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第8章 第一回公判
しおりを挟む9月24日 岐阜地方裁判所302号法廷において、第一回裁判員裁判が始まった。
裁判所事務官の案内で、裁判所書記官、速記官、検察官に続き、弁護人の廣田と恵美子が入廷し弁護人席に着いた。 検察官は、纐纈 俊二(こうけつしゅんじ)・野田 誠一郎(のだせいいちろう)の2名であった。
30席ある傍聴席は、すでに20人ほどが着席しており、最前列には、10人近くの報道関係者が陣取り、その後方の一般傍聴人の中には、園部洋子と和田結衣の姿があった。
両腕に手錠、腰縄でつながれたスエット姿の被告人 上田健一が、二人の刑務官に付き添われ入廷した。 右足を庇うように歩き被告人席に着いた。無精ひげを伸ばし頬がこけ背を丸めた、健一の人相は罪びとそのものだった。
裁判官と裁判員が、席順に入廷し自席の前に並んだ。 右陪席 (裁判長の右手側)に江田恭子、裁判長席に遠山博章、左陪席(裁判長の左手側)に守口崇史の順であった。 裁判員は、20歳代の女性が1名、30歳代の男性1名、40から60歳代の男女4名の6人であった。
裁判長の指示で、被告人 上田健一の手錠と腰縄が外された。
「起立!」 午前10時、裁判所事務官の号令で、法廷内の全員が起立した。
「礼」 全員が礼をし、裁判官・裁判員に続きそれぞれに着席した。
「それでは、開廷いたします。被告人は、証言台の前に出てください」
被告人の健一が、右足を庇うように歩き証言台に立った。
「怪我の具合は、どうですか。立っていられますか」
「はい、大丈夫です」
被告人が、起訴された本人であることを確認するための“人定質問”が行われた。
「被告人は、氏名を述べなさい」
「葵一巳(あおいかずみ)です」
「上田健一、ではないのですか」
「葵一巳 です」
「まじめに答えなさい」と、守口裁判官が促した。
「葵一巳。平成8年(1996年)8月13日生 24歳、無職、静岡県浜松市西区舘山寺町199です」
遠山裁判長が、江田裁判官と守口裁判官に小声で話しかけ二人はうなずいた。
「被告人の、いまの証言は、旧姓・旧住所ですね。甲号証の戸籍謄本もありますから異例ではありますが、葵一巳こと上田健一ということで審理を進めます。 検察官、弁護人 意義はありませんね」と、遠山裁判長が発した。
「しかるべく」と検察官 纐纈が合意し、弁護人の廣田も合意した。
「では、裁判員の皆さんもそのように取り扱いしてください」
「それでは、被告人 葵一巳こと上田健一に対する殺人事件について審理いたします。 検察官は、起訴状の朗読をしてください」
「では、“配布資料番号 1”の起訴状をご覧ください。
公訴事実
被告人 上田健一は、令和2年の7月3日午後8時15分ころ、郡上市大和町剣164の自宅において、入浴中に背中を流してくれていた養母 上田詢子 当時63歳と些細なことから口論となり、養母 上田詢子の頭部を浴室の鏡に殴打し、割れた鏡の片で左頸動脈を切断し失血死させた。その後、異変に気付き、119番通報を行っていた養父の 上田紘一 当時65歳の左腹部を包丁で刺し、左腎動脈損傷、及び、左腎臓損傷により失血死させました。
罪名及び罰条、 殺人罪及び刑法199条。
以上について審理をお願いします」
罪状認否が行われた。
「これから、いま朗読された公訴事実について審理を行いますが、審理に先立ち、被告人に注意しておきます。 被告人には、黙秘権があります。この法廷で答えたくない、言いたくないことは言わなくても構いません。また発言することも出来ます。ただし、この法廷内での発言は、被告人に有利なることも不利になることもすべて証拠となりますので注意してください。 よろしいですか」
「被告人は、返事をして下さい」と、守口裁判官が促した。
「はい」
「では、その上で尋ねます。被告人は、先ほど朗読された起訴状の内容について認めますか」
「……」 健一は、うつむいたまま答えようとはしなかった。
「被告人は、答えてください」と、裁判長が促した。
「黙秘しますか」と、裁判長が聞いた。
健一は、うつむいたまま無言でいた。
「黙秘するということですね」と、裁判長が尋ねた。
健一は、小さくうなずいた。
「では、弁護人の、ご意見はいかがですか」
「はい。被告人に、両親を殺害する理由はなく、殺人罪については認めません。弁護人は、無罪を主張します」
「被告人は、席に戻ってください」
「では、審理に入ります。 検察官は、冒頭陳述をどうぞ」
「“配布資料の3”の身上調書を参照してください。
被告人の家族構成は、被告人と養父 上田紘一、養母 上田詢子の3人家族でありました。
