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第一章
7 力を寄こせ
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アルトゥスとハレックが落下していくのを見ていたリエッタは、しばし呆然としていたが、我に返るなり叫んだ。
「アルくん! ハレック!」
何度か繰り返すも、返事はない。駆け寄ろうとした彼女だが、二人が消えていった地面の穴の前には、リトルドラゴンとマッドスライムが陣取っている。近づけば、食われてしまうのがオチだ。
それらの魔物はじりじりと距離を詰めてくる。
こうなっては、彼らが出来るのはたった一手しかない。
勇者の一人がそれを口にした。
「撤退しよう。ハレック抜きじゃ、戦えない」
「そんな! 二人を見捨てるの!?」
「違う! だけど、どうしようもないんだよ!」
「でも……!!」
「じゃあ、俺たちまで死ねって言うのかよ!」
「そんな言い方! 二人が死んだみたいじゃない!」
言い合う二人は、お互いに譲らない。
魔物が来ていることはわかっている。時間がないことも理解している。それでも、お互いに大切なものがあるのだ。
このままでは話がまとまらない。
ネラスが冷静に状況を見て告げる。
「とりあえず、あのドラゴンとマッドスライムを引き離さないと助けることもできない。皆、負傷していて余力はないんだ。いったん離れよう」
ネラスの言葉に勇者たちは従って、リトルドラゴンから距離を取っていく。
唯一、不満そうにしていたリエッタの肩を、彼女はぽんと叩いた。
「大丈夫。あの下には空間があった。たぶん、古い遺跡だね。潰れて死ぬことはないよ」
「……そう、だよね。あの二人だもん」
「ああ。だからあんたも、早くしな。さっさと皆を治して、助けに行くんだろ?」
「ありがと、ネラス」
リエッタは深呼吸をして落ち着くと、ほかの勇者たちと合流する。
それからすぐに、祝福「光の加護:生命の与奪」を用いて彼らの傷を治していく。
ネラスがリエッタを見ていると、
「……ネラスは優しいね」
ジバムが微笑む。
彼女は眉をひそめると、ぐしゃぐしゃと彼の顎の辺りをいじるのだ。毛がふかふかしている。
「わっ、なに!?」
「あんたも、顔が強張ってる」
「そうかな? そうかも。緊張を解してくれてありがとう。やっぱり、ネラスは優しいや」
「はあ……そんなことより、あの魔物はどうなの? 倒せる?」
「さっきの戦いでいいところまでは行ったし、ちゃんと立て直せば大丈夫。ハレックがいないのは不安だけど……俺たちだけでもやれるよ」
「よし、頼りになるな」
今度は頭を無造作に撫でると、ジバムは目を細めるのだった。
ネラスはそうしつつ、遠くのリトルドラゴンを眺め、
「ちゃんと、監視は続けるんだよ」
と、ほかの勇者たちに念押しする。
体勢が立て直されたなら、また挑むことになるのだから。彼らは気力を充実させていく。
◇
アルトゥスは体の痛みで意識が飛びそうになりながらも、なんとか目を開けて周囲を窺っていた。
「ここは……」
石造りの床は人工的なものだった。おそらく、かつてここで生活していた住人のものか、あるいは魔物が作り上げたものか。
ネストには主人であるボス魔物がおり、その力によって土地などが変化を起こす。その際に作られた可能性は高い。元から遺跡があったなら、それを魔物が使いやすいようにしてしまうのも、よくあるそうだ。
とはいえ、これまでこのネストで遺跡は見つかっていなかったから、大発見ということになる。
もっとも、アルトゥスはネストに来たのが初めてだから、実感はないのだが。
(それにしても……「ネスト:見捨てられた大地」にボスはいなかったはず)
ボスの魔物は昔、討伐されたと記録にあった。
だから、新米勇者たちだけで来たのだ。仮にボスがいるのであれば、いつ遭遇するかもわからず、危険度は跳ね上がる。
(そうか、逆だ。ボスがいないから、よそからやってきたあのドラゴンが住み着いたんだ)
