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運命の女 ~Femme fatale~
第10話
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「ドミニク様…っ!」
「ジャンヌ!会いたかったよ…っ!!」
程なくしてジャンヌとジャックは、ドミニク様とシャルロット様が待っているホテルへと到着しました。
そして3階の部屋にやってきてドアを開けてドミニク様のお姿を見た途端、ジャンヌはドミニク様の方に一目散に駆け出しました。ドミニク様もパッと満面の笑みで両手を広げてジャンヌを迎え入れ、駆け出したジャンヌギュッと強くを抱きしめておりました。
「あぁ…ジャンヌ…僕の大好きな大好きなジャンヌ…」
「ドミニク様…」
二人はお互いの存在を確認し合うかのようにギュッと強く抱き合い、しばらくそのままの状態でした。少しお二人の熱い様子にびっくりしているシャルロット様、そしてさらに離れたドアの所で呆れたように見ているジャックはめんどくさそうに溜息をつくともたれていたドアからスッと起き上がり、三人に背を向けて部屋を出て行こうとしました。
「…じゃあ俺はその辺うろついてるから。また頃合いを見て戻ってくるし」
「あ、あぁいつもすまないね、ジャック」
「じゃあせいぜい頑張れよドミニクの旦那」
ヒラヒラと手を振って、ジャックは靴音を響かせながら階段を降りて行きました。ドアが閉まって、完全にジャックの足音が聞こえなくなるとドミニク様とジャンヌは再び抱き合い、シャルロット様のことなど眼中にない雰囲気で二人の世界に入っておりました。
「あのぉ…叔父様ぁ…ちょっといいかしら」
「あっ!忘れてたっ!!ごめんシャルっ!!!」
シャルロット様がそっとドミニク様にお声を掛けるとドミニク様はハッと我に返られてガバッとお顔を上げられて二人の世界から戻ってこられました。
「シャル…?もしかして…いつもお話ししてくれている可愛い姪っ子さんの…?」
「そうだよ!ジャンヌ!!」
「まぁ…っ!!貴女がシャルロット様…っ!!」
「シャル、紹介しよう。こちらが私の…恋人の…ジャンヌ・ジュノー」
「初めまして、プリンセス…」
二人はくっ付いていた身体を少し離し、少し身なりをパッパと正してシャルロット様の方をしっかりと向きなおると、ジャンヌは一生懸命慣れないきっちりとしたお膝を付いたお辞儀しました。
「ジャンヌ、こちらは私の姪っ子のシャルロット」
「お初にお目に掛かって嬉しいわ」
「いえ、こちらこそ…!まさか本当にお会いできるなんて思ってもいなかったので…驚きと…嬉しさでいっぱいです!」
「そんなに堅苦しくしないで、ジャンヌ!」
「でも…!」
「ここでは、叔父様はただのドミニク、私はただのシャルロットよ!だからお顔を合わせましょうジャンヌ」
「…」
「ジャンヌ、シャルがそう言ってくれているんだ、さぁ…立って」
「えぇ…」
シャルロット様、さらに横に居たドミニク様に促されてジャンヌはおずおずと立ち上がりましたが、まだ視線を上げられずに下を向いておりました。
「ジャンヌ、お顔を上げて?一緒にお話ししましょう」
「は…はぁ」
「シャルもああ言ってくれていることだし…さぁジャンヌ」
「え…えぇ」
どこか緊張した面持ちのジャンヌはやはり未だにお顔を上げることが出来ずに視線が泳いだままでした。そんなジャンヌの腰にドミニク様は優しく手を添えて支えておりました。
「ねぇ叔父様、こんな辛気臭いところなんかじゃなくて、もっと風通しのいいところでお話ししたいわ」
「でもシャル、人目に付かずに私たちが密会できる所なんて他にないんだよ…」
「どうして?だいいち、こんなお茶も出ないようなところで一体何をお話しするのよ!それだったらお外で…例えば誰も居ない湖の畔とか…お花畑の真ん中とか、探せば誰も居ない場所なんてたくさんあるはずだわ!」
