ローザタニア王国物語

月城美伶

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Jardin secret ~秘密の花園~

第18話

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 「さてマリア、昨晩何があったか話してもらえますか?」

一行はお城の別館へと戻って来るやいなや医師の診察もそこそこに、すぐにヴィンセントは人払いをすると本題に入りマリアをジッと見据えております。マリアは依然として蛇に睨まれたカエルのような状態のままで、ヴィンセントの殺気溢れる尋問が始まりました。

「え…っと…昨晩は9時過ぎにフランツ王子を寝かしつけに行ったんですけど、興奮冷めやらぬご様子でなかなか寝てくださらなかったので結局10時過ぎくらいに見回りの任務も当たっておりましたしパーティー会場に戻って来たんですの。昨晩はどういう訳かパーティーに参加された方々皆ハッスルされてて、その辺でしょっちゅうハッスルされていたので八つ当たり交じりでカップルたちを蹴散らかしまくっておりましたの」
「ほう…」
「それで先程のお城の端の北の外れにあるお庭の辺りまで見回りしていると、そこでそのカルロ伯爵に声を掛けられてまぁ少しお話をして盛り上がって―――…職務中ではありましたが…なぜか昨晩は異様に私もハッスルしちゃう気持ちが抑えられなくて…つい大ハッスルしちゃいましたの…」
「…」
「でも確か私、カルロ伯爵のベッドで超スイートなバラの香りに包まれながら大ハッスルしていたはずなんですけど…いつの間にあの場所に戻っていたのかしら?」
「夢でも見ていたんじゃないか?」
「夢にしてはリアルですわ!」
「お前の欲望が強すぎたのでは?」

ヴィンセントはだんだんと呆れた様子になっていき、でマリアの話を何だコイツは…と氷のように冷たい視線で見つめながら聞いております。ウィリアム様も少し呆れたような様子で溜息をついて椅子に座り直しました。マリアはそんなお二人の冷たい視線をチクチクと感じ、戸惑った表情で何やら考えだしました。

「…そうでしょうか?でも…夢…だったのかしら?カルロ様にお声を掛けられる直前も、幻を見ていたのかしら…」
「は?」
「いえ、カルロ様にお声を掛けられる前なんですけどね、その私が眠っていたガセホの中でハッスルしていたカップルが居たんですの。結構盛り上がっていて、でも…いい感じの時に一瞬でそこから姿を消されたんですのよ」
「ちょっと何言っているのか分かんないんですが」
「とにかく、そこにいたはずの人たちがまるで魔法みたいに一瞬で消えちゃったんですのよ!…確かその男性の方のお顔の目元当りがチラッと見えた気がするんですけど…カルロ伯爵にそっくりだったと思うんですの」
「…え?」
「そう!あのミステリアスな金色に光る瞳なんてそうそう見かけませんわ!だからもの凄く印象に残っているんですのよ!で…一瞬で消えたからあれ?と思っていたら背後から同じく金色に輝く瞳のカルロ伯爵にお声を掛けられ…その瞳に魔法を掛けられたかのように心奪われてしまったんですの…。それも…夢…?かしら?でも夢にしてはとてもリアルでしたわ…!」
「身体が覚えているとでも言うのか?」

ハッとヴィンセントが馬鹿にしたように嘲笑すると、マリアはさらに赤く濃く染まった頬に手を当てえ瞳を閉じ、昨晩のことを思い出してうっとりしておりました。ジロッと呆れた様子で冷たい視線をヴィンセントは送っておりましたが、マリアはそれに気づかずにモジモジと身もだえしてしておりました。

「えぇ…思い出すと今でも身体が疼くほどのとてつもなくスイートな夜でしたわ❤あんな官能的な夜はマリア初めてでしたわ…❤」
「うわー聞きたくないですねぇそんな話」
「あら?ヤキモチですの?ヴィンセント様❤んもう…昨晩のシャルロット様のことにしろ、ヴィンセント様がこんなにヤキモチだったなんてマリア知りませんでしたわぁ~❤」
「はっ!?誰がヤキモチなんか―――…」
「ん?シャルがどうしたのか?」
「何でもないです陛下」

