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日常
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朝六時。
美代子は目覚ましが鳴る前に起き出し、台所の蛍光灯をつける。
炊飯器の湯気が白く立ちのぼり、同時に洗濯機の回る音が家に広がる。
弁当箱を二つ並べて、卵焼きを切る。
この時間だけは、毎日まるで昨日と同じ風景が続いているように思える。
気にかかるのは、天気だけだった。
台所の片隅にある古いラジオが、こもった声で「雲のち晴れ」と告げる。
「・・・でも、降りそうなんだけどなぁ」
窓の外を見上げながら、美代子は肩をすくめる。
七時半になると、父が上着に腕を通す。
「じゃあ・・行ってくる」
短く言い残し、玄関を出ていく。
父のあの背中も、毎朝同じように見送ってきた。
洗濯物を干し終えるころには、もう出勤の支度。
薄く化粧をして、自転車の鍵を外す。
北風が少し強い。
ペダルを踏みながら、ふと振り返る。
「あぁ・・部屋干しにしておけばよかったかしら」
そんなことをつぶやくのも、いつもどおりの道すがらであった。
三十分ほど漕ぐと、市立図書館が見える。
開館前の静けさは、彼女にとって家とはまた違う落ち着きをくれている。
美代子の仕事は、在庫の管理、そして来館者数の記録。
棚を整理し、帳面に数字を書き入れる。
淡々とした作業だが、慣れればそれなりに手になじむ作業。
午後四時に図書館は閉まる。
シャッターが降りると、途端に館内が静まり返る。
五時半まで机に向かい、その日の数字を淡々と帳面に写す。
館長が、時折声をかけてくる。
「太宰君は、変わりなくやってるかね?」
「・・・ええ・・まあ、相変わらずです」
それ以上は特に話題もなく、また帳面の筆記音だけが部屋に落ちる。
館長は市役所の定年を迎えたあと、この図書館へやって来た人だという。
父とは役所での先輩後輩の関係らしいが、その話も特に興味があるわけでもなく・・美代子は
ただ「そういうものか」と思っていた。
こうして一日は静かに暮れてゆく。
何も変わらないようでいて、季節だけは少しずつ動いている。
その移ろいの中で、美代子は今日もまた、自転車で家路につく。
家へ向かう道は、夕方になると少し薄暗くなる。
街路樹の影が長く伸び、子どもたちの声だけが遠くで聞こえる。
美代子は自転車を押しながら、いつもの角を曲がった。
ふと、風に乗って揚げ物の匂いが流れてきてた。
「・・うふふコロッケ、買っていこうかしら」
と小さく考える。
けれど財布を開いてみると細かいのがない。
「まあ、いいか」
美代子はそのままペダルを踏んだ。
美代子は目覚ましが鳴る前に起き出し、台所の蛍光灯をつける。
炊飯器の湯気が白く立ちのぼり、同時に洗濯機の回る音が家に広がる。
弁当箱を二つ並べて、卵焼きを切る。
この時間だけは、毎日まるで昨日と同じ風景が続いているように思える。
気にかかるのは、天気だけだった。
台所の片隅にある古いラジオが、こもった声で「雲のち晴れ」と告げる。
「・・・でも、降りそうなんだけどなぁ」
窓の外を見上げながら、美代子は肩をすくめる。
七時半になると、父が上着に腕を通す。
「じゃあ・・行ってくる」
短く言い残し、玄関を出ていく。
父のあの背中も、毎朝同じように見送ってきた。
洗濯物を干し終えるころには、もう出勤の支度。
薄く化粧をして、自転車の鍵を外す。
北風が少し強い。
ペダルを踏みながら、ふと振り返る。
「あぁ・・部屋干しにしておけばよかったかしら」
そんなことをつぶやくのも、いつもどおりの道すがらであった。
三十分ほど漕ぐと、市立図書館が見える。
開館前の静けさは、彼女にとって家とはまた違う落ち着きをくれている。
美代子の仕事は、在庫の管理、そして来館者数の記録。
棚を整理し、帳面に数字を書き入れる。
淡々とした作業だが、慣れればそれなりに手になじむ作業。
午後四時に図書館は閉まる。
シャッターが降りると、途端に館内が静まり返る。
五時半まで机に向かい、その日の数字を淡々と帳面に写す。
館長が、時折声をかけてくる。
「太宰君は、変わりなくやってるかね?」
「・・・ええ・・まあ、相変わらずです」
それ以上は特に話題もなく、また帳面の筆記音だけが部屋に落ちる。
館長は市役所の定年を迎えたあと、この図書館へやって来た人だという。
父とは役所での先輩後輩の関係らしいが、その話も特に興味があるわけでもなく・・美代子は
ただ「そういうものか」と思っていた。
こうして一日は静かに暮れてゆく。
何も変わらないようでいて、季節だけは少しずつ動いている。
その移ろいの中で、美代子は今日もまた、自転車で家路につく。
家へ向かう道は、夕方になると少し薄暗くなる。
街路樹の影が長く伸び、子どもたちの声だけが遠くで聞こえる。
美代子は自転車を押しながら、いつもの角を曲がった。
ふと、風に乗って揚げ物の匂いが流れてきてた。
「・・うふふコロッケ、買っていこうかしら」
と小さく考える。
けれど財布を開いてみると細かいのがない。
「まあ、いいか」
美代子はそのままペダルを踏んだ。
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