異世界転生だと思ってたのにただのタイムスリップでさらに歴史が変わってしまいました

桜ふぶき

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それぞれの思いを胸に

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一方、リビングである。

「それで」

出されたお茶を飲みながらエリオットが真剣な顔つきで、口を開いた。キッチンの大きなテーブルにみんなで座り、雑談をしている途中であった。エリオットが続ける。

「あたいたちの目的はここに遊びに来たわけじゃない。過去が変わり、歴史が動く前に止めるのが真の目的だよ。
ーー単刀直入に聞こう。歴史が変わったのはあんたらのせいなのかい?」


エリオットの言葉にリアムたちはさっきまで談笑していたが、話をやめ、含み笑いをしながらエリオットを見つめ黙っている。
まるで時間が突然止まってしまったかのような沈黙が続いた。
エリオットの質問に、オスカーが少し小馬鹿にしたように鼻で笑いながら言う。

「ふん。言うはずがないでしょう?第一変えてないといくら弁解されたところで信じる気は全くありませんがね。」


「うっわ、やなやつ」

ミシェルがボソッと漏らすもののオスカーに睨まれると、すぐに口を閉ざした。レグルスが冷静に言う。

「その通りだ。いくら俺たちが違うと否定したところで根拠がない。信じろと言うのも無理な話だろう。そのために見張りがついている。」


「そうだね。これはあたいが悪かった。質問を変えよう。

自分たちの過去が変わったことについて、あんたたちの見解を聞きたい。どう考えている?」

エリオットは番人たちの表情をじっと観察した。向かいにいたリアムがフッと微笑しながら静かに口を開く。

「見解ですか。そうですね」

というと、3人を見定めるように真っ直ぐ向き直った。

「今回のことは引っ掛かることが多いように感じます。なにかが、のどにつっかえてるような気がすると言いますか」


「僕もそう思いますー」

リアムの言葉にライトが同調し、うなづいた。

「管理長はこの前までいたロストチャイルドのことを覚えていますか?」


「ああ、覚えていますよ。あのバカそうな子供でしょう?たしか、浅田りんごでしたかね」

リアムが少し笑うがすぐに真剣な表情にもどる。

「過去へ送り届けた際、なぜか彼の周りには不自然なほど過去が変わっていることを知らせてくれるキーポイントが沢山ありました。それに、ここへ来た場所もです。」


「場所?」

エリオットが首を傾げて怪訝な表情で尋ねる。

「昔までは、ロストチャイルドはいつどこに出現してもおかしくはありませんでした。時空が歪むからです。ですが、それでは来てはいけない場所にまで来てしまうかもしれないからと、結界が貼られることとなったんです。
そして、その場所は、中央部と政府管理区ーーそして」

リアムが一息置き、今までにないくらい真剣な表情でエリオットたちを見据えた。そして、ゆっくり続ける。

「ここーー時の番人の居城周辺なんです」

エリオットが少し驚いたような顔をした。

「俺も腰が抜けかけたぜ♪」

不意に背後から調子のいい声がする。振り返るとシリウスが立っていた。オスカーの顔が少し歪む。いつになく真剣な面持ちでシリウスが口を開いた。

「ロストチャイルドはここへくる前後の記憶が抜けて混乱をしていた。たまにそういうロストチャイルドもいるが、時空の歪みを認知している奴がほとんどだ。」

そういうシリウスに、オスカーが少し早口に捲し立てる。

「結界は万が一の対、時の番人用の対策や、テロなどに備え強固に施してありますし、メンテナンスも欠かさず毎日している。いちロストチャイルドごときがそう簡単に破れるはずがない。」


「まさか、誰かが破ったということーーいや、そんなことが起きたら真っ先に管理棟へ信号が行くはずじゃ」


「未来政府関係者なら破れるかもしれないね。結界の管理棟へは未来政府のカードで行けるはずだ。しかし、何故それを報告しなかったんだい?」

エリオットの鋭い眼光が、番人を捉える。オスカーもリアムたちを見る。疑いの感情があるのは明らかであった。
リアムがふぅと息をつき、静かに話す。

「話したところでどうなりました?
恐らく解決するどころか天上会議はあれに荒れたはずです。1日では終わらなかったかもしれません。」


「しかし報告はーー」


「わからないんですか?それでは犯人の思うつぼじゃないですか」

珍しくライトの口調が荒くなる。横にいたミシェルがポンポンと、背中を軽く叩きなだめようとした。

「お前になだめられるの、なんか屈辱ですー」


「ぐ、なんなの…。おれせっかく落ち着かせようとしたのに、返り討ちにあうって…」


「ほら、よしよし。いい子だな♪」

泣きそうになっているミシェルをみてすぐにそばに座り、慣れているかのように、落ち込んでいるミシェルの頭をすぐにシリウスが撫でる。


「僕らを疑うのは大いに結構です。逆の立場だったら真っ先に疑うでしょうしね。しかし、僕らは僕らなりのやり方できっちり犯人には罪を償ってもらうつもりです。向こうがその気なら僕らも容赦なく叩き潰します」

