ドラゴンに育てられた少年、生みの親を探して旅に出る

千耀

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第7章 エルデン帝国編

2 四面楚歌

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 ドラゴニア王国は、東側のハーランド王国、西側のヴァルドリア公国、北側のノーザン王国、南側のエルデン帝国に囲まれている。
 それらのうちエルデン帝国を除く三国が、一斉に侵攻を開始したという急報が、エドワード国王の耳に届けられた。
 国民に対する残虐行為や略奪行為の知らせを受けた国王は、ついに恐れていた最悪の事態が起こってしまったと頭を抱えた。
 そして緊急の賢者会議を招集し、民衆を救うため戦うことを決断したのである。
 
 三国はそれぞれ数万の兵を擁しているので、魔物や魔獣の援軍がなければドラゴニア王国に勝算はない。
 しかし頼みのジュリエットは、王城から去ってしまい連絡がつかなかった。
 そこで国王は、オークハート男爵への書状を、伝令鳥の足に括り付けて飛ばした。
 
 その日もテオドールたち四人は、男爵家の広間で食事をご馳走になっていた。
 テオドールの幼い頃の話に花を咲かせていると、アルフレッドが男爵に書状を差し出し、

「伝令鳥が急報を運んで参りました。緊急事態のようです」
 
 すぐさま書状の内容を確認した男爵は、厳しい顔つきで周辺諸国の侵略について伝えた。

「国王陛下は、ジュリエットさんに援軍をお願いしたいと、記されています」
「ふん。ずいぶんと勝手なことを抜かしおる。聖騎士団の時は、戦うなと言っておったのに」
「陛下は、かなり後悔しております。勅書の半分以上は、ジュリエットさんへの謝罪文ですから――」

 男爵は勅書を広げて、ジュリエットに見せた。

「今更謝罪しても遅いわ。かと言って侵略を許すつもりはない。美味しい料理が食べられなくなるのは困るからな」

 ジュリエットは料理を頬張りながら言った。

「お父様も戦うの?」
「出兵要請が出ているし、民衆に対する残虐行為が行われているので、一人でも多く救わなければならない」

 泣きそうになるエレナにテオドールは、

「心配ない。オレ、一緒に行く」
「お願いね。お、お兄様」
「……う、うん。任せて」

 エレナから、初めてお兄様と呼ばれたテオドールは、戸惑いながらも嬉しそうに頷いた。
 料理を平らげるとジュリエットは、

「ちょっとばかり食いすぎたので、軽く運動してくるとしよう。侵略者どもをボコボコにしてくるわ」

 ヴェラントとフレアを連れて、広間を後にした。
 男爵邸を出た三人は、竜の姿に戻って緋竜山へ飛び立った。
 険しい表情でヴェラントはブリギッタに、

『厳しい戦いになりそうだな』
『うむ。覚悟が必要だ』

 緋竜山に着くと、ブリギッタとヴェラントは、魔物と魔獣を集めて状況を説明した。
 だが魔物と魔獣は援軍に消極的で、
 
『どうして人間のために、我々が戦わなくてはならないのだ?』
『これは聖戦の続きだ。此の国が制圧されれば、次は我らが討伐される番だからな』
『それなら人間どもが此処に攻めてきてから戦えばいいのでは?』
『先の戦いでは、地の利と奇襲で有利に進めて勝つことができた。だけど同じ手は通用しないし、此方も数を減らしている。それに各国の兵が集結したら、聖騎士団の数倍にもなる。それからでは手遅れなのだ』
『だけど戦地は遠く離れていて、歩きでは辿り着くのも困難だぞ』

 話し合いの結果、十数頭の成竜と、数十羽のロック鳥が、援軍として向かうことになった。


     ◇◆◇◆◇


 翌朝、火竜とロック鳥の援軍は西側の戦地に向けて緋竜山を飛び立った。
 その途中の男爵邸で、ヴェラントは男爵を、ブリギッタはテオドールを乗せた。

 その頃、魔の森からほど近い山の裏手で、十万のエルデン帝国軍が待機していた。
 緋竜山を監視していた斥候が戻ってきて、火竜とロック鳥が西に飛んでいったと報告。
 帝国軍は魔の森へ向かい、左右に分かれて迂回しながら、次々と森に火を放った。
 
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