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第1章
9 確かに、わからない 後編
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二学期のメインの行事と言えば、文化祭。
初めての一年生はクラスごとに自分たちがやりたいお店を出店できる。美空のクラスは学級委員長が女子だったのもあって、クラスの女子たちが先陣を切って意見を出した結果、学校近くのスイーツチェーン店のアイスを売ることになった。
クラスのコンセプトは女子に任せて男子は指示に従い、設置作業を行う。
学園祭の準備のため、前日の二日間は授業は無しで丸一日準備作業に当てられる。女子たちが考えたコンセプトは原宿の雰囲気だった。飾りの色はパステルカラー。
教室内の装飾は店員でいっぱいになったのでぼーっと突っ立っていたところを注意された美空と風馬は委員長の指示で宣伝で校内を回るときに使う看板を作ることになった。
女子たちが買ってきたパステルカラーの絵具と、スプレー缶、段ボール、「ぱみゅぱみゅっとした感じね」と言われながら渡された参考資料の印刷物を持って、「スプレー使うから外行くか」と風馬に言われて、美空と二人して中庭に向かった。
廊下を歩くと生徒たちの楽しそうな声が聞こえた、途中、風馬の他クラスの友人とすれ違い、風馬がよっと声を掛ける。数人でたくさんの段ボールを抱えていたからきっと忙しくしているのだろうと美空は思った。
一階の体育館通路から中庭に出るとスプレー缶のにおいが漂ってきた。かしゃかしゃと缶を振る生徒を見て、ああやって使えばいいのかなと美空は何となく連想した。
「ここにすっぺ」と風馬が適当に場所を決めて新聞紙を敷いて、美空と2人で持ってきた素材を真ん中に置く。風馬はコンクリートの上に座り込みガムテープを端に張っていく。風に飛ばされないようにかな、と美空も真似して風馬がちぎったガムテープをもらって張っていった。
張り終わって一息ついた風馬が
「…さて、めんどくせえな」
と大きくあくびをした。
「もう?」笑う美空。
「だってさぼりたくてこれ引き受けたんだもん」
「さぼるのは悪いよ、」
「組み立てくらいはやろう?」と美空は段ボールをつかむ。
中庭には他に作業している生徒を見ると先輩方もいる、美空の頭に睦の姿が浮かんだ。もしかしてここに来るんじゃないかと。期待した。
え、なんで?と自問自答する美空。
「ほら、美空、やるんだろ」
言い出しっぺがぼーっとしていたのを見かねて風馬が自ら仕方なしに段ボールを丸めて持ち手となる棒を作り始める。作業を始めた風馬に続いて美空もダンボールを長方形の板状に切り始める。
「これ、くっ付けたら何とかなるかな」
美空は風馬に仮で作ったものを見せたりと、お互いにに意見を求めながらやり始めるともくもくと手を動かす二人。
校舎の1階廊下からぎやかな男子高生の声が聞こえて美空は顔を上げた。
笑っている睦の顔。美空の息が止まった。一階の廊下を睦とそのクラスの人達だろうか、飾りつけで使うのであろう大量の素材を運んでいた。笑いながら楽しそうに話す睦たちの会話を聞こうと耳を立てる美空。
…いや、人の会話を聞くのはいけない、と首をブンブンふって我に返った美空は目を段ボールを持っていた手に向けた。
サイレンを鳴らして走る救急車が来て通り過ぎていくように睦の声が段々小さくなって聞こえなくなった。
緊張の糸が切れて美空は息を吐いた。
「先輩さ」
唐突な風馬の声に驚く美空。
「えっ、何?」
なんだと首を傾げた風馬。
「二年の先輩はさ、二階の教室全部使ってお化け屋敷やるんだって」
「あ、そうなんだ」
だから睦もあんなに材料を運んでいたのか。睦の事を思い出して美空は体が熱くなる。頬を触ると、風邪をひいたときのように熱くて自分でびっくりして、冷まそうと手で顔を仰ぐ。
「なに?」風馬が美空の顔を覗き込む。
「いや、何でも」顔が熱いことをばれないように顔をそむける美空。
