頭良すぎてバカになる

さとう たなか

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第2章

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風馬に誘われて学校近くのファミレスに寄った。いつもは帰り道途中のラーメン屋かスーパーのベンチだから、少し居心地が悪い。しかも風馬と俺だけじゃないもう一人。
「美空、知ってると思うけど、同じクラスの雨宮帆花(あめみや ほのか)」
四人席で俺の向かい側に座った風馬の隣にポニーテールの女子が座っていた。この人はクラス委員長を務めている人で、クラスのみんなとよく話すリーダーシップの強い人だ。風馬とも話しているのを見たことがあったから、察した。
風馬、彼女できたんだ。
俺と睦が付き合ったのを聞いてから、いや、その前から彼女ほしいって口に出して言っていたし、女子の前で恰好つけたりしていたし、よかったね風馬。
「雨宮はお前のファンなんだと」
ふぁん?
「···は?」
人から初めて言われた単語だった。
「どうだ雨宮、間近で見る後呂美空は」
「最っっ高…」
雨宮さんは噛みしめるように言う。
「ああもう、どうしたらいいんだろ。直視できない!」
両手で自分の顔を扇ぎながら風馬の方に顔を向ける雨宮さん。
こんなキャラだったんだ。
「いいんだぞ雨宮、いっぱい見とけ」
「風馬、なに…?」
「ほら、話せよ雨宮」
風馬に言われて雨宮さんは胸に手を当てて、深呼吸。肩の力を抜くと俺顔を再度見る。
「···ぶはっ!やっぱダメ、恥ずかしい、」
雨宮さんは手で顔を覆う。
···こんなキャラだったんだ、その2。
雨宮さんはまた
「あのね、後呂くん、知ってると思うけど、君、クラスのみんなにとっても人気なのよ」
「えっ!!?」
言ってる意味がわからない。
「俺の言ってた通りだろ?」
風馬が偉そうに言う。
「いや、聞いたこと無いし」
手を横に振って否定する。
「後呂くん、いっつも女子の中で話題になってるの。女の子みたいな顔してて可愛いって。男子でもそうだよ?後呂くんは可愛いって。みんなが後呂くんと仲良くしたいって思ってるの」
みんな口を揃えて可愛いって言う。あまり得意じゃない。
...でも、風馬以外の人から自分のこと言われるのって初めてかも。みんな、俺と話すの嫌がってると思って、だから、俺も嫌だと思って、話とかしなかったんだけど。周りは、そんなこと無かったのか。
「あの、私もその一人で。···その、ファンを代表して、後呂くんの恋のお手伝いがしたいの」
「えっ?」
今、恋って言った?なんで?なんで知ってるの?
知ってるのは、風馬だけ······
風馬がテーブルに両手と頭を擦り付けて謝罪していた。
「おおおおお前!!バカっ!!」
風馬の頭をひっぱたく。
「いでっ、···すまぬ、口が滑った」
「バカバカバカバカバカバカバカバカもう!!なんでもう!!」
風馬は言わないと思ってたのに。あああっ···、恥ずかしい、汗かいてきた···。全裸で人込みに投げ出された気分だ、顔見られたくない。
「ああっ、後呂くんが手で顔隠してる、かわいいー」
雨宮さんはうっとりした顔で俺を見てる、なんだこの人は人の気も知らないで。
「大丈夫。後呂くん、知ってるのはあたしだけだから」
全然大丈夫じゃない。風馬以外に知られたことに何となくショックを受けてる。
「···恋愛はさ、ほら、女子のほうがいいかなって、俺男だし」
言い訳する風馬にさらに失望した。
「相談なんていらないって…、相手も男だし…」
睦とのこと風馬に話したからって、風馬に相談してほしいわけじゃない。いいんじゃないって言ってくれた、それだけで良かったのに。それ以上の事は別に良かったのに。
はあ、ショック···。
「帰る、」
俺は端に置いていたリュックを持って立ち上がる。
帰るのを止めてくる風馬。
「待って、待って!待った!!ごめんな…悪かったって。その…、うまくいってほしくて、…先輩と」
申し訳なさそうな顔の風馬。
···あれ、
そんな顔だったっけ、風馬。
もっと、明るかった気がする、
そう言えば、学校帰りに風馬とどこか行くのって、久しぶりかも。
最近はずっと睦と帰っていたし。
俺は椅子に座った。
「…な、なんか頼もう?」
雨宮さんが場を和ませようとメニュー表を開く。
ドリンクバーを注文して俺はコーヒー、風馬と雨宮さんはジュースを持ってきた。
「でもさ、後呂くんすごいよね。あの前川さんを射抜いたんだから」
ストローでジュースを飲んでいた雨宮さん。
「そんなことは、」
「どんな感じで出会ったの?」
ウシガエルです。
「いや、もう、覚えてなくて、」
あの話は伏せておこう。睦の変な噂が立ちそう。
「あらそう。···前川先輩ってそっち系の人だったの?」
いきなり核になる部分を聞いてくる雨宮さん。
女子って、こうなのかな。
「えっと…、そんな感じではないかな、」
女子との会話ってどうしたらいいんですか、約3年ぶりなんだけど、いや、中学も話しなかったし。
なんて言ったらいいんだろ。
「好きだから好き、みたいな?あんまり、男女とか関係なしの人なんだ?」
「そうかも、」
「すごいなあ、みんなが先輩みたいな人だったらこの世は平和になりそう」
「…睦、天然だから、考え無しなだけだと思う」
「ちょっと抜けてる所あるもんね。この前も朝早くに自分の教室に来たと思ったら違う教室に入ってて、ホームルーム前に慌てて出てったって他の先輩から聞いたよ」
睦らしい。
「あははっ、」
慌てる睦の姿を思い浮かべて笑えてくる。
笑い終わってもう一度雨宮さんをみると彼女がうっとりした顔で俺を見ていた。
「はあ、前川先輩は幸せ者ね、」
えっ、なにが?
「こんなかわいい後呂くんの笑顔を独り占めできるんだもん。嫉妬しちゃうわ」
「そ、そう…?」
雨宮さんのかわいいの言い方がちょっと怖い。
「雨宮、美空が引いてんぞ」
やり取りを見ていた風馬が間に入る。
「あっ、ごめんなさい、つい、」
我に帰った雨宮さんは姿勢を直す。ついって、いつもそうなのかな。
今度は風馬がテーブルに肘をついて顔を近づけてきた。
「そんな先輩とはどう?美空」
「どうって、」
「連絡先は交換した?」
「うん。した」
「キスは?」
この前、キスとハグされた。
「いや、まだ、」
そんなの言えるわけない。
「あ、そう?」
風馬の隣にいた雨宮さんが突っ込む。
「付き合って数か月だから、そんなわけないでしょー。したんでしょ?」
「あっ、いや…」
ぐいぐい聞いてくる雨宮さんの興味深々な目。
睦の唇が当たった頬っぺたが急に熱くなった。おかしい。手で押さえる。
そんな俺を風馬はじっと見てくるのがわかった。
やばい。
「キスしたな」
バレた。
「はっ!したの?」雨宮さんは両手を口の前で合わせる。
「してるしてる。美空のこの感じは」
「ああもう!言うなって!」
風馬に心の内を晒されると恥ずかしい。
テーブルに前のめりになってきた雨宮さん。
「えっ、どんな?どんな感じ?」
「いや、そんな、」
「口にしたの?」
「いや…、」
責め立ててくる雨宮さん。女子怖い。
「…顔、だけ、」
「うわあああーっ」
なぜか雨宮さんは喜ぶ。
…ああもう、嫌だ。なんで初めて話す人にここまで話さないといけないの。
「次は口でしなきゃ、後呂くん」
「いや、口は、あんまり…」
「潔癖?」
「違うけど、」
幼馴染にキスされたことを思い出した。
「口は、相手が、嫌がるかなって、」
幼馴染の顔が浮かんだ。
あいつは俺にキスしておいて、俺から離れて行った。
「私だったら、すぐにキスしたいかも」
「へえー、雨宮経験あるの?」
俺の顔を見てゆっくりジュースを飲んでた風馬が話す。
「ない」
「なんだよ」
「無いからすぐにしたいんじゃないキスをー。男欲しいー」
テーブルにぐにゃりと体を寝かせる雨宮さん。
女子ってすごい、自分の欲をすぐに口に出せるんだ。恥ずかしくないのかな。
「いないの?好きなやつ」
風馬が雨宮さんに聞く。
「うちの学校まともな人いないじゃない。あっ、後呂くんは別格だよ」
「あっ、そう···、」
褒められてるのかな、とりあえず苦笑い。
「美空は先輩としたいって思ったことないの?」
風馬に話を戻されてしまった。なにか答えなきゃいけない空気。
うん、無いと言ったら嘘になる。
「睦は、したがってた、かな」
「拒否ったの?」
「うん、」
「それじゃ、先輩傷つくよ」
「そうかな」
「美空もしたいなら、先輩のに答えてやったら?」
不安だ。
「したほうがいい、のかな」
「俺だったら、嬉しいけどな」
「キス?」
「うん。好きな人にされたら嫌じゃないと思う」
また頬杖を付いて俺を見ていた風馬。
じっと、目を離さない。
なんだ?
「恰好つけてんの?仲村」
「うるせえわ」
雨宮さんの言葉に風馬は半笑いで突っ込んだ。


