ローザタニア王国物語

月城美伶

文字の大きさ
72 / 115
Jardin secret ~秘密の花園~

第40話

しおりを挟む
 「おい聞いたか!?ワトソン署長とバードリー神父様のこと!!」

事件の翌日、グララスの街中では人々の間で昨晩の出来事がもうすでに話題になっておりました。
市場で働く人々は次々に『人からこう聞いた』と言う話を一斉に話し出します。

「あぁ…。ワトソン署長は例の吸血鬼事件の犯人を捕まえる時に犯人と刺し違えて亡くなったんだろう?バードリー神父も一緒だったそうじゃないか…」
「犯人は息絶える間際に教会に火を放って証拠隠滅したらしいな!全くとんでもない犯人だぜ!」
「結局犯人はどういう人物だったのかしら…」
「なんでもよその国でも殺人を犯していた凶悪犯だったらしいぜ!」
「マジかよ…!まぁ犯人も居なくなって何よりだったな!」
「あぁ!この街にも久々に平和がやって来たな!」
「ワトソン署長とバードリー神父様のお蔭ね…」
「…お二人の魂のために祈りを捧げよう!あとであの教会のあったところに皆で行こう…っ!」

人々は互いにそう言い合うと、休んでいた手を再び動かしだし人ごみ溢れる市場の仕事に戻りました。
少し離れた路地に停まっているシンプルな小型の馬車の中から白いキャソックを着た男性がそっとその様子を見届けると、御者に馬車を出す様に促しました。
流れ行くグララスの街の景色を見て男性はふぅ…と一つ息を吐くと、帽子を目深に被り直してそのまま真っ直ぐ前を見つめてグララスの街を去って行ったのでした。

・・・・・・・・

 「この度は…陛下にご心配をお掛けして大変申し訳ございませんでした」
「いや、お前たちが無事に帰って来てくれただけで充分じゃ…」
「ありがとうございます…」

ナルキッスの王都・ビストリツッアのお城に戻って来ると、ジョージ陛下とマリー皇后、マリア、そしてセシルが出迎えてくれました。シャルロット様のことを、目を真っ赤にして今にも泣きそうなお顔で出迎えるセシルを見た瞬間シャルロット様も緊張の糸が解れたのかセシルに抱きついてワンワンと泣き出し、しばらく二人で泣き続けていたらいつの間にかシャルロット様はお疲れも出たのかぐったりと眠ってしまいました。
ジョージ陛下とマリー皇后が優しい笑みでウィリアム様達をプライベートな応接間の方へと招き入れました。マリアが入れてくれた温かい紅茶の湯気を燻らせ、ふかふかの心地よいソファーに座り少しラフな状態でヴィンセントも着席をし、ジョージ陛下はウィリアム様に柔らかく微笑みかけました。

「…一連の出来事は先ほど教会の総本山アルカディアより報告を受けた。まさか…吸血鬼のような恐ろしい存在が本当にワトソン署長とバードリー神父…まさか聖職者と言われるような人物としてこの世に存在していたとは夢にも思わんかったわい」
「『事実は小説よりも奇なり』とはこのことですわね、アナタ」
「うむ、まさにそうじゃったな…。ウィリアム、ヴィンセントよ本当に無事に戻って来てくれてよかった。シャルロットも可哀想に怖い目にあったじゃろうなぁ…」
「ご心配をお掛けいたしました」
「何を言っとるか!ワシらの間では遠慮は無用じゃ…!」
「…ジョージ陛下…」

深々と頭を下げられたウィリアム様に対し、ジョージ陛下は声を大きく断言されると、少し照れたように紅茶を一気に飲み干されました。一気に飲み込まれたせいか、少しむせてしまってマリー皇后に背中をさすられてしまいましたがすぐにウィリアム様の方に見直りゴホンッと咳をして喉を整えられました。

「…お主たちのことは亡くなったローザタニア先代国王…お主たちの父親からも頼まれておるんじゃ!ワシらは無二の親友じゃったからな…!もし万が一どちらかが先に早く亡くなってしまった場合は、お互いの子供たちについてきちんと面倒を見る!そう約束しているのじゃ!」
「父上と…?」
「うむ!…ウィリアムよ、お前は成人しているとはいえ、まだ19歳…若い!全てにおいてまだまだひよっこじゃ!ヴィンセント、お主もじゃ!まだ色々と悩み、苦しみ、迷う時もあろう。そんな時は経験豊富なワシら大人を頼れ。何かしらお前らの助けにはなるじゃろう」
「陛下…」
親友フリードリヒとの約束じゃからな。…ワシは早くに親を亡くしたお主たちのことを…フランツと同様本当の子供たちのように思っておる。まぁ…お主からしたら口を開けばフランツとシャルロットの結婚の話しかしない嫌なオヤジだと思っているじゃろうがな」
「そんなこと…」
「ウィリアムよ…ヴィンセント、お主もじゃが…お主たちは人に甘えることが苦手な様じゃな。若くしてその重圧のある座に就いておるのにも原因はあるじゃろうが、もう少し人を信頼しても良いと思うぞ?特にウィリアム…いつかお主が大きな何かに苦しんでしまうのではないかとワシは心配しておる」
「…」
「まぁもう少し年相応の若者らしくいろ!ワシにももう少し甘えても構わん!あ…ヴィンセントよ、だからと言ってハッスルしすぎるのは気を付けなさい」
「そっちは歳相応なんです」
「…まぁ…ほどほどにな」
「承知いたしました」

一瞬シーンっとした空気が応接間に流れ込みました。マリー皇后は羽根の付いたゴージャスな扇子をパタパタ仰ぎ、おほほほほほ…とその場を笑いとばしました。マリアもつられて一緒に笑い出し、ピトッとヴィンセントの肩にくっ付く様に膝を折り上目づかいで見つめ上げます。

「…何でしたらこのマリアがいつでも…ヴィンセント様のお相手いたしますわよ❤いつでも…道場でマリアに愛の背負い投げを掛けてくださいまし❤」
「そうだな、まだまだ私には鍛錬が必要だからな。思う存分投げ飛ばさせてもらおうか…」
「まぁ❤ついでにその後…マリアを愛の寝技で天国へ連れて行ってくださっても構いませんことよっ!?」
「…一人で勝手にマットに包まっておけ」
「あぁんっ!その冷たい視線に冷たいお言葉っ!!大好きですわ、ヴィンセント様っ!!」
「…お前は昔から変わらないな」
「美人になったでしょうっ!?」
「…まぁな」

キャーッと一人でテンション高くなっているマリアを横目に、はぁ…と溜息をついてヴィンセントは紅茶を一杯口に含みました。

「…歳相応にしてたら色々歯止め効かないんですよねぇ…」
「ん?ヴィンセントよ、何か申したか?」
「いえ…何も」

誰にも聞こえないような小さな声でぽそっとそう呟くと、ヴィンセントはウィリアム様の方に視線をチラッと向けました。何か思うところがあるのか、口元に笑みを浮かべながらもエメラルドグリーンの瞳は笑っておらず、でもにこやかにほほ笑んでおりました。

「さぁ…夜もそろそろ深くなってきた。疲れておるじゃろうからもう休みなさい」
「ありがとうございます」
「…うむ。おやすみ、ウィリアム」
「お休みなさいませ、ジョージ陛下、マリー皇后…」

深々とお辞儀をして、ウィリアム様とヴィンセントは応接間から去って行きました。遠くなっていく足音を聞きながら、ジョージ陛下は大きく溜息をつくとやれやれ…と紅茶をグイッと飲まれました。

「陛下、ワタクシ達も休みましょう。今日は心配で気疲れされましたでしょう?」
「うむ…」
「…陛下、彼らも必死でもがいている最中です。ワタクシ達は…そっと見守って差し上げましょう」
「うむ…」
「さぁ陛下…おやすみまさいませ」

マリー皇后はそう優しく微笑み、ジョージ陛下の丸々とした頬に優しくキスをされると、手を取って一緒に寝室の方へと向かい応接間をあとにしたのでした。

・・・・・・・・

 「ヴィー、一本付き合え」
「…一本だけですよ」

別館に戻る途中、広いバルコニーに出るとウィリアム様はヴィンセントに目配せをして煙草を促しました。カツアゲされたヴィンセントは渋々ポケットから煙草を出してウィリアム様に差しだし、スッと火をつけて二人は階段に座り込み一服しだしました。

「…疲れた」
「でしょうね」
「お前にも苦労かけたな」
「…いつものことです」
「シャルを守ってくれて…礼を言おう」
「私は臣下です。姫様を命に代えてでもお守りするのが私の使命です」
「ヴィンセント…」
「なんでしょうか、陛下」

ふぅ…と胸いっぱいに吸い込んだ煙を思い切り吐きながら、ヴィンセントは澄んだ夜空の星を見上げておりました。ウィリアム様はそんなヴィンセントの横顔を膝に頬杖をつきながらジッと見つめます。

