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運命の女 ~Femme fatale~
第13話
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「ねぇ答えて、ジャンヌ…。貴女いったい何者なの?」
ホテル『ルピナス』の静かな路地裏でシャルット様とジャンヌは向かい合って立っており、シャルロット様は真っ直ぐな瞳でジャンヌを見つめております。ジャンヌはその矢が突き刺さるようなシャルロット様の瞳を受け止められずにふと視線を外してしまいました。
「私、ドミニク叔父様のことがとても大好きなの。だから叔父様には幸せになってほしい、好きな人と結ばれて欲しいの。ジャンヌ、貴女が叔父様のことが好きだということは貴女の今日一日の言動で分かったわ。だからこそ…お爺ちゃまに二人ことを認めてほしいと思ったの」
「プリンセス…」
「もしかしたら貴方はルテーリャのどこぞの貴族のご落胤とかかしら…とかも思ったわ。その賢さ、美しさ…ありえなくはないかもって。もしそうなら叔父様と貴女の結婚は可能かも知れないって思っていた」
「…」
「でもね、さっきの帰りのゴンドラの船頭が言っていた…あの上納金って話は何?ジャックの…貴女の弟の仲間なのよね?何か悪い人たちとつるんでいるの?何か関係があるの?」
一度シャルット様のお顔を見ようとジャンヌは顔をあげましたが、やはり何か言えないことでもあるのか再び視線を外して自分の足元を見るように下を見てしまいました。
「プリンセス…ルテーリャ語お分かりになるんですね…」
「少しだけ、だけどね。ルテーリャ語は習ったことは無いけれど、系統的にラドガ語と同じだから何となく分かるわ。」
「…そう…ですか」
「叔父様はあんまり分からないみたいだったけれどね」
「…」
「ジャンヌ、貴女はいったい何者なの?悪い奴らに脅されているの…?それとも―――…貴女は叔父様や私たちを騙しているの?悪い人なの?」
「…やはり貴女はとても賢い方です、プリンセス。貴女のその気高く美しい瞳には…偽りは通用いたしませんね。…全てをお話しいたします―――…」
さらに日が落ちてきて、当りは徐々にビロードの布を纏ったかのように深い青色に染まっていきました。路地裏の街燈もちらほらとつき始めて向き合う二人をぼんやりと照らします。
ジャンヌは躊躇っておりましたが、何か決心したようで大きく息を吸い、溜息のように息を吐きました。
そしてキュッと両手を胸の前で握りしめてゆっくりと口を開き出しました。
・・・・・・・・
「何じゃ何じゃセバスチャン、改まりよって!ワシはもう何を聞いても驚かん!何じゃ?ジャンヌはルテーリャの国王の隠し子でも言うのではあるまいな!」
オレンジ色の鈍い太陽の光が窓からぼんやりと差し込み、天井の大きなシャンデリアに明かりが灯されたメルヴェイユ家のティールームでロベール公爵は座られていたソファーから立ち上がり、大きく身振り手振りしてセバスチャンに詰め寄っていきました。
シャンデリアの光に照らされてピカピカ光るロベール公爵のおでこがセバスチャンのお顔の真ん前に来るほどの距離に近寄ってきました。セバスチャンは一瞬ちょっとだけ後ろに後ずさりましたが特に気にすることなくそのまま続けて話し始めました。
「結論から申し上げればまぁ…そういうことなんでしょう」
「何じゃとっ!?」
「本当か?」
「ジャンヌの戸籍が巧妙に偽装されており、その糸口を見つけ出すのに難儀いたしましたが…間違いない情報です。ジャンヌの母親のアデリナは…ルテーリャ前国王イヴァン7世の愛人の子でした。しかし美しすぎたアデリナの母は前王妃に妬まれて産んだ子供―――…アデリナを認知されることなくとても貧しく暮らしていたようです。そして平民として生活を余儀なくされたアデリナは15の時に8つ年上の農夫のゲオルギーという男性と結婚。子供もジャンヌの始め三人生まれ、貧しくとも幸せな生活を過ごしていたようです」
「まぁ…前国王のイヴァン国王陛下は無類の女性好きでしたもんね。確か側室だけでも五人いらしたとか。その他を含めるとゆうに十人以上の愛人がいらっしゃったみたいですね。まぁ皆エカテリーナ妃にとことんいじめられたと聞きますが」
「エカテリーナ妃殿下は強い人だったからなぁ…。そうか…ではまぁ血筋としては高貴であるんだな」