シャルロット様は換気も出来ていなくてどこかジメジメと埃臭いこの部屋をグルッと見渡して溜息をつくと、ドミニク様にお外に行こうと促しました。しかしドミニク様はうーんっと困ったような表情でシャルロット様に返します。そんなドミニク様の返答にシャルロット様は少しイラっとした感じでさらに返されました。
「ジャックがどうしてもここで会えっていうからさぁ」
「ジャック?あぁ…さっきのあの失礼で無愛想な人ね!」
「まぁ…弟がシャルロット様に無礼をっ!?申し訳ございません!!」
「あ、ジャンヌ違うんだ…ジャックにはシャルを紹介していないんだよ。一応シャルはこの国のお姫様だし、こんな街中をうろついているのがバレたら大変だからね」
「…ねぇ叔父様、お外に出ましょう?」
「でも…」
「あのジャックが戻ってくるまでにここに帰ってこればいいのよ!」
「…シャル~!」
「…ドミニク様…私も…お外に行きたいわ…」
「!」
「ほら、ジャンヌもそう言っていることだし、皆でお外に行きましょう!そうだ、ゴンドラに乗るのはどう!?あれなら一か所に留まらないし、船頭さんにランダムに動いてもらえばきっと誰にも場所が特定されないはずよ!」
「まぁ…!私、ゴンドラ乗ってみたいです!」
「ジャンヌ!」
「ジャンヌもそう言っていることだし、決定ね!さぁ行きましょうっ!」
「あ、ちょっとシャル!」
シャルロット様は半ば強引に決定すると、くるっと踵と返して早々にドアを開けて足音軽く出て行かれました。ドミニク様は急いでシャルロット様の後を追おうと、ジャンヌの手を取り一緒に部屋を出て行かれたのでした。
・・・・・・・・
だいたい2時間くらいで迎えに来ればいいか…とぼんやり考えながらホテルを出て『マントゥール』に戻ってきたジャックは、ポケットから煙草を出して銀色に鈍く光るライターで火をつけてたっぷりその煙を吸いこみ、一息つくとふぅ…っと長く吐き出しました。
「あらぁジャックぅ~❤こんな時間にここにいるなんて、珍しいわねぇ!」
「ねぇ、暇なら一緒に遊ばない?」
派手なメイクと肩と胸を露わに露出させた二人の女性が奥のソファーで座っているジャックを見つけるとそそくさと寄ってきてジャックにしな垂れかかってきました。
「なんだよ…お前らか…相変わらずお前ら暇なんだな…」
「ねぇジャック~、今日は一緒に朝まで一緒に遊ぼうよぉ」
「…彼氏が捕まって暇だから俺と遊ぼうってか?」
「ボビーは多分あと1ヶ月は出て来れないんだから…ちょっとくらい火遊びしてもバレないわよ」
女の一人…メアリーはジャックの後ろからそっと肩を抱き、口元に媚びた笑みを浮かべてジャックの耳元で甘ったるい声で囁きました。ジャックは眉間に皺を寄せてメアリーの手を払いのけて、再び大きく煙草を吸いました。
「今はそんな気分じゃねぇンだよ」
「んもぅ!つれないんだからぁ~!まぁそう言う硬派なところがジャックの良いところなんだけどねぇ」
「お前ら俺に構っている暇あったらその辺の成金や貴族様でもたぶらかして金せしめて来いよ!特にメアリー、お前先月に引き続き売上が落ちてるぜ。ロバートに上納金払わねぇと俺ら『スカーレットシャーク』潰されちゃうぜ」
「最近警察の取り締まりが多くて、なかなか上手くいかないのよ!」
「そうそう!私たちはちょーっと酔っぱらっていい気分になっているお金持ちに、安くていい店があるわよー、一緒に飲まない?って誘ってただ一緒にお酒を飲むだけなのにねぇ。何がいけないのかしら!」
「もっと上手くやれよ。メアリー、アビー、お前ら下手くそなんだよ」
「なによぉ~!」
ジャックは煙草を灰皿に押し付けて火を消すと、ワインを一口飲んで喉を潤しました。赤毛の髪を緩く結った面長のアビーはそのワインをジャックから奪って自分も一口飲むと、ジャックと向き合うように膝の上に跨って座ってジャックに抱きつきはじめました。
「いいか、男は馬鹿なんだ。そして成金や貴族様たちはさらに輪をかけて馬鹿なんだ!その馬鹿さ加減を最大限に利用するんだよ…そう、ジャンヌみたいに」
「ジャンヌ…あぁ、あんたの姉さんね」
「ジャンヌのお蔭で…ドミニクの旦那からはしっかり稼がさせてもらってるよ!本当にボンクラ貴族様だぜ!」
「アンタも悪だねぇ~!」
「構うものか。俺たちは毎日食べていくだけの稼ぎしか手に入らねぇ…だったら金が余っているやつらから少-しばかり貰っても悪くねぇだろう?」
「その通りさ!あたしたちは経済を回してやってるんだ!感謝して欲しいくらいだよ!」
「そう、俺たちは…生きるために仕事してるんだ。その手段がどうであれ…俺たちは生きて行かなくちゃならねぇ」
ジャックはアビーの髪を撫でると自分の方に引き寄せてアビーと熱い口づけを交わしました。そしてアビーの唇からゆっくり離れると、次は後ろにいるメアリーの顔を引きよせてメアリーとも熱い口づけを交わしました。
「相変わらずジャックって…キス上手よね。何だかあたしうっとりしてきちゃった…」
「ねぇ…奥の部屋で楽しいことしようよ…」
「そんな気分じゃねえって言ってるだろ」
ジャックの熱い口づけにメアリーとアビーはうっとりと頬を染めてジャックにもたれ掛って胸を押し寄せたりジャックのシャツに手を差しいれてジャックの首筋や鎖骨の辺りを触りだしたりしました。
しかしジャックはそんな二人を払いのけて再びワインに手を取って飲み干すと、めんどくさそうにソファーの背もたれに身体を預けて深く沈みました。
「俺は疲れてんだ。少し休ませてくれよ」
もぅっ!とメアリーとアビーが怒りだしましたが、ジャックはお構いなしに二人にあっち行けとばかりに手を振りどっか行けとばかりに追い払おうとします。アビーはそれでもジャックをその気にさせようとシャツのボタンを外して服を脱がそうとし始めました。するとその時、ジャックたちが居る奥のソファーのジョーゼットのカーテンがバッと力強く開けられました。
「よぉおめぇら!おっぱじめるなら舞台の上で見せびらかしてヤルか、奥の部屋のベッドに行けよぉ~」
「…なんだよ、ロバートの旦那か…」
大柄な体躯の良い男を三人引きつれ、色白で少し長めの金髪の髪をオールバックにし濃い色のサングラスを頭にかけて右頬に古傷の刃に切られた傷がある、にやけた顔の男がそこに立っておりました。
ロバートと呼ばれたその男はメアリーを自分の方に抱き寄せて肩を抱くと、コルセットで余計に強調された豊満なメアリーの胸を鷲掴みにして揉みしだきながら顔を近寄せてガン付けて話し始めました。
「おいメアリー、おめぇ最近売上悪いみてぇだな。これ以上悪くなったら…分かってんだろうな?」
「…っ!」
「今月売上悪かったらおめぇ売り飛ばすからな!」
「わ…分かったよっ!だから離せよっ!」
「フンっ!若いのが良いって客も居るんだぜ?未成年だからて安心してんじゃねぇぞ!」
「…っ!!」
涙目になって震えているメアリーを突き放すと、ロバートはソファーを飛び越えてジャックの横に座り、アビーを払いのけてジャックの膝にドカッと足を掛けてふんぞり返りました。ジャックはメアリーとアビーに合図をしてこの場化から立ち去るように促し、さっさと二人を逃がしました。ロバートはそんな二人には目もくれずにジャックの顔をジロジロとまるで品定めをするかのように見ています。
「よぉジャック!今日も相変わらず綺麗な顔してやがるなぁっ!」
「…足痛いんすけど…」
「おぉっ!いいねぇその冷たい目っ!ジャンヌそっくりのその顔に睨まれるとゾクゾクするねぇ~!」
「…」
ジャックは眉間に皺を寄せてじろっと横目でロバートを睨みました。しかしロバートはそんなことに一切無視をしてジャックの背中を叩きながらげらげらと下品に笑い出しました。
「冗談だよ!そんなことよりもよぉ~、最近どうよ、メルヴェイユの跡取りとジャンヌの方は」
「まぁ…いい感じでがっぽりと稼がさせてもらってますよ」
「いやぁ~…虫も殺さねぇ様な顔してよくやるよなぁおめぇの姉ちゃん!あんな清純そうな顔しておきながら…ルテーリャじゃあ噂の悪い女だったんだろ?何人もの男たちを狂わしてきたって聞いたぜぇ~?俺も一度くらい相手して狂わされてぇわぁ~」
「…やめてくださいよ、そんな昔の話」
「なんでもすげぇテク持ってるらしいじゃねぇか。そのテク使ってあのメルヴェイユの跡取りを虜にしてんだろ?」
「さぁ…興味ないんで分かんないですよ」
「なんだよ、つまんねぇ奴だなっ!まぁいいや、今月も上納金期待してるぜっ!」
ロバートはガハガハと笑いながらジャックの背中をバシバシ叩き続けます。ジャックは結構な力で叩いてくるので痛みに耐えながら下を向いて黙っておりましたが、ロバートが満足してソファーの背もたれにバウンドするくらいもたれ掛ると、今度はちゃんとロバートの顔を見てキッと睨みつけました。
「…本当に約束守ってくれるんでしょうね?」
「あ~?」
「俺たち『スカーレットシャーク』を守ってくれるんでしょうね?本当にボビーを助けてくれんのか?」
「あん?」
「俺たち結構頑張って金納めてるんっすよ?でも全然ボビー釈放されねぇじゃねぇっすか」
「…おいガキ、口のきき方に気を付けろよ?」
ソファーにのけ反って座っているロバートはジャックの方を見ずに空返事で適当にしておりました。ジャックはそんなロバートの態度にだんだんと腹が立ってきたのか、少し強い口調でロバートに突っかかっていきました。
すると少し間が空いたあと、先ほどまでの明るい声色から一転し凄味がかかった声でロバートは答え、歯をギリギリ言わせながらギロッとジャックを睨みつけました。
「おい…勘違いしてんじゃねぇぞ。俺たちはボランティアで『スカーレットシャーク』の相手してるんじゃねぇンだよ。こっちだって命張って警察や警備隊と戦っているんだぜ?おめぇらの尻拭いだって今まで数えきれねぇくらいしてきてやってるんだぜ?少なからず俺たちの仲間も捕まってるし、ケガだって負わされてるんだぜ?それの対価としての上納金だぜ?もっともらってもいいくらいだと思わねぇか?あぁんっ!?」
「…ッ!」
「…いいか、おめぇらみたいなガキなんざいつだって売り飛ばせるし、なんだったら消せるんだぜ?ジャック…おめぇみたいなクソ生意気なガキをヒィヒィ言わせて服従したい野郎なんざこの世界にはザラに居るんだ…。そこん所よぉーく肝に銘じとけよ」
ロバートは下品な笑いを口元に浮かべてジャックの襟を掴んで自分の顔の近くに寄せてきました。
そしてジャックの顔を上から下へ見定めるような鋭い視線で下から上へと舐めるように見ると、小汚い舌でジャックの頬をベロッと舐め回しました。ジャックはいきなりのことに訳が分からず目を大きく見開いたまま言葉を失っておりました。
「きめ細かい綺麗な肌してんじゃねぇか。ルテーリャは美人が多くて有名な国だもんなぁ…?煙草なんか吸ってると商品価値下がるぜぇ?」
「…っ!」
「…冗談だよ冗談っ!まぁ…色々と気を付けな」
静かに睨みつけているジャックを馬鹿にするようにガハハッと唾が飛ぶくらい吹き出し笑いをしたあと、ロバートは乱暴にジャックを投げ捨てるようにソファーに放り投げました。
「じゃあな!今月の上納金も楽しみにしているぜぇ~!」
満足したのかロバートはニタニタと下品な笑顔を浮かべて去っていきました。
「…クソっ!あの野郎…いつか殺してやる…」
ロバートの下品な笑い声が遠くなっていくのを背中で見送ると、ジャックは先ほどロバートに舐められた頬を赤くなるくらい強い力で拭ってドンッとソファーを叩いて小さくそう呟くと、先ほどロバートに掴まれて乱れた襟元をキュッとしめました。
薄いブルーの瞳は少し潤んだようにも見えましたが、冷たい氷のような鋭さが灯っており真っ直ぐ前を見据えて確かな意思を持っていたのでした。
「ジャンヌ!会いたかったよ…っ!!」
程なくしてジャンヌとジャックは、ドミニク様とシャルロット様が待っているホテルへと到着しました。
そして3階の部屋にやってきてドアを開けてドミニク様のお姿を見た途端、ジャンヌはドミニク様の方に一目散に駆け出しました。ドミニク様もパッと満面の笑みで両手を広げてジャンヌを迎え入れ、駆け出したジャンヌギュッと強くを抱きしめておりました。
「あぁ…ジャンヌ…僕の大好きな大好きなジャンヌ…」
「ドミニク様…」
二人はお互いの存在を確認し合うかのようにギュッと強く抱き合い、しばらくそのままの状態でした。少しお二人の熱い様子にびっくりしているシャルロット様、そしてさらに離れたドアの所で呆れたように見ているジャックはめんどくさそうに溜息をつくともたれていたドアからスッと起き上がり、三人に背を向けて部屋を出て行こうとしました。
「…じゃあ俺はその辺うろついてるから。また頃合いを見て戻ってくるし」
「あ、あぁいつもすまないね、ジャック」
「じゃあせいぜい頑張れよドミニクの旦那」
ヒラヒラと手を振って、ジャックは靴音を響かせながら階段を降りて行きました。ドアが閉まって、完全にジャックの足音が聞こえなくなるとドミニク様とジャンヌは再び抱き合い、シャルロット様のことなど眼中にない雰囲気で二人の世界に入っておりました。
「あのぉ…叔父様ぁ…ちょっといいかしら」
「あっ!忘れてたっ!!ごめんシャルっ!!!」
シャルロット様がそっとドミニク様にお声を掛けるとドミニク様はハッと我に返られてガバッとお顔を上げられて二人の世界から戻ってこられました。
「シャル…?もしかして…いつもお話ししてくれている可愛い姪っ子さんの…?」
「そうだよ!ジャンヌ!!」
「まぁ…っ!!貴女がシャルロット様…っ!!」
「シャル、紹介しよう。こちらが私の…恋人の…ジャンヌ・ジュノー」
「初めまして、プリンセス…」
二人はくっ付いていた身体を少し離し、少し身なりをパッパと正してシャルロット様の方をしっかりと向きなおると、ジャンヌは一生懸命慣れないきっちりとしたお膝を付いたお辞儀しました。
「ジャンヌ、こちらは私の姪っ子のシャルロット」
「お初にお目に掛かって嬉しいわ」
「いえ、こちらこそ…!まさか本当にお会いできるなんて思ってもいなかったので…驚きと…嬉しさでいっぱいです!」
「そんなに堅苦しくしないで、ジャンヌ!」
「でも…!」
「ここでは、叔父様はただのドミニク、私はただのシャルロットよ!だからお顔を合わせましょうジャンヌ」
「…」
「ジャンヌ、シャルがそう言ってくれているんだ、さぁ…立って」
「えぇ…」
シャルロット様、さらに横に居たドミニク様に促されてジャンヌはおずおずと立ち上がりましたが、まだ視線を上げられずに下を向いておりました。
「ジャンヌ、お顔を上げて?一緒にお話ししましょう」
「は…はぁ」
「シャルもああ言ってくれていることだし…さぁジャンヌ」
「え…えぇ」
どこか緊張した面持ちのジャンヌはやはり未だにお顔を上げることが出来ずに視線が泳いだままでした。そんなジャンヌの腰にドミニク様は優しく手を添えて支えておりました。
「ねぇ叔父様、こんな辛気臭いところなんかじゃなくて、もっと風通しのいいところでお話ししたいわ」
「でもシャル、人目に付かずに私たちが密会できる所なんて他にないんだよ…」
「どうして?だいいち、こんなお茶も出ないようなところで一体何をお話しするのよ!それだったらお外で…例えば誰も居ない湖の畔とか…お花畑の真ん中とか、探せば誰も居ない場所なんてたくさんあるはずだわ!」