「…お前は幼い時から私たちと兄妹といっても過言でないほどずっと一緒に過ごしてきた」
「そうですね」
「…シャルはお前のことをもう一人の兄と思っているんだろうな」
「何かと手のかかる妹ですねぇ」
「でもその分愛らしいだろ?」
「…まぁそうですね」
「これからも…本当の妹のようにアイツを守ってほしい」
「陛下?」
「…ヴィンセント、私がお前に言いたいことはそれだけだ」
「…陛下、別に私姫様にそれ以上の感情なんて一切抱いておりませんけど?」
「…知っているよ」
「だったら別に―――…」
「知っているよ。でも…似ているだろう?」

ピクリと一瞬ヴィンセントの眉が動きました。しかし平静をすぐに取り戻し、ゆっくりとヴィンセントはウィリアム様のお顔を見ると、普段はあまり見せない少し鋭い真剣な視線でこちらを見つめておりました。

「…何が仰りたいのですか?」
「ヴィンセント、お前は―――…」
「陛下、子供じゃないんだから。大丈夫ですよ。姫様だけの騎士ナイトが現れるまで、私は命に代えてでも姫様をお守りします」
「…そうか」
「えぇ…」

ウィリアム様はヴィンセントから視線を外し、同じく澄んだ星空を見上げながら大きく煙草の煙を吸ってふぅ…っと細長く吐き出しました。

「…そんな事よりも先に陛下の事です。あ、そう言えば西のアルマラ国の皇女とのお見合い話がきております。歳は陛下の一つ下の18歳。スレンダーで穏やかな美女とのことですよ。帰ったら早々、返事をしなくてはなりません」
「…露骨に話の矛先を変えようとしているな」
「何か仰いましたか?」
「いや、別に…」
「そうですか…」
「あぁ」
「…陛下」
「なんだ?」
「…朝まで飲みませんか?」
「そうだな」
「…マリアを呼んできましょう」
「むしろマリアの部屋に行こう」
「そうしましょう」
「奇襲だ」

お二人はお顔を見合わせてニヤリと笑うと、煙草を消して颯爽と立ち上がり来た道を戻ります。
まだ応接間で片付けをしているはずと踏んだお二人は急ぎ足で応接間に戻り、部屋を片付けて出ようとしていたマリアの腕を取ってそのまま引きづりながら歩き始めました。

「ウィ…ウィリアム様っ!?ヴィンセント様っ!!?」
「マリア、今夜は付き合え」
「えっ!?」
「アナタの部屋で酒盛りです。どうせ部屋にいい酒隠し持っているんでしょ?」

え?え?と戸惑いながらもこのシチュエーションに喜んでいるマリアはハイっ❤と返事をしてそのままお二人に引きずられながら乙女チックでラブリーなマリアの部屋へと運ばれていきます。
三人の笑い声は夜通し、静かなビストリッツアの夜空に広がるのでした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

溺愛兄様との死亡ルート回避録

初昔 茶ノ介
ファンタジー
 魔術と独自の技術を組み合わせることで各国が発展する中、純粋な魔法技術で国を繁栄させてきた魔術大国『アリスティア王国』。魔術の実力で貴族位が与えられるこの国で五つの公爵家のうちの一つ、ヴァルモンド公爵家の長女ウィスティリアは世界でも稀有な治癒魔法適正を持っていた。  そのため、国からは特別扱いを受け、学園のクラスメイトも、唯一の兄妹である兄も、ウィステリアに近づくことはなかった。  そして、二十歳の冬。アリスティア王国をエウラノス帝国が襲撃。  大量の怪我人が出たが、ウィステリアの治癒の魔法のおかげで被害は抑えられていた。  戦争が始まり、連日治療院で人々を救うウィステリアの元に連れてこられたのは、話すことも少なくなった兄ユーリであった。  血に染まるユーリを治療している時、久しぶりに会話を交わす兄妹の元に帝国の魔術が被弾し、二人は命の危機に陥った。 「ウィス……俺の最愛の……妹。どうか……来世は幸せに……」  命を落とす直前、ユーリの本心を知ったウィステリアはたくさんの人と、そして小さな頃に仲が良かったはずの兄と交流をして、楽しい日々を送りたかったと後悔した。  体が冷たくなり、目をゆっくり閉じたウィステリアが次に目を開けた時、見覚えのある部屋の中で体が幼くなっていた。  ウィステリアは幼い過去に時間が戻ってしまったと気がつき、できなかったことを思いっきりやり、あの最悪の未来を回避するために奮闘するのだった。  

処理中です...