底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂

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1巻

1-14

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 第十九話


「ん? なんだ? 頭がやけにやわらかい」

 俺――田中正義は、ケインにやられてしまったのか?
 ぼーっとしていると、メイドに膝枕されていることに気付いた。

「なっ! 何しやがる! 俺を骨抜きにするためにケインが仕向けてきたメイドたちだな」
「いえ、違います。私たちは正義様が魅力的だから、気絶されてこの個室に運ばれたのを見て、この機会に正義様と懇意になりたいと思って参ったのでございます」

 いや! 俺はだまされない! 英雄もきっと同じだ!
 アイツも意外と結構シッカリしてるから、さっさと飛び出して俺たちの部屋に戻ってるはずだ。

「あんたたちは確かに魅力的だ。この城じゃなければ、俺はあんたたちになびいてたに違いないぜ。だが悪いな。俺は部屋に戻るぜ」

 ベッドを下りて、扉を開けようとするが、開かない。

「オイ! 開けろよ。痛い思いをさせたくないから開けろ! 俺に女をなぐらせるな。なるべくなら俺は女には手を上げたくないんだ」

 メイドたちをにらみ、拳を握りしめてすごんだら、一人のメイドが渋々扉の鍵を開けた。部屋から出ていくときチラッとメイドの顔を見ると、頬がほんのり赤くなっていた。後で指示したやつに怒られるんだろうなと考えながら男部屋に戻るが、英雄がいない。
 そのうち戻ってくるだろうと部屋で寝たのだが、起きても戻ってない。なんなんだよ。
 まさか! 英雄のやつ、メイドたちとイチャコラしているんじゃないだろうなと考えたが、そんなことはないと頭を振った。
 二人で撫子ちゃんをまもるとアリスちゃんたちに約束したから、それは絶対にないだろう。そこで、男部屋を出て、英雄を捜すついでに撫子ちゃんの様子を見に行こうと、女子部屋に向かった。

「なんだよ。どこにいるんだよ英雄ぉ」

 英雄はどこにもいない。いつの間にか女子部屋に着き、扉をノックをすると返事があった。
 良かった、撫子ちゃんが無事部屋に戻っていることに安堵した。部屋に入ると、撫子ちゃんは「どうしたの?」と聞いてきた。

「いや、俺たちが気を失ってからどうなったのかなって思って。俺たちはなぜか別々の個室でメイドたちに介抱されていたから、撫子ちゃんは何もなかったのかなって思って、様子を見に来たんだ」
「それってメイドさんとエッチなことしたってこと?」
「ち、ちげえよ! 英雄はまだ男部屋に戻ってないから、どうなったか分からねえけど、俺はメイドたちをね除けてきたぜ」
「ふーん、別に英雄くんと正義くんがメイドさんとエッチしても、なんとも思わないけど」
「そりゃないぜ、撫子ちゃん!」
「だって、私が好きな人はケインだもの。ケインはこのまま、もう少し訓練を続けたら、城下町にデートに連れていってくれるって約束したもん」
「はあ⁉ ケインの野郎といつそんな仲になってんだよ? しかも呼び捨てかよ」
「正義くんに関係ないでしょ!」
「いや、関係あるに決まってんだろ! 俺はアリスちゃんたちに約束したんだよ! 撫子ちゃんをまもるって」
まもるも何も、私より弱くて、ケインにも簡単に負けちゃったじゃない!」
「ぐっ、痛いところをついてくるな。確かに今の俺は弱い! だけど、今の撫子ちゃんをこのままにしては行けない。だから、一度ここを抜け出して士郎さんたちと合流しようぜ」

 俺は撫子ちゃんの腕を掴もうと、手を伸ばした。

「イヤ! ケインが私のために付けてくれた兵士を呼ぶよ!」

 撫子ちゃんは呼び鈴を乱暴に鳴らした。
 すると、ドカドカと兵士がやってきて、俺は拘束された。
 そのまま、牢屋に幽閉されてしまった。
 数日が経った頃、牢屋から出されてどこに連れていかれるかと思ったら、マーブル様のところだった。

「正義様、勇者様に乱暴しようとしたらしいですな! そのような方は城から出ていってもらうしかないですな。まあ、ここ数日の牢屋暮らしで少しは反省したかもしれませんが、出ていってもらうことに変わりません。あー、訓練用の武器と数日泊まれるだけの金銭は渡してあげます。儂の心優しい対処に感謝するようにですの。あ、もちろん、国王の命令ですからの。ホッホッホッ」

