【完結】魔法も使えない下等幼女

冬田シロクマ 

文字の大きさ
5 / 16

落ちていく間 (幼女目線) 

しおりを挟む
真っ逆さまに落ちていく。

顔は冷たく、無表情。
死にたいなら、仕方ない。
そう赤い瞳の青年は語っていた。

あの頃とは、まったく違う。

昔井戸に落ちそうになった時…わたしの手を掴もうとするその顔は、酷く焦っていた。
もう概に膨大な魔力があったフィーピーは、落ちる途中焦りながらも、軽々とわたしを井戸から出していたが…

あの面影はまったくない。


冷静な今がいいか、さっきの脳内麻薬バンバン出てる状態の方がいいか…

答えが決まってもこの際どうでもいいことが頭に浮かぶ。 
私はへらっと笑い、その男の目にヤバいものとして映った。

「殺して、殺してよ…」

笑い、泣き、小さな声で戯言を言っている。

「…なんで?」

飄々と言う美青年。
意味がわからなげに。
私は涙目で、呆れたように目線だけソイツにやった。

縛って無理やり連れ出された事実を、私は忘れていなかった。
それと、思うこともある。

「たくさんの…病気の人たちを見てたの。
運ばれていく…
疫病を流行らせたでしょ。この国で」

このぐらいでやめとけばよかった。
少し前の情景が目に浮かんだ。
私の口から、ポロポロと涙のように言葉がつらなる。

「人を殺すのがなんとも思ってない人たち…」

最後の最後に侮辱した。
赤い瞳の美青年に目をやる。
冷たい表情だった。
ランプでオレンジ色がゆらゆらと揺れる。
自分の不安定な心を表してるようだった。 
……

まだ死んでない事実に愕然とする。
現実が頭を通過するように、徐々に現状が掴めてきた。
治癒魔法と脳内の快楽物質は、私の身体の治りと反比例して収まっていく。
そして記憶もゆっくり戻る。
さっきまで、頭が半分以上無くなっていた。
それが再生し終わりそうだからみたいだ。
8割方、頭が戻る。

(魔法が使えるのが当たり前の国で、高いところから飛んだくらいで死ねるわけなかったのに…)

自分の考えの浅さを恥じた。
もっと、思い出していく…

無表情な軍人たちに冷たく見下された。
まるで壊れたガラクタを見るような目つき。
岩の狭間にガツン!!!と、大きな音をたて落ちたあと、魔法のようなものに引き上げられた。
ブラーンブラーンと吊るされる。
息を吹き返す魔法を掛けられ、私は痛みで絶叫した。

怒号のような声で泣き叫びながら、よくあることかのように兵士たちは冷たく見守った。
そして、なにやらあの金髪の命令を待っているようだった。

「まだこの子に聞きたいこともある。
丁重におもてなしして。
また縛ったりしたら許さないから」

ニコッとほほえみ、命令している。
神妙な顔つきで頷く兵士たち。
私は痛みで気を失った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

わたし、不正なんて一切しておりませんけど!!

頭フェアリータイプ
ファンタジー
書類偽装の罪でヒーローに断罪されるはずの侍女に転生したことに就職初日に気がついた!断罪なんてされてたまるか!!!

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい

あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。 誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。 それが私の最後の記憶。 ※わかっている、これはご都合主義! ※設定はゆるんゆるん ※実在しない ※全五話

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

キモおじさんの正体は…

クラッベ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生し、ヒロインとなったナディア。 彼女はゲーム通りにいかない悪役令嬢のビビアンに濡れ衣を着せ、断罪イベントの発生を成功させる。 その後の悪役令嬢の末路は、ゲーム通りでは気持ち悪いおっさんに売られていくのを知っているナディアは、ざまぁみろと心の中で嘲笑っていた。 だけどこの時、この幸せが終わりを迎えることになるとは、ナディアは思っても見なかったのだ。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

脅迫して意中の相手と一夜を共にしたところ、逆にとっ捕まった挙げ句に逃げられなくなりました。

石河 翠
恋愛
失恋した女騎士のミリセントは、不眠症に陥っていた。 ある日彼女は、お気に入りの毛布によく似た大型犬を見かけ、偶然隠れ家的酒場を発見する。お目当てのわんこには出会えないものの、話の合う店長との時間は、彼女の心を少しずつ癒していく。 そんなある日、ミリセントは酒場からの帰り道、元カレから復縁を求められる。きっぱりと断るものの、引き下がらない元カレ。大好きな店長さんを巻き込むわけにはいかないと、ミリセントは覚悟を決める。実は店長さんにはとある秘密があって……。 真っ直ぐでちょっと思い込みの激しいヒロインと、わんこ系と見せかけて実は用意周到で腹黒なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:4274932)をお借りしております。

処理中です...