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第四話 ぽんぽん
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咲ちゃんへ
もう夏だねぇ
こないだ、青木がまたふざけて
窓ガラス割っちゃって先生にすごい怒られてたよ
木村は今日も給食のパンを残してたよ
先生が、咲ちゃんのこと心配してるよ
みんな、咲ちゃんが戻ってくるの待ってるよ
私もずっと待ってるよ
また夏祭り行きたいね
~えつこより~
──────────────
「あ、咲ちゃんのお母さん」
「ごめんね、えっちゃん。今日もダメなのよ」
「そうですか……。あ、この手紙……」
「ありがとう。いつも来てくれてありがとう」
「はい、それじゃあ、私、行きます」
「いってらっしゃい。気をつけてね」
──────────────
2次審査、通過した。
でも3次審査で——不合格。
あれからもう一週間。
咲ちゃんは家から出てこなくなってしまった。
「よく頑張ったよ、咲ちゃん。
また、咲ちゃんの声が聞きたいな」
──────────────
「咲ちゃん」
「……」
カーテンの隙間から西日が差し込んでいた。
部屋のなかには昨日と同じ空気が溜まっていた。
えっちゃんの手紙は
机の端に置いたままで、開いていない。
開ける気がしなかった。
「またえっちゃん来てくれたわよ」
「……うん……そこ置いといて……」
お母さんが小さくため息をついた。
その音だけが、妙に大きく聞こえた。
──────────────
——3日後。
ピロピロリン♪
「もしもし、杉浦でございます」
「はい、私ですが……」
「あ、ご無沙汰しています!」
「え?咲ですか?」
「……えっ! 本当ですか?」
「いいえ、知らないと思います」
「わかりました、ありがとうございます。一旦、主人と相談しまして……」
「はい、よろしくお願いします。失礼します」
ピッ。
──────────────
電話の声が気になってドアを開けたら、
廊下に立っていたお母さんと目が合った。
お母さんが、ちょっと驚いた顔をした。
「お母さん、さっきの誰?」
「……咲、ちょっといい?大事な話があるの」
リビングのソファに並んで座った。
お母さんが静かに口を開いた。
「お母さんね……咲に隠してたことがあるの」
「隠してたこと?」
胸がざわっとした。
「お母さんね……実は……ゴーイング娘。だったのよ」
「えー——っ!! 嘘でしょ!!」
「嘘じゃない」
「だって苗字は杉浦じゃん!」
「結婚して変わったのよ」
「うそ!!」
「嘘じゃありません!」
「アタシ、メンバー全員知ってるもん! わかった! 福西あすか?」
「ちがう」
「西澤ユウ!?」
「全然違う!!」
「……じゃあヒント」
「5期」
「……小山マコ!?」
「ちがうって! わざと間違えてない?」
「あ——っ!! わかった!!」
「……もしかして、ぽんぽんこと本野あかり!?」
「正解!」
嘘——!!
「アタシのお母さんって……ぽんぽんだったの!?」
「そんなに悩むかなあ。一応名前はあかりで変わってないんだけど」
「うそ! まじで! ぽんぽん!! 握手してもらっていいですか!?」
「おーい! 咲は私の娘でしょう」
「あ、そうだった!! あはは!」
気がついたら笑っていた。
さっきまで、あんなに暗かったのに。
「あら、咲、元気になった」
「だって、びっくりしたもん」
「そっか。じゃあびっくりついでに、もう1つ」
「うん」
「一旦お父さんに相談はするつもりなんだけど
——さっき、私の知り合いの方から連絡があって」
「うん」
「杉浦咲さんを……アロープロジェクト研修生に推薦したいですって」
「えー——っ!!!!」
さっきまで泣いていたことを、アタシは完全に忘れていた。
もう夏だねぇ
こないだ、青木がまたふざけて
窓ガラス割っちゃって先生にすごい怒られてたよ
木村は今日も給食のパンを残してたよ
先生が、咲ちゃんのこと心配してるよ
みんな、咲ちゃんが戻ってくるの待ってるよ
私もずっと待ってるよ
また夏祭り行きたいね
~えつこより~
──────────────
「あ、咲ちゃんのお母さん」
「ごめんね、えっちゃん。今日もダメなのよ」
「そうですか……。あ、この手紙……」
「ありがとう。いつも来てくれてありがとう」
「はい、それじゃあ、私、行きます」
「いってらっしゃい。気をつけてね」
──────────────
2次審査、通過した。
でも3次審査で——不合格。
あれからもう一週間。
咲ちゃんは家から出てこなくなってしまった。
「よく頑張ったよ、咲ちゃん。
また、咲ちゃんの声が聞きたいな」
──────────────
「咲ちゃん」
「……」
カーテンの隙間から西日が差し込んでいた。
部屋のなかには昨日と同じ空気が溜まっていた。
えっちゃんの手紙は
机の端に置いたままで、開いていない。
開ける気がしなかった。
「またえっちゃん来てくれたわよ」
「……うん……そこ置いといて……」
お母さんが小さくため息をついた。
その音だけが、妙に大きく聞こえた。
──────────────
——3日後。
ピロピロリン♪
「もしもし、杉浦でございます」
「はい、私ですが……」
「あ、ご無沙汰しています!」
「え?咲ですか?」
「……えっ! 本当ですか?」
「いいえ、知らないと思います」
「わかりました、ありがとうございます。一旦、主人と相談しまして……」
「はい、よろしくお願いします。失礼します」
ピッ。
──────────────
電話の声が気になってドアを開けたら、
廊下に立っていたお母さんと目が合った。
お母さんが、ちょっと驚いた顔をした。
「お母さん、さっきの誰?」
「……咲、ちょっといい?大事な話があるの」
リビングのソファに並んで座った。
お母さんが静かに口を開いた。
「お母さんね……咲に隠してたことがあるの」
「隠してたこと?」
胸がざわっとした。
「お母さんね……実は……ゴーイング娘。だったのよ」
「えー——っ!! 嘘でしょ!!」
「嘘じゃない」
「だって苗字は杉浦じゃん!」
「結婚して変わったのよ」
「うそ!!」
「嘘じゃありません!」
「アタシ、メンバー全員知ってるもん! わかった! 福西あすか?」
「ちがう」
「西澤ユウ!?」
「全然違う!!」
「……じゃあヒント」
「5期」
「……小山マコ!?」
「ちがうって! わざと間違えてない?」
「あ——っ!! わかった!!」
「……もしかして、ぽんぽんこと本野あかり!?」
「正解!」
嘘——!!
「アタシのお母さんって……ぽんぽんだったの!?」
「そんなに悩むかなあ。一応名前はあかりで変わってないんだけど」
「うそ! まじで! ぽんぽん!! 握手してもらっていいですか!?」
「おーい! 咲は私の娘でしょう」
「あ、そうだった!! あはは!」
気がついたら笑っていた。
さっきまで、あんなに暗かったのに。
「あら、咲、元気になった」
「だって、びっくりしたもん」
「そっか。じゃあびっくりついでに、もう1つ」
「うん」
「一旦お父さんに相談はするつもりなんだけど
——さっき、私の知り合いの方から連絡があって」
「うん」
「杉浦咲さんを……アロープロジェクト研修生に推薦したいですって」
「えー——っ!!!!」
さっきまで泣いていたことを、アタシは完全に忘れていた。
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