ローザタニア王国物語

月城美伶

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Jardin secret ~秘密の花園~

第6話

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 「ウィリアム様…ウィリアム様っ!」
「…え?」

シャルロット様とカルロ伯爵がバルコニーにいらっしゃる同じ頃、パーティー会場では子供たちはもう居なくなって紳士淑女ばかりが残り、ゆっくりとムーディーなワルツと共に、お酒で火照らされた互いの身体に身を寄せ合っておりました。
ローザタニアの若くて美しい国王陛下であるウィリアム様がパーティーに出て来られますと、フロアにいる女性陣たちはこぞってウィリアム様の前にダンスのお相手になってほしいと列を作り、シャルロット様と同じく兄妹で揃ってその場に修羅場を作られておりました。
お優しいウィリアム様は…と申しますか、シャルロット様とはまた違った天然で人たらしと噂のウィリアム様は嫌な顔一つされず、女性陣と順番に一曲ずつ踊りつづけられました。

「先ほどから上の空ですわよ…?」
「あぁ…失礼…」
「んもう…」
「すまないイリス…君の美しさに見とれていたらつい…」

今ウィリアム様とワルツを踊られているイリスと呼ばれた女性は、ウィリアム様の一見胸板薄くスマートそうに見えますが実は筋肉質でがっちりとしたお胸にお顔をピトッと寄せて甘えた声で先程からウィリアム様に話しかけられておりましたがウィリアム様は全く聞いていらっしゃらなかったようで、イリスが何度か声を少し大きくしてやっと気づかれたようです。
そしてウィリアム様は少し困ったような笑顔でイリスに優しく囁くように謝られておりました。

「やんッ陛下ったら…❤」

イリスがジトッと怒ったような甘えたような目つきでウィリアム様を見上げていましたが、ウィリアム様の甘くて心地よい低音ボイスの囁きが嬉しかったのか、嬉しさを隠すため彼女の赤いネイルが施された指がウィリアム様の背中でモジモジとされておりました。
少しこそばかったのか、ウィリアム様はフッと口元を緩めて艶めかしい溜息にも似た笑いを出し、さらにその笑顔がイリスのハートをキュンッとさせました。

「…ねぇ陛下、今日はもうこのままこちらにいらっしゃいますの?」
「えぇ。しばらく数日はナルキッスに滞在していますよ」
「まぁ❤じゃあ…また陛下とこうやって二人でお会いしたいわ…」

イリスがよりウィリアム様にぴったりとくっつき、より甘えた猫なで声でウィリアム様の耳元に囁いております。
肩にかかるくらいの大きなウェーブのかかったブルネイの髪をサイドに寄せてうなじを露出し、はち切れんばかりに成熟した豊満なボディーにぴったりと合うタイトな濃い深緑のツルッとしたサテン地のドレスからはこぼれ落ちそうな大きな胸をウィリアム様のお身体にグイグイと当ててきます。そして深いスリットが入ったスカートからこれまたむちっとした太ももをギリギリまで露出してウィリアム様のおみ足に絡み付け、戦闘モードでウィリアム様をお誘いしようとしております。

「イリス、そのような申し出はとても嬉しいんですが…あいにく特定の女性と約束はしないことにしているんです…申し訳ない」
「まぁ…じゃあどうしたら陛下と仲良くなれますの?」

しかし全くその誘いに乗らずに断りを入れてくるウィリアム様をイリスは不満そうに見つめ返します。

「貴女のようなとても魅力的な女性に声を掛けていただけて光栄です。…しかしまだ私は国王と言えど修行の身だと思っております。故にまだ女性に現を抜かしてはならないと心に強く誓っております」
「…どうしてもだめですの?」

イリスは負けじとさらに胸の谷間を強調させ、脚をウィリアム様の腰に擦り付けるようにしたりとウィリアム様に食い下がってきました。しかしウィリアム様は美しいエメラルドのように澄み切った瞳でじっとイリスを見つめて、優しくイリスのお顔に手を添えて耳元に囁かれます。

「貴女のような女性に私のような若輩者は勿体ない…。私が貴女に見合う男になった際に私から貴女をお誘いするまで待っていただけますか…?」
「…ウィリアム様」
「ワルツが終わったようですね…イリス。失礼します…」