「なに、どうしたの」
にやにやしながら、面白いものを見るような顔をして美空の顔をしつこく覗き込んだ。
「えっと、で、それで何…?」
話を逸らすと、風馬が思い出したように「そうだ」と話をする。
「俺ら初日の午前中だけ当番だから、午後行こうぜ」
風馬には他のクラスに中学からの同級生がいる。
「風馬、他の人とは?」その人たちの事が気になった。
「ああ、あいつら、午後当番だから」
文化祭は二日間ある、二日目に行けばいいのにと美空は思ったがな何か事情があるのだろうと深く聞かず「うん、行こう」と美空は答えた。
ダンボールをプラカードの形に二つ組み立てた美空と風馬。自分たちなりに参考資料の真似をして絵を描いたりしてみたが2人とも壊滅的に絵が下手だった。
「やば、これ」
化け物が掛かれたプラカードを見下ろす風馬。
「どうしよう」
自分は猫を描きたかっただけなのにと容疑者の本人の美空が無残にされたプラカードを憐れに思った。
風馬が足元に置いてあったスプレー缶に目を向けた。
「こういうやつってさ、白のイメージあるよな」
「隠そう」
「よし」と言って風馬がスプレー缶をシャカシャカと振る。
「やっぱこういうのは女子に任せっぺ」
「そうだね」
スプレーを吹きかける風馬を見る美空。
シューっとスプレー缶の中身を吹きかける音の隙間から足音が聞こえて美空は咄嗟に後ろを振り返った。
植草花菜子と前にお昼休み一緒にいた先輩名前も知らない女子の先輩が美空に近づいていた。心臓がどきどきしてきた美空。息もしにくい、体が彼女を拒否している。
花菜子が笑顔で会釈したので美空も返した。
「お疲れさまー」と手を振りながら近づいてきた花菜子。
「お疲れさま、何してるの」と無名先輩。
「あの、宣伝用の看板作りを」
美空は恐る恐る言うと花菜子が「ふーん」と興味なさそうにプラカードを見下ろす。
そして「1年2組ってなにするの?」とこれまた興味なさそうに聞いてくる。
「アイスです」スプレーを吹きかけていた風馬が答える。
「すごーい!アイス売るんだ」と無名先輩。
「どこのアイス売るの?」風馬を見上げ尋ねる花菜子。
「どこだっけ、」風馬が美空を見る。
「あの、学校近くの所」戸惑いながら言う美空。
「あ、あのお店?すごい、花菜子、行かないとだね」
「うん。行こう行こう」微笑みながら言う花菜子は立ち上がり、美空の方に顔を向けるとスっと真剣な顔になった。彼女が言わなくても何を聞きたがっているのか分かった。怖くなって美空は後ずさりする。
「後呂くん、聞いてみた?」
聞けずにいた美空。下を向く。
「ごめんなさい、」
花菜子は「そう」と返事をしたが、美空には冷たく聞こえて、背中に冷水を浴びたみたいにゾッとした。
「なんの話ですか」
美空は話すのが苦手ということを知っている風馬、花菜子を前に美空は委縮しているとわかったのか、2人の会話に入り込む。風馬の呼びかけに無名先輩が振り返る。
「この前のお昼休みに後呂君にね、睦に好きな人いるかどうか聞いてきてってお願いしたの」
「ごめんなさい、最近会えてなくて、」
美空は風馬を巻き込んではいけないと強めの口調で言い放ち先輩の興味を自分に向けた。
「ねーね、連絡先とか知らないの?」
先日と変わらずぐいぐい攻めてくる無名先輩。
「すみません、」
「あ、そうなんだ」呆れた声で言う無名先輩。
「睦とさ、どんな話しているの?」
花菜子は不気味に優しい口調で美空に聞いてくる。
「えっと、」
口ごもる美空。なんでだかわからなかったが、話したくなかった。睦とのこれまでの事を話したくなかった。しかし何か言わないと、とごもり続ける美空。
「すんませーん」
風馬が話をさえぎるように声を張り上げて言った。3人は風馬の方を見る。
「俺ら、これやんないといけないんで」
風馬が少々威圧的に先輩2人に言った。花菜子と無名先輩は場が悪そうな顔して、
「そっか、ごめんね、作業しているときに」
と花菜子が手を合わせて風馬に謝る。