腕を組みながらどうでもいい感じでふーんっといった様子のヴィンセントと、姿勢を正して身を乗り出して真剣に聞いて驚いていらっしゃるウィリアム様のお顔をセバスチャンは交互にご覧になって、またセバスチャンは話し始めました。
「えぇ。ですがアデリナが私生児であるがゆえに一切金銭的な援助が受けられずに大変苦労をしたようです。ゲオルギーも持っている農地が小さく、貧乏な家柄だったようです。それにルテーリャの冬はとても厳しく、土地も痩せているところが多い。なかなか農業も上手くいかなかったようです。そしてルテーリャは15年ほど前に大飢饉もありましたし一家の生活は大打撃を受けたようです。そして無理がたたったのでしょう…父親のゲオルギーがジャンヌが7つの時に亡くなります。それからアデリナは色々な職を転々としながら子供たちを育てていったようです」
「…ふむ」
「生い立ちとしてはざっとこのようなものです。問題はその後です」
「まだあるのかっ!」
先程から驚きっぱなしのロベール公爵はまだ続きがあるのかとセバスチャンに詰め寄りますが、セバスチャンは逸るロベール公爵をまぁまぁ落ち着いてください大旦那様…と諌めてソファーに座らせて落ち着かせると、んんっと咳を一つしてまた話し始めました。
「次はジャンヌについてです。彼女は16の時に幼馴染のセルゲイと恋仲になります。セルゲイはとあるバーの雇われ店長として働いておりましたが、実は『コルレオーネ』というマフィアの一員でした」
「何だとっ!?」
「しかしとあるマフィア同士の抗争でセルゲイは殺されてしまいます。ジャンヌも最初は知らなかったそうですが殺害された後にその事実が発覚したようです。悲しみに暮れるジャンヌを助けるように、セルゲイの兄貴分だったマフィアの幹部のジミーと言う男がかたき討ちをし、慰め続け…そしてそのまま二人は恋に落ちた―――…のですがこのジミーと言う男には妻子があり、ジャンヌはつまりは愛人と言う立場になったようですね」
「…マフィアの幹部の…愛人…っ!!」
ロベール公爵はソファーから立ち上がり、部屋中に響き渡るほどの大声で叫びます。
「二人の関係はすぐにジミーの妻にばれました。そして運が悪いことにジミーの妻は『コルレオーネ』の当時№2だった男の娘でした。ジャンヌは相当危ない目にあったようです。しかしここで彼女は自分の母親譲りの美しさと国王の愛人にまでなった祖母譲りの地頭の良さと天性の魔性の女具合を利用し、他のマフィアの幹部たちの手玉を取り…ついにはそのジミーの正妻の父親の№2だった男すら自分の手の内にしてジミーの妻を窮地に追いやり、ジミーはボスに、そしてジャンヌは『コルレオーネ』の幹部にまでなりました」
「マフィアの…幹部っ!!!」
再びロベール公爵は叫ぶと、その場にヘナヘナと膝を付いて倒れるように座り込みました。セバスチャンはすぐにロベール公爵を立たせて近くのウィリアム様の座っていらっしゃるソファーに腰掛けさせると、また再び整えた後淡々と報告を続けます。ウィリアム様はロベール公爵の横で肩を支えながらセバスチャンの報告を聞いております。
「しかしマフィアの幹部にまでなったのに何故ローザタニアに逃れてきたのだろうか。何か理由でもあるのか?」
「はい、1年ほど前ルテーリャで大規模なマフィア同士の抗争があったようです。その時にボスだったジミーを始め、多くの幹部たちがやられて『コルレオーネ』は壊滅しました」
「なるほど…それで『幹部だった』と過去形な訳ですね」
「戸籍が偽造されていたのもそういう訳か…」
「はい。ジャンヌは密売品の帳簿管理などマフィアの裏方仕事をしていたので顔も割れていなかったので逃げることが出来たようです。そしてまだ続きがございまして―――…」
「まだ何かあるのかっ!!」
青ざめた顔のままロベール公爵は叫びました。ウィリアム様はお爺様落ち着いてください、と声を掛けてロベール公爵を諌めます。
「はい、そうして半年前程にローザタニアに流れて生きたジャンヌたち一家ですが、不幸なことに母親が過労で身体を壊し、末っ子の10歳の弟のアンリに重い心臓病が発覚しました。治療費は莫大な額となり、ローザタニアで平民…ましてや移民のとしての身分で稼ぐジャンヌのお金ではとても足りないことでしょう…そこで弟のジャックは『スカーレットシャーク』の一員となり、今に至るということです」
「ウチのバカ息子に近づいたのは金のためか…っ!?」
「いえ、それはただの偶然と申しますか、むしろドミニク様がジャンヌに一目ぼれをしましたから…」
「ぐぬぬ…」
「叔父上はこのことをご存知なのだろうか」
