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ジャーマンカモミール

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第一章 出逢い(3)

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 なんてことを言いだすのだと月城を睨みつけた。情事の対象として声をかけてくる者も少なくはないが、けれど月城のように相手に事欠くことのない存在から誘われると、上条は揶揄われているとしか取れなかった。ましてや色事に疎いというよりも避けてきた節のある上条にとって、苦手を通り越して厭うことでしかない。さほど興味もなく口にしたことは、月城の感情のない顔からも見てとれた。

「医師としてなら多少の協力はします。ーーただし、手術が成功するとは限りません」
「手術は必ず成功してもらう。でなければ、堂本の命はない」

 月城が2本目のタバコに火を点ける。眉一つ動かさない能面のようでは感情を探ることが難しい。命がないというのは果たして只の脅しだろうか。堂本へあまり良い感情を持ち合わせてはいないが、放ってもおけない。上条は両の眉頭を二本の指で揉みほぐした。大学病院を辞めてからというもの運に見放された人生だ。いや大学病院を辞めることになったときからか。

「理不尽だ!ーーあなたも、堂本も。俺の心情は無視ですか?ーー堂本の約束は、あなたに遭うことだった。約束は果たしたし、俺があなたの意向に沿う理由がありません! もし堂本の命を盾にするのなら、それは脅しですよ?ーーあなた、反社会的勢力の方なんですか?」

 月城がクックッと口元だけで笑い、目は射抜くように上条を見つめてきた。

「似たようなものだな。理不尽と今更もがくのなら、なぜ大学病院を辞める前に堂本の不正を告発しなかった?ーー今私に噛み付いたように。世の中、捕食するかされるかだ」
「……っ」

 



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