 マズイ! 今追い出されたら、撫子ちゃんを守れなくなる! 英雄もまだ見つからないし、追い出されるわけには行かないと思って抵抗したが、たくさんの兵士に掴まれていてどうにもならなかった。

「ちょっ、ちょっと待てよ」
「いーえ待ちません。勝手に冒険者にでもなればいいと思いますぞ。ホッホッホ」

 マーブルのじいさんは言いたいことを言い、他にも兵士を呼び寄せる。そして、俺はあのときのおっさんと同じように、城から追放された。金と訓練のときに使った装備品を無理矢理渡されて、だ。
 俺は抵抗したけど、複数の兵士に囲まれれば意味がない。兵士も、訓練のときにいたような騎士ではなく、俺とは比べ物にならないほどのガチガチに鍛えられた筋肉の持ち主だったのだ。
 とりあえず、士郎さんたちと合流できたら、今までの流れを話そうと思いつつ、街に向かって歩き出した。



 第二十話


 訓練後、ダンクねえさんに返してもらったスマホを、俺――ミーツは起動させてみる。すると、バッテリーが全く減った様子がなかった。不思議に思いながら雑貨屋で買った布を適当に切り、それを風呂敷のようにして武器と一緒に仕舞った。ナイフと槍の刃先も、別の布でグルグルに巻いておく。

「ダンクねえさん、スマホを預かってくれてありがとう」
「あら? いいのよん。で・も・ね? シオンちゃんとのデートの約束はなしにならないからね?」
「そ、そうだね。そのうちシオンにそれとなく話すよ。それはそうと、ゴブリン倒してきたのは今日なんだ」
「へえ、今日のことだったの。だから、ミーツちゃんの荷物から、槍がはみ出しているのね」
「ギルド近くの武器屋で買って、今日、薬草採取とゴブリンの退治をしたんだ」
「あー、あの武器屋の人ね。無愛想だったでしょう?」
「そこまでではなかったよ。とてもいい人だったね。これだけ買っても、銀貨一枚にまけてくれたし」
「え? あの人が? え? 嘘? 違う人のことよね? あたしが言っているのは、ギルドの向かいにある武器屋よ?」
「そうだけど、何かおかしなことかな?」
「おかしなことも何も、あのおじさん、絶対に値段引きしない、スッゴイ頑固がんこ親父なのよ! 値段をまけるほど気に入った人がいるとか、聞いたことないわ」
「無愛想だったけど、面倒見の良さそうな人だと思うんだけどなあ。一番安い武器とナイフって言ったら、コレ売ってくれたし、本当は銀貨三枚と鉄貨五枚のところを銀貨一枚でいいって言ってくれたんだよ」
「ミーツちゃんって不思議よね。みんなミーツちゃんのことを好きになっちゃう。人をきつけられる人って、すごく貴重よ」
「そんなことないよ。キックとか嫌いだし、この国の王は最悪だと思ってるよ」

 キックといえば、そういえばダンクねえさんを裏ギルドから連れ出して二時間近く経つのではないだろうか。

「ダンクねえさん、キックが待ってるよ。もうそろそろ戻らないと」
「え? もうそんな時間? 早いわね。じゃあ、もう少しゴブリンや他の魔物を倒してレベルが上がったら、また訓練しましょ」

 ダンクねえさんは目にも止まらぬ速さで上に駆け上がっていった。俺もそろそろ宿に向かうか。灰の灰汁あくがどうなったか気になるしな。
 宿屋に帰り着いて、灰の入った桶に手を突っ込んでみると、ちょっとヌルヌルしていて、良い感じに仕上がっていた。
 あとはコレをすだけだ。女将おかみに洗い物を借りて試すとしよう。


 女将おかみに洗濯物を借りようと試みたが、借りることができなかった。なぜならば、他の宿泊客のは論外で借りられないし、女将おかみのは下着や上着とか、知らない男にはあまり触らせたくない物ばかりだったからだ。仕方なく明日、ぶっつけ本番で洗濯の依頼を受けて使ってみるしかないと思い、早速裏ギルドに向かった。