「マフィアって確か身体に入れ墨入れていますよね?だったらドミニク様もご存知なのでは?」
「いえ、存じ上げておりません。お二人の交際は清いものだそうです」
「へぇ…」
しれっとヴィンセントがツッコミを入れましたが、セバスチャンはスパッと切れ味よく落としました。ふぅ…と呆れているように見えるヴィンセント以外の皆は重苦しい雰囲気でした。
「…報告は以上になります」
「ご苦労だったセバスチャン」
スッと頭を下げてセバスチャンは一歩下がりました。ウィリアム様もふぅ…と溜息をつかれて、真剣な面持ちで少し下を向いたまま何か思案されているようでした。
「陛下…いかがいたしましょうか」
ヴィンセントがウィリアム様にお伺いをたてました。少し考えられてからウィリアム様はお顔を上に上げてソファーから立ち上がると、ヴィンセントとセバスチャンのお顔を交互にご覧になって、力強い口調で話し始められました。
「まずは叔父上とシャルロットの身の安全が一番だ。早急に捜索隊に連絡をして二人の確保を」
「ジャンヌの処遇は…?」
「詐欺罪…もしくは身体の関係はなくとも売春・買春法が適用されるであろう。ジャンヌを逮捕だ。詳しい話は警察署で彼女に話してもらおう」
「ロバートはボッコボコにして逮捕でいいですかね?」
「あぁ、そいつはどうにでも構わないだろう」
「承知いたしました。エースの1とクローバーの3に連絡いたします。そして私も今から市街へと赴きます」
命令を受けてヴィンセントとセバスチャンはスッと頭を下げると、ヴィンセントはセバスチャンの方を向きました。
「セバスチャン殿、私も一緒に行きます。姫様の捕獲は私得意ですから」
「心強いです、ヴィンセント様」
「我がローザタニア最強と謳われている貴方が何を仰いますやら」
お互いニヤッと口元に笑みを浮かべたその時、セバスチャンの通信機が鳴り始めました。
「陛下、ヴィンセント様、通信が入りましたので失礼いたします。…はいこちらセバスチャン」
「こちらクローバーの3。シャルロット様とドミニク公爵を見つけました。ゴンドラに乗って3番街のホテル『ルピナス』の前に到着したところを発見いたしました。そしてここでエースの1と合流。ロバートとジャックともこちらにやってきております」
「全員が一堂に会しましたか…。分かりました。ヴィンセント様と私もそちらに向かいます」
「はい」
「陛下、それでは我々は現場に急行いたします」
「あぁ頼んだぞ」
「承知いたしました」
通信機のボタンを切って、セバスチャンとヴィンセントはウィリアム様に再びお辞儀をすると、足早に部屋を出て行かれました。
ウィリアム様と項垂れるようにソファーに座ったままのロベール公爵お二人が部屋に取り残され、嵐が去ったようにティールームは静かになりました。
「まさかのまさかだったな…ただの移民の娘だと思っていたが…。あぁ神よ…何故貴方はこのような試練を我々に与えたのか…っ!!」
ロベール公爵は頭を抱えて天を仰いで大きな声で嘆きました。ウィリアム様はロベール公爵の横に座り、手を取りなだめる様に背をさすっております。
「お爺様…大丈夫ですよ。何とかなりますよ…皆を信じましょう!」
「ウィリアム…」
「何としてでも守り抜きます。大切な家族ですから」
「そうだな…。…あぁ神よ…どうかご加護を―――…」
「…頼んだぞ、ヴィンセント、セバスチャン…皆…」
ロベール公爵は膝を抱え込んだまま、祈るようにキュッと手を握りました。ウィリアム様はロベール公爵の背中に優しく手を置いたまま、ふと視線を窓の外へと向けてそう呟かれました。
沈んでいくオレンジの太陽の光を飲みこむように、だんだんと空が闇に包まれて深い紺色に染まっていくのでした。
・・・・・・・・
「で?ドミニク様よぉ~、ジャンヌとはどこまで進んだわけぇ~?」
煩い耳障りな激しい音楽が鳴り響く飲み屋の店内の奥のVIPルームでは、黒い革張りの大きなソファーに偉そうにふんぞり返っているロバート・グル―バー、その両脇に派手な格好の女性を置いて侍らせ、そしてドミニク様とジャックをさらにその横に座らせ、ロバートは水を飲むかのような早いペースで次々にお酒を飲み続けております。そして酒臭い息を吐きながらドミニク様にお顔を近づけてニヤニヤと下品ににやけながらそう声を掛けました。
「え…っ?ど…どこまで…とは…?」
「あぁん?もーっ!とぼけちゃってっ!!」
酔っぱらっているロバートはバシバシと遠慮なくドミニク様を叩き、ガハハと笑いながら茶化し続けます。真っ赤になって照れているドミニク様もあはは…と愛想笑いをしてモジモジとしながらも話し始めました。
「いや…あの…その…私たちは…結婚をすることにしたんだ」
「何だってっ!?」
ピュ~っと口笛を吹いて茶化すロバートとキャーッと色めき立つ女たちに負けないくらいの誰よりも大きな声で、ジャックは驚いて立ち上がりました。
「どういうことだよ旦那…っ!ジャンヌと結婚っ!?」
「あ…うん」
「そんなの…絶対許さないからなっ!」
ジャックはドミニク様に近寄り、胸ぐらを掴んで今にもドミニク様に殴り掛かるくらいの勢いでそう捲し立てました。
「おいジャック~、何お前熱くなってんの?なんだよぉ、あっ、やっぱりお前ってシスコン??」
「うるせぇよロバートの旦那っ!!」
「おいおい~ジャックぅ、落ち着けよぉ~!まずはドミニク様の話を聞こうぜぇ~っ?」
ロバートは苛立っているジャックの肩を思いっきり掴んで投げるようにして座らせました。
「で?いつ結婚するんすかい?式はやっぱり大聖堂ぅ??」
「いや…まだ何も決まっていないんだ…。まずは父上にきちんとジャンヌとの仲を認めてもらわないといけないし」
「ふ~ん…可哀想なドミニク様っ!!あ、何だったら俺手伝いますよぉ~??お父上に無理やり『結婚を許す』って言わせればいいんでしょぉ~??」
「えッ!?」
「よぉ~し、そうと決まればぁお屋敷に乗り込んでお父上をまず痛めつけましょうぜぇ~!!よぉ~しっ!じゃあドミニク様ぁ、一緒にお屋敷に行きましょうぜぇ!!俺一度でいいから行ってみたかったんだよなぁ、公爵家!!たくさん価値ある財宝があるんでしょぉ?いやぁ~…見てみたいわぁ」
ロバートはお酒を瓶から直接飲み干すとヘラヘラと笑いながらスクッと立ち上がって歩き出そうとしましたが、酔っぱらって足がもつれてしまい隣に座っている女の上に転がるように倒れました。
「おっとっと…あれぇ?今日は何だか足に来てるじゃねぇか…俺そんな強い酒飲んだっけなぁ?まぁいいや…とにかく屋敷に乗り込もうぜぇ~!!」
ロバートはぎゃははっと大声で笑い出すとムクッと立ち上がり、また千鳥足で歩き始めました。
「その前に…ちょっと小便に行ってくるぜぇ~」
フラフラとした足取りでロバートは鼻歌交じりでトイレの方へと向かって行きました。ロバートの姿が見えなくなるとジャックは再び立ち上がってドミニク様の横にズカズカと座りました。
「おい、ジャンヌと結婚って…どういうことだよ!」
「あ…えっと…私たちは互いの気持ちを確かめ合って…そして一緒になろうって決めたんだ」
「何だよそれっ!ジャンヌが結婚だなんて…俺は絶対認めないからな!」
「ジャンヌは…こんな私を愛していると言ってくれた。そして永遠の愛を誓い合ったんだ。これから先何があろうとも…私たちは一緒に生きていくんだ」
「旦那…本気かよ」
「あぁ、もちろんだとも」
「…本当か?俺たちが…今何をしているのかとか…ジャンヌの過去とか…全部分かって言っているのか?」
「…過去のことは…彼女は話したがらない。でもそれでいいと思っているよ。ジャンヌが話したくなった時に話してくれればいいと思っているよ。全て受け入れるつもりだ」
「…正気かよ」
ジャックは信じられないと言わんばかりに肩を落としていました。ドミニク様はそんなジャックの肩にそっと手を置いて、大きな音楽にも開けないくらいの強い言葉でジャックに話しかけます。
「過去よりも今私の目の前に居るジャンヌを愛している。そしてジャンヌの大切な家族は…ジャック、君も大切な存在だよ」
「…」
「ジャック?」
「そんなの…信じられるかよ。今までそうやって…心地いいことを言って俺たちを騙してきた奴なん
てたくさんいた。そのたびにジャンヌは泣いて…傷ついてきたんだ。俺は…まだ…赦しちゃいねぇぞ…」
「私はジャンヌを裏切らない。絶対に…神に誓ってそう断言できるよ」
「…旦那」
「君たちが…これまでいろいろ裏切られたり心を傷つけられたりして、辛い思いをしてきたことも全て受け止める。だって私たちは家族になるんだから…」
「…」
キラキラと真っ直ぐに輝くドミニク様の瞳に当てられてかジャックはもうこれ以上何も言えずに黙り込んでしまいました。それは真っ暗な何も見えない闇の中にぼんやりと灯る優しいロウソクの光のようにドミニク様は微笑んでおりました。
ジャックは一瞬ドミニク様をチラッと見て何か話し出そうとするかのごとく口を少し動かしましたが、また視線を逸らして下を向いて拳をキュッと握って自分の膝を叩くと、クソッと小さく呟いて席を立ち店の外に出て行ったのでした。
