未来を繋ぐキンモクセイ

桜ふぶき

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第二話 かげり。

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「どうしよう…」

マクが、今にも泣きそうな顔で言った。

「おれ、かおりちゃんにきらわれちゃったかも。
ねえ、どうしよう??ゆきや」


次の体操服を着替える時間に、マクが松本 幸也に泣きついた。

「それを俺に言うのか?」

俺、松本 幸也は、呆れ返りながら目を細める。

「だって、仲良いでしょ?小学校から仲良しだったってしってるもん」


どこから聞いたんだ、それを


こいつは、まだ言ったことのない俺や、かおりの情報を知っていることが多い。
個人情報漏れてんのか?


「別に大丈夫だろ。これはあいつも悪い。
何もせんでも、そのうち向こうから話しかけてくるさ」


特にこいつが女子と絡んでれば、あいつも気が気じゃねえだろう。


「ゆきや」

俺の背後で声がした。
振り返ると、高山 水無瀬ーー俺の高校入ってからの友達ーーが立っていた。
マクを見ると、鼻で笑う。

「よぉ、厨二野郎」

「むぅ、みなせ」

普段なら厨二と言われて、反論するマクだが、今回ばかしはかおりの件で、焦っているようだった。

すぐに、みなせにも、いきさつを話した。


「ふぅん。かおりんがねぇ」

と言うと、水無瀬がうなづき、腕を組んだ。

「ねえ、どうしたらいいの?
高級シャンパン持っていけばいいかなぁ?」


「お前、馬鹿か?俺たちは未成年だろーが」

俺は、あまりの馬鹿すぎる提案にため息をついた。

「喧嘩くらいお前だってしたことあるだろ?
こういうのは、時が解決してくれるもんなんだよ」

「けんかしたら、おれ待つのたえられないからいっつも先にあやまるもん。」

マクが口を尖らせて言う。
チッ、顔が整ってるから、それですらサマになってるのにも、腹が立つんだよな。厨二病のくせに。

「それで、高級シャンパン?」

ブフッと思わず吹き出す水無瀬。

「おばさんにでも貢いでんのか?」


「むっ!おばさんじゃないし!
リアムをばかにしないでよ!憧れなんだから!!」

マクが本気で反論しだす。

「リアムってあれだろ?」

俺も小馬鹿にしたように、言った。

「時の番人の隊長とか言ってたよな?全部で7人しかいないって?
ーーーホントよくできた設定だよな。感激するぜ」

「設定じゃないってば!!」

マクがとうとう声を荒げた。すると、水無瀬がぷんぷんしてるマクの肩を組んで言う。

「まぁ、落ち着け。それで、仲直りだろ?

ーー俺にいい考えがあるぜ?」

「え、なに?」

すぐにマクが目を輝かせる。
すると、水無瀬が耳打ちし始めた。



はぁ、体育なんてクソつまらない!
女子の知り合いなんて居ないし、ましてや友達もいないから、ホントに退屈。


ーーでも

あたしは、チラッと向こう側にいる男子の方を見た。

今日は男子と同じグラウンド。
それは、良かったかもしれない。マクが見れるし。

ーーいやいや!!!

今喧嘩してるんだった!
あたしも、そう簡単には折れないわよ!
てか、よく考えたら、顔以外良いとこないじゃない。
女々しいし、幸也にいつもからかわれてるし。

絶対、好きなんかじゃーーー


「みて、あれ。マクくんよ!」

その言葉に、あたしはドキッとする。
私の横で、また数名の女子がマクを見つけてキャッキャと歓声を上げてた。他にもチラチラみてるやつもいる。

ああ!もう!!ムカつく!!
どうしてこんなにモテるのよ!?
たしかに、人形みたいに綺麗だけど!!!

体育は、50メートル走みたいで、女子の次が男子だった。

あたしは、8.37秒。
ーーまぁまずまずかな


次々と女子が終わり、次は男子の番になる。

水無瀬が、スタート地点についた。

水無瀬か。サッカー部に所属してるし、早そうね。
マクほどじゃないにしても、女子にもそこそこ人気だから、気合入ってそうだわ。

あっという間に他の男子を抜いて、
ーー6.4秒

早いわね。

次は、松本か。松本も水無瀬と同じサッカー部で、同じくらいかな。

ーー6.5秒


ーー残るは

マクがスタート地点についた。途端に女子がざわめきだす。女子が手を振っているのに気づいたのか、マクがニコッと笑ってこっちに向かって手を振った。

あたしと喧嘩してるっていうのに、他の女には手を振るんだ。あたしは、ムカついて、少し地面を蹴った。

あー!イライラしてきた!転ければいいのに!!
ていうか、マクがシャキッとしてるとこなんて見たことない。
体もそんなにムキってしてる方じゃないし

部活にも入ってない。

どーせ、あたしぐらいの速さでしょ
他の女も足が遅かったら引くんじゃない?あたしは、ひかないけどね。
まぁ、いい気味だわ。

ーー心配なんかしてないし。



「よーい!!」

先生が、叫ぶ。

「スタート!!!」


ーーーダッ



マクが走りだした瞬間、途端にみんながざわついた。

あまりの遅さに、じゃない。

あまりに速かった、から。

スタートと同時に、あり得ないくらいの速度で他の男子を次々と抜かしていった。普段では考えられないような瞬発力。フォームも綺麗で、珍しく真剣なマクの横顔にあたしは思わず見惚れてしまった。

水無瀬たちよりも速いんじゃない?