ひとたびボスがいなくなったネストは、ゆっくりと縮小していき、自然消滅すると言われている。それによって、魔物の巣を駆除することができるのだ。
しかし、新たなボスが生まれたならネストは再び拡大を始めるし、そうでなくとも、魔物を率いるリーダー格の魔物がよそからやってきたなら、ネストは維持されうる。
それによって、今回の騒動は勃発したのだろう。
「アルトゥス。無事か?」
ハレックの声が聞こえて、そちらに視線を向けると、彼はがれきの上に横になっていた。
「俺は大丈夫だ。それより、お前……」
「心配するな。命に別状はない。血が止まるまで、回復を図っていただけだ。それより……どうする?」
「上には戻れそうもないな。助けが来るまで待つ方法もあるが……すでに辺りは暗くなってきている。朝になるまで来ないだろう」
「向こうの皆は大丈夫だし、待っていてもいいな」
アルトゥスが亜空間収納を使って、一夜を過ごす準備を始めるも、ハレックは首を横に振った。
「残念だが、そうはいかないようだ」
彼が見上げると、マッドスライムがこちらの存在に気がついたらしく、上からぞろぞろと降りてくる。
「……仕方ない。遺跡を進もう」
「罠が生きている可能性もある。変なところは踏むなよ」
「お前だって、こんな体験初めてだろ」
アルトゥスは小さなランプをつけると、遺跡内でも取り扱いやすい短剣を構え、妙なものを吸い込まないよう口元を布で隠した。
「随分、用意してきたんだな」
「ああ。ほら、ハレックの分もある」
「助かる」
そうしていると、まるで盗掘者にでもなった気分だ。
遺跡に足を踏み入れると、一歩一歩進むたびに砂が舞い上がる。どうやら、老朽化しているようだ。
振り返ると、マッドスライムは追ってきてはいない。
やがて二人は分かれ道に差し掛かる。
右と左、どちらも似たような光景だ。
「どうする?」
「とりあえず地図を作る」
アルトゥスは亜空間収納から紙を取り出してメモを取る。そこに大まかな距離を書き込んだ。
「確か……ここから見て左手のほうには、高い岩山はなかったな。仮に地上に出られるとすれば、そっちだろう」
「よく覚えているな」
「まあな」
それくらいしか、自分にできることはなさそうだったから、というのは言わないでおいた。ちっぽけなプライドだ。
コツコツと二人分の足音が響く。
進んでいくと、右手に扉が見えてきた。正面には道が続いているが……。
「入ってみるか?」
「魔物がいるかもしれないぞ」
「ちょっと進んだところで扉が開いて、後ろから襲われるよりはマシだろ」
アルトゥスはゆっくりと中を覗く。
扉がキィ、と音を立てて、彼はゴクリと生唾を呑み込んだのだが、幸いにもそこに魔物はいなかった。
小部屋だ。なんとか人が一人暮らせそうなサイズである。
床には木箱など雑多なものが放り投げられており、唯一の家具である机の上には、お高そうな鏡や装飾具などが置かれていた。
すっかり埃を被っており、それが固まって、いかにも古めかしい。
「誰かが住んでいたんだろうな」
「ああ。……なにをしているんだ?」
「持っていこうと思って」
アルトゥスは亜空間収納の中に、金目の物を詰め込んでいた。
それが終わると、まったく関係なさそうなものも入れていく。
「……いいのか?」
「もう所有者もいないだろ。これが罠、ということもなさそうだし」
「遺跡漁りとは、勇者らしくないな」
「そう言うなって。なんやかんや、金がかかるんだよ」
彼はこれからのことを考えていた。
こんな遺跡で死ぬ気なんてないし、祝福が得られなくても、まだまだ人生は続く。
そうなったとき、どうすればいいのか。まずはスキルを得て、祝福の代わりにすることだ。祝福に及ばないとはいえ、ある程度、力のなさは補える。
それには金がいる。勇者になった際、魔石をもらうことができたが、あれは勇者への期待から来る初期投資だ。普通に買えば、かなりの金がかかってしまう。
だから、これも仕方ないことだ。
