【完結】美形サイコパスに気に入られる。

冬田シロクマ 

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少し罪悪感に襲われる。

なんてことない。ただの不法侵入者だ。

受話器をしっかり掴む。
番号を押す指を、わたしはピタッ…と止めた。

…この固定電話は、結構大きな音で押した番号を朗読してくる。

気づいたことに安堵。そしてもし押していたら…と背筋がサアッと冷えた。
体制をゆっくり戻す。

「…はぁ」

少女は、こめかみを抑えた。
かすかな頭痛が襲った。

「…どうしよ」

小さな声が漏れ出る。
窓の外にたまに歩く人。
わたしは、少年の頭が乗っている肩を動かさないよう、大袈裟に手を振る。
それを少一時間か、続けた。
だけど誰も気づく者はいなかった。

「あぁ…」

わたしは…疲れた。
図書委員の仕事に、勉強に、家の掃除もして…

視界がとろける。
だめだと頭で理解していても、まぶたが落ちた。
目をつぶると、すぐに寝てしまうことはわかっていた。



パチッ
少年は目を開く。
わたしは「ひいっ」と声を出しそうになった。
心臓が止まりかけるほど驚く。

受話器に手を伸ばした状態で、少女は固まっていた。
ニコッと笑う少年。

「おはよう」 

優しい声で言う少年。
外の空は明るい。
チュンチュンと鳥の声が聞こえた。

「ねぇ、おはようは?」
「お、はよう」

満足したのか、顔を傾け、わたしの肩に顔をスリスリと擦り付けてくる。
たまに甘えてくる、実家の猫を思い出し、不思議な気分に浸かる。
この人といると、なぜか警戒が薄まる。

近くに顔がある。
オデコが付きそうなほどの距離。
優しそうな瞳は変わらない少年。
幸せそうに目をつぶる。
わたしは受話器と、少年を見比べていた。

「警察に…通報するの?」

ビクッと身体が跳ねる。

「えっ…と、そうしようかと」

なぜかお伺いをたてる。
可笑しな状況に、内心首をかしげつつも、わたしは目の前の少年を、怒らせないように努めていた。

受話器を求め、再び四つん這いになろうとしていたわたしは、少年に腰に抱き締められた。
息が止まった。
そのまま、引きずられるように、抱きつかれる。

「っ…」

たぶん年下だろうに、自分より大きな身体に掴まれ、恐怖に身体が強張った。
引き寄せられ、目の前に座らされる。

ドクドクと痛いぐらいに波打つ心臓と、ニコニコと笑う少年の顔。
わたしは目をいつも以上に見開き、その少年の顔色をうかがっていた。

このまま、真実を隠したまま家族ごっこでもするつもりか?

「ふふ」と笑う少年。

「鋭くて綺麗な目だね。その目が好きだ」

嬉しそうに笑っている。
毒気を抜かれた。

「ねぇ…あの、りりちゃんっ…て言ったよね?わたしを知ってるの?」
「よく知ってるよ」

ニコニコと笑う。
わたしはあまり相手の笑顔を見ずに、話を続けた。

「なんで?」
「調べたから」

調べた?

予想外の言葉だった。

「どういうこと?」

今日、何度目かの言葉を口にした。

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