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13 第一王女と偽王子

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『なんでわたしを助けてくれたの?見捨てればよかったのに…』

そうはぶてたように言ってみたことがある。
幼きときのわたしは…の意味がまったくわかっていなかった。

母の臣下たちから、第2王女に少しは勉学を学ばせたらどうか?との声が出たことがある。
それは一理ある。
そうでもしないと、わたしは姉のスペア(予備)としての役目が果たせない。
そして、姉はおしとやかに見え、次期女王にしては大人しすぎると言う声もあった。
それに比べて、わたしの性格は激しく、民に女王の気質を彷彿とさせた。
だからだろう。

だが、姉は、それはありえない。と一括した。
1番上の子が王座を継ぐことは代々歴史的に決まっている。
私が死ぬことはない。
死ぬとしたら、お前らが私を陥れたときだ。
そういかった姉は、大勢の前で言っていた。
それでほとんどの民と臣下は口を閉じた。
だが、それでもしつこく女王に進言した者がいる。
わたしに、必要最低限の勉学を…と。

あるとき、その人らは殺された。

屋敷で夜中、盗っ人に襲われ、金品と共に命もなくなっていた。

お姉さまだ……

そう思った。
姉の顔を見ると、冷たい瞳をしていたが、急にニコッと笑った。
わたしはゾッとした。
そこまでやる必要があったかと。
玉座に座った女王は、姉を見て「はぁ」とため息をつく。

あの軍人でもある彼らが、ただの盗っ人に命を奪われるはずがない。

わたしの頭で悲しい事実が静かに響いた。
呆れた様子の母の顔。
姉は、「なにか?問題でも?」といった顔で返した。

『きょうだいなんて邪魔なだけなのに』

そう言ったあの偽王子の言葉が、頭の中でうるさくわたしにこだまする。

わたしだって、よくわかっている。

きょうだいかんでの争いは、長い歴史の中でよくあることだと。

『見捨てなかったのは、あなたが可愛かったからよ。…それだけ。』

それ以外に理由はないと姉は言った。
信じたかった。

この男がやってきて…わたしたちの関係のもろさが浮き彫りになった。
姉は好きだが、尊敬してるが、自分の立場が危うくなったとき、妹であるわたしを殺さないとは言い切れない。

賢くなるしかないのだろうか?
姉を上回るぐらいに?
どうやって……

不安で心が揺れる。
それを誤魔化すかのように、乗ってる馬車は、ゴトガタと揺れた。
そんなときに、あの質問だ。  

「寵愛?」

まるで聞いたこともない言葉のように聞き返す。
正直今、こんなことで頭を使う気力はなかった。

「【性悪】というのはただの噂だとわかった。」

ほほえむ王子。
わたしは疲れた目をしている。

言葉の先が、今の頭じゃ読めなかった。

「だけど男を取っ替え引っ替え、というのは本当みたいだね。」
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