二人のやり取りを聞いていたウィリアム様が、ん?と思われてお顔を上げてヴィンセントに問いかけると、間髪入れずヴィンセントはぴしゃりとそれ以上の追及を遮りました。

「とにかくマリア!いくらお酒が入っていたとはいえ職務に当たっている最中にハッスルするなんて許されざることです」
「はい…その通りですわ…。乾杯のシャンパン一杯だけしか飲んでいなかったとは言え…少しハッスルしすぎましたわ。反省いたします」
「まぁまぁ…大事には至らなかったし、もうその辺でいいんじゃないか?」
「陛下❤」
「またそうやって甘やかす…」
「でも確かに昨晩の酒は何だかどれも強かったような気がするなぁ。私も酒に弱い方ではないのに、何だか少しフワフワしてしまった時があったな」
「…言われてみればそうでしたね。いつもナルキッスが出しているお酒と変えたのですか?」
「いいえ!パーティーではいつも通りジョージ陛下の大好きな銘柄のお気に入りばかりを出しているはずですわ!」
「だよな、味はいつもと変わりなかったと思うんだが…」
「…ですわよね。乾杯のシャンパンはいつも通りの軽めのシャンパンでしたわ。…でもどこかいつもより身体がもの凄く熱くなるのを感じましたわ。…昨晩は酔っぱらった方が多かったから皆ハッスルされていたのでしょうか…?」
「…一理あるかもな」
「ですわよね~!ヴィンセント様も昨晩まぁまぁハッスルされていらっしゃいましたもんねぇ。最近社交界で1、2を争うセクシーグラマラスなエマやシャルロ―――…フガッ!!」

マリアがケラケラと笑いながら無防備に咲く場のことを喋りだすと、ヴィンセントの手が素早く飛んできてマリアの口を塞ぎ込みました。そして余計なことを言うなと言わんばかりに睨みつけます。

「ん?ヴィンセント結局お前もあのご令嬢とハッスルしていたのか?」
「…最後までハッスルはしておりません。と言いますか、まさか陛下もあの後ハッスルされたのですか?」
「ん?昨晩一緒に酒を飲んだ女性とのことか?いや、彼女とは少し話をした後すぐに別れたよ。ジョージ陛下に呼ばれたんでな」
「そうですか」
「まぁ遊びも慎重にしないとな」
「シャルロット様には聞かせられない会話ですわね」
「まぁまだ知らなくていい世界だな」
「ですって。ヴィンセント様」
「マリア、お前そろそろ黙れ」

ガッとヴィンセントはマリアの頭を肘で思い切りどつくと、アン❤っと悦び交じりの悲鳴をあげてマリアは吹っ飛びます。幼馴染同士の和やかな雰囲気の中、部屋に素早いノック音が鳴り響きました。

「陛下、セシルです…お取込み中失礼いたします。ジョージ陛下が至急三人とお目に掛かりたいと仰っております。すぐに会談室にお越しください」
「え?なんだろうか…?分かった、すぐに行こう」
「一体なんでしょうか…」
「さぁ…このマリアのことに関してか…?」
「とりあえず至急とのことだ。行こう」

ウィリアム様がソファーから立ち上がるやいなや、ヴィンセントは近くの椅子に無造作に掛けてあったマントを素早く取り、ウィリアム様の肩に掛けました。そしてドアを開けると、素早い足取りで部屋をあとにしお城の本館の方へと歩いて行かれたのでした。

・・・・・・・・

 「お待たせいたしました陛下」
「おぉ来たか…」

本館の方へと急ぎ足で移動し従者に案内されて会談室に到着したウィリアム様は、部屋の中の重苦しい雰囲気を見て驚かれましたがそのような表情を見せずにお辞儀をして部屋の中へと入って行かれました。
広々とした客間の中央に置かれている大きなソファーにでっぷりと座られていたジョージ陛下は片手を上げてウィリアム様にご挨拶をされると、すぐに着席するよう促しました。
ジョージ陛下のソファーの後ろには数人の屈強な体躯の兵士が控えており、ウィリアム様は何事かと少し驚かれましたが顔に出さずに静かに一礼して着席されました。ヴィンセントとマリアは入り口近くにそっと控え、こちらも一礼をしております。

「マリア、お主は大事ないようじゃな」
「ご心配をお掛けして申し訳ございません」

声を掛けられたマリアは恐縮して小さくなって深々とお辞儀をするとジョージ陛下はうむ、と言って頷くとふぅ…と一つ大きな溜息をつき目頭を押さえて俯くと重たい口を開来始めました。

「朝っぱらから呼び出してすまんのぉ。…先程報告があったのじゃが…今朝マリアが倒れていた北の外れの庭のさらに奥にある枯れた井戸の中から首から血を流した瀕死の女性が発見されたんじゃ」
「何ですって…?」
「まだ内々で調査中なんじゃが…どうやら昨晩のパーティーの参加者であるハミルトン子爵家のご令嬢のエマ嬢とのことらしいのじゃが…お主らこの名前に聞き覚えはあらぬか?」
「ハミルトン子爵家のご令嬢のエマ嬢…」

ウィリアム様とヴィンセントははて…?と言った様子で、頭の中で人の顔を名前を一致させる作業をしているように思いめぐらされていると、マリアが慌ててヴィンセントの脇腹を突っつきました。

「ヴィンセント様っ!ハミルトン家のエマ嬢ですわよっ!」
「どこかで聞いたような…」
「んもぅっ!ヴィンセント様が昨晩ハッスル未遂された女性ですわよっ!」
「あ…」
「思い出したか?ヴィンセント」
「…」
「昨晩お主とエマ嬢が一緒に居たと言う目撃情報があってな。決して疑っているわけではないのじゃが、何があったか差しさわりの無い程度で構わんので話してもらえんか?」
「…もしかしてこれは事情聴取ってやつですか?」
「まぁ…そうじゃな」

いつもの穏やかな表情と異なり鋭い視線でジョージ陛下はヴィンセントを見つめました。ヴィンセントはふぅ…と溜息のような深呼吸をつくとジョージ陛下の方にしっかりと身を向けて胸に手を当て話しはじめました。

「…別にやましいことはありませんので神の名にかけて真実をお話させていただきます」
「うむ」
「…昨晩はそうですね…時間はおそらく10時過ぎだったかと思います。パーティー会場でたまたま話しかけたそのエマ嬢と少しお酒を一緒に飲んだ後、お互い盛り上がりましたのでパーティー会場からほど近い人気のないテラスで愛を語り合いました。ですがまぁ少し邪魔が入って私は席を外さざるをえなかったので彼女と一緒に居たのは30分ほどでしょうか」
「その後は…?」
「その後はまぁちょっと別件で色々ありましたので…それ以上彼女のことは存じ上げません」
「そうか…」
「彼女の襲われた時間などは?」
「出血の状態からおそらく深夜であろうと推測されるが…よく分からんのが実情じゃ。ヴィンセント、それ以降にお主のアリバイを証明する者はおるか?」
「あの…私、11時過ぎくらいにヴィンセント様とお会いしましたわ!」
「他には…?」
「マリアと別れた後は12時頃でしょうか、我々ローザタニア一行が宿泊している城の別館の部屋に戻りました。途中メイドのセシルを始め二、三人の従者や警護の兵士とはすれ違いました」
「そうか…」
「それ以上はあまり人に会っておりませんので…アリバイと言うアリバイではないかも知れません」

ヴィンセントは澄んだ切れ長の紫色の瞳を真っ直ぐジョージ陛下に向けて話し続けております。嘘偽りなく話しているというのが伝わっているのでしょうか、ジョージ陛下はうむ、と頷き一つ溜息を吐きました。

「あの…ジョージ陛下、もしかしたら私…エマ嬢が襲われるところを目撃していたかも知れませんわ…」
「…詳しく話してみなさい」

マリアは青ざめながらそう呟くと、ジョージ陛下は片方の眉をピクッと上げてマリアにチラッと視線をやりました。マリアはゴクリ、と唾を飲みながら恐る恐る言葉を発していきます。

「12時前後に襲われたというのなら…おそらくあれはエマ嬢だったのではと思います。恥ずかしいことに職務中でしたがほろ酔いだったのであまり自信はありませんが、北の端の庭にありますガセホの中でそのエマ嬢が男性と睦み合って、そしてその男に襲われていたかも知れない現場を見ていたのかも知れません」
「何じゃと?」
「…それに一瞬で消えてしまったので夢かもしれない、幻かもしれないと思っていたんですが…おそらくエマ嬢だったと思います」
「男の方は見覚えはあるか?」
「…暗くて少し遠かったですし、マントのようなものを被っておりましたのであまりお顔はハッキリとは見えなかったんです。でも…金色に光る瞳をしていたのは覚えておりますわ」
「金色に光る瞳…?」
「えぇ、珍しい色ですから…よく覚えておりますの」
「…まさか」

ウィリアム様は一瞬眉をひそめて少し考え込む様子を見せたのをジョージ陛下は見逃しませんでした。ピクッと片眉を上げてチラリとウィリアム様の方に視線をやり、問いただし始めます。

