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つばめが中に入ったのを確認すると、先生は翼の生えたその人の側に、つばめがカドルと呼んでいたその人に近づいた。まだ芝生に顔を埋めている。先生の横に立った俺は、改めてカドルの方に耳を澄ました。
まず深く長いため息が聞こえたあと、
「死ねなかった…、また死ねなかった…。なんで勝手に飛んじゃうんだろ…俺…なんで…」と、くぐもった声が聞こえてくる。
それを聞いた先生は困った顔をして
「カドル、なにしてるんですか」
先生の声にカドルの翼がぴくっと反応する。
「みっちー、まだいたのかよ…」
カドルは嫌々言葉を返した。みっちーとは先生の事だろうか。
「…どうせまたか、なんて思ってるんでしょ、みっちー。···そうだよ、また飛び降りて失敗したんだよ、だって勝手に羽が広がっちゃうんだもん…、勝手に飛んじゃうんだもん…、首を吊った時もそうだった、気づいたら飛んじゃってたし…。死にたいのに死ねないんだもんこいつのせいで…。自分で引っ張ると痛いし、なんなんだよ、もう…」
飛ぶためじゃなくて、ほんとに飛び降りようとしていたのか。翼が無かったら今ごろ…、考えただけで体が震える。カドルに翼があって良かった。
「顔を上げてください、カドル。着地するとき擦りむいたでしょう?」
先生がカドルの隣にしゃがむ。
カドルは先生から頭を反対に向けてしまった。
「ほっといて…、俺は死にたいの、」
「もう少し待ってはくれませんか?」
「ほーら、起きてください」と先生は無理やりカドルの体をひっくり返す。
やっと露わになったカドルの顔を見て衝撃を受けた。
今まで見たことのない、ブロンド髪の美少年だったからだ。
髪はしばらく切っていないのか、首元までボサボサと伸びてみすぼらしかったけど、それでもしばし彼の不満げな顔に見とれてしまった。
「みっちーの命じゃないでしょ…。死ぬタイミングくらい、選ばせてよ…」
そっぽを向きながら彼は言う。
彼の指先から肘まで包帯が巻かれていたのが気がかりだったが、あえて意識をそ反らして彼の顔の方に目を戻した。右頬に擦り傷があり、千切れた芝生が顔に髪に服についている。
「つばめさんが遊ぼうって、ずっと探していたんですよ。後で彼女の所に行ってくださいね」
「知るかよ」
ぶっきらぼうに返事を返し、なかなか起き上がろうとしないカドルの脇の下に腕を通す先生。俺の方を見て、
「すみません、澄田さん。彼を診察室まで運ぶのを手伝ってもらえませんか?」
「あっ、はい」
先生に言われて俺はカドルの膝を脇に抱え、掛け声に合わせて彼を持ち上げた。
まず深く長いため息が聞こえたあと、
「死ねなかった…、また死ねなかった…。なんで勝手に飛んじゃうんだろ…俺…なんで…」と、くぐもった声が聞こえてくる。
それを聞いた先生は困った顔をして
「カドル、なにしてるんですか」
先生の声にカドルの翼がぴくっと反応する。
「みっちー、まだいたのかよ…」
カドルは嫌々言葉を返した。みっちーとは先生の事だろうか。
「…どうせまたか、なんて思ってるんでしょ、みっちー。···そうだよ、また飛び降りて失敗したんだよ、だって勝手に羽が広がっちゃうんだもん…、勝手に飛んじゃうんだもん…、首を吊った時もそうだった、気づいたら飛んじゃってたし…。死にたいのに死ねないんだもんこいつのせいで…。自分で引っ張ると痛いし、なんなんだよ、もう…」
飛ぶためじゃなくて、ほんとに飛び降りようとしていたのか。翼が無かったら今ごろ…、考えただけで体が震える。カドルに翼があって良かった。
「顔を上げてください、カドル。着地するとき擦りむいたでしょう?」
先生がカドルの隣にしゃがむ。
カドルは先生から頭を反対に向けてしまった。
「ほっといて…、俺は死にたいの、」
「もう少し待ってはくれませんか?」
「ほーら、起きてください」と先生は無理やりカドルの体をひっくり返す。
やっと露わになったカドルの顔を見て衝撃を受けた。
今まで見たことのない、ブロンド髪の美少年だったからだ。
髪はしばらく切っていないのか、首元までボサボサと伸びてみすぼらしかったけど、それでもしばし彼の不満げな顔に見とれてしまった。
「みっちーの命じゃないでしょ…。死ぬタイミングくらい、選ばせてよ…」
そっぽを向きながら彼は言う。
彼の指先から肘まで包帯が巻かれていたのが気がかりだったが、あえて意識をそ反らして彼の顔の方に目を戻した。右頬に擦り傷があり、千切れた芝生が顔に髪に服についている。
「つばめさんが遊ぼうって、ずっと探していたんですよ。後で彼女の所に行ってくださいね」
「知るかよ」
ぶっきらぼうに返事を返し、なかなか起き上がろうとしないカドルの脇の下に腕を通す先生。俺の方を見て、
「すみません、澄田さん。彼を診察室まで運ぶのを手伝ってもらえませんか?」
「あっ、はい」
先生に言われて俺はカドルの膝を脇に抱え、掛け声に合わせて彼を持ち上げた。
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