ホテル『ルピナス』の静かな路地裏でシャルット様とジャンヌは向かい合って立っており、シャルロット様は真っ直ぐな瞳でジャンヌを見つめております。ジャンヌはその矢が突き刺さるようなシャルロット様の瞳を受け止められずにふと視線を外してしまいました。
「私、ドミニク叔父様のことがとても大好きなの。だから叔父様には幸せになってほしい、好きな人と結ばれて欲しいの。ジャンヌ、貴女が叔父様のことが好きだということは貴女の今日一日の言動で分かったわ。だからこそ…お爺ちゃまに二人ことを認めてほしいと思ったの」
「プリンセス…」
「もしかしたら貴方はルテーリャのどこぞの貴族のご落胤とかかしら…とかも思ったわ。その賢さ、美しさ…ありえなくはないかもって。もしそうなら叔父様と貴女の結婚は可能かも知れないって思っていた」
「…」
「でもね、さっきの帰りのゴンドラの船頭が言っていた…あの上納金って話は何?ジャックの…貴女の弟の仲間なのよね?何か悪い人たちとつるんでいるの?何か関係があるの?」
一度シャルット様のお顔を見ようとジャンヌは顔をあげましたが、やはり何か言えないことでもあるのか再び視線を外して自分の足元を見るように下を見てしまいました。
「プリンセス…ルテーリャ語お分かりになるんですね…」
「少しだけ、だけどね。ルテーリャ語は習ったことは無いけれど、系統的にラドガ語と同じだから何となく分かるわ。」
「…そう…ですか」
「叔父様はあんまり分からないみたいだったけれどね」
「…」
「ジャンヌ、貴女はいったい何者なの?悪い奴らに脅されているの…?それとも―――…貴女は叔父様や私たちを騙しているの?悪い人なの?」
「…やはり貴女はとても賢い方です、プリンセス。貴女のその気高く美しい瞳には…偽りは通用いたしませんね。…全てをお話しいたします―――…」
さらに日が落ちてきて、当りは徐々にビロードの布を纏ったかのように深い青色に染まっていきました。路地裏の街燈もちらほらとつき始めて向き合う二人をぼんやりと照らします。
ジャンヌは躊躇っておりましたが、何か決心したようで大きく息を吸い、溜息のように息を吐きました。
そしてキュッと両手を胸の前で握りしめてゆっくりと口を開き出しました。
・・・・・・・・
「何じゃ何じゃセバスチャン、改まりよって!ワシはもう何を聞いても驚かん!何じゃ?ジャンヌはルテーリャの国王の隠し子でも言うのではあるまいな!」
オレンジ色の鈍い太陽の光が窓からぼんやりと差し込み、天井の大きなシャンデリアに明かりが灯されたメルヴェイユ家のティールームでロベール公爵は座られていたソファーから立ち上がり、大きく身振り手振りしてセバスチャンに詰め寄っていきました。
シャンデリアの光に照らされてピカピカ光るロベール公爵のおでこがセバスチャンのお顔の真ん前に来るほどの距離に近寄ってきました。セバスチャンは一瞬ちょっとだけ後ろに後ずさりましたが特に気にすることなくそのまま続けて話し始めました。
「結論から申し上げればまぁ…そういうことなんでしょう」
「何じゃとっ!?」
「本当か?」
「ジャンヌの戸籍が巧妙に偽装されており、その糸口を見つけ出すのに難儀いたしましたが…間違いない情報です。ジャンヌの母親のアデリナは…ルテーリャ前国王イヴァン7世の愛人の子でした。しかし美しすぎたアデリナの母は前王妃に妬まれて産んだ子供―――…アデリナを認知されることなくとても貧しく暮らしていたようです。そして平民として生活を余儀なくされたアデリナは15の時に8つ年上の農夫のゲオルギーという男性と結婚。子供もジャンヌの始め三人生まれ、貧しくとも幸せな生活を過ごしていたようです」
「まぁ…前国王のイヴァン国王陛下は無類の女性好きでしたもんね。確か側室だけでも五人いらしたとか。その他を含めるとゆうに十人以上の愛人がいらっしゃったみたいですね。まぁ皆エカテリーナ妃にとことんいじめられたと聞きますが」
「エカテリーナ妃殿下は強い人だったからなぁ…。そうか…ではまぁ血筋としては高貴であるんだな」
腕を組みながらどうでもいい感じでふーんっといった様子のヴィンセントと、姿勢を正して身を乗り出して真剣に聞いて驚いていらっしゃるウィリアム様のお顔をセバスチャンは交互にご覧になって、またセバスチャンは話し始めました。