被告人は、1999年(平成11)年8月 3歳のとき、静岡県浜松市北区気賀155 児童養護施設 “葵園”に、葵一巳として入所しました。 葵園で3年5ヶ月を過ごした、2003年(平成15年)12月25日 7歳のとき、被害者となる養父 上田紘一、養母 上田詢子の養子として迎えられました。 大学を卒業した2019年4月より、郡上八幡市役所の観光課に勤務しておりました。
なお、氏名については、2006年(平成18年)に、改名の届け出がされ、“上田健一”に変更されております。
被告人は、養父母のもとで何不自由なく育てられました。その養父 紘一の厳しい躾と、養母 詢子の過剰なまでの世話焼きに、日頃から不満を募らせておりました。 被告人は、事件に先立つ6月30日と7月1日、タウン誌“ナ・がら”の編集者で大学時代のサークル仲間であった、高橋涼子さんの取材に同行し郡上八幡市各地を巡っておりました。 そして、第二の現場となった居間には、事件前日の7月2日に、被害者の義父 紘一が郡上大和信用金庫郡上支店 貸付窓口係の和田結衣さんからお借りした“証拠物件その5”の見合い写真が置かれていました。
それでは、事件のあらすじ・争点について述べます。“配布資料の3”の供述調書を参照してください。 令和2年7月3日 事件当日、夕食を済ませた被告人は入浴しており、被害者の養父 紘一は、居間でテレビのニュースを見ておりました。 被害者の養母 絢子は、入浴中の被告人の背中を流しておりました。 入浴中の被告人は、背中を流していた養母の詢子と自身の見合い話しで口論となり、養母 詢子の後頭部を壁面に設置された鏡に打ち付け、割れた鏡片“証拠物件その2”を用い床に倒れた詢子の首元 左顎(あご)部を刺し、左頸動脈切断し失血死に至らしめました。 異様な物音に気付き駆け付けた、養父の紘一がその様子を目撃し午後8時15分 119番通報をしました。 被告人は、養父 紘一の後を追い居間で119番通報中であった養父 紘一を押し倒し、テーブルの上に置かれていた包丁“証拠物件その3”を用い、養父 紘一の左腹部を刺し腎臓動脈を損傷させ失血死に至らしめたものです。
争点となる殺意についてですが、養父の上田紘一は、大変几帳面な性格であり日頃から躾に厳しく、養母の詢子は、過剰ともいえる世話焼きであり、夫の世話のほか被告人の身の回りの一切を行っていました。 被告人は、養父 紘一の躾の厳しさ、過剰なまでの養母 詢子の世話焼きに、自身の、意思の選択を許されない状況にあり、日頃からの不満を募らせておりました。 犯行時、普段通りに被告人の背中を流していた養母 詢子から、見合い話を言い出され些細なことで言い争いになり、激昂した被告人が養父母二人を殺害したものです。
日頃から募らせていた不満を一気に爆発させ犯行に及んだもので、この犯行に計画性は無いにせよ明らかに殺意があったと言えます。 以上です」
「弁護人は、冒頭陳述をどうぞ」
「初めに、被告人は無実であることを述べておきます。 被告人の健一君は、養父母に厳しく躾られ、家庭内の暴力はおろか何も問題を起こしたことなどはありません。近所や勤め先の評判はとても良く、両親を傷つけるようなことは無い何かの間違いであろうと誰もが口にしております。
供述調書にある、養母 詢子さんを、押し倒し後頭部を鏡に打ち付け、割れた鏡の破片で頸動脈を刺した。 養父を押し倒し包丁で腹部を刺したについて、いずれも目撃者はおらず、すべては警察官の誘導により自白させられた供述であり、取調を行った警察官が創作したストリーであって事実とは異なります。
弁護人は、以降の取調べで真実を明らかにする所存です。
最後に、被告人を殺人罪で有罪とするには、検察官は『合理的な疑問を残さない程度の証明』疑いようのない事実をもって事件を立証することが必要です。これは、被告人が無罪であると考えられる点が1つでもあれば、被告人を無罪としなければならない。『疑わしいだけでは有罪には出来ない』ということです。 本件は、検察官がこの立証を出来ず、被告人が無罪となることを弁護人は確信しております。 以上です」
「本件では、本日の公判期日に先立ち、裁判所・検察官・弁護人の3者で争点と証拠を整理する手続きを行っております。 被告人が、事件当時現場にいたこと、被害者それぞれが失血死したことについては争いがありません。そこで、この裁判においては被害者2名が死亡したのは、被告人が殺意をもって行った行為なのか否かの審理を行います。
これより、検察官・弁護人から請求のあった証拠の取調べを行います。まず、検察側から甲号証の説明をお願いします」
「証拠となる物件及び資料の説明を行います。
配布資料の3、身上調書及び供述調書。
配布資料の4、実況見分調書、殺害現場となった上田邸の検証時の図面・写真を添付しております。
証拠物件その1、119番緊急通報時の音声録音をとしております。
証拠物件その1を、文章に書き起こしたものを配布資料の5としています。
証拠物件その2、犯行の1に使用された割れた鏡片
証拠物件その3、犯行の2に使用された包丁
証拠物件その4、被害者 上田紘一の着衣
証拠物件その5,居間のキャビネットの上に置かれていた写真
資料の6、証拠物件2の犯行の1に使用された割れた鏡片の鑑定書
資料の7、証拠物件3の犯行の2に使用された包丁の鑑定書
資料の8、証拠物件4の被害者 上田紘一の着衣の鑑定書
資料の9、被害者上田詢子の死体検案書
資料の10、被害者上田紘一の死体検案書となります」
「弁護人は、検察官の証拠請求に対し同意しますか」
「弁護人は、被害者 上田詢子さんの死体検案書資料の9、被害者 上田紘一さんの死体検案書資料の10については同意。 その他の、供述調書、証拠物件1の音声記録、証拠物件2の割れた鏡及び鑑定書、証拠物件3包丁及びその鑑定証、証拠物件4の上田紘一の着衣及び鑑定書について不同意です」
「弁護人は、死亡原因以外について争うと言うことですか」
「はい」
「では、順に審議いたします。 検察官は、資料に基づいて説明を行ってください」
「はい、犯行の概要について順を追って説明いたします。 “資料の4”の実況見分調書及び現場見取り図を参照してください。
第一の犯行となる現場の浴室は、玄関から続く廊下の突き当り左側のここです。面積は、3.78㎡で戸建住宅としては、かなり広い浴室です。浴室の洗い場の壁には、高さ90センチ幅60センチの鏡が、床から高さ60センチに設置されておりました。 第一の被害者となる養母 詢子は、この浴室の洗い場 この位置で仰向きに倒れておりました。 第一の犯行に使用された、凶器となる割れた鏡片“証拠物件その2”は、現場のこの位置、遺体左側の床に落ちておりました。
第二の犯行の現場は、この居間で玄関を入った右側にあたります。 床面積12.9㎡いわゆる8畳間で、居間の中央に置かれていた このテーブルはずれ、テーブル横の床 この位置に、第二の被害者となる養父 紘一が仰向きに倒れていました。 119番通報に使用された固定電話は、この部屋の入り口近くの、このキャビネットの上に置かれていましたが、受話器と本体は落下していました。また、キャビネットの上には、“証拠物件その5” この見合い写真が置かれていました。 床には、1個の梨と3組のフォークと小皿が落ちていました。このフォークと小皿からは、養母 詢子の指紋が検出されており、食後のデザートに養母 詢子が準備し、犯行に使用された包丁 “証拠物件その3”と共にテーブル上に置かれていたと推測されます。
被告人は、部屋の奥 窓側のこのソファーに座っているところを、駆け付けた救急隊員2名に目撃されています。その被告人の座っていた足元、この位置に凶器“証拠物件その3”の包丁が落ちていました。
被告人は、第一の被害者の養母 詢子を、浴室の この鏡に後頭部を打ち付け、床に押し倒し、割れた鏡片 “証拠物件その2”を用い右手でのど元左側を刺したのです。 そして、異様な物音を聞き駆け付けた養父の紘一が目撃し119番通報しています。通報時刻は、午後8時15分です。 被告人は、通報をしていた養父 紘一を押し倒し、テーブル上に置かれていた包丁 “証拠物件その3”を右手に取り、被害者 紘一の左腹部を刺したものです。
現場1の浴室から現場2の居間まで続く廊下には、血液の付着した足跡が続いており、居間の入り口の柱には右手の血紋(手がた)がありました。その採取された足跡・血紋からは、共に被告人の血液を検出しています。
“配布資料の5”に示したように緊急通報は、『妻 詢子さんが浴室で血を流し倒れ』ですから、現場1で犯行を行った後に、現場2で犯行を行ったことについて疑いはありません。
緊急通報で駆け付けた、救急隊員2名により被害者2名の死亡が確認され、被告人は、その後、臨場した警察官によりの身柄を確保されたものです。 現場付近の聞き込みから、現場から逃走した者はおらず、現場から採取された足跡・指紋は、被害者2名と被告人、事件直後に現場に赴いた救急隊員と警察官の3名以外のものは発見されておりません。 よって被告人の、犯行であることは疑いようのない事実であります」
「では、“証拠物件その1”119番緊急通報時の音声録音データについて証拠調べを行います。 よろしいですか」
「しかるべく」
「検察証人は、証言台の前へ出てください」
「証人は、氏名・職業を述べてください」
「梅原淳二です。郡上市消防本部隊員です」
「先ほど、宣誓書に署名されましたね。宣誓書を読み上げてください」
「良心に従って真実を述べ、何事も隠さず偽りを述べないことを誓います。 梅原淳二」
「証人は、着席して下さい」
「今より“証拠その1”の音声を再生いたしますが、音声を文書に書き換えた“配布資料の5”を、参照してください」
「それでは“証拠その1”の音声の再生をします」
【はい、消防119番です。火事ですか、救急ですか。
妻が、妻が風呂で血を流して……
救急ですね。場所はどちらですか。
……ケンイチ……ワァ……
もしもし、どうしました。大丈夫ですか……もしもし、どうしました。大丈夫ですか……】
「この対応を行ったのは、証人に間違いありませんね」
「はい」
「では、お伺いいたします。証人の梅原さんは、消防隊員になられて何年ですか、また、その当日の勤務状態についてお話しください」
「消防隊隊員になり8年です。この日は、18時に交代し勤務に当たっていました」
「経験も豊富で、交代して2時間程、健康状態に問題はなかったということですね」
「はい」
「では、日時・時刻について説明してください」
「はい。入電は、7月3日 金曜日 20時15分、固定電話からの救急要請でした」
「あなたの呼びかけに対し、通報者からの応答が無くなったわけですね。通報者に何が起きたと思いましたか」
「通報者の男性が、突然倒れたと思いました」
「刺されて、倒れたと……」
「意義あり! 検察官は、暗に誘導しています」
「検察官は、注意してください」
「はい。 では、この通報の傍受後、どうされましたか」
「発信元である上田邸に、救急車の出動要請をしました。浴室で奥さんが血を流し倒れていること、通報者自身に異常が発生し、救急車が2台必要であることを伝えました」
「ありがとうございました。 第二の犯行時刻は、この119番通報の時刻の20時15分であることは間違いありません。そして被告人は、この通報の直前に義母 絢子を殺害していたわけです。 以上です」
「弁護人、反対尋問はありますか」
「はい。通報者の男性が突然倒れたと、思われたのはなぜでしょうか」
「ケンイチと叫ぶ声があり、その直後に倒れるような物音がしましたから」
「倒れるような物音を聞き、そう思われたのですね」
「はい。通報者が倒れたと思いました」
「その時、通報者が刺されたと思いましたか」
「刺されたとは、思いもつきませんでした」
「以上です」
「裁判員の方は、聞きたいことがあればその都度質問していただいて構いません」
「質問は、ありませんか」 数人の裁判員がうなずいた。
「では、証人は下がってください」
「はい」
次に、救急隊員 島谷拓郎の証人尋問が行われた。
「現場到着時刻は、何時でしたか」
「指令から、16分後の20時32分ころ現着しました」
「その時の様子を、話していただけますか」
「上田宅に、同僚の野尻隊員と現場に向かい自宅前に救急車を停めました。玄関ポーチとその隣の部屋の明かりは灯っていましたが、玄関は施錠されていました。隣の部屋からは、テレビのニュースと思われる音声が聞こえていました。 野尻隊員が、玄関の呼び鈴を鳴らし2度3度呼びかけましたが応答はありませんでした」
「呼び鈴を鳴らしても、応答がなかったのですね」
「はい」
「玄関は、施錠されていたわけですね。どうやって室内に入ったのですか」
「私は、庭木戸から右手の隣室の様子を覗きました」
「右手の隣室とは、第二の現場となる居間ですね」
「はい、そうです」
「室内は、どのような様子でしたか」
「若い男がソファーに座り、床に血を流した男性が倒れていることを確認しました。『浴室で奥様が怪我をした。通報者の応答が無く倒れたようだ』と聞いておりましたので、倒れている男性が通報者だと思いました」
「その後、どうされましたか」
「居間のガラス戸から室内に入り、浴室へは、野尻隊員が向かいました。 若い男の、足元に血の付いた包丁が落ちていました。 倒れていた男性は、腹部から出血しており床には血溜まりができていました。 顔面に血の気はなく、呼びかけに応答はありませんでした。呼吸は停止し脈も確認できませんでした。心マの胸骨圧迫を行いましたが、腹部の傷口から血が噴き出しましたから蘇生をあきらめました」
「ソファーに座っていた若い男は、今、この法廷内にいる人物でしょうか」
「被告人です」
「被告人が、ソファーに座っていたのですね」
「はい」
「被告人の足元に落ちていた血の付いた包丁とは“証拠物件3”この包丁ですか」
「はい、そうです」
「被告人がソファーに座っていた。その時の被告人の様子はどうでしたか」
「全裸で、ずぶ濡れで、手や足に血が付いておりました」
「被告人の手と足に血が付いて、足元に血が付いた包丁が落ちていた。その様子を見て、何が起こったと思いましたか」
「被告人が、倒れていた男性を包丁で刺したのだと思いました」
「被告人が、包丁で刺したと思ったのですね」
「はい」
「その後、どうしました」
「野尻隊員から、浴室で女性が死亡しているとの報告がありました」
「既に、亡くなられていたわけですね。その後はどうしましたか」
「野尻隊員と二人で、被告人を救急車に連れて行き、本部に報告しました」
「どの様な、報告をしたのですか」