「……なあ、アルトゥス」
「うん?」
ハレックは真剣な表情だった。どこか思い詰めているようにも見える。
「お前はもう、勇者として活動しないほうがいい」
真正面から突きつけられた言葉に、目眩がした。
なにを言っているんだ、と思ったからじゃない。自分でも、そうしたほうがいい、と感じてしまったからだ。
無理して勇者を続けるよりは、無難な活動をしたほうがいい。
「国に仕える兵士や依頼を受けて働く傭兵、自由にネストを調べる冒険者――いろいろ、別の道はある。お前の技量なら、十分にやっていけるはずだ」
「……そう、か」
「お前が憎くて言ってるんじゃない。人には相応の生き方がある」
「そうなんだろうな」
アルトゥスは視線を落とす。
別に、勇者としての使命に燃えていたわけじゃない。ただ、これからも、こいつらと一緒にやっていくんだろうな、と漠然と思っていただけだ。
そこから外れてしまわないように、祝福が得られなかったあの時から、ずっと食らいつこうとしてきたのだ。
内心ではわかっていた。
このまま彼らとの差は開き続け、いずれは足手まといになってしまうと。
(なんで、俺だけ)
じっと地面を見つめると、そこには小さな石が転がっていた。
ネストでは魔石が見つかることがある。あるいは、元々部屋の主が持っていたものかもしれない。
アルトゥスはそれを拾い上げた。使ってくれ、と言っているようにも思われて。
「俺はお前たちとの活動は諦めるよ」
「そうか。わかってくれるか――」
「でも、やめない。最後まで諦めるものか。名無しの勇者が最強になるときまで、這いつくばっても生きて、生き延びて、名無しの名を歴史に刻む。待っていろ、油断したらいつでも追いついてやる!」
アルトゥスは顔を上げる。
スタートが遅くともいい。ほかの人より速く走れなくてもいい。
それでも走って走って、追い求め続けてやる。お前らが足を止めたときは、追い抜く瞬間だ。
彼はそれまでにないギラギラした野心を見せる。ハレックは気圧され息を呑んだ。
「力を寄こせ、魔石よ――」
魔力を込めると、その魔石は砕け散り、彼の体に纏わりつき始めた――。
「アルくん! ハレック!」
何度か繰り返すも、返事はない。駆け寄ろうとした彼女だが、二人が消えていった地面の穴の前には、リトルドラゴンとマッドスライムが陣取っている。近づけば、食われてしまうのがオチだ。
それらの魔物はじりじりと距離を詰めてくる。
こうなっては、彼らが出来るのはたった一手しかない。
勇者の一人がそれを口にした。
「撤退しよう。ハレック抜きじゃ、戦えない」
「そんな! 二人を見捨てるの!?」
「違う! だけど、どうしようもないんだよ!」
「でも……!!」
「じゃあ、俺たちまで死ねって言うのかよ!」
「そんな言い方! 二人が死んだみたいじゃない!」
言い合う二人は、お互いに譲らない。
魔物が来ていることはわかっている。時間がないことも理解している。それでも、お互いに大切なものがあるのだ。
このままでは話がまとまらない。
ネラスが冷静に状況を見て告げる。
「とりあえず、あのドラゴンとマッドスライムを引き離さないと助けることもできない。皆、負傷していて余力はないんだ。いったん離れよう」
ネラスの言葉に勇者たちは従って、リトルドラゴンから距離を取っていく。
唯一、不満そうにしていたリエッタの肩を、彼女はぽんと叩いた。
「大丈夫。あの下には空間があった。たぶん、古い遺跡だね。潰れて死ぬことはないよ」
「……そう、だよね。あの二人だもん」
「ああ。だからあんたも、早くしな。さっさと皆を治して、助けに行くんだろ?」
「ありがと、ネラス」
リエッタは深呼吸をして落ち着くと、ほかの勇者たちと合流する。
それからすぐに、祝福「光の加護:生命の与奪」を用いて彼らの傷を治していく。
ネラスがリエッタを見ていると、
「……ネラスは優しいね」
ジバムが微笑む。
彼女は眉をひそめると、ぐしゃぐしゃと彼の顎の辺りをいじるのだ。毛がふかふかしている。
