10 / 13
第10話 治癒
しおりを挟む
バチン!
「きゃあ!」
「ちょっとエリー!?大丈夫!?」
『ウォーター』の練習中にエリーが魔法を唱えた瞬間に手から煙が一瞬出てきた。
「魔力枯渇か?多分うまく発動せず変に暴発してしまったんだろ。」
魔力が足りないのに無理に唱えて発動させるとうまく魔力が作用せずその場で暴発してしまう。今回は『ウォーター』だからそんなに爆発は大きくなかったがこれが上級魔法であれば寮が爆発してただろう。
「いたた、」
「エリーその手、すこし焦げ付いてるよ。」
「まずいな、包帯は無いしどうするかな。」
プー二プーニ♪♪
俺たち3人がエリーの手を心配する中ミルだけは変わらずぴょんぴょんと跳ねて近づいてくる。
「どうかしたのミルちゃん?」
ミルは触手を器用に使い、自分の体をエリーの手に触らせてくれと言う。
「たしかにミルっちひんやりしてそうだよね。」
「いや意外とあったかいんだけどな。」
基本ゼリー体のミルはひんやりしているが、日向ぼっこしたりベッドの中にいる時はあったかい。水の性質を少し持ってるのか?
「それじゃ触るね、ミルちゃん。」
どんとこい!と構えるミル。そんなに触って欲しいのかと思いながら見守る。
ポワーーーン!
「「「へ?」」」
プニョン♪
エリーがミルに触れた途端患部を中心に淡く光り出した。何が起こってるの?
「うそ、治ってる?」
「ええ!?何このスライム!?ルー君はわかってたのー!?」
「いや、俺もこんなの初めて見るけど、」
プーニプーーニ♪♪
驚く俺たちだが当の本人は予期していたのか『どうよ!』とドヤ顔しているように跳ねる。
「でも何がきっかけがあるはずだよね。少なくともスライムに回復する力なんかないはずだし。」
「うーーーん、」
考えるが何も出てこない。そりゃそうだ、スライムはまず能力が無いと言えるぐらい弱い。体当たりと食事しか能がない。
プニョン♪
ミルが上に3回跳ねる。これは薬草が食べたいという合図だ。
「あ、薬草ならこっちに……!?そういうことか!」
「なになにどうしたのルー君!?」
「ルーノ君何かわかったのですか?」
「多分だけどミルずっと薬草食べてるからその効能が能力にかわってるのかもしれない。」
「どういうこと?」
スーはいまいちわからないようで首をかしげる。
「スライムって学者の間では『可能性の塊』って呼ばれるほど変異するんだ。」
「たしかに鉱山に住むスライムが金属を喰らいメタルスライムになったっていう例もありますね。」
「あー、それ聞いたことある。」
「そう、その変異する特性が薬草にもきいたのかもしれない。」
「だから薬草の治癒作用がミルっちにも影響して回復する能力を得たのかな?」
「よく考えたら俺って怪我したことなかったな。」
「え?怪我したことないってマジ?」
「ああ、」
怪我はしたことない。俺の戦いは傷を負わないことを主にしてる。1発で仕留めたり、状況判断で撤退をしたりと傷を負うことはほとんどしない。
「そっかー、ミルっちにこんな能力があるなんてね。」
「驚きですね。私の手もう完全に治ってますしむしろなんかツヤツヤしてます。ありがとうねミルちゃん。」
プーニプーーニ♪♪
ミルはエリーに撫でられて嬉しそうに跳ねる。子スライムだからまだ反応が子供だ。だけど治癒能力をすでに持ってるのか。
「これはしばらく本を読む必要があるな。」
「ルー君なんか言った?」
「!?いや、何も言ってないけど。」
スーが俺の小さなつぶやきに普通に反応してきた。なかなかいい耳をお持ちで。
「今日の練習はここまでだな。」
「わかりました。私はこのあと何をしていればいいでしょうか?」
「そうだなー、まあ頭の中で星型を綺麗にイメージすること、ぐらいかな?」
「それだけでいいんですか?想像だけで紙に描くとかしなくてもいいんですか?」
「それやっても戦闘中に絵を描くことがないからな。それに紙が勿体無いからな。」
別にこの世界で紙が貴重なんてことはない。ただのこじつけに過ぎない。
「それじゃあ今日はこの辺でね。じゃあねー。」
「今日はありがとう。また明日。」
「おう、また明日な。スーはちゃんと作戦考えとけよ。」
「むー、わかってるよ!」
スーは表面上は楽観的に見えるから随所で釘を刺しておかないとな。日頃から変えていかないと癖や考え方はなかなか変わらない。
「しかし、」
プニ?
