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動きだす
騎士様は勇者になりたい
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最初は単なる好奇心だった。
俺だけが見たことのないフォレストの至宝。
俺が一番尊敬する人の宝物で、カイの運命…
子供の頃からカイとクラウスはいつも一緒だった。
あいつらはいずれ国を背負う。
俺とは違う。
自由でおおらかなサファとは違い、フォレストの高位貴族の中には俺に敵意を向けてくる者も多かった。
母は王女でも父は平民、子供の世界は残酷だ。
力をつけて彼奴らを見返す。
それだけが俺の原動力だった。
不貞腐れ苛立つ俺を諦めずに導いてくれたのはアルト様だ。
帝王学を学ぶ二人と違い、俺には時間があった。
いつの間にか公爵邸には俺の部屋が作られ、子供の頃は自分の屋敷にいるよりフォレストにいる時間の方が長かった。
アルト様は言ったんだ。
「ルーカス、背負う国がないから出来る事があるんだ。お前はこの世界を救う勇者になればいい…」
アルト様は俺にいろんな話をしてくれた。
たった一人の娘を異世界の都合で奪ってしまった事を申し訳なく思っていた事、聖女様の母君の最期を後悔なく看取って欲しいこと…
アルト様を一人にした聖女様にもその息子にも腹を立てていた俺は衝撃を受けた。
俺達の事も知らず平和な国で呑気に暮らしているんだろうぐらいの認識だったんだ。
その裏にあったアルト様の思いを聞いて目が覚めた。
ここは俺達の世界だ。
聖女様に頼り、助けられる事が当たり前ではいけない。
そう思って周囲を見回すと、景色は違って見えた。父も母もサファもドラゴアもフォレストも、皆が同じ世界の実現に向けて動いていた。
浄化石のシステムが確立し、憂いはシールズのみ…謎に包まれた国のどんな動きにも対応出来るように準備を続けてきた。
アルト様の背中を追いかけながら、シールズとの国境にも何度も二人で足を運んできた。
アキが帰ってきたら必ずシールズは動く…俺達皆の共通認識だ。
初めて会ったアキの印象は綺麗な子だな…思ったことが全部顔に書いてあるのが面白いな…その程度だった。
それよりもカイの狼狽ぶりが面白かった。
初めてアキを抱き締めた時、今まで感じたことのない気持ちが沸き上がるのが分かったんだ。
首筋から香る甘い香り。
俺の中の獣人の本能が、アキを求めているのが分かった。
暫く会えない間にカイとアキの距離が近くなってることに苛立つ。
本気で誰かを求める事なんて一生ないと思っていた。
俺を求める人間は山程いたし、避妊魔法のあるこの世界は性に奔放な事にも寛容だ。
性欲は適当に発散すればいい。
求められたら応えるが、その先を期待されても困る。
誰にも本気にならない男として適当に楽しくいこう。
そう思っていた俺が初めて欲しいと思ったんだ。
竜人の番への執着が桁違いであることは分かってる。
あいつがアキを諦めることは絶対にないだろう。
でもねカイ、俺も欲しいと思ったんだ。
だから正々堂々、正面から奪いにいくよ。
俺だけが見たことのないフォレストの至宝。
俺が一番尊敬する人の宝物で、カイの運命…
子供の頃からカイとクラウスはいつも一緒だった。
あいつらはいずれ国を背負う。
俺とは違う。
自由でおおらかなサファとは違い、フォレストの高位貴族の中には俺に敵意を向けてくる者も多かった。
母は王女でも父は平民、子供の世界は残酷だ。
力をつけて彼奴らを見返す。
それだけが俺の原動力だった。
不貞腐れ苛立つ俺を諦めずに導いてくれたのはアルト様だ。
帝王学を学ぶ二人と違い、俺には時間があった。
いつの間にか公爵邸には俺の部屋が作られ、子供の頃は自分の屋敷にいるよりフォレストにいる時間の方が長かった。
アルト様は言ったんだ。
「ルーカス、背負う国がないから出来る事があるんだ。お前はこの世界を救う勇者になればいい…」
アルト様は俺にいろんな話をしてくれた。
たった一人の娘を異世界の都合で奪ってしまった事を申し訳なく思っていた事、聖女様の母君の最期を後悔なく看取って欲しいこと…
アルト様を一人にした聖女様にもその息子にも腹を立てていた俺は衝撃を受けた。
俺達の事も知らず平和な国で呑気に暮らしているんだろうぐらいの認識だったんだ。
その裏にあったアルト様の思いを聞いて目が覚めた。
ここは俺達の世界だ。
聖女様に頼り、助けられる事が当たり前ではいけない。
そう思って周囲を見回すと、景色は違って見えた。父も母もサファもドラゴアもフォレストも、皆が同じ世界の実現に向けて動いていた。
浄化石のシステムが確立し、憂いはシールズのみ…謎に包まれた国のどんな動きにも対応出来るように準備を続けてきた。
アルト様の背中を追いかけながら、シールズとの国境にも何度も二人で足を運んできた。
アキが帰ってきたら必ずシールズは動く…俺達皆の共通認識だ。
初めて会ったアキの印象は綺麗な子だな…思ったことが全部顔に書いてあるのが面白いな…その程度だった。
それよりもカイの狼狽ぶりが面白かった。
初めてアキを抱き締めた時、今まで感じたことのない気持ちが沸き上がるのが分かったんだ。
首筋から香る甘い香り。
俺の中の獣人の本能が、アキを求めているのが分かった。
暫く会えない間にカイとアキの距離が近くなってることに苛立つ。
本気で誰かを求める事なんて一生ないと思っていた。
俺を求める人間は山程いたし、避妊魔法のあるこの世界は性に奔放な事にも寛容だ。
性欲は適当に発散すればいい。
求められたら応えるが、その先を期待されても困る。
誰にも本気にならない男として適当に楽しくいこう。
そう思っていた俺が初めて欲しいと思ったんだ。
竜人の番への執着が桁違いであることは分かってる。
あいつがアキを諦めることは絶対にないだろう。
でもねカイ、俺も欲しいと思ったんだ。
だから正々堂々、正面から奪いにいくよ。
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