「男女各1名の死亡を確認し、20歳代の男性を保護し手当していると。それで、警察の到着を待つよう指示されました」
「保護した20歳代の男性とは、被告人ですね」
「はいそうです」
「被告人とは、何か話しましたか」
「怪我の具合を尋ねましたが、被告人は何も喋りませんでした。伊藤巡査が到着し、現状を確認された後に、被告人に『何があった、どうした』と尋ね、『僕のせいだ』と答えていました」
「被告人は、『僕のせいだ』と答えたのですね」
「はい」
「現場で、被告人以外の人物を見かけましたか」
「いいえ。被告人以外はおりませんでした」
「以上です」
弁護人の反対尋問
「出動の指令から16分後の20時32分ころ現着したのですね。到着に16分かかっていますが、時間がかかりすぎてはいませんか」
「現場の大和地区は消防署がなく、本部からの出動となりますから仕方がないことです」
「なぜ蘇生処置を、あきらめたのですか」
「先ほども言いましたが、外傷性の出血がひどく、それに通報から時間が経過していましたから」
「手遅れと、判断されたわけですね」
「はい」
「では、さきほど証人は被告人が『包丁で刺し』た、と証言されましたが刺すところを見たのですか」
「刺すところを、見たわけではありません」
「証言を、訂正しますか」
「何が起きたかと聞かれたので、そう答えただけです」
「現場を見た印象であって、あなたの推測ということですね」
「はい、そうです」
「被告人は、なぜ、全裸でずぶ濡れだったのでしょうか」
「入浴していて、急いで飛び出したたからだと思いました」
「ソファーに座っていたときの、被告人の様子はどうでしたか」
「放心状態のように、みえました」
「放心状態とは、具体的にどのような状態だったのですか」
「私の、問い掛けが聞こえないのか返答はなく、右手のひらに切り傷があり出血しているにも関わらず、痛がるよう様子はありませんでした。手当のために、救急車に連れて行きましたが、足を引きずり力なくふらふらと歩き、床に血の足跡がつき、足にも怪我をしていることが分かりました。 手当してわかったことなのですが、右足の踵に鏡の破片が刺さっていました」
「踵に割れた鏡の破片が刺さっているにも関わらず、ふらふらと歩いたのですね。痛みも感じないほどの状態だったということですね」
「はい。鏡の破片を取り除くときには反応しましたが、声を出すことはありませんでした」
「では、どの部位にどの程度の怪我があったのでしょうか」
「右手のひらと指先、確か人差し指と中指に切創(切り傷)がありました。右足の裏 親指の付け根に切創、踵に大きめのガラスが刺さったままでした。足は、縫合が必要と判断しました」
「その手当の時の、被告人の様子はどうでしたか」
「抵抗するでもなく、大人しくしていました」
「手当の後は、どうされたのですか」
「はい、伊藤巡査長が来られ、巡査長と下着とパジャマを着せガウンを羽織らせました」
「その時の、被告人の様子はどうでしたか」
「大人しく、伊藤巡査長の指示に従っていました」
「伊藤巡査長が着せた、下着とパジャマ、ガウンはどこにあったものですか」
「野尻隊員が、家の中から持ってきたものです」
「その後は、どうしましたか」
「パトカーが到着し、刑事さんが来られたので現場から引き上げました」
「被告人は、怪我をしていたにも関わらずパトカーに載せられたのですね」
「一応手当は終わっていましたし、命に係わるほどのものでは有りませんでしたから問題は無いと判断しました」
「室内の様子はどうでしたか。家庭内暴力が有ったように見えましたか」
「いいえ、そうは見えませんでした。居間は、テーブルがずれてその付近は散らかっていましたが、それ以外は綺麗に片付けされていました。そういう問題がある家庭では、壁や扉が壊れていたり、どこかに傷があるものですがそのようなことは一切みられませんでした」
「以上です」
続いて、もう一人の救急隊員 野尻雄一の証人尋問が行われた。
「島谷隊員と、現場に急行されていますね。現場到着後の、あなたの行動を説明してください」
「はい。玄関の引き戸は施錠されており、玄関の呼び鈴を鳴らし、何度か呼びかけましたが応答はありませんでした。島谷隊員に隣の部屋の様子を見るよう指示し、島谷隊員が、玄関わきの部屋で倒れている男性を確認しましたので、島谷隊員に続き室内に入りました」
「あなたは、被告人を見ましたか」
「はい。全裸でソファーに座っている被告人を確認しました」
「被告人を見て、どう思われましたか」
「見たわけではありませんが、被告人が、包丁で被害者を刺したと思いました」
「どうして、そう思われたのですか」
「被告人の手や体に血が付いており、その足元に血が付いた包丁が落ちていたからです」
「その後の、あなたの行動を説明してください」