シャルロット様は換気も出来ていなくてどこかジメジメと埃臭いこの部屋をグルッと見渡して溜息をつくと、ドミニク様にお外に行こうと促しました。しかしドミニク様はうーんっと困ったような表情でシャルロット様に返します。そんなドミニク様の返答にシャルロット様は少しイラっとした感じでさらに返されました。
「ジャックがどうしてもここで会えっていうからさぁ」
「ジャック?あぁ…さっきのあの失礼で無愛想な人ね!」
「まぁ…弟がシャルロット様に無礼をっ!?申し訳ございません!!」
「あ、ジャンヌ違うんだ…ジャックにはシャルを紹介していないんだよ。一応シャルはこの国のお姫様だし、こんな街中をうろついているのがバレたら大変だからね」
「…ねぇ叔父様、お外に出ましょう?」
「でも…」
「あのジャックが戻ってくるまでにここに帰ってこればいいのよ!」
「…シャル~!」
「…ドミニク様…私も…お外に行きたいわ…」
「!」
「ほら、ジャンヌもそう言っていることだし、皆でお外に行きましょう!そうだ、ゴンドラに乗るのはどう!?あれなら一か所に留まらないし、船頭さんにランダムに動いてもらえばきっと誰にも場所が特定されないはずよ!」
「まぁ…!私、ゴンドラ乗ってみたいです!」
「ジャンヌ!」
「ジャンヌもそう言っていることだし、決定ね!さぁ行きましょうっ!」
「あ、ちょっとシャル!」
シャルロット様は半ば強引に決定すると、くるっと踵と返して早々にドアを開けて足音軽く出て行かれました。ドミニク様は急いでシャルロット様の後を追おうと、ジャンヌの手を取り一緒に部屋を出て行かれたのでした。
・・・・・・・・
だいたい2時間くらいで迎えに来ればいいか…とぼんやり考えながらホテルを出て『マントゥール』に戻ってきたジャックは、ポケットから煙草を出して銀色に鈍く光るライターで火をつけてたっぷりその煙を吸いこみ、一息つくとふぅ…っと長く吐き出しました。
「あらぁジャックぅ~❤こんな時間にここにいるなんて、珍しいわねぇ!」
「ねぇ、暇なら一緒に遊ばない?」
派手なメイクと肩と胸を露わに露出させた二人の女性が奥のソファーで座っているジャックを見つけるとそそくさと寄ってきてジャックにしな垂れかかってきました。
「なんだよ…お前らか…相変わらずお前ら暇なんだな…」
「ねぇジャック~、今日は一緒に朝まで一緒に遊ぼうよぉ」
「…彼氏が捕まって暇だから俺と遊ぼうってか?」
「ボビーは多分あと1ヶ月は出て来れないんだから…ちょっとくらい火遊びしてもバレないわよ」
女の一人…メアリーはジャックの後ろからそっと肩を抱き、口元に媚びた笑みを浮かべてジャックの耳元で甘ったるい声で囁きました。ジャックは眉間に皺を寄せてメアリーの手を払いのけて、再び大きく煙草を吸いました。
「今はそんな気分じゃねぇンだよ」
「んもぅ!つれないんだからぁ~!まぁそう言う硬派なところがジャックの良いところなんだけどねぇ」
「お前ら俺に構っている暇あったらその辺の成金や貴族様でもたぶらかして金せしめて来いよ!特にメアリー、お前先月に引き続き売上が落ちてるぜ。ロバートに上納金払わねぇと俺ら『スカーレットシャーク』潰されちゃうぜ」
「最近警察の取り締まりが多くて、なかなか上手くいかないのよ!」
「そうそう!私たちはちょーっと酔っぱらっていい気分になっているお金持ちに、安くていい店があるわよー、一緒に飲まない?って誘ってただ一緒にお酒を飲むだけなのにねぇ。何がいけないのかしら!」
「もっと上手くやれよ。メアリー、アビー、お前ら下手くそなんだよ」
「なによぉ~!」
ジャックは煙草を灰皿に押し付けて火を消すと、ワインを一口飲んで喉を潤しました。赤毛の髪を緩く結った面長のアビーはそのワインをジャックから奪って自分も一口飲むと、ジャックと向き合うように膝の上に跨って座ってジャックに抱きつきはじめました。
「いいか、男は馬鹿なんだ。そして成金や貴族様たちはさらに輪をかけて馬鹿なんだ!その馬鹿さ加減を最大限に利用するんだよ…そう、ジャンヌみたいに」