「後呂くん、引き続きお願いね」
花菜子は申し訳なさそうな顔をして美空に言う。
「後呂くんは睦と仲良いから花菜子のことも応援してくれるよね」
と無名先輩は理由にもならないことを理由にして美空に脅迫に近い約束を迫った。
「あ、いや…」
はい、と言えない美空。できるかそんなこと!と言ってやりたいのに、気持ちが弱くて言えなかった。
「いやいや、無理ですよ」
風馬が高笑いしながら言った。花菜子と無名先輩が振り返る。
「そいつ陰キャだから、そういうのに鈍感なんですよ。あんまり期待しない方がいいですよ」
風馬の言葉に先輩2人は理解したように「ああ、そうなの」と口をそろえて言った。
「後呂くん無理させちゃってごめんね、聞かなくていいよ」
美空の方に向き直った花菜子が困った顔をして言ってくれたが、美空にはもう用済みだからいいよと言われているようにしか聞こえなかった。
「じゃあ、頑張ってね」
と、言葉を言い残して先輩たちはいなくなった。
彼女たちの姿が見えなくなったやっと肩の力が抜けた美空。
「はあ、」
「みーう、大丈夫か」
風馬が美空の肩をポンポンと叩く。
「ありがとう風馬、」
風馬が自分の事を思って話を切り上げてくれたということは美空は何となくわかていた。しかし風馬はカッコつけたいのか、
「ん?なにが?」
と美空にありがとうと言われても知らんぷりをした。それを見て和んだ美空は笑顔をこぼした。
「あれ、前川さんの事好きなんだろうな」
「うん、」
幼馴染(男)にキスされたくらいしか経験のない美空、いや、他の人からしたらすごい経験かもしれないが。そんな美空でもわかった。植草花菜子は睦の事が好きだ。風馬が言ったのをきっかけに美空は先日の昼休み以降、彼女たちに対して募っていた不満を漏らした。
「わかってるけど、巻き込まないでほしい、」
風馬が相槌を打つ。
「女子って皆ああなの?」
「そうじゃね?俺が中学の時三角関係とかあったぞ。女子一人と男子二人で」
「昼ドラみたい、」
「女は怖いぜ」
風馬がわざとらしく身震いする。笑う美空。
「まあ、また何か言われたら言ってくれや」
「うん。わかった」
風馬にポンっと肩を叩かれた美空は安心して、またプラカード作りを再開した。
初めての一年生はクラスごとに自分たちがやりたいお店を出店できる。美空のクラスは学級委員長が女子だったのもあって、クラスの女子たちが先陣を切って意見を出した結果、学校近くのスイーツチェーン店のアイスを売ることになった。
クラスのコンセプトは女子に任せて男子は指示に従い、設置作業を行う。
学園祭の準備のため、前日の二日間は授業は無しで丸一日準備作業に当てられる。女子たちが考えたコンセプトは原宿の雰囲気だった。飾りの色はパステルカラー。
教室内の装飾は店員でいっぱいになったのでぼーっと突っ立っていたところを注意された美空と風馬は委員長の指示で宣伝で校内を回るときに使う看板を作ることになった。
女子たちが買ってきたパステルカラーの絵具と、スプレー缶、段ボール、「ぱみゅぱみゅっとした感じね」と言われながら渡された参考資料の印刷物を持って、「スプレー使うから外行くか」と風馬に言われて、美空と二人して中庭に向かった。
廊下を歩くと生徒たちの楽しそうな声が聞こえた、途中、風馬の他クラスの友人とすれ違い、風馬がよっと声を掛ける。数人でたくさんの段ボールを抱えていたからきっと忙しくしているのだろうと美空は思った。
一階の体育館通路から中庭に出るとスプレー缶のにおいが漂ってきた。かしゃかしゃと缶を振る生徒を見て、ああやって使えばいいのかなと美空は何となく連想した。
「ここにすっぺ」と風馬が適当に場所を決めて新聞紙を敷いて、美空と2人で持ってきた素材を真ん中に置く。風馬はコンクリートの上に座り込みガムテープを端に張っていく。風に飛ばされないようにかな、と美空も真似して風馬がちぎったガムテープをもらって張っていった。
張り終わって一息ついた風馬が
「…さて、めんどくせえな」
と大きくあくびをした。