「島谷隊員が男性の対応を開始しておりましたから、私は、浴室に向かいました。浴室を覗くと、女性が洗い場で仰向けに倒れ、首元から出血しており床は血の海のようなありさまでした。 女性の、顔面は蒼白で既に亡くなっていると思いました。意識の確認、呼気と脈を確認しましたが、呼吸は停止し脈も確認できませんでした。 ご遺体の顔には、割れた鏡の破片がいくつか刺さり、床に血の付いた先の尖った破片と、血の付いたタオルが顔の横にありました」
「その血が付いた破片は、これ、“証拠物件その2”のこの割れた鏡ですか」
「はい、そうです」
「先ほどの島谷隊員と同じ質問をします。現場で、被告人以外の人物を見かけましたか」
「いいえ。誰も見かけませんでした」
「以上です」
弁護側の、反対尋問が行われた。
「浴室に向かったと証言されましたが、浴室の場所がすぐにわかったのですか」
「廊下の照明は消されていましたが、廊下の奥に明かりが見え、床には、血の足跡が残っていましたので、すぐに浴室の位置はわかりました」
「居間のドア、浴室のドアは閉じていた、それとも開いていたのですか」
「居間のドア、脱衣室、浴室のドアはいずれも開いていました」
「被害者の女性は、衣類を着ておられましたか」
「普段着のようなものを、身に着けておられました」
「浴室で、倒れていた女性を見て、何があったと思いましたか」
「転倒し割れた鏡の破片が落下して、運悪く刺さったと思いました」
「血の付いたタオルを見て、どう思いましたか」
「どうとは? 」
「止血に、使用されたのではありませんか」
「ご遺体の横の床にありましたから、タオルが血を吸ったのだと思いました」
「あなたは、被告人と会話しましたか」
「いいえ、話しはしていません」
「先ほどの島谷隊員が、被告人が『僕のせいだ』と発言したと証言されましたが、あなたは、それをお聞きになりましましたか」
「いいえ、聞いていません」
「救急車に乗せられていた被告人の、表情はどんな様子でしたか」
「呆然とし、島谷隊員の呼びかけもほとんど聞こえていないように見えました」
「伊藤巡査長が着せた下着、パジャマ、ガウンは、あなたが家の中から持ってこられたのですね。それは、どこにありましたか」
「衣類は、脱衣場にありました」
「先ほどの島谷隊員と、同じ質問をします。室内の様子はどうでしたか。家庭内暴力があったように見えましたか」
「現場以外、室内はとても綺麗に片付けされ、その下着やパジャマもきちんとたたまれ置かれていましたから、家庭内で暴力があっとはとても思えません」
「終わります」
「証人は、下がってください」
伊藤巡査長の証人尋問
「その日、伊藤巡査長は当直勤務しておられ、本署から連絡を受けて現場に向かわれたのですね」
「はい。本署から連絡を受けて現場に向かいました。直前に、救急車のサイレンを聞いておりましたし、現場は交番から500メートル程の距離ですからすぐに駆けつけることができました」
「あなたが、現場へ着いたそきの様子はどうでしたか」
「健一は、救急車に乗せられていました。玄関から室内に入り、現場の居間と浴室を確認しました」
「その時の、印象はどうでしたか」
「健一が、父親の紘一さんを刺したと思いました」
「義母 詢子さんについては、何が起こったと思われますか」
「何が起こったのかは理解できませんでしたが、絢子さんも健一がやったんじゃないかと思いました」
「伊藤巡査長は、被告人と会話をされましたか」
「はい」
「どのような会話でしたか」
「健一に、下着とパジャマを着せているときに『どうしたんだ、何があったんだ』と問い質しました。健一は『僕のせいだと』とはっきりと答えました」
「被告人は『僕のせいだと』と答えたのすね。それで、身柄の確保をされたわけですね」
「はい。そうです」
弁護側の反対尋問
「伊藤巡査長は、大和駐在の勤務はいつからですか」
「3年前の4月の移動で、県警の自動車警ら隊から転任してきました」
「被告の健一君が、施設から迎えた養子さんだということはご存じでしたか」
「住人の方から聞きました」
「いつののことですか」
「大和駐在に戻ってから、具体的に日にちを答えることはできませんが、しばらくして知りました」
「それ以前は、どうだったのでしょうか」
「巡回台帳に『健一』の名前を見た時には、てっきり健一君が見つかったのだと思いました。後に養子さんだと聞いて合点がいきました」
「被告人の健一君を、3歳の時に誘拐された健一君だと思ったのですね」
「はい、そうです」
「3歳の時の、誘拐とは……」
「意義あり! 弁護人が発言した誘拐とは、21年前に起こった実子の誘拐事件であって、被告人とは別人物であり、本件とは何の関りが無いことです」
「弁護人は、本件と関連の無い事案についての尋問は控えるように」
「では、伊藤巡査長は、被告人と面識はありましたか」
「はい。何度か会話したことがありました」
「被害者と、面識はありましたか」