「さ…え?」

ストップウォッチを持ってる女子が、驚いて何度もタイムを確認する。

「さ…3秒87……」


「な?!?!?」

先生も駆け寄ってきて、慌ててタイムを確認する。


そりゃそうよね……
ボルトだって、5秒47だもん

世界記録更新じゃない!
てか同じ人間なの?




「すげぇ…
化け物か?あいつは」

マクを見ていた水無瀬も汗を拭きながら、思わず漏らした。

俺にも信じられねえわ。
そもそも、3秒台とか人間が出せるのか?

「これで、水無瀬の言った、足速い胸キュン作戦が成功するといいんだがな」

「俺、あいつぜってえコケると思ってた」

「俺もだ」





「マクくん!!これで汗拭いて」

女子がわらわらとハンカチを差し出す。

「あ、ありがと……」

「見てたよ!!ホントにカッコ良かった!」

「あたしも!!」

口々に感想を言う女子に、マクはヘラヘラして鼻の下を伸ばしてた。
あたしは喧嘩してることを忘れて、思わずマクに向かって叫ぶ。

「マク!!!」

「あ……かおりちゃん!」

あたしが近づくと、他の女子があたしを睨みつける。
ふふん、いい気味よ。

マクが名前呼びしてるの、あたしだけなんだから!


「マクくん」

女子の1人、華宮 ゆりあがあたしがいるにもかかわらず、甘い声でマクに話しかけた。

華宮 ゆりあは、いわゆるゆるふわ系女子ってやつ。
あたしとは正反対の部類。

女子力高くて、クラスの男子の半分くらいから好意を寄せられてるって幸也が言ってた。

あたしみたいに、口うるさい女じゃない。
2人並んでるのを見ると、余計に釣り合っていると思わざるを得なくて、あたしは思わず2人から目を逸らす。


「今度、タクトの握手会があるの。2枚チケットが取れたんだけど、一緒に行かない?」

あざとく、上目遣いでマクに擦り寄ってる。

マクにブロマイドを渡していたのは主にこの女。
アイドルが好きっていうことだけで、マクに近づいているやつ

ムカつく!あたしがそばに居るってのに、わざと近づいて来たわね!!この女!!

まぁ、でもマクは断るでしょーー

「マクーー」

あたしが呼びかけると、マクは間髪入れずにこう言った。

「行く!!」

その言葉に、あたしの目の前は真っ暗になる。
マクは嬉しそうに、ゆりあに話しかけた。

「これ、すごい倍率高くておれ取れなかったのに!ゆりあちゃん、すごいね」

マクが屈託ない笑顔を向ける。
あたしだけの名前呼びも、いつのまにかマクはゆりあにもしていた。
でも、悔しくてもアイドルなんて知らないから、会話にも混ざれない

転校初日に一番最初に話しかけてくれたのは、あたしなのに。あんたらよりも、あたしの方がマクといる時間長いのに。

あたしは、悔しくて唇をギュッと噛み締めた。

マクも、あたしの気持ちに、全く気付いてない!!

他の女子も、あたしを横目で見ながら、マクとアイドルの話をしだす。

なんなのよ!みんなしてあたしのことを、嘲笑ってるわけ?ああ、もう!一刻も早くここから抜け出したい!

あたしの願いが天に届いたのか、途端にチャイムが鳴りだした。

その瞬間あたしは、何も考えずに校舎に向かって走りだす。
マクが追ってきてくれるのを期待してたけどーー
マクはあたしがどっか行ったのにも気づかずに、ゆりあたちと話してる。

「ムカつく!!あのバカ!」

絶対にあとで、マクにこのストレスをぶつけてやろうって思った。でも、同時に不安が、あたしの胸を燻る。

ーー本当に戻ってきてくれるのかな?

もし、このまま他の女と過ごすようになってしまったら?うるさいあたしのことなんて、嫌いになってしまったら?

そう考えると、あたしはこの上なく不安で泣きそうになった。
このストレスをどこにぶつけたらいいのかわからなくて、涙が出そうになるのをグッとこらえて、あたしは誰もいない教室へ走ったのだった。


「あーあ。かおりん、走っていっちゃったぜ?」

水無瀬が頭をかきながら、俺に言った。

「失敗どころか大失敗しちまったな。
かおりんももっと、素直になればいいのに」

「あいつがツンデレなのは、昔からだ。」

俺は、呆れたように言う。

「つか、マクのやつ、かおりが走っていったのに、何も気づいてねぇ。あのバカ」

「ゆりあちゃんかぁ、なかなか手強いな。
清楚だし、おしとやかだし。かおりんもがんばんねえと、まじで持ってかれるぞ。
男子の大半が、好きなんだ。ちょっと、これは危ねえかもな」

「二つの意味で、な」

俺は、やれやれと頭を抱えた。

「今後は男子の反感も買いそうだな」


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