異世界転生だと思ってたのにただのタイムスリップでさらに歴史が変わってしまいました

桜ふぶき

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エリーゼの代わりにーー

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僕は、コネリー。
前回のエリーゼの涙を見て何がなんでも支えなくちゃならない。

完全に板挟みだけど頑張るよ


「コネリー、何を笑ってるんだ?とうとう頭までおかしくなったか?
ーーま、あのやろうのところに行くのなんてストレスだよな。わかるぜ」


「アイザック、僕のことを思っているのならもうだまれ。誰かに聞かれていたらどうするんだ」 


「へっ、いい気味だな。返り討ちにしてやる」

アイザックの言葉に、コネリーは靴を思いっきり踏んだ。アイザックが悲鳴を上げ、その場に座り込んだ。
エリーゼがベッドで少し心配そうに微笑む。

「コネリー、本当に大丈夫?やっぱり私がーー」


「コネリーなら大丈夫だ!図太いやつだからな!エリーゼは無理をせずに休んでた方がいい!」


「全然励ましてくれないんだな。死んだらたたってやる。

ーーふう」

コネリーが上着を手に取り扉へ手をかける。そして、震える声で2人に言った。

「じゃ…じゃあ武運を祈っててくれよ」


「骨は拾ってやるさ」

その言葉に、コネリーがアイザックを思い切りにらんだ。そして、部屋を出る。

部屋を出て行ったのを確認して、アイザックが笑いを堪えきれなくなり、大声で笑いながら衝撃の一言を言った。

「あの様子じゃ全く気づいてなかったな。まだ1時間前だっていうのに!」

エリーゼが困ったような顔をして呆れ返る。

「もう、アイザックったら」


「ごめん。協力ありがとう、エリーゼ。でもこれは本当に殺されるかもしれないな」




やばい…。怖すぎて足が震えてきた
エリーゼは毎日あの化け物と一緒にいるんだなんて信じられない。

僕が女でもあいつに恋をすることはまずないね。

粗相のないように、存在を消そう。

僕は石だ。僕は石だ。僕は石だ。


ついに、リアムの部屋の前にやってきた。すう、と大きく深呼吸をし、今日のスケジュールを確認する。
そして、思い切って扉を開けた。


「お、おはようございます…っ!リアム様…っ!今日1日担当させて頂くコネ…」


そこでコネリーの言葉が止まった。
真っ先に目に飛び込んできたのは空っぽの部屋だった。リアムの姿はなく、ベッドはシワひとつない綺麗な状態だった。


あれ?なんでいないんだ?
寝てもないなんて、ちょっとおかしくないか?

どうしよう


緊張が緩んだからか突然、コネリーの腹が鳴る。

緊張しすぎて起きてから何も食べてなかったからな。お腹すいたよ。


そうだ!リアム様がいないうちに何かつまめるものないかな?一個くらいなくなってたってわからないはずだ。
このままじゃ腹の減りすぎでお腹痛くなるし、そんなんじゃいい働きを見せられないだろうし!


それっぽい言い訳を並べるコネリー。すぐにソファの前の机に紅茶セットがあるのに気づいた。その横にはお菓子もある。


たしかあの紅茶、特注品って言ってたの聞いたことがあるよ。わざわざ他国から取り寄せたんだとか…


いいよね!!ひとつくらい!帰ってくる気配もないし。紅茶と一緒に食べよっと。


と、ポットを沸かし始めるコネリー。
その間に部屋を見渡した。


うわ。机の上、すごい量のプレゼントや手紙でいっぱいだな。
世界的に熱狂的なファンがいるから、当たり前だけどすごいや。僕もファンが欲しいなぁ

ん?なんだろう。この瓶


コネリーは手紙の上に添えてある数本の瓶に視線をうつした。中は光る粉状の物体が入っていて、緑色でゆらゆら揺れていた。


こんなもの初めてみた。高そうなやつだな。中はなんなんだろ

「誰?」


突然背後で鋭い声が聞こえた。その声の主にビビり上がり飛び上がるコネリー。

「リ…アム様…っ!」


いつ部屋に入ってきたのか、眉間にシワを寄せたリアムが立っていた。

「使用人?ーーここがどこかわかってているんだよね?」


「いや!僕は…っ、エリーゼの代わりに1日お仕えすることになったコネリーといいます…っ!」


「コネリー?」

名前を聞いて少しだけ考えるリアム。しかしすぐにああ。とうなづいた。

「コネリー・スコットだったっけ?エリーゼの幼なじみの。」


「あ…っ、は…いっ!」

掠れる声で返事をするコネリーに、リアムがふっと少しだけ笑った。 

「ふうん。コネリー、気がきくじゃん。」


予想外のリアムの言葉に、コネリーは状況が読み込めなかった。戸惑っているコネリーに、リアムがポットへ視線をやった。ようやく理解すると、ドッと滝のような冷や汗が流れ落ちる。


僕が飲もうとしてたポット!!
よかったっ!飲んでなくて本当によかった!神に感謝だっ!


感激のあまり半ば涙目になりながらポットをコップに注いで紅茶を入れ始めた。 

リアムの前へぎこちない手つきで紅茶のカップを置く。

置いた瞬間に、ホッとするのも束の間で盛大にお腹が鳴ったのだった。
思わず、お腹を押さえ真っ青になるコネリー。


やらかしてしまった!よりによって近くにいる時に限って!ああ!本当に僕は殺されるかもしれない!もっと楽しいことをしておくんだった!

コネリーが人生の後悔をしていると、リアムが口を開いた。

「まだ勤務前だし。これ食べれば?こぼさないでね」


みると、さっきまでコネリーが食べようとしていたお菓子がリアムの手の中にあった。リアムは読めない表情をしており少なくとも怒ってはいないことを確認すると、コネリーがいそいそと受け取る。

「も…っ、申し訳ありません!緊張して何も口にしていなくて!!」


「聞いてないけど」


「うぐ…すみません…」

もぐもぐと美味しそうに食べているコネリーをチラっと目をやるとそのまま黙って紅茶を飲み始めた。


おかしいぞ
なんでこんなに機嫌がいいんだ?
いつもなら少しでも気に入らないことがあると脅す短気の極みなのに
それにいち使用人の僕の名前を知っていたことにも驚きだ。

なにか変なものでも食べーー


「コネリー・スコット。」

突然名前をよばれ、ふぁい!と声が裏返るコネリー。

まさか、悪口を心の中で言ってるのが聞こえたんじゃ…


コネリーの手が汗でぐっしょり濡れる、リアムがそのまま続けた。

「祖父母にもらった度のあっていないメガネを今でも大切に愛用していて、性格は鈍感で鈍いけど義理はあつい」


ーーー!!なんでメガネのこと!
それに、僕の性格も


「エリーゼの幼なじみでもう1人の幼なじみのアイザック・カーターとも仲がいいーーー合ってるよね?」


「は…い」


アイザックのことまで知っているのか!

すると、コネリーの心を見透かしたようにリアムが少し笑いながら口を開いた。

「主人なら使用人のことは知ってて当たり前じゃん。お前たちのことはなんでも知ってるよ」

また、リアムが楽しそうに読めない表情でコネリーを眺めた。

「なんでもね。

ーーアイザックにも会いたいな。僕のことをすごく慕ってくれてるみたいだし。」


リアムが黙って立ち上がる。もうリアムは笑っていなかった。コネリーは全身に銃弾を浴びるような感覚に陥った。身体中から汗が流れ落ち、目には水滴がたまる。体が震えて、心臓の鼓動が激しく鳴り出した。

「気をつけなよ。お前たちの行動はすべて監視してる。下手に喋らない方がいいんじゃない?」


鋭く、冷たい視線がコネリーを突き刺す。全て見透かされているような気さえした。瞳孔が開いたまま見つめられ生きた心地がしなかった。


しばらくすると、リアムはそのまま黙って震えるコネリーを通り過ぎ、机の前まで歩いた。黙って緑色の瓶を眺めるリアム。するとふいにコネリーに尋ねた。

「お前は未来を信じる?」


「え…」

予想外の質問にコネリーが面食らった顔をする。それを一瞥し、続けた。

「僕も最初は信じなかった。頭がおかしいだけかと思ってたよ。」


リアムの顔が眉が瞳が歪んだ。コネリーはその顔から怒りと憎しみを感じた。震える声で言う。

「だけど…
未来を見た。これから何が起きるかもすべてね…っ!」


さっき見た数本の瓶を握りしめるリアム。怒りからか、その手が震えていた。
コネリーはあまりの剣幕にただただ震えて立っていることしかできなかった。


なんだ?未来?何を言ってるんだ?情緒不安定も大概じゃないかっ!
それよりも怖すぎて足が震えてる。心臓もやばいくらい鳴り響いてる…っ

わかったのは、アイザックの悪口がリアム様の耳にも届いてたってことーー!!

あのクソバカ!!おかげで僕も殺されそうじゃないか!!死んだら呪ってやる!



「僕はあんなふうにはならない…っ!僕に仕打ちを与えたものは全員容赦しない!片っ端から潰していくって決めたんだ…っ!自立して、誰からも文句を言わせないくらいもっと権力がほしい!!王室にーー」


そこから言葉が途切れる。リアムの肩が震えていた。何か辛い思い出を思い出すかのように、唇を噛み締めている。


机に手をつき、ようやく息を整えるリアム。そしてコネリーの方を振り返った。

「取り乱しちゃった。
ーーあれ、震えてるね。僕が怖い?」

さっきまでの怒りに満ちた表情はきえ、余裕のある顔に変わっていた。慌てて首をふるコネリーの顔を片手で強引に掴んだ。

リアムの目に鋭い狂気的な光が宿る。

「覚えときなよ?僕がその気になればお前たちを消すくらいどうってことないってこと」


冗談を言っていないことは表情からして明らかであった。コネリーの全身の筋肉が恐怖に悲鳴を上げていた。精一杯うなづくコネリー。それを見て顔をパッと離す。

「あーあ。汗かいちゃったじゃん。

ーーシャワー浴びるからでてってくれる?コネリー」


リアムの言葉に、涙目でうなづくと、全速力で部屋を走って出て行った。コネリーが出て行ったのをみると、リアムの眉間が痙攣しだす。


僕は、未来を知っている
父上の不正の告発のあと、続けて僕もバッシングされることになった。両親に見捨てられた僕は周りからひどい仕打ちを受けた。それもはらわたが煮えくり返るけど、まずはコネリーとアイザック。

この反大統領のデモの中心人物がアイザック・カーター。

ーーそして、コネリー・スコット


こいつらによって僕は耐え難い仕打ちを受けることになったんだ。


ぐしゃっと手紙をにぎりつぶした。



容赦はしない。
必ず、僕が受けた以上に仕返してやる。





はぁ、はぁ!!と、全力で廊下を走り抜け、激しく呼吸するコネリー。


怖かった!死ぬかと思ったよ…っ!
すごいオーラだったから、震えが止まらない!どうやってここまできたかもあんまり記憶がない

初めて見た
いつも機嫌悪いけど、あんなに余裕がなさそうなのは初めてだった。この頃さらにキツくなったのもそのせいーー?
エリーゼも知ってるのかな?

それにーー!!アイザック!!
あいつはどれだけ僕の寿命を縮めれば気が済むんだよ!!

でもまさか、リアム様が知ってたなんて知らなかった!僕の性格もメガネのことも全て知ってた。メガネに関しては僕も忘れてたって言うのに。


とりあえず、汗を拭わなくちゃ


ーーコッ

「え?」


ポケットに入れた手に瓶のようなものが当たる。身に覚えのある大きさで、コネリーの顔からみるみるうちに血の気が引いていく。


まさかーーー


震える手でそれを取り出す。
リアムの部屋で見たあの瓶だった。
どうやらリアムの声に驚いた拍子にポケットに入ったようだった。

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