「わっ、なに!?」
「あんたも、顔が強張ってる」
「そうかな? そうかも。緊張を解してくれてありがとう。やっぱり、ネラスは優しいや」
「はあ……そんなことより、あの魔物はどうなの? 倒せる?」
「さっきの戦いでいいところまでは行ったし、ちゃんと立て直せば大丈夫。ハレックがいないのは不安だけど……俺たちだけでもやれるよ」
「よし、頼りになるな」
今度は頭を無造作に撫でると、ジバムは目を細めるのだった。
ネラスはそうしつつ、遠くのリトルドラゴンを眺め、
「ちゃんと、監視は続けるんだよ」
と、ほかの勇者たちに念押しする。
体勢が立て直されたなら、また挑むことになるのだから。彼らは気力を充実させていく。
◇
アルトゥスは体の痛みで意識が飛びそうになりながらも、なんとか目を開けて周囲を窺っていた。
「ここは……」
石造りの床は人工的なものだった。おそらく、かつてここで生活していた住人のものか、あるいは魔物が作り上げたものか。
ネストには主人であるボス魔物がおり、その力によって土地などが変化を起こす。その際に作られた可能性は高い。元から遺跡があったなら、それを魔物が使いやすいようにしてしまうのも、よくあるそうだ。
とはいえ、これまでこのネストで遺跡は見つかっていなかったから、大発見ということになる。
もっとも、アルトゥスはネストに来たのが初めてだから、実感はないのだが。
(それにしても……「ネスト:見捨てられた大地」にボスはいなかったはず)
ボスの魔物は昔、討伐されたと記録にあった。
だから、新米勇者たちだけで来たのだ。仮にボスがいるのであれば、いつ遭遇するかもわからず、危険度は跳ね上がる。
(そうか、逆だ。ボスがいないから、よそからやってきたあのドラゴンが住み着いたんだ)
ひとたびボスがいなくなったネストは、ゆっくりと縮小していき、自然消滅すると言われている。それによって、魔物の巣を駆除することができるのだ。
しかし、新たなボスが生まれたならネストは再び拡大を始めるし、そうでなくとも、魔物を率いるリーダー格の魔物がよそからやってきたなら、ネストは維持されうる。
それによって、今回の騒動は勃発したのだろう。
「アルトゥス。無事か?」
ハレックの声が聞こえて、そちらに視線を向けると、彼はがれきの上に横になっていた。
「俺は大丈夫だ。それより、お前……」
「心配するな。命に別状はない。血が止まるまで、回復を図っていただけだ。それより……どうする?」
「上には戻れそうもないな。助けが来るまで待つ方法もあるが……すでに辺りは暗くなってきている。朝になるまで来ないだろう」
「向こうの皆は大丈夫だし、待っていてもいいな」
アルトゥスが亜空間収納を使って、一夜を過ごす準備を始めるも、ハレックは首を横に振った。
「残念だが、そうはいかないようだ」
彼が見上げると、マッドスライムがこちらの存在に気がついたらしく、上からぞろぞろと降りてくる。
「……仕方ない。遺跡を進もう」
「罠が生きている可能性もある。変なところは踏むなよ」
「お前だって、こんな体験初めてだろ」
アルトゥスは小さなランプをつけると、遺跡内でも取り扱いやすい短剣を構え、妙なものを吸い込まないよう口元を布で隠した。
「随分、用意してきたんだな」
「ああ。ほら、ハレックの分もある」
「助かる」
そうしていると、まるで盗掘者にでもなった気分だ。
遺跡に足を踏み入れると、一歩一歩進むたびに砂が舞い上がる。どうやら、老朽化しているようだ。
振り返ると、マッドスライムは追ってきてはいない。
やがて二人は分かれ道に差し掛かる。
右と左、どちらも似たような光景だ。
「どうする?」
「とりあえず地図を作る」
アルトゥスは亜空間収納から紙を取り出してメモを取る。そこに大まかな距離を書き込んだ。
「確か……ここから見て左手のほうには、高い岩山はなかったな。仮に地上に出られるとすれば、そっちだろう」
「よく覚えているな」
「まあな」