ーーーーーーーーーーー



「美空はどこの高校行くの?」
この日は学校で進路調査の紙が配られて、この前サッカー部を引退したかいとくんと放課後教室で二人でそのことを話をしていた。
「家から近い所にしようかなって」
俺の隣の席に座って、今留海音(いまどめ かいと)と名前が書かれた調査用紙をひらひらと弄ぶかいとくん。
「西高とか、東高とか?」
「うん。近いから、西高かな」
「あそこめっちゃ偏差値高いじゃん」
「このまえの学力テストでA判定出たから、いけないことは無いかなって」
「そうなんだ、すご」
「かいとくんは?」
「全く決めてなくてさ。働こうとも思ったんだけど、親に反対された」
「そうなんだ」
俺はかいとくんを見て話していた。
かいとくんと目が合ったけど、すぐにそらされる。
いつもそう。
「…、俺も西高行こうかな。美空もいるし」
かいとくんは用紙を机の上に置く。
「そんなので決めていいの?学科とかは?」
「いいんだよ」
かいとくんは人差し指で顔を掻く。
「はあ、勉強しないとだー」
「かいとくん、一緒に勉強しようよ」
「そう?じゃあ、明日の放課後家に行くわ」
「うん。いいよ」
俺がそう言うと、かいとくんは鼻の下をこすって、へへっと笑った。
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