「はい。上田さん宅は交番から近く、奥様の詢子さんとはよく世間話しをしましたし、紘一さんとは町内のイベントで何度かお会いしお話したことがあります」
「証人は、今まで証言台に立った証人の中で、被害者・加害者のことを一番良く知っているということですね」
「はい。そうなると思います」
「では、上田家の、普段の様子について伺います。家庭内で暴力はありましたか」
「いいえ、そのような事実はありませんでした」
「事件前の、被告人の印象はどうでしたか」
「誠実、まじめだと思います。健一を知る人で悪く言う者は誰一人いないと思います」
「被告人が、義父の紘一さんを刺したと思ったと証言されましたが、なぜそう思われたのですか」
「健一が、座っていたというソファーの前に、血の付いた包丁が落ちていましたし、それに『僕のせいだと』答えています」
「証人の、『どうしたんだ、何があったんだ』の問いに、被告人は『僕のせいだと』答えたのですね」
「はい」
「被告人が、『自分が、やった、刺した』と答えたわけではないのですね」
「はい、そうです」
「絢子さんも、健一がやった。これは、証人の推測ですね」
「はい」
「先ほどの証言の“義父の紘一さんを刺したと思った”これも、証人の推測ですね」
「はい、そうです」
「以上で、尋問を終わります」
「続いて、死体検案書につて確認いたします」
「担当医師が、出頭できませんので報告書を朗読させていただきます」
「弁護人、異論ありませんね」
「しかるべく」
「では、“死体検案書資料の9”を参照してください。
被害者女性 上田詢子について。
後頭部に切創及び陥没骨折。左頸部(首)に刺し傷、ほか顔面に複数の切創(切りキズ)が認められる。
後頭部の切創及び陥没骨折ついては、致命傷に至らない。
左頸部の刺し傷痕について、傷口1,2センチメートルは、深さ5センチメートル。左頸部頸動脈を傷つけ、失血死に至ったものとされる。
頸動脈、いわゆる顎の付け根の動脈ですね。
次に、“死体検案書資料の10”被害者男性、上田紘一について。
左腹部に鋭利な両刃の刃物による刺傷が認められる。
傷口幅4.1センチメートル、深さ15センチで、膵臓の一部を傷付け、左腎臓に達していた。腎臓動脈を損傷し失血死に至ったものとされる」
「弁護人、何か審問することはありますか」
「ありません」
「では、“証拠物件その2”犯行の1に使用された割れた鏡片について審議いたします」
中坪鑑識課長の証人尋問
「では、“証拠物件その2”犯行の1に使用された割れた鏡片について、鑑識官の中坪鑑識課長より説明していただきます」
「鑑識官の中坪です。
では、犯行1に使用された、“証拠物件その2”割れた鏡片について説明いたします。 大きさは長編30センチ、高さ7センチ、厚さ5ミリの三角形であります。先端は約13度と鋭くとがった形状です。 付着していた血液から、被害者 詢子さんと被告人の血液が検出されました。そして、先端部から被害者 詢子さんの組織片が検出されており、凶器と断定できます。 付着指紋は、被告人の、右手親指・中指・薬指が検出されています。不鮮明でありますが人差し指と思われる指紋もありました。なお被告人以外の指紋は検出されておりません」
「資料に、示されているこの指紋ですね」
「はい」
「他の鏡の破片から、指紋は検出されましたか」
「指紋は検出されていませんが、いくつかの破片の裏からは、手袋痕が検出されましたが、いずれもとても古いもので、鏡を設置したときの作業者のものであろうと推測されます」
「“証拠物件その2”には、被告人以外の指紋は無かったということですね」
「はい、そうです」
弁護側の尋問
「これは、証拠品の凶器とされる割れた鏡片を、アクリル板で再現したものです。これで、のどを刺そうとした場合どう握るでしょうか。証人、再現していただけますか」
廣田は、“弁号証1”の鏡片を再現したアクリル板を、証人の中坪鑑識課長に手渡した。
「こうです」
「証人が握った位置と、指紋が検出された位置は一致しますか」
「一致はしません。証拠品から採取した指紋は、引き抜いたときのものと思われますから、一致するわけではありません」
「では、証人は手のひらを見せてください」
「なんだ! これは」
「事前に、アクリル板の断面にインクを塗布しておきましたので、手のひらにインクが転写されたはずです。被告人の手のひらの傷と一致していますか」
「……して いません」
「凶器を握る。つまり親指の付け根と第二関節の近くに傷が出来るのです。いま、証人の手のひらに付着たインクがその傷と言えます。 調書にあるよう被告人の、右手の傷は手のひらの中央と指先にあり、証人の手のひらに付着たインクとはかけ離れており、凶器とされる証拠品で被告人が刺したと断定することは出来ないのです。
現場となった上田邸は、昭和50年代頃に建てられた古い住宅で、幾度か修繕がなされていますが、“資料の4”の実況見分調書の写真にあるように浴室はユニットバスではありません。 床は天然石、壁は一部タイル張りで、壁に設置された鏡は、床からおよそ80㎝から140㎝の位置の壁に取り付けられています。そして鏡の下部には、大理石で作られたカウンター台が設置されております。 その鏡は、右上3分の1が割れて落ちていました。
調書では、鏡の この位置 床からの高さ120㎝のところに、頭部を打ち付けたとされますが、被害者 詢子さんの身長は158㎝ですから、被告人が、“立っていた詢子さんの頭部を打ち付けた”とするには高さは一致しません。
被害者の詢子さんは、被告人の背中を毎日のように流していた。かがんでいた被害者が立ち上がろうとした、そのとき何かの拍子にバランスを崩し後方に倒れ、鏡に後頭部をぶつけ切創を負い、カウンターに後頭部を強打し陥没骨折を負った。そして、落下した鏡片がのど元に刺さったものとするのが妥当です。
証拠品に残された被告人の指紋は、証人が証明したようにのど元に刺さった鏡片を抜き取る際に付着したものであって、被告人が、被害者を刺したと断言できないのです」
「検察官、反論はありますか」
「弁護側の反論は、全て弁護人の推論に過ぎません」
「検察官は、次の証拠の取調べについて述べてください」
「では、“証拠物件その3”犯行の2に使用された包丁につて説明いたします。
刃渡りは約15cmで、いわゆるペティナイフと呼ばれる小ぶりな包丁で、被害者の銘が刻まれておりました。台所には、同じ銘が刻まれたサイズの異なる2本の包丁が発見されています。 現場には、一個の梨と3枚の小皿、3本のフォークが残され、食後のデザートにと被害者 詢子が、梨の皮をむくために用意したようであります」
中坪鑑識課長の証人尋問
「では、中坪鑑識課長にお聞きします。この包丁から指紋は検出されましたか」
「証拠物件3の包丁 握り部分より、被害者の指紋、被告人の右手の血指紋が検出されました。一部は重なりあっておりますが、被害者の指紋の上に被告人の血指紋が確認できました。刃に付着していた血液は被害者 父紘一さんのもので、柄の部分より被告人の血液を検出しております。死体検案書の傷の形状と、証拠品の刃の形状が一致しておりますから、被告人がこの包丁を用いたことは明らかです」
「凶器と、いうことですね」
「はい。間違いありません」
「包丁に残された指紋は、包丁をどちら向きに握っていたのでしょうか」
「通常使用とは逆です」
「逆というのは」
「小指側に、刃先があるということです」
「小指側に刃先がある。それはどんな場合に、握るのでしょうか」
「振り下ろすときです」
「被告人は、この包丁を振り下ろしたと言えるのですね」
「そう考えて良いと思います」
「以上です」
弁護側尋問
「凶器とされる包丁からは、被告人の右手の指紋しか検出されていない。疑問が生じます。被告人は、割れた鏡片で手のひらに怪我をしており、その怪我をした右片手で果たして人を刺すことができたでしょうか」
「包丁の握り部は小さく、右手で握りしめ左手で補助していたと考えられます」
「指紋がはっきりと残っている。被告人は、割れた鏡片で手の掌に傷を負い出血していたはずですね、片手で握り人を傷つけるとしたならば、手元が滑ったはず、鮮明な指紋が検出されるとは思いませんが」
「それは、包丁を抜いた時の指紋が鮮明に残り、それを検出したもので何ら問題はありません」
「抜いた時の、指紋が鮮明に残っていた。被告人が、被害者の腹部から包丁を抜いたということで、被告人が刺したと断定できないということですね」
「握っていたのは、被告人に間違いはないことです」
「終わります」
続いて、“証拠物件その4”被害者 上田紘一の着衣について証拠取調べが行われた。
「被害者の義父 紘一が身に着けていた着衣。ワイシャツとズボンであります。 ワイシャツの左腹部に切れ込みがあり、“死体検案書資料の10”の刺し傷の部位と一致します。 腹部、背中、胸、腰、肩の部分に、被告人の血紋が残されています。血紋からは、被告人の血液と被害者の義母 詢子さんの血液が検出されております。 被告人が、被害者の母 詢子を殺害したのちに、被害者の紘一を押し倒し殺傷したさいに付着したものです」
「弁護人は、“証拠物件その4”について、反証することがありますか」
「弁護人は、被告人の血紋が残されているからと言って、押し倒し刺したとする、検察の主張は認めません。調書に『被告人はうつ伏せに倒れた被害者を、仰向けに起こした』と記述されており、血紋はこの体起こしたときに付着したものと弁護人は考えます」
人定質問での健一の対応が、心象を悪くし初公判は終わった。
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