溺愛攻めを怒らせた

冬田シロクマ 

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疑い深くなったハル

「え…?今、何て言ったの?」

ロンはハルの頬の涙を、自分のパーカーの袖で拭ってあげた。
されるがままのハルは、酷く幼く見えた。

「なに、ハルどうしたの?」 

努めて優しい声で話す。
心が壊れそうなハルの肩を、優しく擦った。
ハルに、腰に抱き着かれる。
グリグリと頭を、お腹に擦りつけられた。
不安そうに、…何かに怯えている様に見えた。

「ハル、震えてる…」

さすさすとハルの肩、腕、背中と順に擦る。
ハルは安心仕切ったように、僕の腰にギュウウと抱きついた。

かわいい…

サラサラとしたハルの綺麗な髪を撫でる。
僕の方をゆっくりと顔を上げ、見た。
ハルの目が涙で滲む。
ハルは辛そうに、苦しそうに泣いていた。

「なんで…?泣か、ないで…」

慰めるのは得意じゃない。
たどたどしくも、ロンは何とか言葉を探す。
…少し時間が経ち、ハルがゆっくり口を開いた。

「ロンのせいだよ」

少し泣き止んだのか、いつもの優しい口調で言った。

「なんで、僕が…」

「俺が泣くのはロンの事についてだけだよ」

優しく透明感のある声が響く。
ハルは顔を上げ、柔らかな笑みを浮かべていた。いつものように口角が美しいアーチを描く。

泣いた後にも関わらず、かっこいい…

その表情に魅了された。
僕は愛おしくて、ハルの顔を両手で覆うようにそっと持った。
「ん?」と優しく問うように、ハルは穏やかな瞳をでロンに向けた。
ロンの黒い瞳と視線が混ざり合う。
僕はハルの前髪に口付けをした。
ハルは驚いた顔で固まった。



なに…?何されてる?
ハルは顔を上げ、ロンの顔をまじまじと見た。

「ハル…」 

ロンは嬉しそうに、照れたような笑みを浮かべでいる。
俺はポカンとした表情をしていた。

「なに…?」

珍しくフリーズしたハルの表情だ。
少しでもハルを動揺させたようで、僕は嬉しくなった。

好きだよ。

心の中で呟く。
言っても信じてくれないから、行動で示すしかないと思った。

「ハル、大好きだよ」

気持ちが溢れだすように言ってしまった。
その気持ちを伝えるように、優しく落ち着かせるようにハルに抱き着く。
人に優しくする方法は、いつも昔ハルが僕にしてくれていた事だった。
腰に回されている長く太い腕が強くなった。

「…どこにも行かないで」

いつものハルの低く落ち着いた声。
なのにこの時ばかりは、子どものように聞こえた。
ハルの目からポロポロと涙が溢れる。

この前まで僕の首を締めてきたのに…と不意に思った。

「どこにも、…行かないよ」
 
安心させるような温かい声。
不安を取り除くように、ロンはハルの頭を撫でる。
僕の中では、かなり勇気を振り絞って言った言葉だった。
僕は自分から、ここまでの優しい声が出せることに驚いた。



『ほんとう…?』

そう言いそうになった。
酷く無防備に。 

嘘かもしれないのに…

ロンに抱き着きながら、涙が止まらない。
ロンが来ているパーカーが、どんどん俺の涙で濡れていく。
よしよしと頭を撫でてくる優しい手が、俺をどんどん勘違いさせた。
そして狂った。昔の俺は。
優しくされた後にロンに手酷く裏切られたから

辛くて、ロンが好きすぎて…胸が張り裂けそうだった。
信じて、また裏切られるのはもう耐えらない。
またロンに拒絶されたら…もう俺は生きていけないかもしれない…


「…本当かなぁ」

軽やかな、いつものハルの声。 
だけど、まったく声は泣いていなかった。

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