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第三話 かおりの思いと、不思議な男。
しおりを挟む「うん!みきちゃんもーーー
ーーてあれ?」
おれは、野亜池 真久。
おれは、かおりちゃんがいないことに気づいた。
おかしいな。さっきまで後ろにいたのに
「マクくん、どうしたの?」
おれがキョロキョロしていると、ゆりあちゃんが心配そうに、おれの顔を覗き込んでくれた。
「あ…いや、かおりちゃんが、さっきまでここにいたんだけど、姿がみえなくて」
おれが言うと、ゆりあちゃんは優しく微笑んだ。
「ああ。湊崎さんならさっき校舎へ戻ってたわ。
彼女、日直だし、仕事があるんだと思う。心配しなくても、大丈夫よ」
「…そっか」
おれは少しだけ、寂しかった。
いつもそばにいてくれたから、離れると急に不安になる。
「で、集合時間決めない?」
おれが不安に思ってるのがわかったのか、ゆりあちゃんが、柔らかく微笑んでくれた。
タクトのチケットだって2枚しかないのに、笑顔でおれに渡してくれた。絶対、他の人と行きたかったはずなのに。
本当に、やさしいな
かおりちゃんに、少し後ろめたさを感じながらも、タクトに会いに行けると思うと嬉しくて、ゆりあちゃんと明後日の日曜日、約束をした。
ーー大丈夫。まだ時間があるし
「マク!」
しばらくすると、女子の間を縫ってゆきやが話しかけてきた。うしろにみなせも続いてた。
「お前、3秒台とか化け物だろ。先生も上に報告しなきゃとかなんとか、ぶつぶつ言ってたぜ」
その言葉に、おれはうれしくて、胸が熱くなる。
ありがとうと、言おうとした時だった。
「つーのは、前置きで」
いきなり、ゆきやがおれの顔を片手で掴む。
「ぐむむ…」
「お前、バカなのか?これじゃあかおりと仲直りどころか、さらに悪化させたぞ」
ゆきやが、眉間に皺を寄せながらおれに言った。
「ぐむ?」
え?
状況が理解できないでいると、みなせも頬をかきながら、渋い顔になる。
「しかも、さらに深刻なことに、男子にも喧嘩売ったな、お前」
え?何の話?
「ゆりあちゃん、クラスの男子の半分が狙ってたんだ。これは、荒れるぜ?」
あまりにも多い情報量に、おれの目の前は、真っ暗になった。
ーーあたしは、ものすごい速さで階段を登った。
その間も、胸の中はずっと、もやもやと不安の渦に呑まれていた。
教室が真っ暗なことを確認すると、あたしは静かに中へ入る。
え?
信じられない光景に、あたしは目を疑った。
中へ入ると、先客がいたのだ。
いや、生徒じゃない。
鮮やかな金髪に、青く光る華やかな制服。
ううん、軍服だと思う。
その人物は、最初あたしに背を向けてた。
でも、扉の音で気づいて、振り返る。
青く透明な瞳に、整った鼻筋。
華やかな衣装にも負けないくらい、その人物も美しかった。
「あれ」
その人物は、言った。
「まだ戻ってこないって思ってたんだけど」
通りが良くて、余裕ぶった声だった。
よく見ると、その人はマクのカバンを漁ってた。
あたしは、声にならない声で、言う。
「な…に、やってるの
その席は…マクの席よ!」
「知ってるけど」
その人物は、あたしの注意に悪びれる様子もなく、そのままバックを再び漁り始める。
「湊崎 かおりでしょ?」
何かをマクのバックに入れた後、思いついたようにあたしの方を振り返って、その人が目を細めた。
なんで…知ってるのよ?
あたしは名前を当てられ、少し身構える。
「あー、警戒しないで。僕、悪いやつじゃないし。」
男が、あたしが警戒してるのに気づいて言った。
「は?」
どう考えても怪しいわよ!
マクのカバン漁るし、意味わかんない軍服なんて着てるし!!