「ジャンヌ…あぁ、あんたの姉さんね」
「ジャンヌのお蔭で…ドミニクの旦那からはしっかり稼がさせてもらってるよ!本当にボンクラ貴族様だぜ!」
「アンタも悪だねぇ~!」
「構うものか。俺たちは毎日食べていくだけの稼ぎしか手に入らねぇ…だったら金が余っているやつらから少-しばかり貰っても悪くねぇだろう?」
「その通りさ!あたしたちは経済を回してやってるんだ!感謝して欲しいくらいだよ!」
「そう、俺たちは…生きるために仕事してるんだ。その手段がどうであれ…俺たちは生きて行かなくちゃならねぇ」
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「相変わらずジャックって…キス上手よね。何だかあたしうっとりしてきちゃった…」
「ねぇ…奥の部屋で楽しいことしようよ…」
「そんな気分じゃねえって言ってるだろ」
ジャックの熱い口づけにメアリーとアビーはうっとりと頬を染めてジャックにもたれ掛って胸を押し寄せたりジャックのシャツに手を差しいれてジャックの首筋や鎖骨の辺りを触りだしたりしました。
しかしジャックはそんな二人を払いのけて再びワインに手を取って飲み干すと、めんどくさそうにソファーの背もたれに身体を預けて深く沈みました。
「俺は疲れてんだ。少し休ませてくれよ」
もぅっ!とメアリーとアビーが怒りだしましたが、ジャックはお構いなしに二人にあっち行けとばかりに手を振りどっか行けとばかりに追い払おうとします。アビーはそれでもジャックをその気にさせようとシャツのボタンを外して服を脱がそうとし始めました。するとその時、ジャックたちが居る奥のソファーのジョーゼットのカーテンがバッと力強く開けられました。
「よぉおめぇら!おっぱじめるなら舞台の上で見せびらかしてヤルか、奥の部屋のベッドに行けよぉ~」
「…なんだよ、ロバートの旦那か…」
大柄な体躯の良い男を三人引きつれ、色白で少し長めの金髪の髪をオールバックにし濃い色のサングラスを頭にかけて右頬に古傷の刃に切られた傷がある、にやけた顔の男がそこに立っておりました。
ロバートと呼ばれたその男はメアリーを自分の方に抱き寄せて肩を抱くと、コルセットで余計に強調された豊満なメアリーの胸を鷲掴みにして揉みしだきながら顔を近寄せてガン付けて話し始めました。
「おいメアリー、おめぇ最近売上悪いみてぇだな。これ以上悪くなったら…分かってんだろうな?」
「…っ!」
「今月売上悪かったらおめぇ売り飛ばすからな!」
「わ…分かったよっ!だから離せよっ!」
「フンっ!若いのが良いって客も居るんだぜ?未成年だからて安心してんじゃねぇぞ!」
「…っ!!」
涙目になって震えているメアリーを突き放すと、ロバートはソファーを飛び越えてジャックの横に座り、アビーを払いのけてジャックの膝にドカッと足を掛けてふんぞり返りました。ジャックはメアリーとアビーに合図をしてこの場化から立ち去るように促し、さっさと二人を逃がしました。ロバートはそんな二人には目もくれずにジャックの顔をジロジロとまるで品定めをするかのように見ています。
「よぉジャック!今日も相変わらず綺麗な顔してやがるなぁっ!」
「…足痛いんすけど…」
「おぉっ!いいねぇその冷たい目っ!ジャンヌそっくりのその顔に睨まれるとゾクゾクするねぇ~!」
「…」
ジャックは眉間に皺を寄せてじろっと横目でロバートを睨みました。しかしロバートはそんなことに一切無視をしてジャックの背中を叩きながらげらげらと下品に笑い出しました。
「冗談だよ!そんなことよりもよぉ~、最近どうよ、メルヴェイユの跡取りとジャンヌの方は」
「まぁ…いい感じでがっぽりと稼がさせてもらってますよ」
