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夜中の音

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宮内は東京での仕事を辞め、半年前に死んだ祖母の家に引っ越してきた。


地方にある祖母の家はだいぶ古く、
中も外もむき出しの支柱はカビが生え、黒く荒んでいた。


異変に気がついたのは、越してきた夜のことだった。
夜中の二時ごろ、


ダン、ダン。という音で目が覚める。
まるで車のドアを勢いよく閉めた時のような、そんな音だった。


初めの数回は近所の人によるものと思っていた。
しかし、それにしては何度も何度も聞こえる。


それに、ダンダンという音の合間に「うぅ、うぅ」と
誰かの啜り泣く声も聞こえる。


翌朝、音のしていたであろう家の裏側へ行く。
特に何も異変はなく、やはり住民の誰かによるものと考えた。


その晩以降、同じように毎晩聞こえてくるのだ。
時刻は毎回夜中の二時。
心霊現象なのではないかとも不安になる。


翌朝、同じように家の裏を調べる。


古びた家の支柱の一つに奇妙な汚れがあった。
元々黒く汚れてはいたが、部分的に真新しいものがある。


縦に伸びたような、流れたようなドス黒い染み。
恐る恐るなぞると、指は赤黒く汚れる。


「血だ」










ダン「うぅ」、ダン「うぅ」。


その版も聞こえてくる。
正体を知るために物陰に隠れていた。


月明かりに照らされてよく見える。
そこでは、










女が家の支柱を殴っていた。
いや、殴っているのではない。
自分の手のひらで釘を打ちつけているのだ。


駆けつけた警察により女は確保された。
数日後、警察から聞かされた話は信じがたいものだった。




女はこの家を呪いの儀式の場所にしていた。
家の支柱に五寸釘を打ち付けるのだが、金槌だと音でバレるので
手のひらで押し込んでいた。


それはもう数年以上続けており、
その証拠に家の支柱には無数の釘が刺さっていた。


古い家でボロボロだったので気が付かなかったが、
黒く荒んだ汚れのほとんどが女の血液だったという。


女は何年も毎日毎日、
眠っている祖母の家に呪いを打ちつけていたのだ。


親しみのある家だったが、もう住むことはできない。
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