あたしは心の中でそう叫びながら、そのまま後退りして教室を出ようとした時だった。
「あーあ。僕の話聞いとかないと、後悔するけどなぁ?」
男が、あたしに向かって言った。
だけどあたしは、シカトして、出ようとする。
「聞いた通りだ。想像の上をいく扱いづらさだね。僕ならお手上げかも」
男が、あたしを見て、やれやれとせせら笑うように言った。
「喧嘩売ってるの?」
あたしは、つい我を忘れて、怒気を含んだ声になる。
言っていて、あたしはすぐに、自虐に入った。
何であたしってゆりあみたいに、優しくなれないんだろう。
いった瞬間に、ゆりあや、マクが浮かんできた。
さっきまで止んでいた胸の痛みが、またチクチクと痛みだす。
あたしの突っかかるような言葉を聞いて、男はフッと優しく笑った。
「ごめんごめん。そんなつもりじゃないんだよね。
からかいがいがあるなと思ってさ。
ーーあのヘタレーーいや、マクと喧嘩でもしてるんだって?」
そういうと、男は、どこから取り出したのか、おもむろに砂時計をマクの机の上に置いた。
「?」
あたしが訳分からずに戸惑っていると、男が話し出した。
「シンデレラって、知ってる?」
突拍子もなさすぎて、理解するのに5秒はかかったと思う。男が、さらに付け加える。
「12時になれば魔法が解けて、ドレスも靴も全てなくなっちゃうやつだよ」
「……それは、知ってるけど」
あたしが怪訝な顔で言うと、男がうなづきながら、ほほ笑む。
「まぁ、騙されたと思って聞いてよ。今は、分からないかもしれないけど、あと何日かしたら、分かるからさ。」
そう言うと、男が意味深に、目を細める。
なんか、見透かされてるみたいだ。
「この砂時計も、シンデレラとほぼ同じなんだ。
上の砂がなくなったら、終わり。タイムリミットがある。
シンデレラと少し違うのは、一度限りじゃないってこと。ひっくり返したら、また砂が落ち始める。何事もなかったかのようにね。」
男が、読めない表情で言った。
「本当に切ないよ。
だって大切な人だと、思ってた人も、上の砂がなくなると、自分に関する記憶が、リセットされてしまうんだから。
つまり、大切な人が僕たちのことを、忘れてしまう。
でも、砂時計をひっくり返すと、また砂がなくなるまで、僕たちはーーー別の場所で、大切な人を作って、同じように別れるーーーー
そうやって、僕らは歴史を守ってるんだ」
男が話を区切る。終わった後も、あたしは意味がわからずに、ただ黙って砂時計を見つめていた。
何の話?てか、こいつは誰なの?
あたしは、男の胸元に、キラッと砂時計の紋章があるのが見えた。
砂時計?
なんだろう。なんか、なにかを魂が叫んでる気がする。
あたしが、顔を顰めて、黙りこくったのを見て、男がフフッと優しい表情になった。
「出会ったのも、何かの縁だよね。
そこで心優しい僕が、君に助言してあげよう。」
男は、静かに言った。
「この回のタイムリミットは、もうそこまで来てる」
あたしは、どう言う意味か分からなかったけど、何故か心臓が激しくなり始めた。窓も開いてないのに、風が吹き始める。
「ーー早く、素直になりなよ?喧嘩別れなんて、くだらないことで、後悔する前にね」
柔らかい風が、あたしと男の間を吹き抜けてゆく。
男の輝く金髪が、キラキラと揺めきながら、風にそよそよとなびく。
「まぁ結局、別れは、止められないんだけどね」
一瞬、ボソッと男が漏らした。
その顔は、なぜだか、本当に切なかった。
それを見た後すぐ、突風があたしに向かって牙を向く。
あまりの風の威力に、あたしは思わず腕で顔を庇う。
しばらくして、風が止む。恐る恐る腕を下ろすと、男の姿はもうなくて、砂時計も見当たらなかった。
夢だったのかと思って、あたしは、しばらく呆然としてた。
教室の外から、みんなの話し声が聞こえた。
あたしはようやく我に返る。
やばい!!鉢合わせる前に、どっかに行かないと!
慌てて自分のバックを引っ掴むと、一目散に教室を出たのだった。
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