「いやぁ~…虫も殺さねぇ様な顔してよくやるよなぁおめぇの姉ちゃん!あんな清純そうな顔しておきながら…ルテーリャじゃあ噂の悪い女だったんだろ?何人もの男たちを狂わしてきたって聞いたぜぇ~?俺も一度くらい相手して狂わされてぇわぁ~」
「…やめてくださいよ、そんな昔の話」
「なんでもすげぇテク持ってるらしいじゃねぇか。そのテク使ってあのメルヴェイユの跡取りを虜にしてんだろ?」
「さぁ…興味ないんで分かんないですよ」
「なんだよ、つまんねぇ奴だなっ!まぁいいや、今月も上納金期待してるぜっ!」
ロバートはガハガハと笑いながらジャックの背中をバシバシ叩き続けます。ジャックは結構な力で叩いてくるので痛みに耐えながら下を向いて黙っておりましたが、ロバートが満足してソファーの背もたれにバウンドするくらいもたれ掛ると、今度はちゃんとロバートの顔を見てキッと睨みつけました。
「…本当に約束守ってくれるんでしょうね?」
「あ~?」
「俺たち『スカーレットシャーク』を守ってくれるんでしょうね?本当にボビーを助けてくれんのか?」
「あん?」
「俺たち結構頑張って金納めてるんっすよ?でも全然ボビー釈放されねぇじゃねぇっすか」
「…おいガキ、口のきき方に気を付けろよ?」
ソファーにのけ反って座っているロバートはジャックの方を見ずに空返事で適当にしておりました。ジャックはそんなロバートの態度にだんだんと腹が立ってきたのか、少し強い口調でロバートに突っかかっていきました。
すると少し間が空いたあと、先ほどまでの明るい声色から一転し凄味がかかった声でロバートは答え、歯をギリギリ言わせながらギロッとジャックを睨みつけました。
「おい…勘違いしてんじゃねぇぞ。俺たちはボランティアで『スカーレットシャーク』の相手してるんじゃねぇンだよ。こっちだって命張って警察や警備隊と戦っているんだぜ?おめぇらの尻拭いだって今まで数えきれねぇくらいしてきてやってるんだぜ?少なからず俺たちの仲間も捕まってるし、ケガだって負わされてるんだぜ?それの対価としての上納金だぜ?もっともらってもいいくらいだと思わねぇか?あぁんっ!?」
「…ッ!」
「…いいか、おめぇらみたいなガキなんざいつだって売り飛ばせるし、なんだったら消せるんだぜ?ジャック…おめぇみたいなクソ生意気なガキをヒィヒィ言わせて服従したい野郎なんざこの世界にはザラに居るんだ…。そこん所よぉーく肝に銘じとけよ」
ロバートは下品な笑いを口元に浮かべてジャックの襟を掴んで自分の顔の近くに寄せてきました。
そしてジャックの顔を上から下へ見定めるような鋭い視線で下から上へと舐めるように見ると、小汚い舌でジャックの頬をベロッと舐め回しました。ジャックはいきなりのことに訳が分からず目を大きく見開いたまま言葉を失っておりました。
「きめ細かい綺麗な肌してんじゃねぇか。ルテーリャは美人が多くて有名な国だもんなぁ…?煙草なんか吸ってると商品価値下がるぜぇ?」
「…っ!」
「…冗談だよ冗談っ!まぁ…色々と気を付けな」
静かに睨みつけているジャックを馬鹿にするようにガハハッと唾が飛ぶくらい吹き出し笑いをしたあと、ロバートは乱暴にジャックを投げ捨てるようにソファーに放り投げました。
「じゃあな!今月の上納金も楽しみにしているぜぇ~!」
満足したのかロバートはニタニタと下品な笑顔を浮かべて去っていきました。
「…クソっ!あの野郎…いつか殺してやる…」
ロバートの下品な笑い声が遠くなっていくのを背中で見送ると、ジャックは先ほどロバートに舐められた頬を赤くなるくらい強い力で拭ってドンッとソファーを叩いて小さくそう呟くと、先ほどロバートに掴まれて乱れた襟元をキュッとしめました。
薄いブルーの瞳は少し潤んだようにも見えましたが、冷たい氷のような鋭さが灯っており真っ直ぐ前を見据えて確かな意思を持っていたのでした。
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