ウィリアム様はイリスと組んでいた手をほどいて口元に持って行き手に軽くキスをし、お辞儀をして去り際に微笑まれてからその場をあとにされました。イリスはキスされた手を自分の胸元をやり、頬を染めながらボーっとウィリアム様の後姿を眺めております。
ウィリアム様が歩くたびにその近くにいた女性たちが次に踊ってほしいとお願いしに来ましたが、ウィリアム様は流石にお疲れになったのか一人一人丁重にお断りされ、人が少なくなってきたとは言えまだたくさん残っている大人たちの人ごみに紛れてしまいました。

・・・・・・・・

 「相変わらずの女性キラーですよねぇ…」
「ヴィンセント…見ていたのか」

どうにかパーティー会場を抜け出して人気の無いバルコニーへと辿り着いてふぅ…と一息つかれたウィリアム様の前に、しれっとヴィンセントが姿を現しました。

「貴方を見ているのが私の仕事です」
「それもそうだな…」

フッと鼻で笑いながらウィリアム様は軍服の襟元を緩められました。首を右左に動かしたりして、ストレッチのような動きをしてふぅ…と溜息のような深呼吸をされました。

「あんなことを言って…私知りませんよ?」
「あぁでも言わないと彼女は引かないだろう?もしまた彼女に同じことを言われて迫られたとしても同じようにお伝えすれば問題はないだろう?」
「…悪い人ですね、貴方は」
「グイグイと来る女性は苦手なんだ。それに今女性に現を抜かしている暇がないのは事実だからな」
「陛下のお妃探しはまだ先の話ですね…」

ふぅ…と溜息をつかれてヴィンセントはバルコニーの縁によっかかり、ウィリアム様の方を見つめて頭を抱えるそぶりをしております。けらけらと笑いながらウィリアム様もヴィンセントの横にスッと来られ、お二人は並ぶような形で月明かりの下で談笑されております。

「まだ急ぐ事もないだろう?まずはローザタニアのために勉強していかねば…」
「まぁ…でもたまには遊んで色々と抜いて行かないと身体には毒ですよ?」
「たまにはな。しかし今日出会った女性人陣たちは好みの女性が居なくてね」
「そうですね、確かに今日はイマイチでしたね。先程のイリスはブーリン男爵家のご令嬢ですが…知識教養もそれほどでもなく下品なドレスで品位も欠けておりましたし、遊び相手にするにしても後々めんどくさそうな女でしたね」
「手厳しいな」
「美人っちゃー美人でむっちりと肉感的でスタイルも良かったでしょうけど、陛下の好みでもなかったでしょう。昔から陛下はもっとこう…どちらかと言うとスレンダーで清楚な外見で冷たい感じの氷のような雰囲気の女性を好む傾向がありますからね」
「…お前よく見てるなぁ」
「一応側近ですからね」

普段は国のために身を粉にして働いているお二人ですが、よく知っている他国でパーティーの客として招かれてお酒も入り開放的になり、健全な青年らしい少し下世話な話で―――…まさに同年代の若い青年たちが酒場でくだらない話をしながら盛り上がっているのと同じような感じで、お二人はハハハ…と顔を見合わせながら笑っております。

「一本吸われますか?」

ヴィンセントが制服の胸元から煙草を取出し、ウィリアム様の前に差し出されました。

「もらおうか」

ヴィンセントから一本差しだされた煙草をもらうとウィリアム様は少し考えられて、自分の煙草を咥えて今まさにマッチを擦ろうとしているヴィンセントに話しかけられました。

「…昔のやり方でつけるか」
「え…あれですか。今更嫌ですよ」
「そんなこと言うなよ。久々の煙草なんだから付き合えよ」
「…仕方ないですね」

渋々としながらも手際よくマッチを付けるとウィリアム様は煙草を軽く口に咥えて火を付けようとお顔を寄せてきました。ヴィンセントもスッと火に近づき、二人は同じ火種を分け合う形で煙草の火を付けられました。
伏し目がちなお二人の長い睫がお顔に影を作られ、夜の月明かりと燻る煙草の煙がよりお二人の美しさを引き立たせます。

