城から去ってしまい連絡がつかなかった。
そこで国王は、オークハート男爵への書状を、伝令鳥の足に括り付けて飛ばした。
その日もテオドールたち四人は、男爵家の広間で食事をご馳走になっていた。
テオドールの幼い頃の話に花を咲かせていると、アルフレッドが男爵に書状を差し出し、
「伝令鳥が急報を運んで参りました。緊急事態のようです」
すぐさま書状の内容を確認した男爵は、厳しい顔つきで周辺諸国の侵略について伝えた。
「国王陛下は、ジュリエットさんに援軍をお願いしたいと、記されています」
「ふん。ずいぶんと勝手なことを抜かしおる。聖騎士団の時は、戦うなと言っておったのに」
「陛下は、かなり後悔しております。勅書の半分以上は、ジュリエットさんへの謝罪文ですから――」
男爵は勅書を広げて、ジュリエットに見せた。
「今更謝罪しても遅いわ。かと言って侵略を許すつもりはない。美味しい料理が食べられなくなるのは困るからな」
ジュリエットは料理を頬張りながら言った。
「お父様も戦うの?」
「出兵要請が出ているし、民衆に対する残虐行為が行われているので、一人でも多く救わなければならない」
泣きそうになるエレナにテオドールは、
「心配ない。オレ、一緒に行く」
「お願いね。お、お兄様」
「……う、うん。任せて」
エレナから、初めてお兄様と呼ばれたテオドールは、戸惑いながらも嬉しそうに頷いた。
料理を平らげるとジュリエットは、
「ちょっとばかり食いすぎたので、軽く運動してくるとしよう。侵略者どもをボコボコにしてくるわ」
ヴェラントとフレアを連れて、広間を後にした。
男爵邸を出た三人は、竜の姿に戻って緋竜山へ飛び立った。
険しい表情でヴェラントは妻に、
『厳しい戦いになりそうだな』
『うむ。覚悟が必要だ』
緋竜山に着くと、ブリギッタとヴェラントは、魔物と魔獣を集めて状況を説明した。
だが魔物と魔獣は援軍に消極的で、
『どうして人間のために、我々が戦わなくてはならないのだ?』
『これは聖戦の続きだ。此の国が制圧されれば、次は我らが討伐される番だからな』
『それなら人間どもが此処に攻めてきてから戦えばいいのでは?』
『先の戦いでは、地の利と奇襲で有利に進めて勝つことができた。だけど同じ手は通用しないし、此方も数を減らしている。それに各国の兵が集結したら、聖騎士団の数倍にもなる。それからでは手遅れなのだ』
『だけど戦地は遠く離れていて、歩きでは辿り着くのも困難だぞ』
話し合いの結果、十数頭の成竜と、数十羽のロック鳥が、援軍として向かうことになった。
◇◆◇◆◇
翌朝、火竜とロック鳥の援軍は西側の戦地に向けて緋竜山を飛び立った。
その途中の男爵邸で、ヴェラントは男爵を、ブリギッタはテオドールを乗せた。
その頃、魔の森からほど近い山の裏手で、十万のエルデン帝国軍が待機していた。
緋竜山を監視していた斥候が戻ってきて、火竜とロック鳥が西に飛んでいったと報告。
帝国軍は魔の森へ向かい、左右に分かれて迂回しながら、次々と森に火を放った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる