頭良すぎてバカになる

さとう たなか

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第3章

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「ちょっと、仲村くん」
美空は委員会の仕事でいなくて、ぼーっと校庭を眺めてたから急に声をかけられて内心飛び上がるくらい驚いてた。
それを相手に悟られないように。
振り返るとそこに同じクラスの雨宮帆花(あめみやほのか)がいた。
「話したいんだけど、放課後いいかな」
真剣な顔だ。
ついに来たか。
「良いぞ」
ちょっと低い声で、カッコつけて言ってみた。
放課後、俺は雨宮が指定した場所に来た。
体育館の裏。
片手をポケットに突っ込んで、かゆくもないのに頭を掻きながら向かう。
先に来ていた雨宮も俺に気づいてお互いに向かい合って立つ。
雨宮はしばらく俯いてもじもじした。
うんうん。俺はいつまでも待つぞ。
「後呂くんてさ、好きな人いるの?」
がばって顔を上げた雨宮がそう言った。
「あ?」
「好きな人とか知ってる?後呂くんの」
ああ、そっちかあー。
なんだよ俺じゃないのか、軽く舌打ちをする。
言うべきか。
先輩とのこと。
でもこういうのは誤魔化して言うのは悪いよな。
少し考えた…、
そんで、
「あいつ付き合ってるよ」
って言った。
息をのんだ感じの雨宮。
うわ、辛っ。
俺悪い事したみたいじゃん。
雨宮は俺の目を見てから、右、左って目を泳がせる。それから、はあ、って溜まった息を出して雨宮は残念そうな顔をした。
「…誰?」
「さあ」
「いいから教えてよ」
「ほんとに聞きたいか?」
「うん」
なんて罪作りな奴なんだ美空は。
頭を抱えた。
「前川先輩、三年の」
「前川先輩?」
一旦考える雨宮。
そりゃそうだ、前川なんて苗字は一人しかいない。
「む…睦先輩?と?」
言葉に詰まる雨宮。
「そう」
目をぱちぱちする雨宮。
「あっ…、そう、」
何度も前川の名前を呟く。
そりゃ、整理つなかないよな。
「好きだったの?雨宮」
「…じゃなきゃこんなことしないよ」
「じゃあ俺と付き合うか」
「バカ」即答する雨宮。
「冗談だ」
「サイテー」
雨宮は体育館の階段にどっかり、腰掛けた。
雨宮とは1年のときからクラスが一緒だ。男女問わずに会話ができるタイプの人間でクラス長も努めるほど人望もある女子だ。
まさか美空に片思いしていたとは。
一足遅かったな、雨宮。
「メシ食い行くか?」
「えっ?」
「話聞いてやんよ」
雨宮の希望で雨宮の帰り道の途中にあるファミレスにやってきた。
そういや、美空とラーメン屋。しばらく行っていないな。
席に着いて早々に
「あーもう!イケメンと付き合ってたら敵わないって!!」
テーブルに頭を突っ伏す雨宮。
「ドリンクバーでいい?」
俺は4人席のテーブルの上に置いてあったメニュー表を見た。
「うん、」
雨宮は突っ伏したまま。
「雨宮って割とそういうのに寛大なのな」
「何が?」
「もっと、毛嫌いすんのかと思った」
俺は立ち上がって、飲み物を取りに行く。
雨宮も着いて来る。
ドリンクバーの機械のラインナップ。
ジュースの横にコーヒー。
サイダーのボタンを押した。
「まあ、BL漫画読むし、むしろ身近にそういう子いると応援したくなる、かも。私」
「ふーん」
炭酸ジュースをコップに入れて席に戻る。
雨宮はレモンスカッシュ。
言い方がなんか、推しのアイドルを応援するような感じにも聞こえる。
「でも、後呂くんがかあー。…顔で言うと受けだな、」
何言ってんだこいつ。
「美空可愛いもんな」
「うん、かわいい…。顔がタイプ、」
「へえー」
「初めて見た時びっくりしちゃって、一目惚れかな。ずっと、目で追ってたし、委員長の仕事だって言って無理やり話かけたりしちゃったな。後呂くんって、話すの苦手だよね、なのにあんな事しちゃってさ、バカだよね、私」
今まで誰にも打ち明けたことが無かったのか、雨宮は吐き出していくみたいに話していく。
「美空と話したことないの?」
「委員会の仕事で話しかけて一言、二言くらい」
寂しそうに俯きながら言っていた雨宮は顔を上げて、テーブルに肘をつく。
「後呂くんってどんな話しているの?」
色々、食い物、雑誌、グラビア、何となく目につくもの…とかかな。
「これと言って覚えてないな」
頭に美空との思い出がいくつも浮かんだのに、口ではなんでか反対のこと言ってしまった。
「いつも一緒にいるのに?」
「そんなもんだよ」
「へえ」
まともに話したことも無いんだよな。
雨宮は羨ましいのか、俺が。
「未練タラタラ?」
「そうかも」
またため息をついて寂しそうに笑った雨宮。
「初恋だったかもしれないから」
「ふーん」
「これから、どうしよ私」
「どうしよって?」
俺の声が届いていないのか。
腕を組んで、
雨宮は勝手に考え込む。
「よし!」
机を叩いた雨宮。
「2人の応援する!」
「あ?」
「私、後呂くんの恋を応援する!どう?」
すでにやる気の雨宮。
「どうって…」
急に言われても。
「邪魔とかする気?」
「違う、見守るだけ」
「ほんとに?」
「仲村だってそうでしょ?2人にいつまでも幸せにいて欲しいって思わない?」
頭の左側に前川の顔が浮かんだ。
「まあ、うん」
「じゃあ、私達、同志ね」
前宮は俺のコップに自分のコップを当てた。
「後呂くんの恋を応援し隊。名前はこれね。連絡先交換しよう」
「ユニット名いらなくない?」
雨宮がカバンからスマホを取り出したから、俺も自分のリュックを開いた。
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