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表情だけ、優しく笑う…あの少年。
だけど、行動をよく見てたらわかる。
なんにも優しくない。
そして誰に対しても冷たい。
だけどたまに助けてくれる、そんな関係だった。

別人だと思ったし、そうであってほしいと願った。
アイツならなにされるか、わかったもんじゃない。
だが…無駄な祈りのようだ。
あの子で間違いないだろう。

リチャード・フィーピー

綺麗な顔立ちの男の子だった。
数々の祖母の魔法の守りを切り抜け、私のところに遊びに来てくれた。

私は無邪気だった。
なんの疑いもせず、リチャードと遊んでいた。
もっと、自分の利用価値をわかっていたらなにか変わったのかな?


そういう私は盛大に傷ついた。
初めて出来た友だちは、大人たちからお金をもらい、私からの祖母の情報を売っていた。

他にも聞いた。
私がこの子に執心のようだから、騙して誘拐し、お婆さまをゆすろうと…


目に涙を溜め、コンクリートの壁の後ろで聞いていた。
やっと魔法たちから切り抜けたあと、こんな傷つく思いをするとは夢にも思わなかった。

軽やかで、きれいな澄んだ声。
間違いなく、フィーピーの声だった。
本当の意味で、幼い私は泣いて、しゃくり上げた。
その音が聞こえないように、私は必死で口元を抑えた。
……

「お婆様のことが知りたいんでしょ」

身も心も子どもの頃の私は、冷たい声色でそう言った。
そう言われ、子ども頃のリチャードは、まるで傷つけられたかのように固まっていた。
それを心底意外に思う。

「…興味ない」

そうゆっくり口を開いたかと思えば、静かに響くリチャードの声。

だけど、私は聞いたんだ。
リチャードが大人たちと話している内容を…

「次は、誘拐?」

せせら笑いながら言った。
リチャードの表情は変わらなかった。
無性に怒鳴り上げたくなる衝動が走る。
だが…

「言って。
私のお婆さまのこと、知りたいんでしょ?
教えてあげるから。」

冷静を装って、ほほえんで言った。
コイツに裏切られて、こんなに傷つけられたとは思われたくなかった。

大したことじゃないように
こういう魔法使い(私を利用しようとした碌でもない奴)はいくらでもいて、リチャードもその中の一人であるかのように。

お前は、取るに足らない、どこにでもいる平凡な奴なんだと。

私の思いを知ってか知らずか、何も言わないリチャード。

彼女は冷笑的に笑った。

「聞かないの?」 
「信じてくれないの?僕のいうこと」

被せるように言う。
かすかに怒りに染まった赤い瞳。
私はここで初めてよくわからなくなった。
疑うような瞳でリチャードを見る。
リチャードの表情は俯いて暗かった。

「誘拐なんか…協力するわけない…!
もとから潰してしまうつもりだったし…」
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