「えぇ。ですがアデリナが私生児であるがゆえに一切金銭的な援助が受けられずに大変苦労をしたようです。ゲオルギーも持っている農地が小さく、貧乏な家柄だったようです。それにルテーリャの冬はとても厳しく、土地も痩せているところが多い。なかなか農業も上手くいかなかったようです。そしてルテーリャは15年ほど前に大飢饉もありましたし一家の生活は大打撃を受けたようです。そして無理がたたったのでしょう…父親のゲオルギーがジャンヌが7つの時に亡くなります。それからアデリナは色々な職を転々としながら子供たちを育てていったようです」
「…ふむ」
「生い立ちとしてはざっとこのようなものです。問題はその後です」
「まだあるのかっ!」
先程から驚きっぱなしのロベール公爵はまだ続きがあるのかとセバスチャンに詰め寄りますが、セバスチャンは逸るロベール公爵をまぁまぁ落ち着いてください大旦那様…と諌めてソファーに座らせて落ち着かせると、んんっと咳を一つしてまた話し始めました。
「次はジャンヌについてです。彼女は16の時に幼馴染のセルゲイと恋仲になります。セルゲイはとあるバーの雇われ店長として働いておりましたが、実は『コルレオーネ』というマフィアの一員でした」
「何だとっ!?」
「しかしとあるマフィア同士の抗争でセルゲイは殺されてしまいます。ジャンヌも最初は知らなかったそうですが殺害された後にその事実が発覚したようです。悲しみに暮れるジャンヌを助けるように、セルゲイの兄貴分だったマフィアの幹部のジミーと言う男がかたき討ちをし、慰め続け…そしてそのまま二人は恋に落ちた―――…のですがこのジミーと言う男には妻子があり、ジャンヌはつまりは愛人と言う立場になったようですね」
「…マフィアの幹部の…愛人…っ!!」
ロベール公爵はソファーから立ち上がり、部屋中に響き渡るほどの大声で叫びます。
「二人の関係はすぐにジミーの妻にばれました。そして運が悪いことにジミーの妻は『コルレオーネ』の当時№2だった男の娘でした。ジャンヌは相当危ない目にあったようです。しかしここで彼女は自分の母親譲りの美しさと国王の愛人にまでなった祖母譲りの地頭の良さと天性の魔性の女具合を利用し、他のマフィアの幹部たちの手玉を取り…ついにはそのジミーの正妻の父親の№2だった男すら自分の手の内にしてジミーの妻を窮地に追いやり、ジミーはボスに、そしてジャンヌは『コルレオーネ』の幹部にまでなりました」
「マフィアの…幹部っ!!!」
再びロベール公爵は叫ぶと、その場にヘナヘナと膝を付いて倒れるように座り込みました。セバスチャンはすぐにロベール公爵を立たせて近くのウィリアム様の座っていらっしゃるソファーに腰掛けさせると、また再び整えた後淡々と報告を続けます。ウィリアム様はロベール公爵の横で肩を支えながらセバスチャンの報告を聞いております。
「しかしマフィアの幹部にまでなったのに何故ローザタニアに逃れてきたのだろうか。何か理由でもあるのか?」
「はい、1年ほど前ルテーリャで大規模なマフィア同士の抗争があったようです。その時にボスだったジミーを始め、多くの幹部たちがやられて『コルレオーネ』は壊滅しました」
「なるほど…それで『幹部だった』と過去形な訳ですね」
「戸籍が偽造されていたのもそういう訳か…」
「はい。ジャンヌは密売品の帳簿管理などマフィアの裏方仕事をしていたので顔も割れていなかったので逃げることが出来たようです。そしてまだ続きがございまして―――…」
「まだ何かあるのかっ!!」
青ざめた顔のままロベール公爵は叫びました。ウィリアム様はお爺様落ち着いてください、と声を掛けてロベール公爵を諌めます。
「はい、そうして半年前程にローザタニアに流れて生きたジャンヌたち一家ですが、不幸なことに母親が過労で身体を壊し、末っ子の10歳の弟のアンリに重い心臓病が発覚しました。治療費は莫大な額となり、ローザタニアで平民…ましてや移民のとしての身分で稼ぐジャンヌのお金ではとても足りないことでしょう…そこで弟のジャックは『スカーレットシャーク』の一員となり、今に至るということです」
「ウチのバカ息子に近づいたのは金のためか…っ!?」
「いえ、それはただの偶然と申しますか、むしろドミニク様がジャンヌに一目ぼれをしましたから…」
「ぐぬぬ…」
「叔父上はこのことをご存知なのだろうか」
「マフィアって確か身体に入れ墨入れていますよね?だったらドミニク様もご存知なのでは?」
「いえ、存じ上げておりません。お二人の交際は清いものだそうです」
「へぇ…」
しれっとヴィンセントがツッコミを入れましたが、セバスチャンはスパッと切れ味よく落としました。ふぅ…と呆れているように見えるヴィンセント以外の皆は重苦しい雰囲気でした。
「…報告は以上になります」
「ご苦労だったセバスチャン」
スッと頭を下げてセバスチャンは一歩下がりました。ウィリアム様もふぅ…と溜息をつかれて、真剣な面持ちで少し下を向いたまま何か思案されているようでした。
「陛下…いかがいたしましょうか」
ヴィンセントがウィリアム様にお伺いをたてました。少し考えられてからウィリアム様はお顔を上に上げてソファーから立ち上がると、ヴィンセントとセバスチャンのお顔を交互にご覧になって、力強い口調で話し始められました。
「まずは叔父上とシャルロットの身の安全が一番だ。早急に捜索隊に連絡をして二人の確保を」
「ジャンヌの処遇は…?」
「詐欺罪…もしくは身体の関係はなくとも売春・買春法が適用されるであろう。ジャンヌを逮捕だ。詳しい話は警察署で彼女に話してもらおう」
「ロバートはボッコボコにして逮捕でいいですかね?」
「あぁ、そいつはどうにでも構わないだろう」
「承知いたしました。エースの1とクローバーの3に連絡いたします。そして私も今から市街へと赴きます」
命令を受けてヴィンセントとセバスチャンはスッと頭を下げると、ヴィンセントはセバスチャンの方を向きました。
「セバスチャン殿、私も一緒に行きます。姫様の捕獲は私得意ですから」
「心強いです、ヴィンセント様」
「我がローザタニア最強と謳われている貴方が何を仰いますやら」
お互いニヤッと口元に笑みを浮かべたその時、セバスチャンの通信機が鳴り始めました。
「陛下、ヴィンセント様、通信が入りましたので失礼いたします。…はいこちらセバスチャン」
「こちらクローバーの3。シャルロット様とドミニク公爵を見つけました。ゴンドラに乗って3番街のホテル『ルピナス』の前に到着したところを発見いたしました。そしてここでエースの1と合流。ロバートとジャックともこちらにやってきております」
「全員が一堂に会しましたか…。分かりました。ヴィンセント様と私もそちらに向かいます」
「はい」
「陛下、それでは我々は現場に急行いたします」
「あぁ頼んだぞ」
「承知いたしました」
通信機のボタンを切って、セバスチャンとヴィンセントはウィリアム様に再びお辞儀をすると、足早に部屋を出て行かれました。
ウィリアム様と項垂れるようにソファーに座ったままのロベール公爵お二人が部屋に取り残され、嵐が去ったようにティールームは静かになりました。
「まさかのまさかだったな…ただの移民の娘だと思っていたが…。あぁ神よ…何故貴方はこのような試練を我々に与えたのか…っ!!」
ロベール公爵は頭を抱えて天を仰いで大きな声で嘆きました。ウィリアム様はロベール公爵の横に座り、手を取りなだめる様に背をさすっております。
「お爺様…大丈夫ですよ。何とかなりますよ…皆を信じましょう!」
「ウィリアム…」
「何としてでも守り抜きます。大切な家族ですから」
「そうだな…。…あぁ神よ…どうかご加護を―――…」
「…頼んだぞ、ヴィンセント、セバスチャン…皆…」
ロベール公爵は膝を抱え込んだまま、祈るようにキュッと手を握りました。ウィリアム様はロベール公爵の背中に優しく手を置いたまま、ふと視線を窓の外へと向けてそう呟かれました。
沈んでいくオレンジの太陽の光を飲みこむように、だんだんと空が闇に包まれて深い紺色に染まっていくのでした。
・・・・・・・・
「で?ドミニク様よぉ~、ジャンヌとはどこまで進んだわけぇ~?」
煩い耳障りな激しい音楽が鳴り響く飲み屋の店内の奥のVIPルームでは、黒い革張りの大きなソファーに偉そうにふんぞり返っているロバート・グル―バー、その両脇に派手な格好の女性を置いて侍らせ、そしてドミニク様とジャックをさらにその横に座らせ、ロバートは水を飲むかのような早いペースで次々にお酒を飲み続けております。そして酒臭い息を吐きながらドミニク様にお顔を近づけてニヤニヤと下品ににやけながらそう声を掛けました。
「え…っ?ど…どこまで…とは…?」
「あぁん?もーっ!とぼけちゃってっ!!」
酔っぱらっているロバートはバシバシと遠慮なくドミニク様を叩き、ガハハと笑いながら茶化し続けます。真っ赤になって照れているドミニク様もあはは…と愛想笑いをしてモジモジとしながらも話し始めました。
「いや…あの…その…私たちは…結婚をすることにしたんだ」
「何だってっ!?」
ピュ~っと口笛を吹いて茶化すロバートとキャーッと色めき立つ女たちに負けないくらいの誰よりも大きな声で、ジャックは驚いて立ち上がりました。
「どういうことだよ旦那…っ!ジャンヌと結婚っ!?」
「あ…うん」
「そんなの…絶対許さないからなっ!」
ジャックはドミニク様に近寄り、胸ぐらを掴んで今にもドミニク様に殴り掛かるくらいの勢いでそう捲し立てました。
「おいジャック~、何お前熱くなってんの?なんだよぉ、あっ、やっぱりお前ってシスコン??」
「うるせぇよロバートの旦那っ!!」
「おいおい~ジャックぅ、落ち着けよぉ~!まずはドミニク様の話を聞こうぜぇ~っ?」
ロバートは苛立っているジャックの肩を思いっきり掴んで投げるようにして座らせました。
「で?いつ結婚するんすかい?式はやっぱり大聖堂ぅ??」
「いや…まだ何も決まっていないんだ…。まずは父上にきちんとジャンヌとの仲を認めてもらわないといけないし」
「ふ~ん…可哀想なドミニク様っ!!あ、何だったら俺手伝いますよぉ~??お父上に無理やり『結婚を許す』って言わせればいいんでしょぉ~??」
「えッ!?」
「よぉ~し、そうと決まればぁお屋敷に乗り込んでお父上をまず痛めつけましょうぜぇ~!!よぉ~しっ!じゃあドミニク様ぁ、一緒にお屋敷に行きましょうぜぇ!!俺一度でいいから行ってみたかったんだよなぁ、公爵家!!たくさん価値ある財宝があるんでしょぉ?いやぁ~…見てみたいわぁ」
ロバートはお酒を瓶から直接飲み干すとヘラヘラと笑いながらスクッと立ち上がって歩き出そうとしましたが、酔っぱらって足がもつれてしまい隣に座っている女の上に転がるように倒れました。
「おっとっと…あれぇ?今日は何だか足に来てるじゃねぇか…俺そんな強い酒飲んだっけなぁ?まぁいいや…とにかく屋敷に乗り込もうぜぇ~!!」
ロバートはぎゃははっと大声で笑い出すとムクッと立ち上がり、また千鳥足で歩き始めました。
「その前に…ちょっと小便に行ってくるぜぇ~」
フラフラとした足取りでロバートは鼻歌交じりでトイレの方へと向かって行きました。ロバートの姿が見えなくなるとジャックは再び立ち上がってドミニク様の横にズカズカと座りました。
「おい、ジャンヌと結婚って…どういうことだよ!」
「あ…えっと…私たちは互いの気持ちを確かめ合って…そして一緒になろうって決めたんだ」
「何だよそれっ!ジャンヌが結婚だなんて…俺は絶対認めないからな!」
「ジャンヌは…こんな私を愛していると言ってくれた。そして永遠の愛を誓い合ったんだ。これから先何があろうとも…私たちは一緒に生きていくんだ」
「旦那…本気かよ」
「あぁ、もちろんだとも」
「…本当か?俺たちが…今何をしているのかとか…ジャンヌの過去とか…全部分かって言っているのか?」
「…過去のことは…彼女は話したがらない。でもそれでいいと思っているよ。ジャンヌが話したくなった時に話してくれればいいと思っているよ。全て受け入れるつもりだ」
「…正気かよ」
ジャックは信じられないと言わんばかりに肩を落としていました。ドミニク様はそんなジャックの肩にそっと手を置いて、大きな音楽にも開けないくらいの強い言葉でジャックに話しかけます。
「過去よりも今私の目の前に居るジャンヌを愛している。そしてジャンヌの大切な家族は…ジャック、君も大切な存在だよ」
「…」
「ジャック?」
「そんなの…信じられるかよ。今までそうやって…心地いいことを言って俺たちを騙してきた奴なん
てたくさんいた。そのたびにジャンヌは泣いて…傷ついてきたんだ。俺は…まだ…赦しちゃいねぇぞ…」
「私はジャンヌを裏切らない。絶対に…神に誓ってそう断言できるよ」
「…旦那」
「君たちが…これまでいろいろ裏切られたり心を傷つけられたりして、辛い思いをしてきたことも全て受け止める。だって私たちは家族になるんだから…」
「…」
キラキラと真っ直ぐに輝くドミニク様の瞳に当てられてかジャックはもうこれ以上何も言えずに黙り込んでしまいました。それは真っ暗な何も見えない闇の中にぼんやりと灯る優しいロウソクの光のようにドミニク様は微笑んでおりました。
ジャックは一瞬ドミニク様をチラッと見て何か話し出そうとするかのごとく口を少し動かしましたが、また視線を逸らして下を向いて拳をキュッと握って自分の膝を叩くと、クソッと小さく呟いて席を立ち店の外に出て行ったのでした。
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