「ミルにこんな能力があったなんてな。ああ、褒めてるんだよ、すごいな。」
ミルがどういうこと?と跳ねるから補足しておく。だけどこの能力をどの程度のものだと認識しておけばいいのかわからない。
「ええ、と……これか。」
俺はある一冊の本を取り出した。
[現代医学の現実]という本だ。この本の中には今の治癒魔法や薬草の効能、歴史も載っている。その中でこんな言葉があった。
薬草やポーションが治癒魔法を超えることは現時点ではありえない。
俺が7年間悩んでいた言葉だ。俺の得意魔法が衝撃で治癒魔法を覚えることはできない。だから薬草からアプローチをかけていたが失敗するたびにこの言葉に悩まされた。
プニョン♪
ミルが俺の膝の上に乗ってきた。なんかほんの少しだけ兆しが見えてきた気がする。
「きゃあ!」
「ちょっとエリー!?大丈夫!?」
『ウォーター』の練習中にエリーが魔法を唱えた瞬間に手から煙が一瞬出てきた。
「魔力枯渇か?多分うまく発動せず変に暴発してしまったんだろ。」
魔力が足りないのに無理に唱えて発動させるとうまく魔力が作用せずその場で暴発してしまう。今回は『ウォーター』だからそんなに爆発は大きくなかったがこれが上級魔法であれば寮が爆発してただろう。
「いたた、」
「エリーその手、すこし焦げ付いてるよ。」
「まずいな、包帯は無いしどうするかな。」
プー二プーニ♪♪
俺たち3人がエリーの手を心配する中ミルだけは変わらずぴょんぴょんと跳ねて近づいてくる。
「どうかしたのミルちゃん?」
ミルは触手を器用に使い、自分の体をエリーの手に触らせてくれと言う。
「たしかにミルっちひんやりしてそうだよね。」
「いや意外とあったかいんだけどな。」
基本ゼリー体のミルはひんやりしているが、日向ぼっこしたりベッドの中にいる時はあったかい。水の性質を少し持ってるのか?
「それじゃ触るね、ミルちゃん。」
どんとこい!と構えるミル。そんなに触って欲しいのかと思いながら見守る。
ポワーーーン!
「「「へ?」」」
プニョン♪
エリーがミルに触れた途端患部を中心に淡く光り出した。何が起こってるの?
「うそ、治ってる?」
「ええ!?何このスライム!?ルー君はわかってたのー!?」
「いや、俺もこんなの初めて見るけど、」
プーニプーーニ♪♪
驚く俺たちだが当の本人は予期していたのか『どうよ!』とドヤ顔しているように跳ねる。
「でも何がきっかけがあるはずだよね。少なくともスライムに回復する力なんかないはずだし。」
「うーーーん、」
考えるが何も出てこない。そりゃそうだ、スライムはまず能力が無いと言えるぐらい弱い。体当たりと食事しか能がない。
プニョン♪
ミルが上に3回跳ねる。これは薬草が食べたいという合図だ。
「あ、薬草ならこっちに……!?そういうことか!」
「なになにどうしたのルー君!?」
「ルーノ君何かわかったのですか?」
「多分だけどミルずっと薬草食べてるからその効能が能力にかわってるのかもしれない。」
「どういうこと?」
スーはいまいちわからないようで首をかしげる。
「スライムって学者の間では『可能性の塊』って呼ばれるほど変異するんだ。」
「たしかに鉱山に住むスライムが金属を喰らいメタルスライムになったっていう例もありますね。」
「あー、それ聞いたことある。」
「そう、その変異する特性が薬草にもきいたのかもしれない。」
「だから薬草の治癒作用がミルっちにも影響して回復する能力を得たのかな?」
「よく考えたら俺って怪我したことなかったな。」
「え?怪我したことないってマジ?」
「ああ、」
怪我はしたことない。俺の戦いは傷を負わないことを主にしてる。1発で仕留めたり、状況判断で撤退をしたりと傷を負うことはほとんどしない。
「そっかー、ミルっちにこんな能力があるなんてね。」
「驚きですね。私の手もう完全に治ってますしむしろなんかツヤツヤしてます。ありがとうねミルちゃん。」
プーニプーーニ♪♪
ミルはエリーに撫でられて嬉しそうに跳ねる。子スライムだからまだ反応が子供だ。だけど治癒能力をすでに持ってるのか。
「これはしばらく本を読む必要があるな。」
「ルー君なんか言った?」
「!?いや、何も言ってないけど。」
スーが俺の小さなつぶやきに普通に反応してきた。なかなかいい耳をお持ちで。
「今日の練習はここまでだな。」
「わかりました。私はこのあと何をしていればいいでしょうか?」
「そうだなー、まあ頭の中で星型を綺麗にイメージすること、ぐらいかな?」
「それだけでいいんですか?想像だけで紙に描くとかしなくてもいいんですか?」
「それやっても戦闘中に絵を描くことがないからな。それに紙が勿体無いからな。」
別にこの世界で紙が貴重なんてことはない。ただのこじつけに過ぎない。
「それじゃあ今日はこの辺でね。じゃあねー。」
「今日はありがとう。また明日。」
「おう、また明日な。スーはちゃんと作戦考えとけよ。」
「むー、わかってるよ!」
スーは表面上は楽観的に見えるから随所で釘を刺しておかないとな。日頃から変えていかないと癖や考え方はなかなか変わらない。
「しかし、」
プニ?
