ローザタニア王国物語

月城美伶

文字の大きさ
24 / 115
運命の女 ~Femme fatale~

第14話

しおりを挟む
 ぼんやりと灯りだした街燈の光に包まれるように立ちすくむジャンヌは、胸の前で力強く手を握りしめて気持ちを振り絞るように口を開き始めました。シャルロット様はそんなジャンヌを真っ直ぐ見つめており、二人の間にはただならぬ緊張が流れておりました。

「…お察しの通り私は…ローザタニア語が分かっております。ドミニク様がいつも何を仰っているのかちゃんと理解しております」
「…やっぱりね」
「先程の男は…弟のジャックの仲間です」
「仲間…」
「はい。プリンセスは『スカーレットシャーク』という集団をご存知でしょうか」
「『スカーレットシャーク』…?」
「このペルージュを中心に主に移民の子供たちがメンバーとなっているギャングもどきの集団です。そして私の弟ジャックは…『スカーレットシャーク』の一員です」
「ギャング…なんでまたそんな…」
「ジャックはこの国ローザタニアに来て以来職になかなか就けずに毎日プラプラとしておりました。ある時酒屋で酔っぱらいの男たちに吹っかけられたケンカに勝って…それを見ていた先程の酔っぱらいの男でその酒屋のオーナーのロバート・グル―バーに気に入られていつの間にか『スカーレットシャーク』の一員になっておりました」
「と言うことは…あの男もギャングの一員なの?」
「あの男はラドガ大国のマフィアの構成員です」
「マフィア!?」

シャルロット様は思わず大きな声を出してその声にご自分でもビックリされたのか、慌ててパッと口を手で塞ぎました。そして驚きと同時に、いきなり大きな声を出してしまったことを反省するかのようにそのまま抑えるように胸に手を当てました。ジャンヌの薄いブルーの瞳にいつもの優しさはなく、まるでロバートを蔑むかのように冷たい瞳で淡々と話し続けます。

「まぁマフィアの一員と言ってもあの男は末端の末端で…見た目はいかにも悪そうに取り繕っておりますが力はほとんどありません。ただ自分の子分として作った『スカーレットシャーク』をいいように使ってお金を集めて…本部に納めているだけのただの資金調達係です」
「…」
「ジャックは馬鹿ではないのですが…とても短気で喧嘩っ早くて少し性格に難があります。弟を褒めるなど手前味噌ですがあの顔ですし、要らないやっかみを受けることも多くて…あの性格もあって、ローザタニアでも仕事に就いてもすぐにトラブルが起きたりとなかなか仕事が続かなくてさらに荒れていたところをロバート・グル―バーに目を付けられたんでしょうね」
「…そう」
「そして同じような境遇の子たちと意気投合して弟は悪いことにドンドン手を染めていき…きっと警察に掴るようなこともしているかも知れません。…ルテーリャに居たころはもっと純粋で優しくて…姉弟思いの優しい子だったのに…段々と鋭い目つきになって…もう私の手には負えないほどになっていきました」
「どうして真面目に働いているお姉さんの貴女を見習わなかったのかしら…」

シャルロット様はポロッと独り言のように呟かれました。ジャンヌはその一言に少し眉をひそめて、キュッと瞳を閉じると喉から声を振り絞るようにして少し低めの声で抑揚を抑えて話し続けます。