「ウィリアム?どうしたのじゃ?」
「いえ…ジョージ陛下…」
「陛下、パーティーの参加者にお一人該当される人物がおります」
「ヴィンセント!」
「まことか?」
「モンテフェルロト伯爵家のカルロという方が…灰色に金色がかった瞳をされておりました」
「モンテフェルロト伯爵家?はて…あまり聞き覚えの無い名前じゃな」
「ナルキッス大国の貴族の印である水仙の模様入りの懐中時計をお持ちでしたのでナルキッスの貴族の方であることは間違いないですわっ!」
「まぁナルキッスは2000以上の貴族の有するのであまり聞いたことの無い貴族が居てもおかしくはないが…。ん?そう言えば何かでモンテフェルロトと言う名を見たこともあったような気も…はて…。…まぁ一度そのカルロと言う男をここに呼んで話を聞いてみても良いかも知れぬな」
「でも陛下…私、昨晩はそのカルロ伯爵と一緒に居たんですのよ?」
「ん?お主はずっとあの庭に居たのではないのか?」
「確かに金色に光る瞳の方なんてそうそういらっしゃらなくて珍しいですわ!でも…昨晩は…その…えっと…私カルロ様と一晩ベッドを共にしましたので伯爵のアリバイはございましてよ?」
「でっ…ではなぜお主はあの庭で眠っていたのじゃ?」

一瞬とてつもなく冷たい空気が部屋中に流れましたが、んんっと咳払いをしたジョージ陛下は平静を装ってはおりますが上ずった声でマリアに問いかけました。

「えっと…それは…上手く説明できないんですが…気が付いたらあのお庭に居たんです…。なんだか昨晩は乾杯のシャンパン一杯しか口にしていないのにもの凄くフワフワと寄った気分になってしまって…。そしてカルロ様の情熱的な口づけで頭がとろけてしまいそうなくらいに熱くなって…身体も熱くなってしまったのです…」
「うーむ…そう言えば確かに昨晩の酒はこう…たぎる感じがしたのぉ。ワシも昨晩は皇后と久々に仲良く大ハッスルしてしまったのぉ」
「…」

その場にいた全員、何とも言えずに冷えた空気が辺りを再び漂います。あ、っとジョージ陛下は発し、顔を赤らめて咳払いを一つすると話を本題へと戻し始めました。

「ワ…ワシの話は置いておいてじゃな!とにかくそのカルロ伯爵とやらに話を聞いてみよう!マリアよ、そのカルロ伯爵はどこにいるのじゃ?」
「それが陛下、どちらに宿泊されているのか分からないんですの…」
「はぁ?」
「え、マリア…伯爵のベッドに行ったんでしょう?なんとなく覚えていないのですか?」
「気が付いたらもう真っ白なシーツに包まれて…そして逞しいカルロ様の腕の中に居ておりましたの。…そして気が付いたらいつの間にか意識が無くなっていたんですの」

呆れて白い目で見つめるヴィンセントの視線にマリアはシュンット小さくなってしまいました。ジョージ陛下は頭を掻いて唸り始めてふぅっ!と大きな溜息を一つつき、丸まった身体をソファーに投げ出します。

「覚えていないのなら仕方ないのぉ…。近隣のホテルの宿泊者名簿を全て洗うように警察に依頼するかのぉ…」
「…申し訳ございません」
「お主たち、一応話はこれで終わりじゃ!…疑うわけではないが…ヴィンセントにマリア、お主らも一応重要参考人扱いになっているということは努々、忘れるんじゃないぞ!」
「は…」

ピシッと捨て台詞を吐いてジョージ陛下はタプタプとお腹のお肉を揺らしながら足早に部屋を出ていかれました。三人はスッとお辞儀をして見送ると、同時に顔を上げてお互いの顔を見合わせて仲良く同時にため息をつき、緊張が解けたのか崩れるようにソファーに腰掛けました。

「…陛下申し訳ございません」
「まぁ仕方ないことだ。とりあえずこの後公務もあるし我々も部屋に戻ろう。マリアお前もだ」
「はいっ!」
「は…」

三人はまた同時に立ち上がると足早に部屋を後にしました。カツカツカツ…とそれぞれのヒールの音が廊下に響き渡ります。湿った空気があたりに漂いはじめ、徐々に空が重たい灰色に染まりつつある中窓の外の木々が風に揺られてガサガサと大きな音を立てて木の葉を舞わしております。
少し重たい頭を抱えてヴィンセントは静かにウィリアム様の後ろについて行くのでした。

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