「もう?」笑う美空。
「だってさぼりたくてこれ引き受けたんだもん」
「さぼるのは悪いよ、」
「組み立てくらいはやろう?」と美空は段ボールをつかむ。
中庭には他に作業している生徒を見ると先輩方もいる、美空の頭に睦の姿が浮かんだ。もしかしてここに来るんじゃないかと。期待した。
え、なんで?と自問自答する美空。
「ほら、美空、やるんだろ」
言い出しっぺがぼーっとしていたのを見かねて風馬が自ら仕方なしに段ボールを丸めて持ち手となる棒を作り始める。作業を始めた風馬に続いて美空もダンボールを長方形の板状に切り始める。
「これ、くっ付けたら何とかなるかな」
美空は風馬に仮で作ったものを見せたりと、お互いにに意見を求めながらやり始めるともくもくと手を動かす二人。
校舎の1階廊下からぎやかな男子高生の声が聞こえて美空は顔を上げた。
笑っている睦の顔。美空の息が止まった。一階の廊下を睦とそのクラスの人達だろうか、飾りつけで使うのであろう大量の素材を運んでいた。笑いながら楽しそうに話す睦たちの会話を聞こうと耳を立てる美空。
…いや、人の会話を聞くのはいけない、と首をブンブンふって我に返った美空は目を段ボールを持っていた手に向けた。
サイレンを鳴らして走る救急車が来て通り過ぎていくように睦の声が段々小さくなって聞こえなくなった。
緊張の糸が切れて美空は息を吐いた。
「先輩さ」
唐突な風馬の声に驚く美空。
「えっ、何?」
なんだと首を傾げた風馬。
「二年の先輩はさ、二階の教室全部使ってお化け屋敷やるんだって」
「あ、そうなんだ」
だから睦もあんなに材料を運んでいたのか。睦の事を思い出して美空は体が熱くなる。頬を触ると、風邪をひいたときのように熱くて自分でびっくりして、冷まそうと手で顔を仰ぐ。
「なに?」風馬が美空の顔を覗き込む。
「いや、何でも」顔が熱いことをばれないように顔をそむける美空。
「なに、どうしたの」
にやにやしながら、面白いものを見るような顔をして美空の顔をしつこく覗き込んだ。
「えっと、で、それで何…?」
話を逸らすと、風馬が思い出したように「そうだ」と話をする。
「俺ら初日の午前中だけ当番だから、午後行こうぜ」
風馬には他のクラスに中学からの同級生がいる。
「風馬、他の人とは?」その人たちの事が気になった。
「ああ、あいつら、午後当番だから」
文化祭は二日間ある、二日目に行けばいいのにと美空は思ったがな何か事情があるのだろうと深く聞かず「うん、行こう」と美空は答えた。
ダンボールをプラカードの形に二つ組み立てた美空と風馬。自分たちなりに参考資料の真似をして絵を描いたりしてみたが2人とも壊滅的に絵が下手だった。
「やば、これ」
化け物が掛かれたプラカードを見下ろす風馬。
「どうしよう」
自分は猫を描きたかっただけなのにと容疑者の本人の美空が無残にされたプラカードを憐れに思った。
風馬が足元に置いてあったスプレー缶に目を向けた。
「こういうやつってさ、白のイメージあるよな」
「隠そう」
「よし」と言って風馬がスプレー缶をシャカシャカと振る。
「やっぱこういうのは女子に任せっぺ」
「そうだね」
スプレーを吹きかける風馬を見る美空。
シューっとスプレー缶の中身を吹きかける音の隙間から足音が聞こえて美空は咄嗟に後ろを振り返った。
植草花菜子と前にお昼休み一緒にいた先輩名前も知らない女子の先輩が美空に近づいていた。心臓がどきどきしてきた美空。息もしにくい、体が彼女を拒否している。
花菜子が笑顔で会釈したので美空も返した。
「お疲れさまー」と手を振りながら近づいてきた花菜子。
「お疲れさま、何してるの」と無名先輩。
「あの、宣伝用の看板作りを」
美空は恐る恐る言うと花菜子が「ふーん」と興味なさそうにプラカードを見下ろす。
そして「1年2組ってなにするの?」とこれまた興味なさそうに聞いてくる。
「アイスです」スプレーを吹きかけていた風馬が答える。
「すごーい!アイス売るんだ」と無名先輩。