「あら? ミーツちゃん、どうしたの? 何か伝え忘れた?」

 ダンクねえさんが受付で、少し驚いた表情で出迎えてくれた。

「いや、普通に依頼を受けに来たんだけど。洗濯の依頼あるでしょ? それを受けに来た」
「そういうことね。表には依頼が出てないものね。いいわ、これよ。前回と一緒だから分かるわよね?」

 ダンクねえさんは前回と同じ木札をくれた。

「よし! これでようやく試せる」
「何を試すのかしら?」
「また報告するよ」
「なんのことだか分からないけど、楽しみにしてるわね」

 裏ギルドを出るとき、軽くダンクねえさんに手を上げて宿に帰った。


 翌日、朝から例の井戸に灰汁あくの入った桶を持って向かうと、やっぱりいつもの婦人方がいた。

「おはようございます。今日はよろしくお願いします」

 朝の挨拶あいさつをし、前と同じご婦人に木札を渡した。
 今回は、嫌な顔をされず、汚い物でも触るかのような手付きもされず、普通に受け取ってくれた。なぜだろう。洗濯だから、今回も前回と同じパンイチでやってきたのに、対応が違うことに驚いた。
 でもまあいいやと思い、灰汁あくを使いはじめたところで、周りの婦人や同じ依頼を受けた人たちが興味深く見てきた。だが、そんなことはお構いなしに灰汁あくを使って洗っていく。
 最初の洗い物はすぐに終わり、二人分目、三人分目とこなしていく。前回と一緒で、十人分を終わらせた。灰汁あくの効果もまずまずのような気がする。
 そして、あることに気が付く。前回より早くて疲れていないのだ。ゴブリン倒してレベルが上がったのかもしれない。後でステータスを確認しておこうと思った。
 それにしても、まだまだ灰汁あくはあるし、体力もあるから、他の余ってる洗濯物もこなしていき、ようやく灰汁あくがなくなったところで、洗濯をやめた。
 終わってみると、全部で三十人分をやってしまっていた。前回が十人分で銅貨一枚だったから、今度は三枚かなと思ったが、銅貨五枚もくれた。
 不思議に思って、つい聞いてみた。

「あの、どうして銅貨五枚なんですかね? 三十人分くらいだから、三枚じゃないのですか?」

 すると、婦人の一人が答えてくれた。

「今日のは数が多いのと、汚れが酷かったからよ」

 なるほどな。全然気付かなかった。やはり疲れを感じないのは、自分の身体に何かがあったからに違いない。

「そうだったんですね。では、失礼します」

 そう婦人方に頭を下げて、その場を小走りで立ち去った。さっさと去ったのは、婦人方と同じ依頼を受けた人たちが、俺が使っていた液体について何か聞きたそうにしていて面倒そうだったからだ。



 第二十一話


 宿に帰って、貴族での依頼でもらった服にすぐに着替え、残りの灰を桶に突っ込み、再度放置した。
 今日は、昨日魔法で出した薬草をまた出せるか試そうと思っていた。今現在、想像魔法の検証をするために宿にこもってる状態だ。
 まず、昨日出したヨモギを再度想像した。すると、同じ物が出てきた。今度はドクダミを想像する。やっぱりドクダミも、同じように出てきた。
 想像魔法は見たことがある物ならなんでも出せるのかな?
 どこかできちんと検証する必要があるかもしれない。
 とりあえず今は、MPの残量ギリギリまでドクダミとヨモギを出しまくる。結果、それぞれドクダミとヨモギの束を百個ずつ出せた。
 しばらく休憩して、今現在のステータスを見てみる。


《名前》ミーツ
《年齢》40歳
 レベル10
 HP1200/1200 MP2000/2000 筋力400 体力300 魔力200 敏捷度110 運10
《スキル》
 想像魔法 ステータス成長:100 *****
《称号》
 異世界人 勇者召喚に巻き込まれた一般人 常識ない者 *****


 なんだか、スキルが増えている。『ステータス成長:100』ってなんの意味だろうか? あと、増えたスキルの下にまた*****が出てきた。今度は何が出てくるんだろうか。
 そして、ステータスの数値がイカれていた。
 ゴブリンを倒す前までHP120とかだったのに、最近MPしか見てなかったから、ここまで増えているなんて思いもしなかった。
 自分のことながら恐ろしくなる。
 ただ、これでもまだ、昨日ダンクねえさんにデコピンだけでコテンパンにやられた。今のところは、ダンクねえさんの方が化け物レベルで強いってことなんだろう。
 とりあえず、この薬草をギルドに売りに行ってみるかな? どのくらいの品質なんだろう? 見た目瑞々みずみずしいけど、いや、待てよ。これだけの数を持っていったら、絶対また目をつけられるな。
 直接、薬草師のところに持っていくか、あるいは雑貨屋の老婆に持っていってみてもいいかもしれない。