はっきりと言い放ったリアムや他の番人の淀みのない態度にエリオットたちの間に沈黙が流れた。

たしかにーー

嘘を言っているようにはあたいには見えないね。悔しがっているのがひしひしと伝わってくる。

なるほど、今回はどうもきな臭い気がする。ロストチャイルドの時代が変わっていたことも、そこが番人の過去の時代だったことも。
何もかもが辻褄が通り過ぎてる
まるで、彼らを疑ってくださいと言わんばかりの用意周到さだね


「ああ、今の僕の素晴らしい言葉に心を動かされて、僕らを疑わなくなるのはやめてくださいね。」

さっきまでとは違い、リアムが戯けた口調で言う。

「自分の目でみて、そして納得がいくものだけを信じてください。

ーー人が言うのだけでは真実はわかりませんから」


「ーーーー」

そういうリアムのなんとも言えない表情にエリオットは一瞬言葉がなくなった。

「わかってますよ。ちなみにですが私の心は一ミリも揺れ動いていませんからね。グレーにもなっていません。あなた方はまだ真っ黒です!」


「はははっ!安心しました。」

リアムが軽快に笑い、にやにやしながらオスカーに言ってはいけない一言を放つ。

「ま、それもそうですよね。だってオスカー管理長は部下をシリウスにとられたんですからそれは躍起にもなりますよね!」


「ーーー!!!!」


途端にオスカーの顔が痙攣し始める。その様子にさらに畳み掛けるように挑発した。

「わわっ!言っちゃいけないこと言っちゃったかなぁ。口が滑ったみたいです。忘れてください」


「そういえば、よく彼女、管理長さまのことも話してくれるんですよ♪もしかして俺のことも話してたりしてくれます?」

笑いながらシリウスが便乗して、からかう。すると、レグルスが止めに入った。

「お前たちいい加減にしろ。寄ってたかっていじめるなんてみっともない。管理長は失恋したんだ!そっとしておいてやれ」


その言葉にオスカーが頭を抱え始めた。

「うーん、レグルスの方がとどめを刺しに来てることわかってますか?天然って怖いですー」

ライトが笑う。すぐ横にいた風蘭は苦笑しながら言った。

「相変わらず思ったことを口になさる性格なんだね。レグルス様は。
ま、オスカーに関しては普段嫌味ばっかり言ってるような男だからね。天誅ってもんだよ。これを機に悔い改めるんだね」


「うるさいですよ!!ババ様!!
それに!!私は失恋などしていない!!どいつもこいつも好き勝手に言ってくれますね!!!」

ガバッとオスカーが勢いよく立ち上がり、リアムたちと口論を始めだした。

「ちょっと、なんの騒ぎなのよ?」

いつ戻ってきたのか、ドーフィンがオスカーたちの口喧嘩を呆れたように見ている。

カイルだけが我関せずという顔でため息混じりにお茶を飲み干した。
いつのまにかオズワルドや、ノアも部屋の入り口に立っていた。カイルがノアを見つける。

「戻ってたのか、ノア」


「……」


「?」

機嫌が悪いのか?まあ、いつものことか。

と、すぐに割り切りしぶしぶ、そのままリアムたちの仲裁に入る。


ドーフィンは一人テーブルにつくとお菓子を摘んだ。

ふぅん。
大まかな話は聞こえてきたわ。未来政府に裏切り者がいるって話ね。


バリっとお菓子を噛み砕き、にたあと笑う。

いいじゃない。俄然面白くなってきたわ。退屈はしなさそ。



「……」

ノアは何も耳に入らず、黙り込んだままぐるぐるとオズワルドに言われたことを考えていた。

俺に本当の両親がいたなんてーー

ーーー時を越えれば

なぜ捨てられたのかも、なぜ、未来政府のバッジをつけた写真があったのかもわかるのにーー



葛藤しているノアの様子をみて、オズワルドが心の中でほくそ笑んだ。

想像以上に、効いたようだ。
幸いなことに他の番人はこちらの様子に気づいていない。

ふふ、もうすでにノアは僕の手の中も同然。ゆっくりと他の番人も内側から壊し、消滅させてやるーー

だめだ、笑うなと笑みを必死に堪えながら考えるオズワルド。

が、ある男を思い出しふいに、真顔に戻った。拳を握りしめる。

初代時の番人の世話人、カール・オズワルドであったーー




カール、待っていろ。

お前もいずれーーー




ルイと同じところへ送ってやる




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