寄宿学校ケンニッジエール時代を思い出すな」
「そうですね…」

ウィリアム様は空を見上げて昔を懐かしむようにフーッと煙草の煙を吐かれました。

「よくマリアとお前と三人で先生たちの目を盗んでいろいろやっていたなぁ…」
「ホント、上手い事やってましたよ。姫様に見せてやりたいくらいです」
「うん、それは絶対やめてくれ」
「姫様には陛下の若かりし頃の悪行など死んでも見せられませんね」
「見せたらシャルは泣くだろうなぁ…」
「若気の至りとは言えあれはなかなか酷かったですね。覚えていますか?陛下と私とマリアと三人で初めて夜に寮を抜け出して街に繰り出した日の事。あぁ…映像に残していればよかったです」
「や、ホントやめて」
「…冗談ですよ。ですがまぁ…当時の我々のしていたことなど、どこの世界の男子生徒たる者やっていることです。多分」
「多分って」
「姫様が何も知らなさすぎるだけなんでね。思春期の男子の生態など知ったら卒倒されるでしょうね。世の中の綺麗で良いところしか見ていない純粋培養で育ってますから」
「私はシャルロットに甘すぎるのだろうか」
「過保護ですよ。それも超が何個も付くくらい」

スパーッと豪快に煙草の煙を吐き出しながら、ヴィンセントは遠い目をしながらチクチクとウィリアム様を口で攻撃しております。身に覚えのあるウィリアム様はハァ…と溜息をついてがっくりと頭を下ろされました。

「うん、自分でも分かっているんだ。きっとまだシャルロットのことを子供だと思っているところが原因なんだよ…」
「まぁ我々が寄宿学校ケンニッジエールに入る前に別れた7歳くらいの頃と全然変わってませんからね、シャルロット様」
「そうなんだよ…精神的にまだ幼いんだあの子は」
「そういう意味ではフランツ王子とはお似合いですけどね。あ、でもフランツ王子の方がさらにもっと精神年齢低いですから結局はあんまり今と変わんないですね」
「…ヴィー、ここナルキッスの領地だからな」
「おっと…そうでしたね。失礼」

人気の無い静かなバルコニーにはウィリアム様とヴィンセントの二人しか人の気配はありませんでした。しかしここは他所の国の領地であります。いくらローザタニアの国王とその国王補佐長官兼執務官長でジョージ陛下に気に入られているとは言え、万が一何かあればとっ捕まってしまうかも知れません。口が超悪いヴィンセントは他国でも気にせず毒舌を吐いておりますが、実はとてつもなく怖いことをずーっと平気でしており、ウィリアム様はひやひやとしております。

「しかしもうシャルロットも14だし、そろそろ大人になっていってくれなければなぁ」
「てっとり早く大人の汚いところ見せちゃいます?」
「なんでお前はそんな極端なんだよ…」
「そっちの方が早いじゃないですか。陛下が構わないなら私がシャルロット様を教育させていただきますけど?」
「…心の底から遠慮しておこう」
「え、マジ誰もが見惚れるレディーを育て上げる気満々ですけど」
「天使が堕天使になってしまう」
「…それはそれで面白いでしょう、色々と」

きっぱりと言い放つヴィンセントにどう突っ込んでいいのか分からず、ウィリアム様は頭を抱えております。そんな様子を見てヴィンセントはシニカルな微笑みを浮かべながら空に輝く星々を見つめていました。

「冗談ですよ。私だって姫様の屈託のない笑顔好きですから。ご安心してください。今まで通り、全力でそっと傍でお守りいたしますよ」
「…頼んだぞ、ヴィンセント」
「誓いますとも」
「軽い誓いだなぁ…」
「あいにくとこういう人間なんでね」

しょうがないな…というような笑顔でウィリアム様はヴィンセントの方を見つめました。ヴィンセントもウィリアム様をに微笑み返し、お二人は顔を見合わせて笑いあっております。
フッとヴィンセントが顔を上げた時何かを発見したようで、スーッと笑いが消えていきました。

「…あ」
「?どうしたヴィンセント」
「陛下…姫様は我々が思っているよりも早く大人への階段を上り始めているかも知れません」
「?」
「…あ、こっちに来ますね」

ウィリアム様もヴィンセントの視線の先を追いかけました。そして驚かれたように大きな目をさらに大きくパッと見開いて、手に持っていた煙草をうっかり落としそうになっておりました。
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