 手始めに雑貨屋に持ってきた。風呂敷代わりの布を買うことも考えていたからだ。

「すみませーん」
「今日はどうしたんだい?」
「少しでいいんで薬草を買い取ってもらえないですかね?」
「ウチは雑貨屋だよ。薬草なんか扱わないよ」
「ですよねー。では、また同じ大きさの布をください」

 やっぱりダメだったか。ゲームのRPGのようにどこでも売れたりはしないようだった。

「はい、毎度ね。またおいでよ」
「はい、また来ます。ちなみに、薬草師はどのあたりに行けば会えます?」
「ウチの五軒隣だよ」
「ありがとうございます」

 店主の老婆は親切に教えてくれた。教えてもらったところに向かうと、見た目はすごくボロい掘っ建て小屋がある。いつ崩れてもおかしくなさそうだった。
 小屋に近付くと、微かに薬草っぽいにおいが漂っていた。扉をノックする。すると、扉にヒビが入って壊れてしまう。イカレたステータスのせいで力加減間を違えたかもとあせっていると、ボロ小屋の主人らしき杖を持った老人が出てきて、こちらをギロリとにらんだ。

「これをやったのはあんたか?」
「はい、私です。扉の弁償はしますが、今はあまり手持ちがないので、分割で弁償金を払います。元々ここに来たのは、薬草の買い取りをお願いしたかったからなのですが、無理そうですね」
「いや、元から壊れていたからいい。薬草の買い取りって、ギルドに行かないのか?」

 優しい老人のようで良かった。元から壊れていたと聞いて、自分の力加減が間違ってたわけじゃないことが分かり、ほっとする。

「ちょっとわけありで、今持っていくと色々疑われる可能性が高く、ギルドには持っていきづらくてですね」

 想像魔法のことは隠して、正直にギルドに持っていきたくないことを話した。

「とりあえず、見せてもらおうか」

 言われた通り、風呂敷に入れておいたドクダミとヨモギを五十束ずつ出すと、老人の目がカッと見開いた。

「なあ、あんた、こんな上等な物をどうしたんじゃ? こんな物、ウチじゃ買い取れない。薬にして売った後でもいいなら支払えるが、そんなお人好しなんてそうそういないじゃろうし、よそに持っていきな」
「支払いは薬にして売った後でもいいですよ。どのくらいで売りに出せそうですか? それと、どのくらいの額で買い取ってもらえます?」
「作ればすぐにでも売れると思うが、数が数じゃし、三日もあればできると思う。一つあたり銅貨五枚~十枚でどうじゃ?」

 へえ、意外と高く売れるんだな。そもそも、魔法で出した物だ。全く問題なく、この老人に売ることを決めた。

「じゃ、また後日来ます」
「お、おい。こら、いいのか? 簡単に信用して」
「はい、私はあまりこのあたりの人を疑いたくないと思ってますので、また来ます。もし、持って逃げられたら、私の見る目がなかったってことなんで、気にしないでください」
「フハハハハ! なんとも変わった者じゃ。なるべく期待にこたえるようにしよう」
「では、失礼しますね」
「ああ、また来てくれ」

 老人に手を振りながらボロ小屋を離れたが、彼はこちらを見向きもせずに、手元の薬草を見てニヤニヤしながら部屋の奥に入っていった。
 残り五十束ほどあるが、ギルドに持っていけば、やはり問題になる可能性が高い。
 では、どうするか。毎日外に出て十束ずつ採取してきたことにすれば、怪しまれないかな?
 とりあえず、今日の分として持っていこう。


 というわけで、二階受付に来た。

「あ、今日もモアさんだったんですね。こんにちは、薬草を買い取ってもらいに来ました」
「こんにちはミーツさん。この薬草、やたらと瑞々みずみずしいですね。どこでんできたんですか? これですと、一束につき銅貨三枚で買い取ります」