「ミルにこんな能力があったなんてな。ああ、褒めてるんだよ、すごいな。」
ミルがどういうこと?と跳ねるから補足しておく。だけどこの能力をどの程度のものだと認識しておけばいいのかわからない。
「ええ、と……これか。」
俺はある一冊の本を取り出した。
[現代医学の現実]という本だ。この本の中には今の治癒魔法や薬草の効能、歴史も載っている。その中でこんな言葉があった。
薬草やポーションが治癒魔法を超えることは現時点ではありえない。
俺が7年間悩んでいた言葉だ。俺の得意魔法が衝撃で治癒魔法を覚えることはできない。だから薬草からアプローチをかけていたが失敗するたびにこの言葉に悩まされた。
プニョン♪
ミルが俺の膝の上に乗ってきた。なんかほんの少しだけ兆しが見えてきた気がする。
0
あなたにおすすめの小説
凡夫転生〜異世界行ったらあまりにも普通すぎた件〜
小林一咲
ファンタジー
「普通がいちばん」と教え込まれてきた佐藤啓二は、日本の平均寿命である81歳で平凡な一生を終えた。
死因は癌だった。
癌による全死亡者を占める割合は24.6パーセントと第一位である。
そんな彼にも唯一「普通では無いこと」が起きた。
死後の世界へ導かれ、女神の御前にやってくると突然異世界への転生を言い渡される。
それも生前の魂、記憶や未来の可能性すらも次の世界へと引き継ぐと言うのだ。
啓二は前世でもそれなりにアニメや漫画を嗜んでいたが、こんな展開には覚えがない。
挙げ句の果てには「質問は一切受け付けない」と言われる始末で、あれよあれよという間に異世界へと転生を果たしたのだった。
インヒター王国の外、漁業が盛んな街オームで平凡な家庭に産まれ落ちた啓二は『バルト・クラスト』という新しい名を受けた。
そうして、しばらく経った頃に自身の平凡すぎるステータスとおかしなスキルがある事に気がつく――。
これはある平凡すぎる男が異世界へ転生し、その普通で非凡な力で人生を謳歌する物語である。
転生したら王族だった
みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。
レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
最凶と呼ばれる音声使いに転生したけど、戦いとか面倒だから厨房馬車(キッチンカー)で生計をたてます
わたなべ ゆたか
ファンタジー
高校一年の音無厚使は、夏休みに叔父の手伝いでキッチンカーのバイトをしていた。バイトで隠岐へと渡る途中、同級生の板林精香と出会う。隠岐まで同じ船に乗り合わせた二人だったが、突然に船が沈没し、暗い海の底へと沈んでしまう。
一七年後。異世界への転生を果たした厚使は、クラネス・カーターという名の青年として生きていた。《音声使い》の《力》を得ていたが、危険な仕事から遠ざかるように、ラオンという国で隊商を率いていた。自身も厨房馬車(キッチンカー)で屋台染みた商売をしていたが、とある村でアリオナという少女と出会う。クラネスは家族から蔑まれていたアリオナが、妙に気になってしまい――。異世界転生チート物、ボーイミーツガール風味でお届けします。よろしくお願い致します!
大賞が終わるまでは、後書きなしでアップします。
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる