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第三話 2938番
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ゴーイング娘。オーディション——
1次審査は——
通過!
「顔が良ければ通る」と男子が言っていたから、
あえて受けたことは黙っていた。
落ちたらブスってことになってしまう。
でも——お母さんは美人だし、
その娘のアタシが美人じゃないわけがない。
アタシも顔には少々自信ありますけど?
まあ、結果が届くまではドッキドキだったけどね。
通過を伝えたら、えっちゃんが飛び上がって喜んでくれた。
持つべきものは友だ。
──────────────
1か月後、2次審査が始まった。
歌とダンスの実技審査と聞いて、思わず声が出た。
やばっ! ダンスなんてやったことないんですけどっ!
それでも毎日練習した。
驚いたのは、お母さんがゴーイング娘。のダンスを正確に教えてくれたことだ。
なんでこんなに振り付け知ってるんだろう…。
おかげで基本の動きは身についた気がする。
──────────────
審査会場のロビーに入った瞬間、空気が違った。
冷房が強く効いた廊下に、カツカツとくつの音だけが響いている。
周りはみんな背が高くて、大人みたいだ。
小学生って、もしかしてアタシだけ?
番号札を握る手が汗ばんでいる。
「……さん」
「……咲さん? いませんか?」
「杉浦咲さん?」
「はっ! あ、はいっ!アタシですっ!」
「最初はダンスの審査です。こちらにどうぞ」
「はっ! はひっ! す! すびません!」
あわわわ、どうしよう。声が裏返っちゃった!
「2938番! 杉浦咲ですっ!」
「ふふっ、落ち着いて!」
「はっ! はいっ!」
審査員のひとりに目が吸い寄せられた。
綺麗な人だ。
だけどどこかで見たことがあるんだよなこの人--------。
踊っていないのに、
立っているだけできりッと決まっていて、
体の使い方が違う気がした。
なんでだろう。
その人が、こちらに向けてニコッて笑って小さく頷いた。
──────────────
課題曲が流れてきた。何度も練習してきた曲。
大丈夫。アタシならできる。よし——!
……………
ふひっ……。
2回、コケた。
それでも最後までやりきった。
息を切らして顔を上げると、
あの綺麗な審査員が静かにこちらを見ていた。
目が合うと、小さく手を振ってくれた。
……誰だっけ、あの人。
──────────────
歌の審査は自由曲だったので、迷わず「Be Alive」を選んだ。
えっちゃんがいつも泣く曲。この曲なら、やれる気がする。
えっちゃんのためにも——
「杉浦咲さん、どうぞ」
「はいっ!」
よしっ。いくよ、えっちゃん。
……………
──────────────
「——ってなわけで、今は2次審査の結果待ちなんだよね」
「そっかあ、通過するといいねえ」
「歌はだいぶ頑張ったから、ちょっとだけ自信ある。
でもダンス失敗しちゃったのが悔しい!
みんな可愛かったし、アタシだけチビで、
服も子供っぽくてさ! あ~もうダメかも!」
「あはは、咲ちゃん落ち着いて!
毎日頑張ってたじゃん。よくやったよ!」
「ありがと~!
えっちゃんだけだよそんなこと言ってくれるの!」
──────────────
えっちゃんの前ではふざけてしまうけど
——本当はもう、不合格なんだろうな、と思っている。
これがアタシの全力だった。
後悔は、正直言うとある。
ダンスさえうまく踊れていたら。
はぁ…くやしいなあ。
1次審査は——
通過!
「顔が良ければ通る」と男子が言っていたから、
あえて受けたことは黙っていた。
落ちたらブスってことになってしまう。
でも——お母さんは美人だし、
その娘のアタシが美人じゃないわけがない。
アタシも顔には少々自信ありますけど?
まあ、結果が届くまではドッキドキだったけどね。
通過を伝えたら、えっちゃんが飛び上がって喜んでくれた。
持つべきものは友だ。
──────────────
1か月後、2次審査が始まった。
歌とダンスの実技審査と聞いて、思わず声が出た。
やばっ! ダンスなんてやったことないんですけどっ!
それでも毎日練習した。
驚いたのは、お母さんがゴーイング娘。のダンスを正確に教えてくれたことだ。
なんでこんなに振り付け知ってるんだろう…。
おかげで基本の動きは身についた気がする。
──────────────
審査会場のロビーに入った瞬間、空気が違った。
冷房が強く効いた廊下に、カツカツとくつの音だけが響いている。
周りはみんな背が高くて、大人みたいだ。
小学生って、もしかしてアタシだけ?
番号札を握る手が汗ばんでいる。
「……さん」
「……咲さん? いませんか?」
「杉浦咲さん?」
「はっ! あ、はいっ!アタシですっ!」
「最初はダンスの審査です。こちらにどうぞ」
「はっ! はひっ! す! すびません!」
あわわわ、どうしよう。声が裏返っちゃった!
「2938番! 杉浦咲ですっ!」
「ふふっ、落ち着いて!」
「はっ! はいっ!」
審査員のひとりに目が吸い寄せられた。
綺麗な人だ。
だけどどこかで見たことがあるんだよなこの人--------。
踊っていないのに、
立っているだけできりッと決まっていて、
体の使い方が違う気がした。
なんでだろう。
その人が、こちらに向けてニコッて笑って小さく頷いた。
──────────────
課題曲が流れてきた。何度も練習してきた曲。
大丈夫。アタシならできる。よし——!
……………
ふひっ……。
2回、コケた。
それでも最後までやりきった。
息を切らして顔を上げると、
あの綺麗な審査員が静かにこちらを見ていた。
目が合うと、小さく手を振ってくれた。
……誰だっけ、あの人。
──────────────
歌の審査は自由曲だったので、迷わず「Be Alive」を選んだ。
えっちゃんがいつも泣く曲。この曲なら、やれる気がする。
えっちゃんのためにも——
「杉浦咲さん、どうぞ」
「はいっ!」
よしっ。いくよ、えっちゃん。
……………
──────────────
「——ってなわけで、今は2次審査の結果待ちなんだよね」
「そっかあ、通過するといいねえ」
「歌はだいぶ頑張ったから、ちょっとだけ自信ある。
でもダンス失敗しちゃったのが悔しい!
みんな可愛かったし、アタシだけチビで、
服も子供っぽくてさ! あ~もうダメかも!」
「あはは、咲ちゃん落ち着いて!
毎日頑張ってたじゃん。よくやったよ!」
「ありがと~!
えっちゃんだけだよそんなこと言ってくれるの!」
──────────────
えっちゃんの前ではふざけてしまうけど
——本当はもう、不合格なんだろうな、と思っている。
これがアタシの全力だった。
後悔は、正直言うとある。
ダンスさえうまく踊れていたら。
はぁ…くやしいなあ。
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