「どこのアイス売るの?」風馬を見上げ尋ねる花菜子。
「どこだっけ、」風馬が美空を見る。
「あの、学校近くの所」戸惑いながら言う美空。
「あ、あのお店?すごい、花菜子、行かないとだね」
「うん。行こう行こう」微笑みながら言う花菜子は立ち上がり、美空の方に顔を向けるとスっと真剣な顔になった。彼女が言わなくても何を聞きたがっているのか分かった。怖くなって美空は後ずさりする。
「後呂くん、聞いてみた?」
聞けずにいた美空。下を向く。
「ごめんなさい、」
花菜子は「そう」と返事をしたが、美空には冷たく聞こえて、背中に冷水を浴びたみたいにゾッとした。
「なんの話ですか」
美空は話すのが苦手ということを知っている風馬、花菜子を前に美空は委縮しているとわかったのか、2人の会話に入り込む。風馬の呼びかけに無名先輩が振り返る。
「この前のお昼休みに後呂君にね、睦に好きな人いるかどうか聞いてきてってお願いしたの」
「ごめんなさい、最近会えてなくて、」
美空は風馬を巻き込んではいけないと強めの口調で言い放ち先輩の興味を自分に向けた。
「ねーね、連絡先とか知らないの?」
先日と変わらずぐいぐい攻めてくる無名先輩。
「すみません、」
「あ、そうなんだ」呆れた声で言う無名先輩。
「睦とさ、どんな話しているの?」
花菜子は不気味に優しい口調で美空に聞いてくる。
「えっと、」
口ごもる美空。なんでだかわからなかったが、話したくなかった。睦とのこれまでの事を話したくなかった。しかし何か言わないと、とごもり続ける美空。
「すんませーん」
風馬が話をさえぎるように声を張り上げて言った。3人は風馬の方を見る。
「俺ら、これやんないといけないんで」
風馬が少々威圧的に先輩2人に言った。花菜子と無名先輩は場が悪そうな顔して、
「そっか、ごめんね、作業しているときに」
と花菜子が手を合わせて風馬に謝る。
「後呂くん、引き続きお願いね」
花菜子は申し訳なさそうな顔をして美空に言う。
「後呂くんは睦と仲良いから花菜子のことも応援してくれるよね」
と無名先輩は理由にもならないことを理由にして美空に脅迫に近い約束を迫った。
「あ、いや…」
はい、と言えない美空。できるかそんなこと!と言ってやりたいのに、気持ちが弱くて言えなかった。
「いやいや、無理ですよ」
風馬が高笑いしながら言った。花菜子と無名先輩が振り返る。
「そいつ陰キャだから、そういうのに鈍感なんですよ。あんまり期待しない方がいいですよ」
風馬の言葉に先輩2人は理解したように「ああ、そうなの」と口をそろえて言った。
「後呂くん無理させちゃってごめんね、聞かなくていいよ」
美空の方に向き直った花菜子が困った顔をして言ってくれたが、美空にはもう用済みだからいいよと言われているようにしか聞こえなかった。
「じゃあ、頑張ってね」
と、言葉を言い残して先輩たちはいなくなった。
彼女たちの姿が見えなくなったやっと肩の力が抜けた美空。
「はあ、」
「みーう、大丈夫か」
風馬が美空の肩をポンポンと叩く。
「ありがとう風馬、」
風馬が自分の事を思って話を切り上げてくれたということは美空は何となくわかていた。しかし風馬はカッコつけたいのか、
「ん?なにが?」
と美空にありがとうと言われても知らんぷりをした。それを見て和んだ美空は笑顔をこぼした。
「あれ、前川さんの事好きなんだろうな」
「うん、」
幼馴染(男)にキスされたくらいしか経験のない美空、いや、他の人からしたらすごい経験かもしれないが。そんな美空でもわかった。植草花菜子は睦の事が好きだ。風馬が言ったのをきっかけに美空は先日の昼休み以降、彼女たちに対して募っていた不満を漏らした。
「わかってるけど、巻き込まないでほしい、」
風馬が相槌を打つ。
「女子って皆ああなの?」
「そうじゃね?俺が中学の時三角関係とかあったぞ。女子一人と男子二人で」
「昼ドラみたい、」
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