それくらいしか、自分にできることはなさそうだったから、というのは言わないでおいた。ちっぽけなプライドだ。
コツコツと二人分の足音が響く。
進んでいくと、右手に扉が見えてきた。正面には道が続いているが……。
「入ってみるか?」
「魔物がいるかもしれないぞ」
「ちょっと進んだところで扉が開いて、後ろから襲われるよりはマシだろ」
アルトゥスはゆっくりと中を覗く。
扉がキィ、と音を立てて、彼はゴクリと生唾を呑み込んだのだが、幸いにもそこに魔物はいなかった。
小部屋だ。なんとか人が一人暮らせそうなサイズである。
床には木箱など雑多なものが放り投げられており、唯一の家具である机の上には、お高そうな鏡や装飾具などが置かれていた。
すっかり埃を被っており、それが固まって、いかにも古めかしい。
「誰かが住んでいたんだろうな」
「ああ。……なにをしているんだ?」
「持っていこうと思って」
アルトゥスは亜空間収納の中に、金目の物を詰め込んでいた。
それが終わると、まったく関係なさそうなものも入れていく。
「……いいのか?」
「もう所有者もいないだろ。これが罠、ということもなさそうだし」
「遺跡漁りとは、勇者らしくないな」
「そう言うなって。なんやかんや、金がかかるんだよ」
彼はこれからのことを考えていた。
こんな遺跡で死ぬ気なんてないし、祝福が得られなくても、まだまだ人生は続く。
そうなったとき、どうすればいいのか。まずはスキルを得て、祝福の代わりにすることだ。祝福に及ばないとはいえ、ある程度、力のなさは補える。
それには金がいる。勇者になった際、魔石をもらうことができたが、あれは勇者への期待から来る初期投資だ。普通に買えば、かなりの金がかかってしまう。
だから、これも仕方ないことだ。
「……なあ、アルトゥス」
「うん?」
ハレックは真剣な表情だった。どこか思い詰めているようにも見える。
「お前はもう、勇者として活動しないほうがいい」
真正面から突きつけられた言葉に、目眩がした。
なにを言っているんだ、と思ったからじゃない。自分でも、そうしたほうがいい、と感じてしまったからだ。
無理して勇者を続けるよりは、無難な活動をしたほうがいい。
「国に仕える兵士や依頼を受けて働く傭兵、自由にネストを調べる冒険者――いろいろ、別の道はある。お前の技量なら、十分にやっていけるはずだ」
「……そう、か」
「お前が憎くて言ってるんじゃない。人には相応の生き方がある」
「そうなんだろうな」
アルトゥスは視線を落とす。
別に、勇者としての使命に燃えていたわけじゃない。ただ、これからも、こいつらと一緒にやっていくんだろうな、と漠然と思っていただけだ。
そこから外れてしまわないように、祝福が得られなかったあの時から、ずっと食らいつこうとしてきたのだ。
内心ではわかっていた。
このまま彼らとの差は開き続け、いずれは足手まといになってしまうと。
(なんで、俺だけ)
じっと地面を見つめると、そこには小さな石が転がっていた。
ネストでは魔石が見つかることがある。あるいは、元々部屋の主が持っていたものかもしれない。
アルトゥスはそれを拾い上げた。使ってくれ、と言っているようにも思われて。
「俺はお前たちとの活動は諦めるよ」
「そうか。わかってくれるか――」
「でも、やめない。最後まで諦めるものか。名無しの勇者が最強になるときまで、這いつくばっても生きて、生き延びて、名無しの名を歴史に刻む。待っていろ、油断したらいつでも追いついてやる!」
アルトゥスは顔を上げる。
スタートが遅くともいい。ほかの人より速く走れなくてもいい。
それでも走って走って、追い求め続けてやる。お前らが足を止めたときは、追い抜く瞬間だ。
彼はそれまでにないギラギラした野心を見せる。ハレックは気圧され息を呑んだ。
「力を寄こせ、魔石よ――」
魔力を込めると、その魔石は砕け散り、彼の体に纏わりつき始めた――。
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