 お、今のところ怪しんでないな?
 ヨモギで一束が銅貨三枚なら、ドクダミはいくらかな? 同じくらいだろうな。だが、軽い気持ちでドクダミも十束出したら驚かれた。

「これは、どこでんできたんですか! 先程の薬草もですが、あまりに品質がいいじゃないですか! このあたりではこんな上等な物は採れません! ヨモギは、森に入ればそのあたりに生えていますが、ドクダミはあまり見つけられないんですよ! それを十束も出して、全てたった今んできました、なんて言われたら、誰でも驚きますよ。それに、どこで採取してきたのかも気になります」

 すごい早口でまくし立てられた……しまったな。十束でも多かった上、どこで採取したかなんて言えるわけがない。秘密にして有耶無耶うやむやにしよう。正直に言えば面倒事になるのは間違いないだろうし。

「どこで採取したかは秘密です。ギルドに買い取ってもらえないなら、個人的に直接薬草師のところに持っていくか商人に売りに行きます」
「分かりました。では、このヨモギは一束あたり銅貨三枚、ドクダミは一束あたり銅貨四枚、それぞれ十束ずつで合計鉄貨七枚でどうですか?」

 宿屋二日分の金額か、悪くない。元が自身のMPと魔力で出した物だ、たとえ安くても問題ない。

「はい、それで大丈夫です。これから一応ギルマスのグレンさんのところに行って、色々な報告も兼ねて、薬草のことも伝えますね」
「え、ちょっと、勝手なことしないでください」

 モアが言い終わる前に、俺はグレンのもとに向かった。



 第二十二話


 ギルドマスターの部屋に着いた俺は、グレンに魔法で出した薬草を売ったことを報告した。

「で? 今度はなんだって?」
「だから、魔法を使ってこれを出しました。それで、下で十束ずつ売ってきました。いきなり五十束出すと面倒事になると思ったんですけど、十束でも面倒な感じになりましたね」

 残りの薬草を四十束ずつ出しながら、受付での出来事をグレンに話した。

「はー、またお前は……」
「本当は百束出しましたけど、さすがに百はやりすぎたと反省してます。だから、五十束は自分でさばきました」
「……どこでさばいた? 裏のヤツなら俺でも手が出せないぞ」
「多分、いい人ですよ。雑貨屋のお婆さんのところの五軒隣にある、ボロ小屋の薬草師です」
「それ、そんな約束してないって言われたらどうするんだ? どうせ、なんの証文も取ってきてないんだろ?」
「はい。何も取ってきてないですね、口約束だけです。もし、その人が約束を守らない人だったら、私の見る目がなかったというだけなんで、気にしないですね。まあ、あの薬草師がこちらに危害を加えようとしてきたら、さすがに許しませんけど。薬草も魔法で出しただけなんで、元手はゼロだから気にしません」
「……はー、分かった。とりあえず残りの薬草を出せ。俺が買い取ってやる。希少な薬草もお前なら出せそうだな」
「多分、出せますよ? でも、物によっては魔力が足りなくて出せない可能性があります。どんな薬草ですか? あと、私の知ってる物か、見たことあるやつしか出せませんね」
「出せるのか……。もう、常識がない云々うんぬんの問題じゃないな。ではまず紫蘇しその葉を出してもらおうか」
紫蘇しその葉ですね。出せると思います」

 グレンは頭が痛いのか、片手を額に押しつけながら、紫蘇しその葉の要求をしてきた。俺はそれにこたえるように、魔力を体内で練って、まとめて出す想像をした。すると紫蘇しその葉が二百枚ほど出てくる。
 その代わり一気にMPを持っていかれる。急に身体が重くなり、高熱が出たときのような気怠けだるさに襲われる。

「もう驚かないつもりだったが、やっぱり非常識な魔法だな。そんな物を市場にもギルドにも、簡単にホイホイ出したら、えらいことになるのは間違いない」
「そうなんですか? ちなみにこれってなんのアイテムの材料なんですか?」
「これは、お前も飲んだことがあるMP回復薬の材料となる薬草だ。もういい、金に困ってきたら俺のところに売りに来い! それ以外はいい歳なんだ、自重しろ!」

 グレンは疲れたような声を出しながら金庫らしきところに行き、お金を取り出して麻袋に入れて、こちらに投げてきた。麻袋を受け取ると、ズッシリと重たい。いくら入ってるのか見てみると、金貨二十枚と銀貨二枚と鉄貨八枚が入っていた。


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