「私たちにはお金が必要なんです…。私にはアンリと言う名前の弟がもう一人おりますが…こちらに来てからアンリに重い心臓病が発覚してしまいました。アンリの心臓病は特殊なタイプでして大きな病院でしかも診られるドクターも限られておりました。その治療費も莫大で…父は13年ほど前に他界また母も色々と心労が重なり倒れてしまい、とても私一人のお針子でのお給料では食べていくのがやっとの状況なんです。まともに働いたとしても手に入るお金なんてほんの少し。そう思ったジャックは…『スカーレットシャーク』に入り、悪いことを覚えて人様を騙したり…人様から奪ったりとしてより多くのお金を得ることを覚えていきました」
「…」
「生きるため仕方なかったんです。何としてでも弟を助けたい…そのためにはお金が必要だったから…」
「移民でもこの国には治療保険があるわ。それには適応外だったの?」
「私たち移民でも入れる治療保険の額では薬代にもなりません。それに私たちは…戸籍を偽造してこのローザタニアに入国してきました。だから保険の申請が出来ないんです」
「え…っ!!どういうこと…?ジャンヌ、貴女…戸籍の偽造って…」

シャルロット様は驚いて再び少し大きな声を出しそうになりましたが、次はグッと堪えて気持ちをコントロールされておりました。しかし動揺が隠せないのか、いつもはフワフワと可愛らしい小動物のような愛らしいお顔が少し険しくなっておりました。
そんなシャルロット様を見て、ジャンヌは悲しそうに微笑むと一つ深呼吸をしてジャンヌもまた気持ちを整えたのか、ゆっくりと口を開き始めました。

「…さて…何からお話しいたしましょうか…プリンセス…。少し昔の話をしてもよろしいでしょうか…」
「えぇ…」
「…私…ジャンヌ・ジュノーは―――…ルテーリャ国王の血を引いております」
「ルテーリャ国王の血筋…」

コクン、とジャンヌが小さく頷きました。思っていたよりも遥かに大きな答えにシャルット様は大きな瞳をさらに大きく開いて驚かれておりました。ジャンヌはさらにキュッと手を握りしめ直し、ポツリポツリと静かに語りだしました。

「…私の母、アデリナ・ジュノーはルテーリャの前国王、イヴァン7世の愛人の子でした。イヴァン王の愛人であった祖母はルテーリャのある子爵の娘で…まだ何も知らない16の時に密かにイヴァン王と愛し合い、そして母を身ごもりました。ですが嫉妬深いイヴァン王の妃であったエカテリーナ妃に散々苛められて…そして私の母アデリナは王室に認知もしてもらえず…運悪く実家も断絶してしまい、それからずっと私たち家族は貧しい暮らしを余儀なくされました」
「そうだったの…」
「ですが祖母は教育熱心な人で、母や私たちに読み書きや計算などたくさんの知識を与えてくれました。母も私も…弟たちもルテーリャ語は不自由なく話せます。祖母は兄妹の中でも一番よく勉強が出来た私にとても期待してルテーリャ語以外にもラドガ語、ローザタニア語、アトラス語やエストレア語の古語など…様々な言葉を教えてくれましたし、貴族のご令嬢と同じレベルの知識と教養を私に与えてくれました」
「なるほどね…納得したわ。だって貴女の振る舞いはその辺の貴族の娘より所作が綺麗だもの」

シャルロット様はふぅ…と小さく溜息をつかれ、パズルのピースが組み合わさっていくかのごとく謎が解けていくことに安堵しておりました。

「…15年ほど前にルテーリャを始め北の国に大飢饉があったのをご存知でしょうか」
「えぇ、本で読んだわ。春は雨が降らずに大地が枯れて行き…夏は害虫もたくさん発生して秋には実りがなくそしてさらに冬には大寒波がやってきて…大勢の人が亡くなったと」
「父は農夫でして…もちろん私たち家族はその飢饉に大打撃を受けました。食べるものも無く、皆やせ細っていき…ただ生きているだけでも一苦労でした。そして無理をして働いた父はその飢饉の後に過労がたたったのでしょう…あっけなく亡くなりました。そして残された家族は身を寄せ合って必死に生きていきました。例え読み書き計算が出来ても大不景気のルテーリャでは女である母は仕事に苦労して…文字通り身を粉にして働いて私たち兄妹を育ててくれました」
「…辛い思いをしてきたのね」
「貧しくて辛かったと言えば辛かったですが…それでも家族全員で過ごした日々はとても楽しくて…かけがえのない日々でした」

ジャンヌの瞳はどこか悲しげな憂いを帯びてはおりましたが瞳の奥には幸せだったころの思い出を移しているかのようにどこか暖かみのある色をしており、口元には僅かではありますが幸せを噛みしめているのか微笑みの表情が見えておりました。シャルロット様はそんなジャンヌの表情を読み取られて、ジャンヌに近づいて硬く握られているジャンヌの手を取って優しく微笑まれました。

「貴女のこれまでの人生が辛いものばかりでなかったことが分かってよかった…」
「プリンセス…」
「ねぇジャンヌ…これから叔父様と一緒に生きて行こうと思うなら、色々精算して行かなくてはいけないと思うの。まずは叔父様に今私に話してくれたことを全てお話しして…ジャックを更正させて悪い奴らと縁を切って生きていきましょう?弟のアンリのことはお兄様やヴィーに相談すれば何か道が開けるかも知れないわ」
「プリンセス…でも…」
「なぁに?」
「…私はドミニク様と一緒になれる資格はありません。このプロポーズも…やはりお断りしようと思っております」
「どうして?ルテーリャの王家の血を引く貴女ならお爺ちゃまも何も言わないと思うわ。それにジャックのこともどうにか出来るかも知れない!」
「…一瞬でも…病気に苦しむ母やアンリを捨てようとした私が…幸せになる資格なんてどこにもないんです。それにもう私は汚れてしまって…真っ黒で決して綺麗になる事なんてできない…」

シャルロット様がそっと優しくジャンヌの手を包み込むように握りましたが、ジャンヌはその手を離そうと素早く引込めました。そして下を向いて涙を堪えているのか声が震えておりました。

「貴女にどれだけ大変なことがあったか、私には想像できないことだろうけれど…どんなに汚れていても洗い続けていればだんだんと汚れは取れていくものよ。そりゃあ一気に汚れが取れたらいいけれどそんな魔法みたいな洗剤はないから地道に毎日洗い続ないといけないわ。完全に…綺麗には汚れは取れないかも知れないけれどだんだんと汚れは薄くなっていくものよ?」
「…」

シャルロット様は再びジャンヌの手を取って心を落ち着かせようと強く握りしめ、下を向いているジャンヌの顔を覗き込みました。

「それに恋は盲目だもの。一瞬くらい何もかも全て忘れちゃうことくらいあると思うわ。だからそんなに悲観することなんてないわよ!」
「プリンセス…」
「さて…じゃあ叔父様とキチンと話し合いしなきゃ!叔父様とジャックと一緒にお爺ちゃまの所に行きましょう!」
「…はい」

まだ少し戸惑っているジャンヌでしたが、力強くそう語りかけるシャルロット様の真っ直ぐな素直な瞳の清らかさほだされてジャンヌは少しだけ口元が少しだけ緩んでホッとしたように微笑みました。
シャルロット様は軽く頷かれると、ポケットからハンカチを取り出してジャンヌに渡しました。
ジャンヌは頬にキラキラと光る氷の粒のようなに伝っていた涙を拭き取ると、二人はもう一度微笑み合い、手を繋いで歩き出して皆が消えて行った飲み屋へと入って行ったのでした。

・・・・・・・・

 「あら?叔父様お一人…?」
「シャルット!ジャンヌ!君たちどこに行っていたんだい!?何か皆トイレだったり外の風に当たってくるだの出て行っちゃって、さっきから私一人だったんだよ~!」

煩い耳障りな激しい音楽が未だに鳴り響くお店の奥のVIPルームに通されたシャルロット様とジャンヌが部屋に入ると、そこにはドミニク様がお一人でまるで借りてきた猫のように静かに姿勢正しくも小さくなってソファーに座っておりましたが、部屋に入ってこられたシャルロット様とジャンヌの姿をご覧になってお顔が一瞬で晴れやかになり、ソファーから勢いよく立ち上がってお二人の所に駆け寄ってきました。

「そうなの?じゃあジャックもどこかに行ってしまったの?」
「あぁそうなんだ…。彼も外の風に当りに行ったのかな、少し前にこの部屋を出て行ったきりなんだ」
「じゃあ早く戻ってきてもらわないと…!もしくはもう私たちも外に出た方がいいのかしら」
「シャル?」
「ねぇ叔父様、早い所お爺ちゃまの所に戻りましょう?ジャンヌとジャックも一緒に!」
「…っ!!」

何か色々と考えながらぶつくさと呟くシャルロット様のお声を聞こうとドミニク様は耳を近づけようとされた瞬間シャルロット様は勢いよくお顔を上げられました。シャルロット様の頭とドミニク様の顎がぶつかり合いってゴンッと大きな音がし、二人はしばらく悶絶しておりました。ジャンヌはビックリして呆気に取られていましたが、すぐにドミニク様を介抱しようと近くに寄り添ってきました。

「あいたたた…ゴメンゴメン、シャル…。相変わらず君は石頭だね…」
「叔父様こそ…丈夫な顎をお持ちだわ…」
「丈夫なのはメルヴェイユ家の血筋だよ、シャル…。怪我は…お互いないようだね…」
「えぇ叔父様…。今度から気を付けるわ」
「私も不用意に近づかないように気を付けるよ。話は戻るけれど…そうだな、早い所ここを出ようか。実はさっきから耳も痛いし空気は悪いしで…気分があまり良くないんだ」
「そうね…煙草の匂いかしら?何だか嫌な空気がまとわり付きそうで凄く心地悪いの。早くジャックをピックアップして出ましょう!」

そう言ってシャルロット様が踵を返してドアの方を開けると、そこにはロバートが相変わらずニヤニヤとした下品な顔で仁王立ちで立っており、その後ろに数人の屈強な身体をしたいかにもガラの悪そうな男たちが数人ドアを塞ぐように立っておりました。

「おっとぉお姫様…どちらに行かれるんですかねぇ?」
「…っ!」
「へへへ…小便に行った時に外から声が聞こえると思って耳すませて聞いてみれば…!ジャンヌぅ~話は聞かせてもらったぜぇ?まさかおめぇがルテーリャ王家の血を引いた人間だったとはなぁ!そしてそっちのお嬢ちゃんは似ているとは思ったけど本当にシャルロット姫とは…俺も運が良いぜ!」
ドミニク様はシャルロット様とジャンヌを自分の後ろに下がらせました。足が震えながらも、ドミニク様はお二人を守ろうと一生懸命立っております。ジャンヌはドミニク様の腕をキュッと掴み後ろで怯えておりましたが、ロバートが手下の男の一人から何やら引っ張ってきたのを見て驚いて駆け出しそうになりましたが、ドミニク様とシャルロット様に止められてその場に引き戻されました。
「…!ジャックっ!!」

ロバートはそんなジャンヌを見てまた笑い出すと、そのまま殴られたのか項垂れて下を向いて後ろ手を手下の男たちに掴れていたジャックをグイッと自分の横に持ってきて、肩を組んで顔を近づけてジャックの顔を覗き込みました。

「ってことはこいつは世が世なら王子様ってわけだ!まぁ…どうりで綺麗な顔しているわけだぜ!いやぁ…驚いたねぇ~ルテーリャの王家の血を引いたやつがマフィアの子分だなんてよぉ!へへへ…これってルテーリャの王様強請れそうじゃね?」
「そんなの関係ねぇよ…っ!俺たちは…何も関係ねぇんだっ!」
「うるせぇっ!」

ガッとロバートはジャックを容赦なく殴りました。口の端が切れたのか、ジャックの左唇から薄らと血が滲んできました。

「ジャック!」
「おっと…大切な大切な王子様の血が流れちまったぜ…こいつはすまねぇなぁ!」

ケタケタと笑いながらロバートはジャックの顎を掴んで顔を上げさせると、小汚い舌を出してジャックの頬をツツツ…っとヘビのように這わせて嫌がるジャックの顔をニヤニヤした顔で見ておりました。

「…っ!」

ジャックは露骨に顔を横に向けたり身を捩ったりとしておりましたが、ロバートやその手下たちに強く抑え込まれて動くことが出来ませんでした。

「その汚い手を離しなさい!」

シャルロット様ははっきりとした大きな声でそう告げると、男たちは一斉にシャルロット様の方へと顔を向けました。ロバートは一瞬、あ?と不機嫌な顔でシャルロット様を睨みつけましたが、すぐにまたニヤニヤ笑い出してジャックをパッと離すと、今度はシャルロット様の方へと寄ってきました。

「シャルっ!」

ドミニク様の制止を振り切ってシャルロット様も一歩前に出られると、真っ直ぐ前を見つめたまま微動だにされませんでした。

「おっと…これはこれはお姫様…ずいぶんと威勢がいいですねぇ」
「近寄らないで。臭い息をこれ以上吐かないで」

ロバートが少しかがんでシャルロット様のお顔に自分の顔を近づけて、まるでメンチを切るかのように覗き込みましたが、相変わらずシャルロット様は動かずに前だけを見つめておりました。

「へっ!生意気なガキだぜっ!お姫さんよぉー、まだ自分が置かれている状況が分かっていねぇ様だなぁ!」
「黙りなさい」
「おいおい~!『スカーレットシャーク』を始め、この辺の仲間にはここに集合するように連絡したんだ!おめぇたちはもうもがいてもここから逃げられねぇンだよ!ドミニク様よぉ!ついでに今からアンタの家に行ってその頭の固ーいお父ちゃんをぶん殴りに行こうと思ってるんだがよぉ!そしてお宝とかぜぇーんぶ俺様がいただきに行かせてもらうぜ!」
「…なんだとっ!?」
「そしてアンタたちは…まぁ全員見目麗しいし売り飛ばせるな!奴隷でもなんでも…なぁ?」
「そんなことはさせない…っ!」

ドミニク様は飛び出してロバートに殴り掛かろうとされましたが、ドミニク様の弱々くスピードの遅い拳を簡単にロバートはかわし、その流れのままドミニク様のお腹目掛けて膝蹴りを一発入れました。

「痛っ!」

ドミニク様はそのままその場に倒れ込むと、ロバートはもう一発ドミニク様に蹴りを入れました。武術の心得がなく受け身を取ることが出来ないドミニク様はそのまま蹴り飛ばされ、勢いよく壁に激突されるとうめき声を発しながらその場で蹲って動けずにおりました。

「へっ!貴族様は弱っちぃなぁ!」
「ドミニク様っ!」

ジャンヌが思わず倒れているドミニク様に駆け寄ろうとした一瞬ロバートはジャンヌの腕をパッと掴み、ジャンヌを羽交い絞めするように抱きしめて捉えました。

「おっとジャンヌっ!売り飛ばす前におめぇとは一度遊んでみたかったんだよ…。へへへ…出会う男を次々に虜にして破滅の道へと導く悪女ファム・ファタール!!今だって…お前に惚れてるコイツはもう金もねぇ、お前を守れる力もねぇ…終わりだ!!破滅だ!!」
「…やめてっ!」

ジャンヌは顔を背けようとしましたが、ロバートはそんなジャンヌの顔を掴んで自分の方に向けると鼻息荒くジャンヌの顔を見つめてニヤニヤと笑い出します。嫌がるジャンヌは逃げようと身体や顔を捩りますが、意外と力強いロバートにがっつりと掴まれているため動くことが出来ませんでした。

「いいねぇ…美人が睨むと余計に美人が増すねぇ。確かにおめぇほどの美人になら人生狂わされてもいいかなって思っちまうわなぁ…」
「ジャンヌ…シャル…逃げろ…っ!」
「へっ!この状況でどうやって逃げろって言うんだよドミニク様よぉ!無理に決まってんだろ!馬っ鹿じゃねぇのっ!?」
「…ジャンヌ…」

ゆっくりと起き上がろうとしているドミニク様の方へ手下の男が数名近づきさらに殴るけるの暴行を加えて動けなくさせてしまいました。そしてドミニク様を無理やり引っ張って立たせるとそのままどこかへ連れ去ろうとし始めました。

「さぁてジャンヌ…今からお前は俺の相手をしてもらおうか!前からおめぇのその白くて美しい肌に触れてみたかったんだよ俺は…」
「離して…っ!」
「ジャンヌに…姉貴に触るなっ!!」
「うるせぇっ!」

手下の男たちに羽交い絞めにされているジャックも抵抗してモジモジと動いておりましたがまた男たちに殴られて、今度は口からポタポタと血を垂らして項垂れております。

「ジャックっ!」
「へへへ…愛する男と弟はおめぇのせいであんなにもボロボロになっちまったなぁ、ジャンヌ。全部おめぇのせいだよ」
「…っ!!」
「さぁて…今からおめぇは俺が飽きるまでとことん付き合ってもらって…あちらの姫さんは…まぁ俺は子供には興味ねぇんだが…何しろこの国一番の美しさを誇るという姫様だしな…こんなチャンスはめったにねぇ!!たっぷりと遊ばせてもらおうか!!おい!この二人を奥の特別プレイルームに連れて行くから準備しろっ!!」

ロバートがジャンヌをパッと部下の男の方へと突き飛ばしました。そして先ほどから全く微動だにしないシャルロット様の方へと近づいて腕を取ろうとしたその時、ドアの付近から何やら鈍い音と共に男たちの野太い悲鳴が聞こえました。
そして何事かと思ったロバートがすぐに後ろに振り向いたその瞬間、もの凄い速さで吹っ飛ばされてドンッと言う大きな音を立てて壁にめり込んでおりました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

溺愛兄様との死亡ルート回避録

初昔 茶ノ介
ファンタジー
 魔術と独自の技術を組み合わせることで各国が発展する中、純粋な魔法技術で国を繁栄させてきた魔術大国『アリスティア王国』。魔術の実力で貴族位が与えられるこの国で五つの公爵家のうちの一つ、ヴァルモンド公爵家の長女ウィスティリアは世界でも稀有な治癒魔法適正を持っていた。  そのため、国からは特別扱いを受け、学園のクラスメイトも、唯一の兄妹である兄も、ウィステリアに近づくことはなかった。  そして、二十歳の冬。アリスティア王国をエウラノス帝国が襲撃。  大量の怪我人が出たが、ウィステリアの治癒の魔法のおかげで被害は抑えられていた。  戦争が始まり、連日治療院で人々を救うウィステリアの元に連れてこられたのは、話すことも少なくなった兄ユーリであった。  血に染まるユーリを治療している時、久しぶりに会話を交わす兄妹の元に帝国の魔術が被弾し、二人は命の危機に陥った。 「ウィス……俺の最愛の……妹。どうか……来世は幸せに……」  命を落とす直前、ユーリの本心を知ったウィステリアはたくさんの人と、そして小さな頃に仲が良かったはずの兄と交流をして、楽しい日々を送りたかったと後悔した。  体が冷たくなり、目をゆっくり閉じたウィステリアが次に目を開けた時、見覚えのある部屋の中で体が幼くなっていた。  ウィステリアは幼い過去に時間が戻ってしまったと気がつき、できなかったことを思いっきりやり、あの最悪の未来を回避するために奮闘するのだった。  

処理中です...